JIS X 8101-1:2010 情報技術―バイオメトリック性能試験及び報告―第1部:原則及び枠組み | ページ 11

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
拒否された被験者が,さらなる入力試行を行うことで認識されるかもしれないし,又はシス
テムをより頻繁に使う者が,習熟の効果を通じてよりよい性能を得るかもしれない。そのよ
うな場合には,過剰に頻度が高いが代表的でない利用者の小さな集団に結果が支配されるか
もしれないので,式(B.5)及び式(B.6)を直接には適用できない。
B.3.3 観測された誤合致率の分散
完全な組の相互比較が行われる場合には,観測された誤合致率及びその分散の推定は,次のように与え
られる。
n n
1 ijb
q
(B.7)
mn n 1 i1 j1
n n n
1 4n 6
V q
2
2 ci di bij2bijbji 2
q
m nn 1 n 2 n 3 i1 i1 j 1 n 2 n 3
n
1 2 4
2 2 2 ci di q2 (B.8)
mn n 1 i1 n
ここに, n : 被験者数(及び生体情報登録テンプレート数)
m : 被験者一人当たりのサンプル数
bij : j番目の被験者のテンプレートと誤合致したi番目の被験者
のサンプル数(及びbii=0)
ci : i番目の被験者のテンプレートに対する誤合致数の合計
n
( ci bji )
j1
n
di : i番目の被験者による誤合致数の合計 ( di bij )
j1
q : 観測された誤合致率
V : 観測された誤合致率の推定分散
注記 (m=1の場合における)この推定の2行目は,ビッケルによって与えられた式であり[22],実
験で検証されてきた[24]。
B.4 信頼区間の推定
B.4.1 一般的な事項
B.4.1.1 十分多数の入力試行では,中心極限定理[31]によって,観測された誤り率が,近似的に正規分布
に従うはずであることが示される。しかしながら,0 %に近い比率を扱うこと,及び尺度における分散が
母集団に対して一様でないことのために,被験者数がかなり大きくなるまでは,ある種のゆがみが残りや
すい。
B.4.1.2 正規性を仮定すると,観測された誤り率の100(1−α) %信頼範囲は,次のように与えられる。
p z1 /2 V p
(B.9)
ここに, z( ) : 標準正規累積分布の逆数 − すなわち,平均0,分散1の
標準正規曲線における−∞からz(x)までの面積がxである。
95 %の信頼限界では,z(0.975)の値は,1.96である。
α : 信頼区間に誤り率の真の値が含まれない確率
p : 観測された誤り率

――――― [JIS X 8101-1 pdf 51] ―――――

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V : 誤り率の推定分散
B.4.1.3 式(B.9)が適用されるときには,信頼区間が,観測された誤り率に対して負の値に達することがよ
くある。しかし,負の誤り率ということはあり得ない。このことは,観測された誤り率の分布が正規性を
もたないことに起因する。そのような場合には,信頼区間を得るために,ブートストラップのようなノン
パラメトリック法を使うことが可能である [32][34]。
B.4.2 分散及び信頼区間のブートストラップ推定
B.4.2.1 ブートストラップ推定は,観測された誤り率に内在する分布及び入力試行間の従属関係について
の仮定の必要性を減らす。分布と従属関係とは,データそのものから推察される。元のデータから復元抽
出することによって,ブートストラップ標本が作り出され,この標本から代わりの誤り率の推定が作り出
される。多数のこのようなブートストラップ標本をもって,推定量の経験分布を得ることができる。これ
は,信頼区間,推定の不確実性,その他を求めることにも使うことができる。
B.4.2.2 処理過程を説明するために,n人の被験者それぞれがm回の入力試行を行い,(n−1)人分すべて
の非自己テンプレートと比較する相互比較一式を用いて,誤合致率を推定することを想定する。x(ν, a, t)
は,テンプレートtに対する被験者νのa番目の入力試行とのマッチング結果を示す。誤合致率を推定す
るデータ集合Xは,mn(n−1)すべての相互比較の結果から構成される。
X v
x v, a,t | t 1,...,m
1,...,n , a
それぞれのブートストラップ標本は,元のデータの構造及び従属関係を複製する方法で,Xから作られ
なければならない。その手順は,次のようになる。
a) 人の被験者を復元抽出する : ν(1), ..., ν(n)(復元抽出は,リストには同じ項目が2個以上含まれ得る
ことを意味する。)。
b) それぞれのν(i)に対して,(n−1)の非自己テンプレートを復元抽出する : t(i, 1), ..., t(i, n−1)
c) それぞれのν(i)に対して,その被験者によるm回の入力試行を復元抽出する : a(i, 1), ···, a(i, m)
d) 作り出されるブートストラップ標本は,
Y |i 1,...,n , j
v i ,t i, j , a i, k 1a
1,...,n 1,...,m
である。
多くのブートストラップ標本が生成され,それぞれに対して誤合致率が得られる。誤合致率に対するブ
ートストラップ値の分布は,観測された誤合致率の分布の近似に用いられる。
B.4.2.3 ブートストラップ値は,100(1−α) %の信頼限界を求めるための直接的な方法を可能にする。L(下
限)及びU(上限)は,ブートストラップ値の100α/2パーセンタイルを信頼区間の下限L,100(1−α/2)パ
ーセンタイルを信頼区間の上限Uとなるように選ばれる。95 %限界に対しては少なくとも1 000のブート
ストラップ標本を,99 %限界に対しては少なくとも5 000のブートストラップ標本を用いることが望まし
い。
B.4.3 部分集合のサンプリング
B.4.3.1 観測された誤り率における誤差の範囲を推量するためのさらなる方法は,収集データを互いに素
な利用者の部分集合に分割し,それぞれの部分集合に対してDET曲線を生成することである。例えば
FRVT2002の評価[11]は,誤差だ(楕)円を生成するためにこの方法を用いた。
B.4.3.2 誤差だ(楕)円を導く基本的な方法
a) 人の被験者を用いた性能評価結果を集める。
b) 試験母集団を規模N=T/Mである互いに素なM(例M=10)の集団に分ける。
c) それぞれの部分集合に対してDET曲線を計算する。

――――― [JIS X 8101-1 pdf 52] ―――――

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d) いき(閾)値tを仮定して,
1. i=1, ..., Mとなるすべての部分集合に対して,いき(閾)値でのxi=(FMRi, FNMRi) Tを見つける。
2. 標本平均m=sum(xi)/M及び標本共分散行列=sum[(xi−m)(xi−m) T]/(M−1)を計算する。
3. m及び/sqrt(M)は,いき(閾)値tでの(試験母集団全体に対して計算した)FMR及びFNMRの
観測値の分布の推定を与え,これは正規性の仮定の下で,mの周りの95 %(例)信頼だ(楕)円を
決定するために使われる。
e) さらなるいき(閾)値tで繰り返す。
注記 d) の1.及びd) の2.で,Tはベクトルの転置を表す。

――――― [JIS X 8101-1 pdf 53] ―――――

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附属書C
(参考)
性能に影響を与える要因
C.1 一般的な事項
この附属書では,性能に影響を及ぼす幾つかの利用者及び環境要因について示す。評価のデータ収集の
段階の間に,それらの要因を制御又は記録する必要がある場合もあり得る。
評価の計画のときに,評価に影響を及ぼすそれぞれの要因に対する可能性を次のように考察する。
a) 性能への影響を最小化する(又は解明する)ために必要な制御は(もしあれば)何か。例えば,これ
は,影響を均等にするために,すべての入力試行に対して条件を一定又はランダムにすることを含む。
b) 各々の要因の制御を不要にする仮定又は理由は何か。例えば,対象アプリケーションと同じようにテ
ストシナリオにも要因は影響を及ぼし得る。別の場合では,予備調査は,関連機器のために各要因の
影響がわずかであることを示す。
c) どのような情報を,次のような目的のために評価中に記録する必要があるのか。
1) どのような要因でも重要性を決められるため(又は無意味であることを示せるため)。
2) ほかの極端に結果を偏らせる特別な場合を識別するため。
ある問題に関係する被験者のサブセットが識別可能な場合には,そのサブセットの誤り率の数字
を残りの被験者のものと比較することが可能な場合もある。
報告される結果には,このようなチェックリストを含ませることができる。
記載された要因は,一般的にバイオメトリックモダリティのサブセットにだけ問題の原因になる。例え
ば,照明の変化は,光学ベースのシステム[例えば,顔,指紋,網膜,こう(虹)彩,静脈に基づいた]
にだけ影響を与え,更に,音響ノイズは音ベースのシステム(例えば,話者照合)に影響する。幾つかの
バイオメトリック機器は,どんな問題の要因もある程度制御する働きをする。同様に,問題がリスト内に
含まれないことが観測されてもよい。
問題が発生したとき,通常その要因はサンプルの品質を下げ,その結果,生体情報登録失敗率,取得失
敗率及び誤非合致率を増加させる。しかしながら,ノイズの多い,又は問題ある画像が,誤合致率を増や
す誤った合致を許すような幾つかの場合もある。
注記 より詳細な要因に関する分析は,この規格群の第2部の附属書JAで与えられる。
C.2 要因リスト
C.2.1 母集団の人口統計
考えられる人口統計上の要因は,次のとおりである。
− 年齢。(急激に変化する)子供,及び(バイオメトリックの小さな損傷が治るのに,おそらく長くかか
る)高齢者の場合には,誤非合致及び取得失敗が平均よりも増加する傾向がある。
− 民族的出身,性別,職業。(個々のバイオメトリックシステムのための)個人のバイオメトリックの品
質は,個人の民族的出身,性別,職業に依存する場合がある。特定の対象母集団に調整されたバイオ
メトリックシステムは,異なる民族及び性別構成で使用する場合に,性能を下回ることが多い。
C.2.2 アプリケーション
考えられるアプリケーション上の要因は,次のとおりである。

――――― [JIS X 8101-1 pdf 54] ―――――

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
− 生体情報登録照合間の経過時間。テンプレートエージング,すなわちバイオメトリックパターンと
提示方法との変化は,生体情報登録テンプレート生成と照合又は識別の入力試行との間の遅れに従う
点で異なる。幾つかのモダリティでは,利用者の外観及び振る舞いがほんの少ししか変わらない,生
体情報登録後の短い時間の性能は,数週間又は数箇月後のものに比べずっとよい。
− 時刻。振る舞い及び生理機能は,1日の間で変化することがあり得る。
− 利用者の習熟度。利用者がシステムに慣れ親しむにつれて,正確な位置合わせ,及び発生するかもし
れない照合の問題を埋め合わせるための適切な行動を知る傾向が強い。
− 利用者の自発性。利用者は,バイオメトリックトランザクションの重要性に従って異なる行動を起こ
す。
C.2.3 利用者の生理状態
考えられる利用者の生理機能上の要因は,次のとおりである。
− ひげ及び口ひげは,顔システムに影響を及ぼす。
− 頭髪の有無
− 身体上の故障,病気,又は疾患。例えば,次がある。
− 切断。手,又は指をベースにしたシステムが使えない。
− 関節炎。手,又は指をベースにしたシステムを使うのが難しい。
− 盲目。こう(虹)彩又は網膜をベースにしたシステムを使うことができない。また,その他のシス
テムの位置決めに影響を及ぼす。
− あざ。顔,又は手の画像に一時的な影響を及ぼす。
− 風邪,又はこう(喉)頭炎。声に一時的な影響を及ぼす。
− 松葉づえ。確実に立つことが難しい可能性がある。
− はれ。顔,又は手の画像に一時的な影響を及ぼす。
− 車いす。車いすの人には,システムの高さが違っているかもしれない。
− 健康状態の変化。通常の経年変化の影響よりも早い場合がある。
− まつげ。長いまつげはこう(虹)彩の可視領域を少なくする場合がある。
− 指のつめの成長。手と指との位置決めに影響する。
− 指紋の状態。例えば,
− 隆線の深さと間隔。
− 乾燥,きれつ,湿潤
− 身長。とても高い人,又はとても低い人(若しくは車いすの人)は正確な位置決めが難しいことがあ
る。
− こう(虹)彩の色の強さ
− 肌の色合い。システムが顔,又はこう(虹)彩の位置を検出する正確さに影響する場合がある。
C.2.4 利用者の振る舞い
考えられる利用者の振る舞い上の要因は,次のとおりである。
− 方言,アクセント,母国語。声のシステムに影響を与える場合がある。
− 言い回し,抑揚,音量。声のシステムに影響を与える。
− 表情。
− 言語のアルファベット。筆跡署名システムに影響を与える。
− 語句の言い間違い,又は読み違い。声のシステムに影響を及ぼす可能性がある。

――――― [JIS X 8101-1 pdf 55] ―――――

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JIS X 8101-1:2010の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 19795-1:2006(IDT)

JIS X 8101-1:2010の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 8101-1:2010の関連規格と引用規格一覧