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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
− テンプレート生成(複数サンプルからの特徴を要求してもよい。),バイオメトリックデータ交換フォ
ーマットへの変換及び蓄積をしてもよい。
− 登録が確実に利用できるものにするための試験照合又は試験識別
− 最初の登録が不満足であると思われる場合は,繰り返し登録入力試行を認めてもよい(登録方針に依
存する。)。
5.3.2 照合
照合では,システムは利用者の登録に関する肯定的な身元確認要求(例えば,“私は,利用者Xとして
登録されている。”)を検証するために,対象者によるトランザクションを処理する。照合は,その要求を
受理するか又は拒否する。照合判定結果は,正しくない要求を受容した場合(誤受入)又は正しい要求を
拒否した場合(誤拒否)に誤りとみなされる。ある種のバイオメトリックシステムは,一人の一般利用者
が一つ以上の生体特徴事例を登録することを認める場合もあることに注意を要する[例えば,こう(虹)
彩システムは,一般利用者が両方のこう(虹)彩画像を登録することを認めることがあり,指紋システム
は,一般利用者に1本の指を損傷した場合のバックアップとして2本以上の指を登録させることもある。]。
照合には,一般的に次のものが含まれる。
− サンプル収集
− 対象領域抽出及び特徴抽出
− 品質評価(サンプル・特徴が,比較には不適切であるとして拒否してもよいし,追加サンプルの収集
を要求してもよい。)
− 身元確認要求した人物のサンプル特徴と登録されたテンプレートとを比較して,照合得点を計算する。
− 照合得点がいき(閾)値を超えるか否かに基づき,サンプル特徴がテンプレートと合致しているか否
かの判定
− 判定方針に従う1回以上の入力試行の照合結果に基づく照合判定
例 登録されたテンプレートと照合するため3回までの入力試行が許されている照合システムでは,
誤拒否は,取得失敗及び誤非合致による任意の組合せによる3回の入力試行で発生する。誤受入
は,3回の入力試行のいずれかでサンプルが取得され,要求身元に登録されたテンプレートと誤
合致した場合に発生する。
5.3.3 識別
識別では,システムは利用者の登録身元情報を見つけるために利用者によるトランザクションを処理す
る。識別は,何も入っていないこともあれば,一つの身元情報だけしか入っていないこともある候補身元
情報リストを提供する。利用者が登録されていて,その登録身元情報が候補リストに載っていれば,識別
は正しいとみなす。登録対象者の身元情報が結果として出力される候補リストに載っていない(誤拒否識
別誤り)場合,及び非登録利用者に対して非空白候補リストを出力する(誤受入識別誤り)場合は,識別
は誤りとみなされる。
識別には,一般的に次のものが含まれる。
− サンプル収集
− 対象領域抽出及び特徴抽出
− 品質評価(サンプル・特徴が,比較には不適切であるとして拒否してもよいし,追加サンプルの収集
を要求してもよい。)
− 登録データベース内の幾つか,又はすべてのテンプレートと比較して,比較ごとの照合得点を計算す
る。
――――― [JIS X 8101-1 pdf 16] ―――――
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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
− 照合得点が,いき(閾)値を超えているか,返ってきた最高k位のスコアの中にあるか否か,又はそ
の両方であるかに基づいて,各照合テンプレートがその利用者の潜在候補身元情報になるか否かを判
定し,候補リストを作成する。
− 判定方針に従う1回以上の入力試行による候補リストに基づく識別判定
注記1 完全に自動化されたシステムでは,割り当てられた身元情報は,[規定のいき(閾)値を超え
る]最高位の照合得点であるテンプレートに相当する場合がある。オペレータがいる場合,
オペレータによる最終判断のために,システムは上位rまでの候補リストを示す場合がある。
オペレータが有力な照合結果を検査するシステムにおける最終的な性能評価尺度については,
この規格の適用範囲外ということになる。
注記2 全利用者が登録された識別システムを使う場合,登録者識別誤りは発生しない。登録者限定
識別として知られる,この縮退した場合には,性能評価の関心は通常,出力される候補リス
トのサイズに関連する正確な識別率に向けられる。
5.4 生体情報登録,照合及び識別トランザクション
上記の各バイオメトリック機能は,利用者トランザクションに依存する。トランザクションは,対応す
る判定方針が許容する又は要求する1回以上の入力試行からなる。例えば,判定方針が照合につき3回の
入力試行を許容することがある。その場合は,トランザクションは,1回の入力試行からなることもあれ
ば,最初の入力試行が拒否された場合は,2回の入力試行からなることもあり,また,最初の2回の入力
試行が拒否された場合は,3回の入力試行からなることもある(図2参照)。
各入力試行での提示の回数は2回以上となることがあり,その回数は,センサ動作に依存し,サンプル
品質方針に依存し,提示の回数又は1回の入力時間を制限する設定に依存する。例えば,登録入力試行は
バイオメトリックサンプルの2回以上の送付が必要になることもある。バイオメトリック照合システムは,
1回の入力試行で一連のサンプルを処理することが多い。例えば,(a) 最善の照合サンプルを見つけ出すた
めに,ある一定期間サンプルを収集するか,(b) 合致するか若しくはシステムが時間切れになるまで,サ
ンプルを収集するか,又は (c) 十分な品質のものが得られるか若しくはシステムが時間切れになるまでサ
ンプルを収集する。
――――― [JIS X 8101-1 pdf 17] ―――――
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システムがある一つの生
体特徴の複数サンプルを
1回の入力試行を構成する必要とするか又は許容す
ために,1回以上の提示がるかによって,あるトラン
必要とするか又は許容さ ザクションを構成するた バイオメトリックシステ
れる。ある種のシステムで
めに,1回以上の入力試行 ムとの利用者相互作用
は,提示と配置とは同じこ
が要求されるか又は認め は,一連のトランザクシ
とである。 られる。 ョンから成り立つ。
提示1 入力試行1 トランザクション1
提示2 入力試行2 トランザクション2
・・・ ・・・ ・・・
提示N 入力試行N トランザクションN
代表的な判定方針では,N 代表的な判定方針では,
回の提示後に入力試行を N回の入力試行後の登録
構成するための十分なバ 又は照合の不能は,失敗
イオメトリックデータが トランザクションとす
取得できなかった場合は,る。
失敗入力試行とする。
図2−提示,入力試行及びトランザクション
5.5 性能評価尺度
5.5.1 誤り率
照合判定誤り及び識別判定誤りは,マッチング誤り(すなわち,誤合致及び誤非合致)又はサンプル取
得誤り(すなわち,生体情報登録失敗又は取得失敗)による。これらの基本的誤りがどのように組み合わ
されると判定誤りとなるかは,必要な比較回数,身元確認要求が肯定的(既登録証明)か又は否定的(未
登録証明)かの別,及び判定方針(例えば,システムが複数回数の入力試行を許すか否か)による。
注記 従来,バイオメトリック性能は,例えば誤受入率及び誤拒否率という判定誤り率で規定されて
きたが,それに関する文献中にも矛盾する記述が見受けられた。大規模な識別システムに関す
る文献では,提示されたサンプルが別の利用者によって登録されたテンプレートと誤って合致
したときの“誤拒否”発生に言及している。アクセス制御の文献では,提示されたサンプルが
別の利用者によって登録されたテンプレートと誤って合致したときに“誤受入”が発生すると
記述されていた。誤合致率及び誤非合致率は,誤受入率及び誤拒否率と一般的に同義ではない。
誤合致率又は誤非合致率は比較の総数に対して計算されるが,誤受入率又は誤拒否率はトラン
ザクションの総数に対して計算され,かつ,既登録確認か又は未登録確認かという既定の仮説
の受理又は拒否に関連する。さらに,誤受入率又は誤拒否率は取得失敗を含む。
5.5.2 スループット
スループットは,計算速度及び人間が装置を操作する時間の双方に基づく,単位時間に処理できる利用
者の数を示す。これらの尺度は,一般にすべてのバイオメトリックシステム及び装置に適用できる。適切
なスループットを達成することは,どんなバイオメトリックシステムにとっても極めて重要である。アク
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セス制御システムのような照合システムのスループットは,通常,良質なバイオメトリックサンプル提示
のプロセスにおける利用者の操作時間に支配される。社会サービスプログラムへの登録のような識別シス
テムのスループットは,登録サンプルを蓄積したテンプレートのデータベースと比較するのに要するコン
ピュータ処理時間によって大いに影響を受ける可能性がある。したがって,システムのタイプによっては,
利用者がシステムを操作する回数及び計算ハードウェアの処理速度を測定することが適切な場合もある。
コンピュータ処理速度の実効的なベンチマークは,[12]の本文で扱っており,この規格の適用範囲外とす
る。人間対機械の相互作用の速度測定は,相互作用の開始を示す行為及び相互作用を終了させる行為の厳
密な定義付けを必要とする。この定義付けは,試験を開始する前に決定し,試験報告書に注記することが
望ましい。試験報告書には,人間対機械の相互作用に含まれる利用者行為の簡単な一覧表も入れることが
望ましい。
5.5.3 性能評価の種別
バイオメトリックシステムの試験には,入力画像又は信号の収集が含まれる。それらは,登録時のテン
プレート生成のために使われるとともに,照合又は識別入力試行の照合得点計算のために使用する。収集
した画像・信号は,オンライン登録,照合又は識別のために直ちに使用したり,又は,蓄積しておいて,
後でオフライン登録,照合若しくは識別のために使用することができる。
a) テクノロジ評価では,すべてのアルゴリズムの試験は,理想的にいえば“ユニバーサル”センサ(す
なわち,試験するすべてのアルゴリズムに等しく適しているサンプルを集めるセンサ)によって集め
た,標準化したコーパスで実施する。それでもなお,このコーパスに対する性能は,環境及びそれを
収集した母集団の両方に依存する。データ例は,試験以前に開発又は調整のために配布されるが,実
際の試験は,アルゴリズム開発者がそれまでに見たこともないデータに基づいて実施しなければなら
ない。試験は,データのオフライン処理を用いて実施する。コーパスは不変であるので,テクノロジ
試験の結果は再現可能である。
b) シナリオ評価では,試験は対象となる実在するアプリケーションをモデル化した環境においてシステ
ム全体で実施する。試験される各システムは,自前の取得センサをもっているため,わずかに異なっ
たデータを受信するはずである。それゆえに,複数のシステムを比較する場合,試験されるシステム
のすべてを横断したデータ収集は,同じ母集団をもった同じ環境の中で行うように注意する必要があ
る。試験は,各装置のデータ蓄積能力のいかんによって,オフライン比較とオンライン比較とを組み
合わせたものになる可能性がある。試験結果は,モデル化したシナリオによって詳細に管理できる範
囲においてだけ再現性がある。
c) 運用評価では,運用システムのデータ蓄積能力によっては,オフライン試験ができない場合もある。
一般に,運用試験結果は,運用環境間の未知で文書化されていない相違のために再現可能ではない。
さらに,特に運用評価が運用責任者,オペレータ又は観測者のいない無監督状態で実施された場合,
“(正誤判定に用いる)正解”(すなわち,だれが実際に“使用法に忠実な”バイオメトリック測定値
を提示したか)を確かめることは難しくなる可能性がある。
附属書Aは,様々な評価形式の様々な特性を要約したものである。
6 評価計画
6.1 一般的な事項
評価における第一歩として,試験責任者は,次の事柄を決めなければならない。
a) 評価すべきシステム・アプリケーション・環境
――――― [JIS X 8101-1 pdf 19] ―――――
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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
b) 測定すべき性能に関する事項
c) 性能評価用データ集合作成の方法(すなわち,次のうちのどれが適切な評価形式であるか : テクノロ
ジ評価,シナリオ評価又は運用評価)
これらの決定事項は,適切な環境制御,被験者選定及び試験規模の明細を規定した,適切な試験規約を
開発するための基礎を成す。
注記 評価形式の選択は,例えば,テクノロジ評価用の試験サンプルのコーパスが入手できるかどう
か,又は運用評価用の導入システムが入手できるかどうかによって,決定される可能性がある。
状況によっては,バイオメトリック識別システムの最終選定に向けて,モダリティの選択肢及
び候補となるシステム群を徐々に絞り込んでいきながら,3種類すべての試験形式を順に実行
することもある。
6.2 この規格群の他の部の利用
試験責任者は,システム及びアプリケーションの違いに応じて,違った試験方法論を必要とする。試験
方法論の違いをもたらす要因として,次のようなものがある。
a) 環境の相違
b) 利用者母集団の相違(例えば,利用者の習熟の相違)
c) バイオメトリックモダリティの相違(例えば,モダリティが異なれば異なった環境条件によって影響
を受けることによるもの,及び主として行動的生体認証と主として身体的生体認証との間の相違によ
るもの。)
d) 関心のある性能評価指標の相違(例えば,照合の総合的な性能,登録者非限定識別及び登録者限定識
別は,測定の方法が異なる。)
e) 入手できるデータの相違(例えば,予備選択を用いる識別システムは,必ずしもすべてのサンプル特
徴の照合得点をテンプレート比較に提供するわけではない。しかしながら,予備選択によって欠落し
たデータは,未知であると処理することはできない。そのサンプルは,予備選択で欠落しなかったい
かなるテンプレートと比較しても悪い照合得点が付きそうである。)
f) (利用者が要求身元を提示しない場合に)識別システムに対して(正誤判定に用いる)正解(登録者
に関して正解とすべき身元情報)を与えるときに追加的に生じる問題
この規格は,性能評価を実施し報告するための基本原則だけを規定している。個々の評価形式,バイオ
メトリックモダリティ,対象アプリケーション,又は評価目的に関するより具体的な手引き及び要求事項
は,この規格群の他の部で規定されている。
6.3 システムに関する情報の判定
試験責任者は,適切なデータ収集手順を計画するために,試験するシステム(群)に関する次の情報を
判定しなければならない。
a) システムは,トランザクション情報を保存するようになっているか。なっていない場合は,この情報
は,被験者,オペレータ又は試験監視者(観測者)が手作業で記録しなければならない。
b) システムは,トランザクションごとのサンプル画像又は特徴を保存するようになっているか。これは,
照合得点をオフラインで生成する場合に必要になる。
c) システムは,照合得点を返すようになっているか,又はただ受入判定若しくは拒否判定を返すだけに
なっているか。後者の場合は,DET曲線(7.2.3を参照)を作成するために,種々のセキュリティ設定
でデータを収集しなければならないことがある。照合得点が返って来る場合は,パラメタ及び尺度に
関してどんな情報が入手できるようになっているか。
――――― [JIS X 8101-1 pdf 20] ―――――
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JIS X 8101-1:2010の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO/IEC 19795-1:2006(IDT)
JIS X 8101-1:2010の国際規格 ICS 分類一覧
- 35 : 情報技術.事務機械 > 35.040 : 文字セット及び符号化
JIS X 8101-1:2010の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISQ17025:2018
- 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項