JIS X 8101-1:2010 情報技術―バイオメトリック性能試験及び報告―第1部:原則及び枠組み | ページ 3

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
4.6.3
誤非合致率,FNMR (false non-match rate, FNMR)
サンプルを供給した利用者から登録したある生体特徴のテンプレートに合致しないと誤判定された本人
入力試行の割合。
注記 計測又は観測された誤非合致率は,予測誤合致率又は期待誤合致率と異なる(前者は,後者を
見積もるために使われる可能性がある。)。
4.6.4
誤合致率,FMR (false match rate, FMR)
意図的でない偽者入力試行が,試行者本人以外のテンプレートに合致すると誤判定される割合。
4.6.5
誤拒否率,FRR (false reject rate, FRR)
本人の身元確認要求の照合トランザクションにおいて,誤って拒否する率。
4.6.6
誤受入率,FAR (false accept rate, FAR)
他人の身元確認要求の照合トランザクションにおいて,誤って受理する率。
4.6.7
(正受入)識別率 [(true-positive) dentification rate]
システムに生体情報を登録した利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力が利用者
の正しい身元情報を含む率。
注記 識別率は,次の二つに依存する。
(a) 登録データベースのサイズ。
(b) 照合得点及び/又はマッチングして出力される身元情報の数についての判定いき(閾)値。
4.6.8
誤拒否識別率,FNIR (false-negative identification-error rate, FNIR)
システムに生体情報を登録した利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力が利用者
の正しい身元情報を含まない率。
注記 誤拒否識別率=1−識別率
4.6.9
誤受入識別率,FPIR (false-positive identification-error rate, FPIR)
システムに生体情報を登録していない利用者による識別トランザクションにおいて,システムの出力が
いずれかの身元情報を含む率。
注記1 誤受入識別率は,次の二つに依存する。
(a) 登録データベースのサイズ。
(b) 照合得点及び/又はマッチングして出力される身元情報の数についての判定いき(閾)
値。
注記2 登録者限定識別では,すべての利用者が登録されているため,誤受入識別はない。
4.6.10
予備選択アルゴリズム (pre-selection algorithm)
登録データベースとの識別検索において,照合しなければならないテンプレートの数を減らすためのア
ルゴリズム。

――――― [JIS X 8101-1 pdf 11] ―――――

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
4.6.11
予備選択誤り (pre-selection error)
(予備選択アルゴリズムにおいて)同一利用者の同一生体特徴からサンプルが与えられたとき,対応す
る登録テンプレートが予備選択候補内に含まれない誤り。
注記 データベース分割(binning)法の予備選択において,ある利用者のある生体特徴を登録した後に,
同一人物・同一生体特徴のサンプルが,異なるデータベース分割枠(bin)に配置された場合に予
備選択誤りになる。
4.6.12
絞込み率 (penetration rate)
(予備選択アルゴリズムにおいて)予備選択されるテンプレート数の平均値とテンプレート総数との比。
4.6.13
識別順位 (identification rank)
利用者の正しい身元が識別システムの出力した身元リストの中にある場合,その順位。
注記1 識別順位は,登録データベースのサイズに依存し,“n中の候補順位k”と引用されることが
望ましい。
注記2 利用者の正しい身元と同じ照合得点をとる別の身元がある場合には,順位の最小値とする。

4.7 報告のためのグラフ

4.7.1
検出エラートレードオフ曲線,DET曲線 (detection error trade-off curve, DET curve)
2種の誤り率を両軸(第1種の誤りをx軸,第2種の誤りをy軸)にプロットするように,ROC曲線を
変形したもの。
注記1 DET曲線の例を10.6.2,図3に示す。
注記2 第1種の誤りと第2種の誤りとの組合せとして,(誤非合致率,誤合致率),(誤拒否率,誤受
入率),(誤拒否識別率,誤受入識別率)などがある。
4.7.2
照合精度特性曲線,ROC曲線 (receiver operating characteristic curve, ROC curve)
判定いき(閾)値を媒介変数として,第2種の誤り率(例えば,受理された偽者入力試行率)をx軸に,
“1から,対応する第1種の誤り率を引いたもの”(例えば,受理された本人入力試行率)をy軸にしてプ
ロットした曲線。
注記 ROC曲線の例を10.6.3,図4に示す。
4.7.3
累積識別精度特性曲線,CMC曲線 (cumulative match characteristic curve, CMC curve)
順位値をx軸に,その順位以内での正しい識別率をy軸に記入した,識別試験の結果のグラフ。
注記 CMC曲線の例を10.6.4,図5に示す。

4.8 統計用語

4.8.1
分散,V (variance, V)
統計分布の広がりの尺度。
注記1 確率変数Xの平均をE(X)とすると,V(X)=E[(X−μ)2],ここでμ=E(X)。
注記2 分散は,既知ならば,推定結果の真値に対するばらつきを示す。

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
4.8.2
信頼区間 (confidence interval)
下側推定値L,上側推定値Uを端点とする区間であって,パラメタxに対して,xの真の値がLとUと
の間にある確率が規定値(例えば,95 %)であるもの。
例 [L,U] がパラメタxの(95 %)信頼区間であるならば,確率(x∈[L,U])=95 %である。
注記 試験サイズが小さいほど,信頼区間は広くなる。

5 一般バイオメトリックシステム

5.1 一般バイオメトリックシステムの概念図

  多様なアプリケーション及び技術を想定すると,すべてのバイオメトリックシステムを一般的に論じる
ことは難しい。しかし,すべてのバイオメトリックシステムには多くの共通要素がある。バイオメトリッ
クサンプルは,センサによって利用者から収集される。センサ出力は処理装置に送られ,そこでサンプル
に特有で再現可能な計測値(特徴)が抽出され,その他すべての情報は捨てられる。その結果生成された
特徴は,一つのテンプレートとしてデータベースに蓄積するため,又は既にデータベースに蓄積されてい
る特定のテンプレート,幾つかのテンプレート若しくはすべてのテンプレートと比較して合致するものが
あるか否かを判定するために使われる。身元確認要求の判定は,サンプルの特徴と比較したテンプレート
又は複数テンプレートの特徴との類似性に基づいて決定される。
注記 合致?1) : 合致いき(閾)値を超えているか?
照合?2) : 照合判定基準による照合結果は?
候補?3) : 候補リストのいき(閾)値を超えているか?
識別?4) : 識別判定基準による識別結果は?
図1−一般バイオメトリックシステムの構成要素

――――― [JIS X 8101-1 pdf 13] ―――――

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X 8101-1 : 2010 (ISO/IEC 19795-1 : 2006)
図1は,データ取得,信号処理,蓄積,比較,及び判定サブシステムで構成される一般バイオメトリッ
クシステム内の情報の流れを図示したものである。この図は,登録処理と,照合・識別のシステム動作と
の両方を図示している。5.2.15.2.8では,これらの各サブシステムについてより詳細に説明している。こ
れらの概念構成要素は,実際のバイオメトリックシステムにおいて,存在しないか又は物理的な構成要素
に直接対応しない可能性があることに留意されたい。例えば,品質評価を対象領域抽出処理の前又は特徴
抽出処理の前に行うこともできる。

5.2 一般バイオメトリックシステムの概念構成要素

5.2.1  データ取得サブシステム
データ取得サブシステムは,バイオメトリックセンサに提示された利用者の生体特徴の画像又は信号を
集め,この画像又は信号をバイオメトリックサンプルとして出力する。
5.2.2 伝送サブシステム(図表には描かれていない。)
伝送サブシステム(バイオメトリックシステムに常にあるとは限らず,また,目に見えるようにあると
は限らない。)は,異なったサブシステム間でサンプル,特徴,テンプレートのすべて又はこれらのいずれ
かを伝送する。サンプル,特徴又はテンプレートは,標準バイオメトリックデータ交換フォーマットを使
って伝送することもある。バイオメトリックサンプルは,伝送前に圧縮と暗号化とのいずれか又は両方を
行い,使用前に対応する復元と復号化とを行ってもよい。バイオメトリックサンプルは,圧縮処理・復元
処理における損失だけでなく伝送チャネルの雑音によって,伝送中に変わる可能性がある。蓄積・伝送さ
れたバイオメトリックデータの信頼性,完全性及び機密性を保護するために,暗号技法を用いるのが望ま
しい。
5.2.3 信号処理サブシステム
信号処理サブシステムは,バイオメトリックサンプルから照合又は識別に用いられる特徴を抽出する。
信号処理サブシステムには,受信したサンプルから利用者の生体特徴の信号を検出する対象領域抽出処理,
特徴抽出処理,及び抽出した特徴が確実に識別可能な再現性のあるものにするための品質評価処理が含ま
れる。品質評価によって受信サンプル(群)が拒否された場合は,追加のサンプル(群)を収集するため
にデータ取得サブシステムに戻る制御があってもかまわない。
登録の場合は,信号処理サブシステムは,抽出した生体特徴からテンプレートを生成する。登録処理で
は,複数回の生体特徴提示による特徴を必要とすることが多い。テンプレートは,特徴そのものからなる
こともある。
5.2.4 データ蓄積サブシステム
テンプレートは,データ蓄積サブシステムに収容した登録データベース内に蓄積される。各テンプレー
トは,登録利用者の詳細情報と関連付けられる。テンプレートは登録データベースに蓄積する前に,バイ
オメトリックデータ交換フォーマットに再フォーマットしてもよいということに留意することが望ましい。
テンプレートはバイオメトリック取得装置の中,ICカードのような携帯用媒体,パソコン若しくはローカ
ルサーバのような局所的な装置の中又は中央データベース内に蓄積してもよい。
5.2.5 比較サブシステム
比較サブシステムにおいて,特徴は一つ以上のテンプレートと比較され,照合得点が判定サブシステム
に送られる。照合得点は,特徴と比較したテンプレート(群)との適合度を示す。特徴は,登録されたテ
ンプレートと全く同じ形態になることもある。照合では,登録利用者の1回の特定要求は,単一の照合得
点を出力する。識別では,多くのテンプレート又はすべてのテンプレートを特徴と比較して,比較ごとに
照合得点を出力することがある。

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5.2.6 判定サブシステム
判定サブシステムは,照合又は識別トランザクションの判定結果のために1回以上の入力試行による照
合得点を利用する。
照合の場合,照合得点が規定いき(閾)値を超えるときに,特徴と比較テンプレートとは合致している
とみなす。この結果に基づき,利用者が主張する登録身元の検証が,判定方針に従って行われる。判定方
針によっては,複数回の入力試行を許すこともあるし,複数回の入力を要求することもある。
識別の場合は,被登録身元情報又はテンプレートは,照合得点が規定いき(閾)値を超えるとき,照合
得点が規定値kに対する最高k位以内にあるとき,又は規定いき(閾)値を超えて,かつ,規定値kに対
する最高k位以内にあるとき,その利用者に関する潜在候補となる。判定方針は,識別判定前に複数回の
入力試行を許容するか又は要求してもよい。
注記 複合したバイオメトリックサンプル,テンプレート,スコアを単一のバイオメトリックサンプ
ル,テンプレート,スコアのように扱い,判定サブシステムがスコアの統合又は判定の統合を
適切に処理できるならば,理論上は,マルチバイオメトリックシステムを単一バイオメトリッ
クシステムと同様に取り扱うことができる。
5.2.7 管理サブシステム(図表には描かれていない。)
管理サブシステムは,関連する法的及び社会的な制約事項並びに要求事項に従って,バイオメトリック
システムの全般方針,実装及び使用法を管理する。実例としては,次のようなものがある。
− データ取得中若しくは取得後又はその両方における対象者へのフィードバックの提供
− 利用者からの追加情報の要求
− バイオメトリックテンプレート若しくはバイオメトリック互換データ又はその両方の蓄積及びフォー
マット
− 判定結果若しくはスコア又はその両方に関する最終調停の提供
− いき(閾)値の設定
− バイオメトリックシステム取得環境の設定
− 操作環境及び非生体認証データ蓄積の管理
− 一般利用者のプライバシーに関する適切な保護手段の提供
− バイオメトリックシステムを利用するアプリケーションとの協調
5.2.8 インタフェース(図表には描かれていない。)
バイオメトリックシステムは,アプリケーション プログラミング インタフェース,ハードウェア イン
タフェース又はプロトコル インタフェース経由で,外部のアプリケーション又はシステムとインタフェー
スとで接続していてもよい。

5.3 一般バイオメトリックシステムの機能

5.3.1  登録
登録では,システムは利用者個人の登録テンプレートを生成し蓄積するために,その利用者によるトラ
ンザクションを処理する。
登録には,一般的に次のものが含まれる。
− サンプル収集
− 対象領域抽出及び特徴抽出
− 品質評価(サンプル・特徴が,テンプレート生成に不適切であるとして拒否してもよいし,追加サン
プルの収集を要求してもよい。)

――――― [JIS X 8101-1 pdf 15] ―――――

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JIS X 8101-1:2010の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 19795-1:2006(IDT)

JIS X 8101-1:2010の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 8101-1:2010の関連規格と引用規格一覧