JIS Z 8129:2014 真空技術―真空計―熱陰極電離真空計の仕様の表記法 | ページ 3

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6.3 測定圧力範囲

  測定範囲は,一般的に許容できる測定の不確かさに依存する。この理由で,製造業者は測定の不確かさ
の限界値を表示しなければならない。測定範囲は,定義された測定の不確かさの限界値を満たす最高圧力
と最低圧力との間の範囲である。測定圧力範囲は,パスカル(Pa)で表示する。

6.4 測定の不確かさ

  真空計の合成相対不確かさu(p)/pは,6.3に規定した測定範囲における読み値及び/又はフルスケールの
百分率で表示しなければならない。不確かさの求め方はISO/IEC Guide 98-3:2008による。測定の相対不
確かさは,定数及び圧力依存性のある項によって,例えば,式(10)によって表すことができる。
up u Dev pres

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ここに, pres : 残留電流相当圧力(窒素換算値)
u(Dev) : 測定値のばらつきの推定値。測定子の製造過程で生じる
ばらつき並びに測定子とコントローラとの組合せ,及び
ケーブルとの組合せに依存するばらつきが含まれる。
この不確かさは,一つの商品群に対して当てはめることができる。個々の真空計が校正された場合,校
正の不確かさが適用される。
注記1 表記された不確かさを適用することができる条件(環境条件,ケーブルと測定子との組合せ
など)を併記したほうがよい。
注記2 表記された不確かさは,理想的な条件で測定された場合が多い。測定子の使用履歴,汚染状
態などによって不確かさが変わるので,より正確な測定を求める使用者は,不確かさを自ら
見積ることが望ましい。
注記3 熱陰極電離真空計の不確かさは,相対不確かさで表す場合が多い。

6.5 残留電流相当圧力

  残留電流に対応する圧力の窒素換算値(pres)は,パスカル(Pa)で表示する。

6.6 真空容器への接続

  ナイフエッジフランジ,クランプ式継手,Oリングなどの真空計の真空容器への接続形式及び大きさを
表示しなければならない。

6.7 外囲器の種類及び測定子の材料

  ガラス,金属,裸測定子など,外囲器の種類を明示する。また,外囲器,グリッド,イオンコレクタな
ど測定子構成部品の材料を明示する。

6.8 最高加熱脱ガス温度

  測定子だけ又はケーブル付きの場合の最高加熱脱ガス温度を記載しなければならない。一体形のもので,
制御部を取り外すことができる場合には,その旨を記載し,さらに測定子だけの場合及び制御部が取り付
けられている場合の最高脱ガス温度を記載しなければならない。

6.9 熱陰極(フィラメント)材料及び電子電流

  熱陰極(フィラメント)の数及び材料を明示しなければならない。電子電流がある圧力領域で一定に制
御されるように設計されている場合には,電子電流値及び電子電流のばらつき及びドリフトを記載しなけ
ればならない。電子電流が圧力(又はイオン電流の読み値)によって切り替わる場合には,変更点(圧力)
を記載しなければならない。圧力上昇過程と降下過程とで切り替え点が異なる場合もある。その場合には,
両方の点を記載する。電子電流がイオン電流又は圧力の変化に追従して変化する場合は,その旨を記載し,

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電子電流の範囲を記載しなければならない。
注記 通常,電子電流は陽極と接地電位,又は陽極と陰極との間で測定する。電子電流は,真空計の
制御部で調整する。電子電流は,おおむね0.1 mA10 mAの値である。放出された電子の数は,
電子電流にほぼ比例する。電子電流の安定性が熱陰極電離真空計による圧力測定の不確かさに
与える影響は大きい。

6.10 電気的動作条件

  真空計測定子内の,接地電位に対する全ての電極電位を記載しなければならない。気体の電離断面積は,
電子の運動エネルギーに非常に敏感なので,電子の運動エネルギーを知ることは,使用者が異なる気体に
対する比感度係数及び相対補正係数を予測するために有用である。
注記1 接地電位に対する陽極(グリッド)電位は,一般的に直流+150 V直流+200 Vである場合
が多い。熱陰極から放出された電子は,正電位の陽極方向に飛行する。しかし,多くの電子
は陽極(グリッド)開口部から飛び出し,最終的に陽極に衝突するまでの間何度か往復運動
をする。
注記2 接地電位に対する熱陰極の電位は,通常,直流+10 V直流+50 Vの間である場合が多い。
熱陰極に交流電圧を印加する形式のものもある。
注記3 イオンコレクタの電位は,接地電位付近であり,正イオンを引き込む。コレクタに衝突する
正イオンが,イオン電流として計測される。

6.11 インターフェイス

  通信機能がある場合,コンピュータとの通信方法を記載しなければならない。例えば,RS 232C,RS 485,
GPIB,Ethernet,USB,フィールドバス(Profibus,DeviceNetなど)である。

6.12 測定子と制御部との間の互換性

  測定子と制御部との間の形又は形式の違いによる互換性について記載しなければならない。

6.13 測定子及び制御部の寸法

  測定子及び制御部の寸法を外形図によってメートルで記載しなければならない。幅,奥行き及び高さ(W
×D×H)で記載する場合もある。

6.14 動作環境条件

  真空計が,正常に動作する温度及び湿度範囲を記載しなければならない。

6.15 制御部への入力電力

  電圧[交流(ac)又は直流(dc)],最大消費電力及び最大電流,並びに交流の場合には,周波数,及び
電流又は最大消費電力を記載しなければならない。

6.16 ケーブル長さ

  真空計が性能を満足して圧力測定を行うことのできる,測定子と制御部との間の最大長さを表記しなけ
ればならない。ケーブルが長くなると,電磁的じょう(擾)乱に対して敏感になる。

6.17 熱陰極(フィラメント)の交換

  熱陰極(フィラメント)が交換可能かどうか(例えば,裸測定子)を記載しなければならない。

6.18 圧力セットポイント

  他の機器を制御するためのセットポイントがあるかを記載したほうがよい。
注記 セットポイントの範囲が頻繁に切り替わる場合,安定状態になるまで非常に長い時間を要する
場合がある。

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6.19 保護動作圧力

  圧力が測定範囲を超えたときの真空計の動作停止圧力を記載する。

6.20 切替え圧力

  複合真空計の場合,電離真空計からほかの真空計への間の切替え圧力点を示さなければならない(圧力
が上昇する場合及び下降する場合)。

7 熱陰極電離真空計の仕様を表す項目(任意)

7.0A 一般

  この箇条で規定する項目は,必ずしも製造業者によって示されるものではない。しかし,熱陰極電離真
空計を用いた信頼性のある圧力測定を行うためには,製造業者は経済的・技術的に可能な範囲で情報を収
集・公開し,使用者はこれらの項目を考慮して使用することが望ましい。

7.1 繰返し性及び再現性(長期安定性)

  繰返し性及び再現性(長期安定性)は,ある一定期間の値(例えば,1時間,2週間,1か月,1年など)
として,読み値又はフルスケールの百分率で表す。それらの測定は,純粋な気体を用いて,安定で再現可
能な圧力で,真空計は,通常の動作条件で動作した状態で測定する。典型的な値は,製造業者によって示
される場合がある。できるだけ,製造業者はそれらの情報を主要顧客から,新しい顧客のために取り寄せ
るように努力する。
注記 特に,繰返し性及び再現性(長期安定性)は,使用者と使用条件とによって大きく左右される。

7.2 表示範囲

  真空計が表示可能な全ての圧力範囲とする。
注記 6.3の記載事項から,測定圧力範囲は表示範囲と同じか,又はせまい場合がある。

7.3 測定子の材料

  (ISO 27894:2009で規定されていた項目であるが,熱陰極電離真空計の構成部品の材料は,カタログや
マニュアル,技術説明書に記載されていることが一般的であることから,この規格では,6.7に規定した。)

7.4 脱ガス法

  多くの真空計は,正確な圧力測定のために,測定子の外囲器及び電極の汚染を取り除く脱ガスが行われ
る。例えば,電子衝撃,通電加熱などの脱ガス法について表記する。脱ガス時間は,真空計の制御部によ
って設定可能である場合もある。脱ガス終了後に測定状態に自動的に戻る制御部もある。脱ガス時間及び
“脱ガス後に自動的に測定状態に戻る。”などを記載する。測定子の損傷を防ぐために,脱ガス時の最高圧
力を記載する。

7.5 脱ガス電力

  脱ガス電力(例えば,電圧及び電流)を表記する。脱ガス電力が調整可能な場合もある。

7.6 窒素以外の気体に対する比感度係数

  様々な気体に対する比感度係数又は相対補正係数が,表及びグラフ(圧力依存性があるならば)で示さ
れる場合がある。

7.7 窒素に対する典型的な感度係数

  可能であれば,窒素に対する感度係数の典型的な値を示す。感度係数は,測定子の電極の幾何学的配置
に依存する。式(1)に示すようにPa−1で表す。
注記 一体形の場合,圧力表示値は電気信号によって出力される。しかし,感度に関する情報は出力
されない場合が多い。

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7.8 内部容積

  3.2.9に定義した容積を表記する。内部容積は,JIS Z 8750に規定する真空計校正容器の全容積を見積る
ために必要である。

7.9 保存及び搬送条件

  製造業者は,真空計の損傷及び障害を防ぐため,推奨する保存及び搬送条件を記載する。記載内容は,
例えば,保持された空間の気体種(乾燥窒素,乾燥空気など),清浄度,温度,相対湿度,振動,衝撃など
である。

7.10 写真及び図

  詳細及び外観を明らかにするため,測定子,制御部の前面及び背面パネル(コネクタ側)の写真及び図
を示す。

7.11 記録及び校正証明書

  製品受け渡し時に,検査記録を真空計に添付する。これは,使用者の真空計の読み値とその不確かさに
対する当初の信頼性を向上させる。真空に関する国家計量標準に対して,校正結果がトレーサブルである
ことが明示されれば,その後の使用時の読み値とその不確かさの信頼性を保証する上で望ましい。
注記 上記のトレーサビリティを確保する方法の一つとして,我が国計量法に基づく計量標準供給制
度(JCSS : Japan Calibration Service System)が運営されている。この制度に従って登録された
校正事業者が,その標章(JCSSロゴマーク)とともに発行する校正証明書は,トレーサビリテ
ィを確保することに使用することができる。校正体系図だけでは国家標準に対してトレーサブ
ルであることの証明にならない。

8 熱陰極電離真空計における測定の不確かさの要因

8.0A 一般

  この箇条は,熱陰極電離真空計を使用した圧力測定を行う場合に,不確かさの要因として挙げられる項
目を示す。熱陰極電離真空計を使用する場合には,経済的・技術的に可能な範囲でこれらの項目を考慮し
て使用することが望ましい。
なお,電離真空計の使用上の注意点を参考として附属書Cに示す。

8.1 電子電流

  全イオン電流は,式(1)及び式(2)で表すように,電子電流の影響を受ける。電子電流の不安定性[3]及びそ
の密度分布[4]は,不確かさの評価のときに考慮しなければならない。感度係数は,電子電流の大きさに依
存する場合があることにも言及する。電子電流を自動制御する形態の真空計は,低圧側と高圧側とで感度
係数が異なる場合がある。
注記 現在の真空計又は制御部は,圧力を計算するときに適切な電子電流値が使用される。これらの
場合,電子電流の影響を独自に見積ることはできない。

8.2 残留電流

  エックス線効果,逆エックス線効果及び電子励起脱離効果は,残留電流の主たる原因であり,電極表面
の状態に強く依存する。電極間の漏れ電流は,測定子の電流導入端子表面の汚染によって発生する。ガス
放出によって測定子中の圧力が大きく上昇する。超高真空(UHV)及び極高真空(XHV)における圧力測
定(<10−8 Pa)では,適正な脱ガス過程が必要である。
残留電流は,真空系及び真空計の使用履歴によって変化する。超高真空及び極高真空における圧力測定
を行う場合には,その測定がたとえ難しくても,実際の超高真空及び極高真空の測定の前に残留電流の大

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きさを見積る必要がある。残留電流は,低い圧力の測定を行うときに不確かさの大きな要因となる。

8.3 信号出力の分解能

  信号出力の分解能は,小さな圧力の変化に対して有意に識別可能な,最も小さな出力信号の読み値の差
である。
注記 アナログ表示器の場合で特に対数表示の場合,分解能を見積るのは難しい場合もある。

8.4 信号出力のばらつき及び繰返し再現性

  イオン電流の出力のばらつき及び繰返し性は,不確かさ評価のときに考慮しなければならない。一定の
圧力下において,繰り返して観測することで測定することができる。

8.5 感度係数の非直線性

  式(2)における感度係数は,高い圧力で大きく変わる場合がある。また,低圧においても同様の場合があ
る。感度係数の圧力依存性は,陽極電位,電子電流,気体種などによって影響される。

8.6 環境条件

  熱陰極電離真空計の読み値は,正確には,イオン電流は気体の密度に比例し,圧力に比例するわけでは
ない。電離真空計のイオン電流は,温度,風,磁場,電場,イオン化のときの放射などの環境に影響され
る。校正のときとの温度の違いを,圧力の評価のときに補正しなければならない([5],[6])。風の流れな
どによる測定子の温度変化による感度の違いを考慮しなければならない。
電磁場によって電子及び生成されたイオンの軌道が影響を受けるので,これらからは保護しなければな
らない。
予期できないイオン化が生じるような光,エックス線などの放射から保護しなければならない。
温度の影響による真空計からのガス放出を考慮しなければならない。

8.7 使用前の点検及び洗浄

  測定子の電極及び熱陰極(フィラメント)は,プロセスガスの堆積によって汚染される場合がある。熱
陰極上への堆積によって,陰極からの電子放出特性が大きく変化し,陰極が修復不可能なほど損傷する場
合がある。例として,細いイオンコレクタの線は,酸素で汚染された混合気体への暴露履歴によって溶解
することが観察された。そのようなプロセスでは,熱陰極電離真空計は限られた期限でだけ正しい測定が
可能である。正しい圧力読み値が必要であれば,真空計はこのようなプロセスガスから可能な限り保護し
なければならないし,及び/又は洗浄するか若しくは頻繁に交換しなければならない。測定子の洗浄によ
って感度は変化するし,感度の異なる測定子へ交換することで圧力の読み値が異なる。
フランジのごみ又は汚染を除去し(洗浄し)なければならない。測定子中の圧力は,ごみ又は汚染物に
よるガス放出の影響を強く受ける。
校正前の目視検査は,非常に重要である。

8.8 搬送による安定性を含んだ再現性(長期安定性)

  電離真空計の電極は,変形しやすい。電極表面は,環境条件によって変化する。再現性(長期安定性)
及び搬送による安定性は,定量的な測定のときに考慮しなければならない。特別に取り扱われた表面であ
り,清浄な状況でだけ使用され,真空中に保持され,慎重に運搬されたといった特別な環境で取り扱われ
た真空計だけ,再現性(長期安定性)として1 %以下が得られる(読み値又は感度の相対標準不確かさ)。
清浄な状況及び慎重に搬送された最上級の商用真空計で2 %5 %が見込まれる。通常の真空計で通常の品
質のものであると,再現性(長期安定性)は10 %15 %,更に粗雑な状況で使用したものに関しては,30 %
50 %又はそれ以上であることが実情である([7][13])。

――――― [JIS Z 8129 pdf 15] ―――――

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JIS Z 8129:2014の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 27894:2009(MOD)

JIS Z 8129:2014の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8129:2014の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称