JIS Z 8831-3:2010 粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性―第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法 | ページ 4

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Z 8831-3 : 2010 (ISO 15901-3 : 2007)
と類似の形になり,同じ手順で比表面積及びミクロ細孔容積が計算できる。

9.4 ホルバス・カワゾエ(HK)法及びサイトウ・フォリー(SF)法によるミクロ細孔径分布の解析

  ホルバス及びカワゾエ(参考文献[19],[20]参照)は,ミクロ細孔性材料に対する窒素吸着等温線から有
効細孔径分布を計算するための半経験的な解析法を提案している。もともとのHK法は,エベレット及び
ポール(Everett and Powl)の研究(参考文献[8]参照)に基づいており,分子ふるい炭素及び活性炭に見ら
れるスリット細孔に閉じ込められた流体(窒素)を考慮に入れている。エベレット及びポールは,グラフ
ァイト化された炭素の2層間のスリットに吸着した希ガス原子に対するポテンシャル・エネルギーを計算
した。2層の原子間距離をlとする。吸着した流体は,平均ポテンシャル場によって影響されるバルクの
液体であると考えられ,平均ポテンシャル場は吸着材と吸着質との間の相互作用を示す。用語“平均場”
は,強い空間依存を示す吸着質分子と吸着材との間のポテンシャル相互作用が平均的で均一なポテンシャ
ル場によって置き換えられることを示す。ホルバス及びカワゾエは,熱力学の論拠を用い,有効細孔径を
dp=l−ds(ここでdsは,吸着材分子の直径)とすることで,平均ポテンシャルが,充てん圧力p/p0と有効
細孔径との関係[式(13)で示される]をもたらす吸着の自由エネルギー変化と関係付けられることを見い
だした。
p NA Ns KAs Na KAa
ln 4 fHK l d0
,, (13)
p0 RT l 2d0
ここに,
4 10 4 10
fHK ,,
l d0 3 9 3 (14)
3l d0 9l d0 3 d0 9 d0
パラメータd0, KAs及びKAaは,式(15)式(18)によって計算する。
da ds
d0 (15)
2
1
2 6
d0 (16)
5
2
6me c s
* a
KAs (17)
s* a
s a
3
KAa me c2 a a (18)
2
式(13)は,細孔径及び形状に対するミクロ細孔フィリングが特有の相対圧で起こることを示している。
この特有の相対圧は,吸着材と吸着質との相互作用エネルギーと直接に関係する。
サイトウ及びフォリーは,ゼオライトの87 Kでのアルゴン吸着等温線に対する有効細孔径分布の解析に
HK法を拡張した(参考文献[21],[22]参照)。SF法もエベレット及びポールのポテンシャル式(参考文献
[8]参照)を基礎とするが,シリンダ型細孔形状に対するものである。HK法を誘導した論法に従い,サイ
トウ及びフォリーは,ミクロ細孔フィリングが起こる相対圧p/p0と有効細孔直径dpとを関連付けるHK式
に類似した式(19)を導き出した。
p 3 π NANs KAs Na KAa
ln 4 fSF , l d0
,, (19)
p0 4 RT d0
ここに,

――――― [JIS Z 8831-3 pdf 16] ―――――

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2k 10 4
1 2d0 21 2d0 2d0
fSF , l d0
,, 1 k k (20)
k 0
1 k l 32 l l
パラメータKAs及びKAaは,式(17)及び式(18)によって計算する。パラメータαk及び 戀 式(21)及び式
(22)で定義する。
2
5.4 k
k k 1 (21)
k
2
5.1 k
k k 1 (22)
k
ここに,愀 戀 1である。
HK法及びSF法の計算を行うために,吸着質パラメータ 愀懿 懿 da及びNaと同様に,吸着材パラメータ
愀 ds,Nsの値が必要である。計算結果は,これらの定数の選択に対して非常に敏感である。窒素/
カーボン(窒素を吸着質,カーボンを吸着材とした系)及びアルゴン/ゼオライトの組合せに対する材料
パラメータは,附属書Aによる[DIN 66135-4(参考文献[23]参照)による]。

9.5 非局所密度はん(汎)関数理論(NLDFT)によるミクロ孔細孔分布の解析

9.5.1  背景
非局所密度はん(汎)関数理論(NLDFT),分子動力学及びモンテカルロシミュレーションのようなコ
ンピュータシミュレーション方法は,吸着及び多孔質内に閉じ込められた不均質な流体の挙動を記述する
ための強力な手段として開発された(参考文献[24][32]参照)。これらの方法は,固体壁の近傍で振動す
る密度関数(プロファイル),又はスリット,シリンダ若しくは球状のような単純な幾何学構造内に閉じ込
められた流体の挙動を正確に記述する。それらは,表面及び細孔に吸着した流体の平衡密度プロファイル
の計算を可能とし,それによって吸脱着等温線,吸着熱及び他の熱力学量が導かれる。吸着及び細孔内の
流体の相挙動を研究するための,コンピュータシミュレーションによる密度はん(汎)関数理論(DFT)
及び分子モデリングの応用に関する先駆的な研究は,エバンス及びタラゾナ(Evans and Tarazona)(参考
文献[24]参照)によって行われた。シートン(Seaton)ら(参考文献[25]参照)は,メソ細孔及びミクロ細
孔の両領域で細孔径分布の計算のためにDFTを最初に適用した。細孔径分析にDFTを応用するこの最初
の試みでは,いわゆる局所バージョンのDFTが使われた。それは,細孔フィリングの巨視的,熱力学的記
述に関して顕著な改良をもたらしているが,狭いミクロ細孔に対しては不正確である。正確さにおける顕
著な改良がNLDFTを用いて得られた。その最初の報告は,ミクロ細孔性炭素の細孔径解析に関するもの
であり,1993年にラストスキ(Lastoskie)ら(参考文献[26]参照)によってなされた。そのときから,NLDFT
がミクロ及びメソ多孔体の細孔径解析のためにしばしば応用されてきた(参考文献[27],[28]参照)。NLDFT
法は,現在では多くの吸着材/吸着質系に対して市販品として提供されている。古典的で巨視的な熱力学
モデルと比較して,NLDFT法は分子レベルで細孔内に閉じ込められた流体の挙動を記述する。このアプリ
ケーションは,ガスの分子特性と異なった細孔径内での吸着特性とを関連付ける。そして,NLDFT法に基
づいた細孔径評価法は,ミクロ細孔及びメソ細孔の全領域に適用可能となる(参考文献[26],[28]参照)。
9.5.2 非局所密度はん(汎)関数理論(NLDFT)の概要
実験中では,細孔内の吸着流体はバルクガス相と平衡であり,したがって,一般的なNLDFTはグラン
ドカノニカルアンサンブルの系で表現することができる。グランドカノニカルポテンシャル関数圀寰 r) ]は,
式(23)で表される。

――――― [JIS Z 8831-3 pdf 17] ―――――

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r F r dr r r
ext (23)
ここに, r) : 一般的な三次元配位子rでの平衡流体密度
F : 固有ヘルムホルツ自由エネルギーであり,外
場のない場合,それは平衡状態でのガスの分
子密度 r)の関数F[ r) ]で表される。
νext(r) : 壁によって与えられた外部ポテンシャル
化学ポテンシャル
外部ポテンシャルνext(r)は,仮定される細孔モデルに依存する。
例えば,炭素材料(カーボン)の細孔を表現するためにしばしば用いられるスリット型細孔モデルに対
して,このポテンシャルは外部ポテンシャルνext(z)を計算するために,式(24)の形となる。
ext z sf z sf W (24)
ここに, φsf(z) : 分子と細孔壁間の固体−流体相互作用ポテ
ンシャル
W : 細孔径
z : 壁からの距離
多孔性の炭素材料(ポーラスカーボン)に対して一般的に受け入れられている固体−流体間ポテンシャ
ルは,スティール(Steele)のポテンシャル(参考文献[26]参照)であり,それは1枚のグラファイト層と
ガス分子との相互作用であり,式(25)で示される。
10 4 4
z 2π 52 sf sf sf

(pdf 一覧ページ番号 )

                         sf       sfs sf                             3
z z 3 z .061
ここに, εsf : ガス−壁面間のレナード・ジョーンズポテン
シャルパラメータ
σsf : ガス−壁面間相互作用の距離パラメータ
ρs : グラファイトの密度
Δ : グラファイト層間距離
シリンダ(参考文献[33]参照)及び球状(参考文献[34]参照)を含む他の細孔形状並びにそれらの適切な
ポテンシャルも検討されている。それらは,幾つかのメソ細孔性分子ふるいシリカ(例えば,MCM-41,
SBA-16)にも適用可能である。
固有ヘルムホルツ自由エネルギーFは,三つの成分からなる。
a) 理想気体の自由エネルギーFid : 厳密な表現で与えられる(参考文献[24]参照)。
b) 過剰自由エネルギーFex : これは二つのタイプの分子間相互作用を考慮している。
− Fatt : 引力からくる自由エネルギー
− FHS : 剛体球の標準系として記述される分子間の反発力
自由エネルギーFの三つの成分は,流体密度分布の関数であり,式(26)で示される。
r :F r Fid r Fatt r FHS r (26)
引力相互作用項Fattは,式(27)によって計算する。
Fatt1 drdr r r r r (27)
att
2
ここで,φattは引力ポテンシャルであり,ウィークス・チャンドラー・アンダーソン(Weeks-Chandler-
Anderson,WCA)の方法(参考文献[25]参照)でモデル化され,rsc対して式(29)で,それぞれ求める。

――――― [JIS Z 8831-3 pdf 18] ―――――

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rsc
att ff (28)
12 6
ff ff
rsc
att 4 ff (29)
rsc rsc
ここに, rsc : 分子間の距離(スカラー量)
rm : 最小ポテンシャル
εff : レナード・ジョーンズ流体−流体間相互作
用ポテンシャル
σff : レナード・ジョーンズ流体−流体間相互作
用ポテンシャルの距離パラメータ
WCAの方法は,モンテカルロシミュレーション(参考文献[28]参照)と比較して,良い結果を与えるこ
とが証明されている。
反発力を計算に入れるため,不均一剛体球流体に対する幾つかの関数が開発された。この中には,加重
密度近似(参考文献[29]参照),基本的な測定理論(参考文献[30],[31]参照),及び平滑化した密度近似(参
考文献[23]参照)がある。タラゾナら(参考文献[24]参照)によって提案された平滑化した密度近似は,現
在,細孔解析に用いられているほとんどのNLDFT解析に使用されている。この手法では,剛体球システ
ムの自由エネルギーFHS[ r) ]が平滑化した密度
(r) に対して計算され,式(30)で与えられる。
FHS r dr r fHS r ;dHS (30)
ここに, dHS : 剛体球直径
fHS : 1分子当たりの過剰自由エネルギー(剛体
r ;dHS
球流体に対するカーナハン・スターリング
(Carnahan-Starling)の状態方程式(参考
文献[24],[28]参照)で計算できる。
平滑化した密度 (r) は,タラゾナ(参考文献[24]参照)によって提案された重み関数を用いることによ
って得られる。
分子密度分布 r)は,与えられた細孔モデルでの平衡流体分布の重要な説明となる。平衡状態を基礎と
した密度関数 r)は,相当するグランドポテンシャル圀 寰 r) ]を最小化することによって決定される。Ωの
最小値は,オイラー・ラグランジェ(Euler-Lagrange)式(参考文献[24]参照)又は不確定ラグランジェ
(Lagrange)乗数法(参考文献[32]参照)を使用することによって計算される。 r)の実際の数値は,反復
計算によって求める。一度 r)が決定されると,ほかの熱力学的特性である吸着等温線,吸着熱,自由エ
ネルギー,相変化などが計算できる。
9.5.3 細孔径解析への応用−NLDFTのカーネル及び積分吸着式
実験で得た吸着等温線から細孔径分布を計算するときにこの理論を適用するためには,理論モデル等温
線を統計力学的手法によって計算しなければならない。実際には,これらの等温線は,モデル細孔内流体
の平衡密度プロファイル r)の積分によって計算する。ある吸着質において,与えられた範囲内の分割さ
れた細孔径に対して個々に計算された等温線は,モデルデータベースとなる。カーネルと呼ぶこのような
等温線のセットは,与えられた吸着系に対する理論的な参照等温線とみなすことができ,対応する系に対
し測定した吸着等温線からの細孔径分布の計算に使用することができる。
仮定した幾何学的細孔モデル,ガス−ガス間とガス−固体間との相互作用パラメータの値,及びモデル
で用いた仮定などの幾つかの因子が,カーネルの数値に影響することを理解することが重要である。その

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モデルが流体のバルク性質(例えば,バルク液体−ガス平衡密度及び平衡圧力,液体−ガス界面張力)を
正しく再現するように相互作用パラメータ(液体−液体間及び液体−固体間)を調整することが一般的に
行われる。表面張力の正確な予測は,細孔内の毛管凝縮及び脱着(脱離)の定量的記述に使用するいかな
るモデルに対しても必要な条件である。固体−液体間ポテンシャルのパラメータは,特性が明確であり,
かつ,非多孔性(無孔性)の吸着材の標準吸着等温線にフィットするように決定する。
幾つかの吸着モデルが研究され,種々の材料のガス吸着に対してパラメータが計算され,文献として発
表されている。例えば,窒素/炭素材料,二酸化炭素/炭素材料及びアルゴン/炭素材料の系のガス−ガ
ス間及びガス−固体間相互作用パラメータは,参考文献[26],[28],[35],[36]に記載されている。窒素/
シリカ及びアルゴン/シリカの系に対する適切なパラメータは,参考文献[28],[37]に記載されている。幾
つかの吸着系のDFT解析に使用するパラメータの参考文献は,表B.1及び表B.2に記載する。
細孔径分布の計算は,積分吸着式(integral adsorption equation,IAE)の解を求めることであり,それは
理論吸脱着等温線のカーネルを実験吸着等温線と関係付けることである(参考文献[4]参照)。実験吸着等
温線からの吸着量データN(p/p0)は,式(31)で示されるIAE式から求める。
W Wmax
N( p/p0 ) (31)
N( p/p0 , W) (Wd) W
min
ここに, W : 細孔径(スリット型細孔の壁間距離,又は
シリンダ型及び球状型細孔の直径)
N(p/p0, W) : 異なる細孔径に対する理論等温線カーネル
f(W) : 細孔径分布関数
独立した個々の細孔径に相当する等温線に,その細孔径の相対分布f(W)を乗じたものを,該当する細孔
径範囲にわたって加え合わせることで,全等温線が構成されるという仮定をIAE式は反映している。与え
られた系(吸着質/吸着材)におけるN(p/p0,W)等温線(つまり,カーネル)のセットは,密度はん(汎)
関数法又はモンテカルロシミュレーションによって与えられ,細孔径分布はIAE式を数値的に解くことに
よって求められる。一般的にIAEは,一意的に解が得られないという“不良設定問題”(ill-posed problem)
を抱え,ある程度の正則化(規則化)が必要である。正則化アルゴリズム(参考文献[38][40]参照)によ
って,意味のある安定した解が得られる。計算の妥当性を確認するために,計算されたNLDFT等温線(フ
ィッティング等温線)を実験吸着等温線と比較する。

10 試験結果報告

  次に示すように,測定条件及び計算に用いた定数のまとめを個々の結果に対して提供することが望まし
い。
a) 測定機関,測定者及び日付
b) 試料性状(例えば,化学組成,純度,粒子径分布,サンプリング方法,試料縮分など)
c) 試料の入手先
d) 脱ガス後の試料質量(g)
e) 測定方法及び使用装置
f) 試料の前処理
g) 脱ガス条件 : 温度及び真空排気圧力
h) 装置及び構成要素の校正で得た定数
i) 細孔径及び表面積解析に用いたモデル/方法

――――― [JIS Z 8831-3 pdf 20] ―――――

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