53
A 3306 : 2020
N.2.3 木造
木材は,単位重量当たりでは大きな強度をもっている。木造は,多くの場合,接合部に鋼製の金物(釘,
ねじくぎ及びボルト)を用い,ある程度のじん(靱)性をもつ。この低比重及びじん(靱)性のある接合
部の組合せによって,木造は耐震構造に非常に適している。しかしながら,(壁及び屋根を含む)重い外装
材を木造の柱及びはり(梁)のフレームに取り付けると,大きな水平力を負うことになり,構造耐力を超
える荷重がそのフレームにかかり得る。小さい木造フレームの部材が,床,屋根及び壁のような様々な材
料の面材をくぎ打ちによって一体化することで,耐震性能が大いに向上している。ノンエンジニアド構造
の場合に,こうした耐震壁又はブレースの機能をもつ部材の必要量を示すという簡易な規定は,有効であ
ることが実証されている。したがって,木材が再生可能な資源として豊富に存在している地域では,ノン
エンジニアドの木造は適切な工法である。
N.2.4 土質構造物
壁が,基本的な構造部材であり,区分としては次のとおりである。
a) アドベ又はブロック。
b) タピアル又は版築(突き固めた土)。
c) 泥壁付の木材又はしの(篠)竹のフレーム。
この材料は,コスト,外観,遮音,断熱及びエネルギー消費が少ないというメリットをもっているが,
地震力に弱い,水の影響に弱いなどという弱点をもつ。しかしながら,これまでの技術の発展によって,
こうした弱点は軽減されている。土を用いた構造物は,多くの場合,自力で建設され,これまでの経験に
よると,この適切な用い方についての知識を普及することが大変困難である。
N.3 構造健全性(構造ロバスト性)を向上させる可能性のある方策
N.3.1 一般
ノンエンジニアド構造物に特有のぜい(脆)弱性を防ぐための方法の事例は,次のとおりである。通常
の建設方法の場合からの増額が最小となるようにすることが,どの方法でも重要である。
N.3.2 材料及び部材の改善
土質材料についての安定剤(セメント,石灰,アスファルトなど)の使用による強度及び耐久性の改善,
コンクリートブロックの場合のセメントの配合比の増大及び養生の改善,れんがの場合の焼成温度向上の
ための炉の改善が実践的な方法である。
N.3.3 部材間の接合
隅角部での組積壁の分離並びに枠組み(組積造)のRC部材間[柱及びはり(梁)]及び木造フレーム[柱,
はり(梁),筋かいなど]の接合部の破壊は,深刻な構造的弱点の典型例である。こうした破壊を防ぐ接合
部の補強が必要である。
N.3.4 追加的な補強材
極めてぜい(脆)弱な部分及び部材については,追加的な補強が効果的である。例えば,組積造の妻壁
上部の補強又は支持,組積壁の(開口部の)まぐさ又は下端材,れんが又はアドベ壁内部の補強,壁面へ
のメッシュ入り塗り壁などである。
――――― [JIS A 3306 pdf 56] ―――――
54
A 3306 : 2020
附属書O
(参考)
津波作用
O.1 一般
津波によって被害が発生するのは,一般に,モーメントマグニチュードMw 7.5超の海溝型大地震で,海
底に大きな鉛直変位をもたらす場合である。津波は一度発生すると何度も海岸地域を浸水させることがあ
る。また,津波は長い波長をもち非常に減衰しにくいため,津波が大洋を渡って長距離を伝ぱ(播)して
も,そのエネルギーを維持し,特に都合の悪い海岸形状の地域にかなり大きな被害を及ぼすこともある。
津波は,海底,湖底の地滑り,山体崩壊などでも発生することがある。津波災害想定地域で地上にあり,
津波に対して耐えることが要求される構造物は,津波作用に対して設計されることが望ましい。
O.2 津波作用の計算原則
構造物への津波作用は,津波波力と漂流物との衝突である。
構造物に作用する津波波力(図O.1参照)は,水平方向と鉛直方向との静水圧力Fs又は動水圧力FDと
して,確率統計的手法によって求めた建設場所での設計用浸水深h及び設計用流速vから算定することが
可能である。例えば,水平方向の静水圧qzは,式(O.1)のように計算している。
qz=ρg(ah−z) (O.1)
ここに, g : 重力加速度(m/s2)
ρ : 海水の密度(kg/m3)
a : 水深係数
h : 設計用浸水深(m)
z : 構造物での参照レベルの高さ(m)
水深係数aは,海岸線からの距離に依存し,1.5から3.0までの範囲を与える。静水圧力Fs(N)は構造
物の幅を乗じて,高さ方向に静水圧qzを積分することで求めるとされている。
水平方向の動水圧力FD(N)は,式(O.2)のように計算している。
FD=21ρCDv2hB (O.2)
ここに, CD : 抗力係数
ρ : 海水の密度(kg/m3)
v : 設計用流速(m/s)
h : 設計用浸水深(m)
B : 構造物の幅(m)
――――― [JIS A 3306 pdf 57] ―――――
55
A 3306 : 2020
記号
1 構造物
2 津波の方向
3 水平方向の静水圧力
4 鉛直方向の静水圧力(浮力)
a 水深係数
h 設計用浸水深(m)
z 構造物での参照レベルの高さ(m)
qz 静水圧
ρ 海水密度(kg/m3)
g 重力加速度(m/s2)
図O.1−構造物に作用する津波波力
津波波力は抗力として計算するほか,構造物の壁又は構造物自体の両面に作用する津波波圧の差からも
計算することが可能である。
津波氾濫流は,樹木,コンテナ,車両,列車,船舶,住家,材木,家具など様々な漂流物を運んでくる。
構造物は,漂流物の衝突による進行的な崩壊を避けるように設計することが望ましい。
構造物の開口部(窓,扉,ピロティなど)は津波作用時に破壊されることから,津波波圧が構造物の開
口部には作用しないとみなし,構造物に作用する津波波力を低減することが可能である。しかし,開口部
の窓ガラスには窓ガラスの耐力に等しい津波波力が作用すること,構造物の内壁及び背面の外壁にも津波
波力が作用することも考慮する。
津波の入射方向は,想定される全方向を考慮することが望ましい。津波の引き波も押し波と同様に考慮
することが望ましい。
海水は非圧縮流体とみなし,海水の密度ρは1.0×103 kg/m3と考えてよいとされている。ただし,海水
に泥,砂,その他の漂流物などが含まれている場合は,海水の密度を適切に決めることが望ましい。
その他,地震,液状化,基礎まわりの洗掘,漂流物のせき止めなどによる被害についても考慮する。
――――― [JIS A 3306 pdf 58] ―――――
56
A 3306 : 2020
附属書P
(参考)
擬似地震動の扱い
耐震設計及び建設に関するテクニックは,構造物が地震以外の地動を受ける場合にも有用である。その
ような作用をこの規格では,擬似地震動の影響と呼んでいる。擬似地震動の影響の震動源は,次のように
分類している。
− 地下での爆発
− 鉱山,誘発地震(岩はね・山はね)からの衝撃
− 地上での爆発(例えば,採石場)
− 地上での打撃及び衝撃(例えば,くい打ち)
− (地表の自動車道路,街路,鉄道線路,地下の鉄道線路から)地盤を通して構造物へ伝わる交通振動
− 産業活動及び機械などのような,その他の震動源
擬似地震動を見積もる式(1)及び式(2)又は式(3)及び式(4)の使い方の指針は,次のとおりである。
− 擬似地震動の危険度の地域係数kZは,具体的事例におけるモニタリング又は直接計測から個別に得ら
れ,擬似地震動危険度地域図から定めることが可能である。
− 地動強さの代表値kE,u,kE,sも具体的事例におけるモニタリング又は直接計測から得られる。地震に比
べ,一般に再現期間は非常に短いという事実に留意することが望ましい。
− 設計用外力を低減する構造設計係数kDは,例外的なケースだけ容認できるが,その値は0.5未満とし
ないほうがよい。
− 規準化設計用応答スペクトルkRは,耐震設計で使われるものとは幾分異なる形状に通常,調整されな
ければならないだろう。
個別の応答スペクトルは,例えば,鉱山からの微小な揺れのように,擬似地震動の最強地表面記録を集
めたものに基づいて設定することが望ましい。擬似地震動の効果は高い振動数(しばしば10 Hz40 Hz)
に移動する可能性があるので,強度の計測のときには,強度の過大評価となるので加速度ピーク値を直接
計測することは避けることが望ましい。水平粒子速度のピーク値は,擬似地震動効果の定量強度について
の最善のパラメータである。特に近接した衝撃震動源については,水平方向及び鉛直方向の多成分は,多
くのケースで同時に考慮されることが望ましい。正確なデータが得られない場合は,式(E.2)を使うことが
可能である。
参考文献
ISO 13033,Bases for design of structures−Loads, forces and other actions−Seismic actions on nonstructural
components for building applications
ISO 23469,Bases for design of structures−Seismic actions for designing geotechnical works
――――― [JIS A 3306 pdf 59] ―――――
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS A 3306:2020 建築構造物の設計の基本−構造物への地震作用 ISO 3010:2017,Bases for design of structures−Seismic actions on structures
(I) JISの規定 (II) (III)国際規格の規定 (V) JISと国際規格との技術的差
(IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
国際 の評価及びその内容 異の理由及び今後の対策
規格
箇条番号 内容 箇条 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
番号
及び題名 番号 の評価
2 引用規格 ISO 2394に対応するJIS 2 ISO 13033を引用規格と変更 ISO 3010が主,ISO 13033が従の関今後の国際規格の定期更新にて,
A 3305を引用規格とし, する。 係であることから,ISO規格の誤記修正を提案する。
ISO 13033及びISO であると判断できるため。
23469を参考文献とする。
7 地震作用 7.2.1 一般 7.2 JISと同じ。 一致 −
の評価の原 新しい箇条を設けて記
則 載。これに伴い,箇条番
号を変更。
H.3 応答時 H.3.3.1 一般 H.3 JISと同じ。 一致 −
刻歴解析 新しい箇条を設けて記
載。これに伴い,箇条番
号を変更。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価 : ISO 3010:2017,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 一致 技術的差異がない。
− 変更 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
A3
− MOD 国際規格を修正している。
306 : 2
0 20
3
JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3010:2017(MOD)
JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則