JIS A 3306:2020 建築構造物の設計の基本―構造物への地震作用 | ページ 11

48
A 3306 : 2020
附属書M
(参考)
応答制御システム
近年,免震構造を含む応答制御システムが,例えば,建築物,道路橋,発電施設,LNGタンクなどのよ
うな種々の構造物に徐々に用いられるようになってきている。応答制御システムは,新築の構造物だけで
なく,既存構造物の性能改修のためにも利用される。収容物を支持する床を免震化して構造物内にある収
容物を守る応答制御システムも幾つかある。
応答制御システムは,図M.1に示すように分類し,図M.2に示すような幾つかの例がある。アクティブ
(又は部分的にアクティブを用いたセミアクティブ)な制御システム以外のシステム全ては,パッシブな
制御システムに分類することが可能である。免震構造は,通常基礎と構造物との間に設置するアイソレー
タ及びダンパーによって,構造物の応答を低減するものである。アイソレータは構造物の固有周期を長く
し,ダンパーは減衰を増加させることによって,図M.3に示すように,加速度応答を低減するが,アイソ
レータを設置した層には大きな相対変位が生じる。
構造物に取り付けるエネルギー吸収装置及び付加質量も応答を制御するために用いる。図M.4 a)に示す
ように,応答制御のない構造物については,地震時の構造物への入力エネルギーは,構造物の粘性減衰,
構造物の履歴エネルギー及び地盤への逸散減衰に分配される。図M.4 b)に示すように,応答制御のある構
造物については,制震ダンパーが多量のエネルギーを吸収し,構造部材の損傷による履歴エネルギーを効
果的に低減することが可能である。
エネルギー吸収デバイスは,パッシブ制御ダンパーの塑性変形又は粘性抵抗によって構造物の減衰を増
加させている。付加質量又は液体の振動によっても構造物の応答が低減する。アクティブ応答制御システ
ムは,コンピュータ制御を用いて地震及び風が引き起こす構造物の応答を低減している。
応答制御システムは,床応答及び層間変形を低減するために用いている。床応答の低減は,地震安全性
の確保,居住性の向上,心理的不安の緩和,家具の転倒防止などに寄与することが可能である。層間変形
の低減は,使用建設資材総量の低減,非構造要素の被害の低減,設計の自由度の増加などに寄与すること
が可能である。
これらのシステムの設計には,アイソレータ又は履歴ダンパー,例えば,摩擦ダンパー及び液体ダンパ
ーのような付加的デバイスの力学的特性を考慮することが望ましい。また,デバイスの復元力特性が構造
物の特性に大きく影響するので,これらのシステムには動的解析を適用することが望ましいとされている。
新しく開発された材料の解析モデルは実験によって検証することが望ましい。地震応答制御システム(特
に免震システム)に対しては,地震荷重に加えて,応答制御システムが非線形挙動を示さない限界値が設
計用風荷重より大きいことを確認するために,構造設計時に風荷重も考慮する必要がある。
これらのシステムは,環境による影響を受けることがあるので,経年,クリープ,疲労,温度,水分へ
の暴露などの影響を考慮する必要がある。

――――― [JIS A 3306 pdf 51] ―――――

                                                                                             49
A 3306 : 2020
積層ゴム支承
免震支承 すべり支承
転がり支承
免震構造
オイルダンパー
ダンパー 鉛ダンパー
鋼材ダンパー
座屈拘束部レース
鋼材ダンパー
履歴
せん断パネル
ダンパー
摩擦ダンパー
エネルギー
パッシブ制御 オイルダンパー
吸収型
粘性
粘性壁
ダンパー
粘弾性ダンパー
質量とばね型
応答 振り子型
同調型質量
制御 付加質量型
ダンパー
液体の揺動型
回転慣性質量ダンパー
アクティブマスダンパー
付加質量型
アクティブ/ ハイブリッドマスダンパー
セミアクティブ
制御 オイルダンパー(オンオフ制御)
エネルギー
吸収型
磁性流体(MR)ダンパー
図M.1−応答制御システムの分類
注記 ISO 3010に誤記があるため,オイルダンパーは粘性ダンパーの下位に移動し,回転慣性質量ダ
ンパーはパッシブ制御の付加質量型の下位に移動した。

――――― [JIS A 3306 pdf 52] ―――――

50
A 3306 : 2020
a) 免震構造 b) エネルギー吸収型 c) 付加質量型
記号
1 免震支承
2 ダンパー
3 質量
4 ばね
図M.2−パッシブ応答制御システムの例
記号
a 一般構造の応答
b 制震構造の応答[図M.2のb)及びc)参照]
c 免震構造の応答(免震支承+ダンパー)[図M.2のa)参照]
図M.3−構造物の応答に及ぼす応答制御システムの効果

――――― [JIS A 3306 pdf 53] ―――――

                                                                                             51
A 3306 : 2020
a) ダンパーによる応答制御がない場合
b) ダンパーによる応答制御がある場合
記号
Er 規準化した吸収エネルギー
T 時間(秒)
a 地震時の総入力エネルギー
b 構造物の振動エネルギー
c 制震ダンパーによる吸収エネルギー
d 構造物の履歴エネルギー
e 構造物の粘性減衰による吸収エネルギー
f 地盤への逸散エネルギー
図M.4−応答制御の有無による1自由度系構造物の吸収エネルギーの例

――――― [JIS A 3306 pdf 54] ―――――

52
A 3306 : 2020
附属書N
(参考)
ノンエンジニアド構造物
N.1 種々のタイプのノンエンジニアド構造物
国によっては,資格をもった建築家又は技術者の関与がほとんどないまま,住民自ら,公的な手続なし
に,伝統的な方法によって,多くの構造物が建設されており,しばしば(工学技術に基づかない)“ノンエ
ンジニアド”と呼んでいる。ノンエンジニアド構造物は,次のタイプなどがあるとされている。
a) 無補強の組積造(石,れんが又はコンクリートの組積造)
b) 枠組み組積造
c) 木造
d) 土質構造物[アドべ(日干しれんが)又はタピアル(版築)]
これらのタイプの多くは,地震の危険性の高い地域における使用には不適切である。これらの中の幾つ
かのタイプの構造物は,基本的なレイアウト,材料及び接合部についての簡単な規則を守ることによって,
満足できる耐震性能をもつことが可能である。このような経験的に設計する構造物では,規模,高さ及び
用途(重要度レベル)についての適切な制限を設けることが不可欠である。
これらとは異なった種類のノンエンジニアド構造物がある。それは,現在建てられている建築物又は構
造物ではなく,数十年から数百年前の過去に建てられた建築物などで,文化財等として積極的に保存及び
活用が期待されている建築物などである。文化財等としての制約を受ける中で,地震動に対して耐震補強
が必要な場合がある。
N.2 ノンエンジニアド構造物に固有の特徴及びぜい(脆)弱性
N.2.1 無補強組積造
このタイプの組積造の壁は,焼成れんが,ソリッドコンクリートブロック,中空コンクリート,モルタ
ルのブロックなどで構成する。無補強組積造のぜい(脆)弱性は,次の事項などがあるとされている。
a) 重量が大きい剛な構造であり,地震によって大きな慣性力を受けること。
b) 極めて低い引張強度とせん断強度(特に低品質のモルタルの場合)。
c) 引張力及び圧縮力に対してもろい性質。
d) 壁相互の弱い接合。
したがって,泥又は貧配合のモルタルを用いることは不適切である。
N.2.2 枠組み組積造
このタイプは,れんが又はコンクリートブロックの組積壁とそれを4方向から囲む,水平方向と鉛直方
向との鉄筋コンクリート部材によって構成している。鉛直部材を“つなぎ柱”と呼び,鉄筋コンクリート・
フレーム構造に類似しているが,断面ははるかに小さい。水平部材を“つなぎばり(梁)”と呼び,鉄筋コ
ンクリート・フレーム構造のはり(梁)に類似しているが,同様に断面ははるかに小さい。枠組み組積造
の枠組み材は,鉄筋コンクリート・フレーム構造の柱及びはり(梁)とは異なることを認識する必要があ
る。むしろこれらの部材は,引張応力に抵抗する水平及び鉛直方向のつなぎ材又はバンドとしての役割を
もっている。

――――― [JIS A 3306 pdf 55] ―――――

次のページ PDF 56

JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 3010:2017(MOD)

JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧