JIS B 0160:2015 歯車―歯面の摩耗及び損傷―用語 | ページ 2

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2.2.2
研削焼け(grinding burn)
歯面の研削仕上げ加工において,加工条件の不良によって研削面が加工熱で変色したり,焼戻しされた
りする現象。
顕著な場合には加工面に色むらができるので分かるが,軽度な場合にはそのまま目視で見分けることが
困難で,ナイタルエッチング(Nital etching)などによって検出しなければならない。
研削焼けを起こした部分は,特別な熱影響を受けるので,周辺と組織,硬さ,残留応力状態などが異な
るようになり,さまざまな損傷の引き金になる。
また,研削焼けのある部分を詳細に調べると亀裂研削割れの存在が認められることもしばしばある。そ
のため信頼性を要する歯車では厳重なチェックを要する。
研削焼けの原因には,過大な切込み,研削液不良,と(砥)石の不適合,目詰まり,目つぶれなどがあ
る。乾式研削で発生しやすい。
図3−歯面のナイタルエッチングの例1 [1]
図4−歯面のナイタルエッチングの例2 [1]
図3及び図4は,共に研削焼けした歯面をナイタルエッチングして観察した例である。両者は同一の歯
車であり,歯によってもこのような違いが生じる。研削加工の条件が厳しいと,研削時の発熱で局部的に
熱影響を受け,焼戻し色に変色する。状況が厳しい場合には変色していることが容易に分かるが,軽度な
場合には見分けに熟練がいる。しかし,表面をナイタルエッチングすることによって簡単に見分けができ
る。
図の黒い領域が研削焼けしたところで,図3の黒い部分に囲まれた白い小さな島状の部分が最も焼けの
度合いがひどく,熱影響によって組織変化を来し,硬度が変化している。この浸炭焼入れした平歯車の例
では,歯面の標準硬さがHV600に対し,白い島状部分のHV745から黒い部分のHV460の間で変化してい
る。この硬さの低い部分から歯面損傷を起こしやすい。
なお,白い島状部分はマルテンサイト組織,黒い部分は腐食されやすいソルバイト組織になったものと
考えられる。

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2.2.3
研削割れ(grinding cracks)
研削加工中,又は加工後に現れる,比較的規則的な模様の表面割れ。
亀裂は細く,浅く,かつ研削方向に直角で平行に並ぶことが多いが,亀甲状に発生することもある。
この亀裂は,研削焼けと関連が深く,ナイタルエッチングで検出できるが,磁粉探傷装置などの欠陥探
知手法を用いると検出が容易である。研削割れが潜在していて,その歯車が完成後に負荷運転されて初め
て表面に現れることもある。
研削割れは,材料の選択及び加工に問題がある。材料の熱処理不良が原因になる場合もある。
図5−研削割れの例
図5は,浸炭研削した歯面に亀甲状に研削割れが生じた例で,蛍光探傷法による観察結果である。かな
り広い範囲で均一に生じている。

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a)
b) c)
図6−研削割れの観察 [1]
図6 a) は,運転後蛍光磁粉探傷法によって観察したものである。亀裂が,はすば歯車の歯面に白い線条
となって現れている。モジュール8及び材質S45Cで高周波焼き入れが施されている。
図6 b) は,図6 a) の歯車の亀裂が発生している部分をナイタルエッチングによって観察したもので,
分かりやすく拡大している。白いだ(楕)円状の模様が研削焼けを起こしたところで,研削焼けがひどく
なると研削割れが起きやすくなる。
図6 c) は,研削割れの亀裂が内部でどのように進展しているかを観察した断面図である。図6 a) 及び
b) とは異なる歯車で,モジュール10,SNC815材を浸炭後研削した平歯車である。表面の白層は研削焼け
によってできたマルテンサイト組織で,硬度HV900に達する。亀裂は,複雑に曲折したり枝分かれする。
表面の白層は見られないことも多い。

――――― [JIS B 0160 pdf 8] ―――――

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2.2.4
熱処理欠陥(defects by heat treatment)
歯車の熱処理に伴う種々の損傷の中で熱処理が不適切なために直接損傷に結びつく欠陥。
熱処理が歯車の損傷に関わる要因は多く,熱処理選定の良否,硬さ分布,硬化層深さ及び材質とのマッ
チングといった設計的なこと,金属組織の異常,残留応力・残留オーステナイトの異常,脱炭・化合物層
の生成といった熱処理法固有の問題,硬化層における設計値とのかい(乖)離,変形などの製造工程上の
各種不具合,仕上げ加工との絡みで生じる不具合など,といった事象である。
ここに含まれる損傷形態は,次による。
− 焼割れ
− 残留応力異常
− 窒化化合物層の離

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2.2.4.1
焼割れ(hardening cracks, quenching cracks)
焼入れ中に生じる残留応力が過大になったときに発生する欠陥。
このような状態は,歯車の形状又は大きさにあった冷却速度が得られないようなとき,又は炎焼入れ,
高周波焼入れなどのように部分焼入れするときに生じやすい。歯車材料の組成が仕様と異なる場合もある。
焼割れの損傷形態は,歯先面を横切るものが多いが,歯底面から放射状に走るもの,歯幅の端部が不規
則に割れるものもある。
激しい焼割れは焼入れ後目視によって確認できるので,こうした歯車は廃棄され,事故に結びつかない
が,微細な焼割れは焼入れ後数時間経過してから,研削加工中に,又は使用中に気付くなど,加工直後の
目視検査では分からないことが多く,このことは稼働中の歯の折損事故に結びつく可能性が高いので注意
を要する。
図7−歯先の焼割れの例
図7は,大歯車の歯先に生じた焼割れの例である。このような焼割れは,歯先ばかりか歯底,歯の端部
などにも発生することがある。
なお,この図ではカラーチェックによって亀裂が黒い線条に,かつ,太くなって見える。

――――― [JIS B 0160 pdf 10] ―――――

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JIS B 0160:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 10825:1995(MOD)

JIS B 0160:2015の国際規格 ICS 分類一覧