JIS B 1562:2009 転がり軸受―損傷及び故障―用語,特性及び原因 | ページ 3

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様)は,光沢をもつか,又は腐食している。電流による損傷は,くぼみの底が黒く変色し,転動体にも電
流通過のこん跡が残ることから区別できる。
注記 この規格では,擬似ブリネル圧こんは腐食に分類するが,ほかの文献では摩耗に分類されるこ
とがある。
図15−円筒ころ軸受の内輪軌道面の 図16−円すいころ軸受の外輪の
擬似ブリネル圧こん 擬似ブリネル圧こん

5.4 電食 (electrical erosion)

5.4.1  一般定義
電食とは,電流が引き起こす接触面からの材料脱離のことである。
5.4.2 過大電圧による電食 (excessive voltage) electrical pitting]
一つの軌道輪から他の軌道輪に転動体及び潤滑油膜を通して電流が流れるときに,不十分又は不完全な
絶縁では軌道輪と転動体の接触域では,蓄電され,過大電圧によって接触域にスパークが起こる。その結
果瞬時に局部的に熱せられ,接触域が互いに溶融される。この損傷は,直径100 源 彖瑰
口のようなくぼみに見え(図17参照),転動体と軌道の両方の接触域で回転方向に数珠状の列になる(図
18参照)。
図17−電流通過によるくぼみ 図18−玉と軌道における数珠状のくぼみ

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5.4.3 電流漏れによる電食 (current leakage) electrical fluting]
初期の表面損傷は,密に接近した小さく浅い噴火口のようなくぼみをしている。電流の強さが比較的弱
くても,時間経過とともに噴火口のようなくぼみから図19に示すようなフルーチング(すだれ模様)に進
展する。フルーチング(すだれ模様)の溝は,ころと軌道の接触表面に見られ,等間隔になっている。玉
の場合は,黒く変色しているだけで溝は見られない(図20参照)。軌道は,くぼみの底で黒ずんで変色し
ている(図20及び図21参照)。
図19−電流漏れによるくぼみから進展した 図20−内輪軌道のフルーチング及び
フルーチング 変色した玉
図21−針状ころ軸受内輪のフルーチング
(走査電子顕微鏡による拡大写真を右下に示す。)

5.5 塑性変形 (plastic deformation)

5.5.1  一般定義
塑性変形は,材料の降伏点を超えるといつでも起こる。典型的なものとして次の二つが存在する。
− 転動体と軌道間の接触荷重によって,接触域に起こる広範囲な降伏。
− 転動体と軌道間の異物のかみ込みによって,接触域に起こる局部的な降伏。
5.5.2 過大荷重による塑性変形(ブリネル圧こん)(overload) true brinelling]
静止した軸受に過大な静荷重又は衝撃荷重が作用し,転動体と軌道との接触部に塑性変形が起こる。そ
の塑性変形の例として,軸受軌道上の転動体ピッチ間隔の浅いくぼみ又は溝がある(図22参照)。さらに
過大荷重は,過大予圧又は組込み時の不適切な取扱いによっても起こる(図23参照)。
不適切な取扱いによって,例えば保持器などの軸受部品に過大荷重が作用し,変形を生じることもある
(図24参照)。

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図22−過大荷重による円すいころ軸受の軌道の塑性変形(ブリネル圧こん)
図23−組立時の過大荷重による塑性変形 図24−不適切な取扱いによる保持器の変形
(ブリネル圧こん)
5.5.3 異物による圧こん (indentation from debris)
異物をかみ込むと,軌道輪及び転動体に圧こんが生じる。その大きさ及び形状は,異物の種類によって
異なる。次のa) c) の圧こんを図25に示す。
a) 軟らかい異物(例 : 繊維及び木)
b) 焼入鋼のような異物(例 : 歯車及び軸受)
c) 硬い鉱物のような異物(例 : 研削と粒)
注記 ISO 281/Amd.2に,異物によって軸受寿命が低下することが記載されている。

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a) b) c)
図25−異物による圧こん
5.5.4 取扱いによる圧こん (indentation by handling)
取扱いの際,硬くて鋭利なものによって,軌道及び転動体に圧こん及びきずが生じることがある(図26
参照)。
図26−きず

5.6 破壊及びき裂 (fracture and cracking)

5.6.1  一般定義
き裂は,材料の最大引張強さを超えると起こる。破壊とは,き裂が伝ぱし部品の一部が完全に分離する
ことをいう。
5.6.2 強制破壊 (forced fracture)
強制破壊は,材料の引張強さを超えた応力集中によって起こる。例えば衝撃からの局部過大応力(図27
参照)又は過度のしめしろによる過大応力によって起こる(図28参照)。

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図27−ハンマー打撃による強制破壊 図28−過大しめしろによる内輪の強制破壊
5.6.3 疲労破壊 (fatigue fracture)
曲げ,引張又はねじり条件下で疲労限界応力を超える応力が繰り返しかかると疲労による破壊が生じる。
応力が大きいところでき裂が発生し,しだいに部品断面に伝ぱし最後に強制破壊となる。疲労破壊は,主
に軌道輪及び保持器に発生する(図29及び図30参照)。疲労によるき裂のしま模様が,図30の拡大写真
の保持器柱の破壊面に見える。
疲労破壊は,ハウジング又は軸における軌道輪の支持が不十分な場合にも起こる(図31参照)。
図29−曲げによるバックアップロール外輪の
疲労破壊(外輪表面の損傷は,軌道輪破壊時に
2次的に発生したものである。)
図30−保持器柱の疲労破壊による破断面

――――― [JIS B 1562 pdf 15] ―――――

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JIS B 1562:2009の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 15243:2004(IDT)

JIS B 1562:2009の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 1562:2009の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB0104:1991
転がり軸受用語