JIS B 6197:2015 工作機械―短期工程能力試験 | ページ 3

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表1−短期工程能力パラメタの推奨値
工程/工作物 Cs Csk RV,s RV,sk 備考
通常の工程又は工作物 1.67 1.67 − − 例えば,制御していない工程での直径
以上 以上 及び長さ
インプロセス計測制御 − − 100 %以下 100 %以下 全公差を使ってもよい。
表面粗さ − − 必要であれば 80 %以下 多くの場合に,上限値があるだけであ
80 %以下 る。したがって,RV,skだけを規定する。
片側公差 − 1.67 − 60 %以下 受入れのためには,二つの特性値を使
以上 用することを受渡当事者間で協定す
る。
他の特別な工程又は工 1.67 1.67 60 %以下 60 %以下 受入れのためには,Cs及びCskの値又
作物(例えば,測定管 以上 以上 はRV,s及びRV,skの値について受渡当事
理) 者間で協定する。
インプロセス計測制御を適用するときは,いつでもその制御アルゴリズムについて協定した作動限界を
明確にしなければならない。これは,例えば,公差限界から10 %20 %の安全域をもつことである。この
場合,短期工程能力は公差限界の中に全ての値があるかどうかを証明する。
通常,表面粗さの値は,それほどばらつかない。したがって,その値は,限界を超えないことに対する
高い信頼度をもたらす。そのような場合,公差限界から公差の10 %の安全域を保てば十分とする。表面粗
さ値には工作物表面の測定領域の位置が強く影響するために,幾つかの工作物上の異なる領域で繰り返し
て測定し,必要があれば,測定値の平均値を求めるのが望ましい。
片側公差をもった工作物は,公差の方向のパラメタだけで評価しなければならない。CskとRV,skとのい
ずれが受入れに意味があるかという問題は,受渡当事者間で協定しなければならない。
他の特別な工程又は工作物について,意味のある特性値の選択の問題は,それぞれの個々の場合ごとに
受渡当事者間で協定しなければならない。例えば,数個の工作物を同時に加工できる複数の主軸をもつ多
軸工作機械の場合,又は数台の同じクランプユニットを使用する場合には,標準偏差の推定値σ いて
算出するCs値を使用するのがよい[式(6)参照]。主軸当たり又はクランプユニット当たりの値の個数は,
個々の主軸又は個々のクランプユニットの結果との混合を避けるためにグループごとの値の個数の整数倍
でなければならない。この手順は,各主軸又は各クランプユニットごとの工作物を別々に評価することと
同等である。さらに,全ての工作物から求めた短期範囲値RV,sは,全ての部品が公差内にあることを保証
するために,制限の範囲内でなければならない。これらの二つの条件が満たされない場合には,各主軸又
は各クランプユニットごとに,それぞれの原因及び理由を調査しなければならない。調査するクランプユ
ニットの台数及び工作物に作用する加工負荷にもよるが,クランプユニットと工作物との接触面のばらつ
き及び取付状態を調べるためにクランプユニット1台当たり23個の工作物を用いて調整運転を行うのは
有益である。したがって,評価に使用する工作物は,1台のクランプユニットから取ることができる。
温度ドリフトによる最大許容勾配は,加工方法,機械の大きさ並びに生産及び周囲条件に依存する。暖
機運転の間,最大40 μm/hまで温度ドリフトによる勾配を予想することができる[36]。次の6.3に規定する
ように,この勾配は,短期工程能力試験を行っている機械にとっては,あまり重要ではない。したがって,
これに関してだけは,個々の場合の受入れに対して受渡当事者間で意味あるものとして協定しなければな
らない。

6.3 暖機運転手順

  機械を熱的平衡状態で運転することを確実にするため,短期工程能力試験のための暖機運転手順を計画

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するのが望ましい。温度ドリフトによる勾配が使用者にとって特に重要な場合,又は機械が熱的平衡状態
になるまで暖機運転を行うことができない場合には,許容温度勾配は,試験を開始する前に受渡当事者間
で協定し,かつ,分析中にそのことも考慮しなければならない。
バッチが小さい混流又は中断した生産による熱変形は,機械の熱挙動に対してより重要である。この挙
動は,熱変形試験(例えば,JIS B 6190-3による。)又は適切な機械加工試験のような他の試験方法で評価
してもよい。

6.4 調整

  調整運転は,特性の目標値(又は,推奨値若しくは参照値)になるまで工程を調整するのに役立つ。目
標値は,両側公差の公差域の中央値又は工作物のゼロ限界に対するゼロに等しい。A.3は,その他の公差
への設定の効果を示す。平均値が公差域の中央にない場合には,生産に使用できる残りの領域は限られる。
これは,例えば,公差の1/4の平均値の変位及びCskの要求が1.67に対して,残る6倍の標準偏差の領域
(おおよそ最大許容範囲)が公差の30 %にすぎないことを意味している。
どの程度正確に工程を設定値に調整するのが望ましいかは,他の因子の中で,どの程度の負荷がかかる
のかに依存する。それぞれの個々の場合において平均位置の重要度は異なる。例えば,平均値を公差域の
中心に保つことは時間がかかるが,通常どんな問題もなく可能であると期待することができる。このよう
な場合には,平均値が公差域のほぼ中心にある工程を設定し,受入基準として短期工程能力指数Cs又は短
期範囲値RV,sを協定することは役に立つ。
要求された品質をもつ素材が供給され,かつ,製造現場の周囲温度にさらされていなければならない。
コーティングを施していない切削工具は,初期摩耗が大きいため,真新しい切削工具を使用してはならな
い。さらに,工作物寸法の結果は別として,切削抵抗が大きく増加する。そのために,コーティングを施
していない新しい工具を用いる場合は,調整を行う前に切削を行って使用しておかなければならない。
温度ドリフトによる勾配を評価する場合には,工具摩耗による勾配も測定しなければならない。これは,
同様の切削条件における過去の経験に基づいて予測するか,又は顕微鏡若しくは触針式測定器で測定して
もよい。概して真新しい状態の工具を使用しないので,工具摩耗の線形性を仮定し受入試験の前後で工具
を測定すれば十分である。工具の寿命が,受入試験の間適用される製造パラメタを用いる製造時間よりは
るかに長いことが分かっている場合には,工具摩耗の評価をやめてもよい。

6.5 生産

  工作物は,連続に間断なく加工しなければならない。加工方法の変化及び製造時間は,工程に影響を与
え,その結果,実際の工程の挙動をゆがめる。基礎(床)の振動,温度変動及び工作機械の振動のような
製造過程の中の外乱は,できるだけ直近の日で測定データの解釈を容易にするために,かつ,必要があれ
ば,新しい試験を開始するために記録してもよい。
測定の制御又は勾配の補正が工作機械の一部になっている場合には,それらは短期工程能力試験に含め
なければならない。すなわち,工作機械は,この制御又は補正なしで試験してはならない。評価のときに,
変化した分布関数を考慮し,短期工程能力指数の代わりに短期範囲値を算出しなければならない。

6.6 測定

  工作物の公差に応じ,要求事項として,測定器,測定場所(空調された測定室,工場現場)及び測定方
法を設定しなければならない。測定は,訓練された要員によってだけ行ってよい。測定器及び工作物の温
度が測定場所の周囲温度と違ってはならない。
外形の公差を確認するときはいつでも,表面粗さを外形欠陥として誤った解釈をする危険性があるため,
測定する工作物の表面品質は考慮しなければならない。

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測定器は,十分に高い分解能をもっていなければならない。次の条件に適合することを推奨する。
分解能≦0.03T
ここに,Tは,試験している工作物の公差
短期工程能力試験に用いる測定器の適合性は,測定システムの短期工程能力試験によって証明しなけれ
ばならない。この証明は,一定の条件下で測定標準を50回測定し,引き続き,測定器の標準偏差sgを計
算することによって行う。測定標準は,サンプル工作物でよい。適切なサンプル工作物を利用できない場
合には,通常生産している工作物を使用してもよい。sgのための測定は,一定で,かつ,繰り返すことが
できる条件の下で行われなければならない。測定器の標準偏差は,次の要件に適合しなければならない。
6sg≦0.15T
又は
sg≦Tの2.5 %
ここに,Tは,試験中の工作物の公差
この要求への適合は,測定器の標準偏差による短期工程能力指数の劣化が十分に小さい(Cs値1.00で
1.1 %及びCs値2.00で4.2 %未満)ことを意味する,したがって,無視してもよい。この要求が実現されな
い場合には,測定結果が間違っている可能性があるので,その測定器は短期工程能力試験には使用できな
いかもしれない(A.4参照)。工程に関連付けられる標準偏差から測定器に関連付けられる標準偏差の大き
さを除くことは,統計的な不確かさを強く増加させるために,結果を修正するための適切な方法ではない。
限界値を評価する場合には,測定の不確かさU(包含係数k=2)は,公差の10 %以下でなければならな
い。

6.7 計算及び分析

6.7.1  一般
短期工程能力試験における統計分析は,短期工程能力指数の計算だけから成りたっているのではなく,
勾配,外れ値,安定性,特別な工程状況及び正規分布への適合性(Cs及びCsk値のために)に関して工程
を分析しなければならない。グラフ表示の可能性[例えば,x管理図(ISO 7870-2を参照),ヒストグラム
及び確率紙]を提供し,適切な統計パラメタについて計算できる市販の統計ソフトは,ここで,大変に大
きな助けになる。分析のための計算の流れを附属書Cに規定する。手順は,附属書Dに示す例を用いて示
す。
分析を含む主な流れを図2に示す。測定システムの短期工程能力の証明は,短期工程能力の有益な評価
のための前提条件である。
工程に関する知識に基づき,かつ,x管理図を使って対象とする工程又は工作物が評価を受けるかどう
かを決定するのが望ましい。これは,例えば,測定管理,工具,多軸機械又は表面粗さ値を包含している。
それが特殊な工程又は特殊な工作物であれば,6.7.2で示す勾配修正は行わない。
6.7.2 勾配の修正
x管理図は,測定データの全勾配δXtot,Tの評価に使用する。工具摩耗による勾配δXa(既知又は同様の工
程で測定済み)の知識を適用して,温度ドリフトによる勾配δXtdは,特別な影響が現れなければ式(1)で算
出できる。
δXtd δXa
δXtot,T (1)
短期工程能力指数は,標準偏差の推定値σ 14)及び式(15)参照]を用いて通常は算出する。そのため
標準偏差の計算には,グループ形成による小さな勾配は,取り除かなければならない。それにもかかわら
ず,その勾配によって,平均値が許容管理限界を超える可能性を排除することができない。そのため,疑

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問がある場合には,勾配修正を行ってもよい。強い勾配が存在している場合には,別々に勾配と工程とを
評価できるように勾配修正を行ってもよい。測定データは,式(2)及び式(3)を用いて修正する。
xiT, xi (i (2)
)1 Xtot,w
及び
1
X tot,w (3)
Xtot ,T
n 1
ここに, xi,T : i番目の勾配修正測定
xi : i番目の測定(勾配修正なし)
δXtot,w : 工作物1個当たりの全勾配
勾配修正を行った場合には,その後の計算は,勾配修正データを使用して行わなければならない。範囲
R,平均値x,及び標準偏差の推定値σ 五つのグループの測定グループ分けを通して)は,式(4)式(7)
によって算出しなければならない。
範囲 R xmax xmin (4)
m
1 jx
平均値 x (5)
mj1
s
推定された標準偏差 (6)
.094
及び
m
1 js
s (7)
m j 1
注記 式(6)は,五つのグループに対しては定数0.94,三つのグループに対しては定数0.89。

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測定データ
x管理図
YES 重要な勾配を 外れ値の除去
勾配修正
もった通常のプ (6.7.3)
(6.7.2)
ロセス?
NO
外れ値の試験
(6.7.3)
YES
YES 外れ値を
外れ値が
除外するか?
存在するか?
(最大1個の値)
NO
NO
ヒストグラム
評価を繰り返す
安定性試験
(x s 管理図 : 不安定さの除去
6.7.4)
YES
管理状態に
管理状態に
あるか? することができ
NO
るか?
YES NO
受渡当事者間の協定に
基づく特性値の計算
(6.7.5)
Cs≧Cs,nom及び RV,s≦RV,s,nom及び
Csk≧Csk,nom・ NO NO RV,sk≦RV,sk,nom・
短期工程能力は
YES
証明されなかった YES
短期工程能力は
証明された
図2−評価の流れ図

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JIS B 6197:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 26303:2012(MOD)

JIS B 6197:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 6197:2015の関連規格と引用規格一覧