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6.7.3 外れ値の管理
50個の工作物の測定値に存在する外れ値に関する検定をしなければならない。
JIS Z 8402-2及び他の参考文献に記載されている外れ値の検定は,特に,正規分布の仮定に基づいてい
る。その方法を工程又は工作物に関係する正規分布に従う測定値を適用できる[13][23][38]。式(8)及び式(9)
の方程式が満たされる場合には,最大xmax及び/又は最小xminは,外れ値(信頼水準 : 99 %,サンプル数 :
50)とする。
xmax .334 (8)
xmin .334 (9)
外れ値が一つ存在している場合には,新しい外れ値の試験を,この値を除いて実施しなければならない。
外れ値が二つ以上存在する場合には,その理由を究明し,さらに工程が明らかに管理されていないことに
なるので,その試験をやり直さなければならない。外れ値が一つだけ見つかった場合には,この値なしに
計算を続けるか,全試験をやり直すかどうかを決定しなければならない。
6.7.4 工程の安定性
工程の安定性は,次のように調査しなければならない。
ヒストグラムは,測定値の分布の視覚表示のために描かなければならない。50個の値について,七つの
グループに分類することを推奨する。
工程の安定性は,x−s管理図を使用することで評価する。そのグループの平均値と標準偏差とが,管
理限界(UCLとLCL)の中にある場合,例えば,式(10)式(13)による条件が全ての10グループで満たされ
る,その工程は,安定であるとみなさなければならない(信頼水準 : 1−α=99 %,サンプル数n=5)。
xj≦UCL,xj .115 (10)
xj ≧ LCL ,xj
x 1.15σ (11)
sj ≦UCL,sj
1.93σ (12)
sj ≧ LCL,sj
0.23σ (13)
ここに, x : 式(5)による平均値
σ 式(6)による標準偏差
管理限界を超えている場合には,もう一度その理由を調査しなければならず,調査を繰り返さなければ
ならない。不安定性を改善できない場合には,短期工程能力指数の計算結果は受け入れられない。この場
合には,短期範囲値だけが単に受入判定基準として有効であると受渡当事者間で協定してもよい。
6.7.5 指数の計算
6.7.5.1 一般
受入試験の前に受渡当事者間で協定した特性値を,算出しなければならない。推奨値は,表1(6.2参照)
及び協定書(附属書B参照)による。これらは,式(14)式(18)で示される。
s T
短期工程能力指数 C (14)
6σ
[{USL x; x LSL}]min
偏りを考慮した短期工程能力指数 Csk (15)
3σ
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R
短期範囲値 RV,s (16)
T
又はパーセントで, RV,s 100
xmax x x xmin
偏りを考慮した短期範囲値 RV,sk ; (17)
USL x x LSL max
xmax x x xmin
又はパーセントで, RV,sk ; 100
USL x x LSL max
(協定すれば)温度ドリフトによる勾配 Xtd Xtot,T Xa (18)
ここに, T : 試験中の工作物の公差
σ 式(6)による標準偏差
n
1 ix
x : 平均値,nは測定値の個数,一般にn=50
ni1
USL : 上限規格値
LSL : 下限規格値
δXtot,T : 6.7.2に規定する測定データの全勾配
δXa : 6.7.2に規定する工具摩耗による勾配
6.7.5.2 片側限界工作物
片側限界工作物については,短期工程能力指数及び短期範囲値は,平均値及び下側又は上側の公差限界
を考慮して算出する。限界値の計算は,両側限界工作物の場合に適用された手順と同様である。次の場合
には,区別しなければならない。
a) 上側短期工程能力指数
USL x
Csk (19)
3
xmax x
RV,sk (20)
USL x
b) 下側短期工程能力指数
x LSL
Csk (21)
3
x xmin
RV,sk (22)
x LSL
6.7.5.3 表面粗さ
表面粗さについては,JIS B 0633に従って16 %ルールを適用し,少なくとも各工作物当たり二つの粗さ
測定値をとらなければならない。どの値も測定(例えば,50の母集団に対して8回測定)が16 %まで上
側又は下側の公差から外れた場合には,上限公差を無視してもよい。短期範囲値(又は短期工程能力指数)
の評価は,残りの粗さの値で評価しなければならない。
表面粗さの値については,短期範囲値を推奨する。
7 短期工程能力試験に影響を及ぼす要因
7.1 一般
たとえ,機械の応答の強さ,すなわち,周囲からの様々な影響に対する機械のロバスト性を品質判定基
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準として理解できたとしても,工作機械の短期工程能力試験に関係する重要な問題は,どんな直接影響も
工作機械の製造業者によらず,加工の不確かさを増加させる様々な外部要因があることである。表2は,
最も関連すると考えられている要因を規定する。この要因の説明は7.27.4で詳細に規定する。
工場温度の変動のような周囲の影響は別として,工程パラメタ及び工具摩耗は,直接工作機械に影響を
及ぼす。工具摩耗によって切削抵抗が増加してたわみが増え,その結果として測定偏差が大きくなること
が予想できる。また,素材寸法のばらつき及び固定面の不安定さは,工作精度に負の影響を与える。
7.2 熱影響
工作機械の工作精度は,幾何学的,静的,動的及び熱的特性に依存している。工作機械の短期工程能力
は,工程パラメタによって定義される工程負荷,並びに公差及び工程時間に関する要求ともいつも結びつ
いているとみなければならない。
内外部の熱源及び切削領域における熱発生は,切削点での熱変形を発生させる。この変形の大きさは,
加工パラメタ,加工条件(潤滑又は無潤滑)及び機械の熱的条件(暖機運転段階又は熱的平衡状態になっ
ている運転段階)に依存する。
暖機運転段階における熱変位は,式(23)で示される指数関数で近似できる。
x(t) xmax 1 e (23)
工作機械の種類と大きさとにもよるが,工作機械の熱時定数は,20分6時間の間の範囲にあり,最大
変位Δxmaxについては,数μmから100 μmまである。受入試験を熱的平衡に達した段階で実施する場合に
は,暖機運転によって機械の変位が最大変位の85 %に達するのを確実にするために40分最大12時間の
暖機運転が必要になる。そうしないと暖機運転段階での温度ドリフトによる5 μm/h40 μm/hの勾配が予
想される。
通常,この規格の対象となる工作機械は,大量生産向けに使われる。3シフト運転の場合には,機械が
熱的平衡状態にあり,暖機運転段階における温度ドリフトは,週の始めに単に調整頻度が増加することか
ら明らかになるだけであり,これは,統計的工程管理方法を使用することによって管理することができる。
この点で,暖機運転段階における温度ドリフトは,短期工程能力研究にとってはあまり重要ではない。
注記 工作機械の工作精度に及ぼす周囲温度条件の影響に関する体系的調査は,周囲温度変動によっ
て0.5 μm/℃8 μm/℃の間の切削点で変位を示す。すなわち,温度変化とその結果として起こ
る変位との間の遊び時間は,30分間5時間の遅れ時間が予想される。
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表2−短期工程能力試験結果に影響を及ぼす要因
工作物の精度に影響を及ぼす要因
工程 工作機械 要員 環境 工作物材料
・ 工作物の形体/ ・ 静的・動的コンプ・資格 ・ 近くの機械によ ・ 組成
公差 ライアンス ・訓練 って引き起こさ ・ 熱処理
・ 工程パラメタ ・ 温度ドリフト ・動機 れる振動 ・ 残留応力
・ 切削力 ・ 軸の位置決め精 ・気分 ・ 温度変動 ・ 素材の寸法及び
・ 潤滑/無潤滑切 度 ・作業及び環境条 ・ 周辺温度≠20 ℃ 表面
削 ・ 軸受隙間 件 ・ 外部熱源又は放 ・ 前加工
・ 工具摩耗 ・ ヒステリシス及 ・ 情報の流れ,その 熱器,その他 ・ ロット
・ 構成刃先 びバックラッシ 他 ・ 工作物の静動剛
・ 工具の幾何精度 ・ メンテナンス 性
・ 工具交換後の工 ・ 据付/基礎 ・ 固定面,その他
具オフセット,そ ・ 送り駆動の伝達
の他 関数,その他
測定に影響を及ぼす要因 分析に影響を及ぼす要因
影響/問題 影響/問題
・ 測定分解能及び測定の不確かさ コンピュータを利用した又は使わない分析方法
・
・ 測定方法 統計的不確かさ
・
・ 作業者 非正規分布に対する方法
・
・ メンテナンス 計算精度,その他
・
・ 環境
・ 工作物,測定器及び周辺環境の温度
・ 表面粗さ,その他
7.3 測定の不確かさによる影響
短期工程能力指数は,測定器,例えば,ゲージの標準偏差に依存する測定工作物の標準偏差を使って計
算する。そのために測定の不確かさは,短期工程能力指数を下げる。A.4では,工程の実標準偏差sactの
60 %の測定器の標準偏差sgについて,Cact=2.00の実工程能力指数が,測定のばらつきによってCs=1.71
まで減少するのが分かる。この例は,そのような測定器の応用のための前提条件として測定器の短期工程
能力の重要性を実証する(6.6参照)。
また,A.4は,測定器の標準偏差sg,すなわち,6・sg≦0.15・T,に関する要件のための情報を含んでいる。
ここで,Tは,試験中の工作物の公差である。
7.4 統計分析から生じる影響
7.4.1 信頼水準及びサンプルの数
また,統計学的評価の種類及び方法論は,短期工程能力の調査結果にも影響する。大きなロット生産で
50個の工作物を加工したときの精度の見積もりは,不確かさと関連する。したがって,工作機械上での機
械加工の評価をしている間,計算された短期工程能力指数は,実工程能力の推定にすぎない。例えば,Cs
=1.67の短期工程能力指数を50個の測定値を用いて算出する場合には,基本的な母集団に対する実際の能
力指数は,95 %の信頼率(A.5参照)及び特性値の正規分布の仮定に基づき,1.391.95の間にある。し
たがって,短期工程能力Cs(信頼率95 %)に対する不確かさUは,±0.28である。
短期工程能力指数は,通常,小サンプルを使って決定する受入試験の場合に,一般に同じ工程に対する
長期工程能力指数とは異なる。この長期工程能力指数は,例えば,数週間に及ぶ生産で,非常に大きなサ
ンプルについて決定する。それにもかかわらず,要求Cs≧1.67を満たすことは,公差を40 %(10 sは許容
範囲内での範囲)狭くするばかりではなく,受入試験を成功裏に終了するために,かなり小さな範囲を保
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持することを目的としなければならないことを意味している。
7.4.2 分布のタイプ
短期工程能力指数は,測定データの標準偏差を求め,計算しなければならない。暗黙の仮定は,正規分
布を使用して工程が記述できるということである。これは,全ての機械的な工程に適用できるというわけ
ではない。さらに,片側公差(例えば,多くの形状及び位置の公差)は,一方の側に物理的限界をもつの
で,非対称になることが多い。このために,この正規分布への補足として他の統計プログラム及び分布モ
デルが開発されてきた。それぞれの数学的アルゴリズムは,個別のデータセット用の分布関数の決定がで
きるようになっている。そのとき,同じ値の標準偏差が計算され,正規分布曲線と比較のために使用され
る。それにもかかわらず,純粋に数学的方法で,技術的,物理的な条件を考慮せずに測定データを扱うこ
とは,これらのどれが最もよい方法で実際の関係を説明するかを決めることができずに,これが様々な分
布関数が統計プログラムによって近似として計算される状況に通じる。同じ値の標準偏差の計算とともに,
選ばれた分布モデルに依存する全く異なった短期工程能力指数の計算になる。
したがって,測定データだけに基づいて分布モデルを導き出すのは,実用的ではない。一方で分布関数
の選択は,純粋に形式にこだわるだけでなく,工程に関する知識及び物理的な環境を考慮しなければなら
ない。A.6に追加情報を提供する。しかし,50個という少量の測定値に基づく受入試験については,これ
はいつも可能であるというわけではない。
このために,それは,x管理図, x s 管理図及びヒストグラムを用いて工程評価を実施し,かつ,測定
データをグループ分けすることによって導き出された,標準偏差の推定を活用して短期工程能力指数を計
算することを推奨する。明らかに正規分布に経験的に知られる分布が対応していない特殊な工程又は特性
の場合には,測定値の範囲が受入基準となる(6.1参照)。個々の場合に,ISO 22514-3:2008の5.6及びISO/TR
22514-4:2007に従って,工程能力の分析のために他の又は追加の評価基準を使用するのが妥当な場合があ
る。
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JIS B 6197:2015の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 26303:2012(MOD)
JIS B 6197:2015の国際規格 ICS 分類一覧
JIS B 6197:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0633:2001
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―表面性状評価の方式及び手順