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C 1910-2 : 2017 (IEC 61786-2 : 2014)
電力線,変圧器などの電力システムから発生する電界の場合,主な周波数は商用周波数50 Hz又は60 Hz
である。電界の実効値を測定する場合,商用周波数付近を中心とする狭通過帯域の測定器が適している。
例えば,民間の航空機,船舶,電車など他の発生源からの電界を測定する場合には,基本周波数は50 Hz
又は60 Hzとは大きく異なることがあるので,通過帯域を適切に選ばなければならない。
電界測定中は,電界プローブ付近にいる人だけでなく,測定者による近接効果を避けるため,細心の注
意を払うことが望ましい。電界の顕著なじょう(擾)乱が生じ,測定に許容できない誤差が生じる可能性
がある。
図7は,プローブからの測定者までの距離及び電界計の地上高さの関数として,電界測定値のじょう(擾)
乱を百分率で示したものである[7]。図中の点は,身長1.8 mの接地電位にある測定者(腕は,脇腹に付け
ている。)による,500 kV送電線下の電界のじょう(擾)乱の実測値を示す。地表面から測定器までの3
種類のいずれの高さにおいても,近接効果が確認できる。実線は,理論値である。漏れ抵抗及び地面に対
する静電容量のために測定者の電位は接地電位に近いことが多く,図7に示した近接効果は,典型的なも
のとみなすことができる。
10.0
じょう(擾)乱(%)
1.6
0
1.4 測定器の高さ(m)
-10.0 1.6
1.0 1.4
1.0
-20.0
0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
測定器から観測者までの距離(m)
図7−鉛直方向の電界測定時の測定者による近接効果
他の形状の浮遊電位形電界測定器の測定者による近接効果は,図7と比較して大きい場合も小さい場合
も,実験的に求めることができる。プローブの中心から測定者までの距離の関数として,電界値の変化に
留意して近接効果を求めることができる。
したがって,測定者とプローブとの最小距離2 mを確保しなければならない[4]。
導電性物体がある場合,その導電率が低い場合(樹木,フェンス,植物,ビルなど)においてさえも,
電界は,非常に容易にじょう(擾)乱を受ける[4]。可能な場合には,除去できる全ての物体を除去するこ
とが望ましい。除去できない場合には,可能な限りプローブと物体との距離を物体高さの3倍以上(移動
可能な物体の場合)又は1 m以上(移動できない物体の場合)にすることが望ましい。除去できない物体
は記載し,その寸法及び設置場所を明示する[4]。
プローブは,絶縁性の三脚上に配置する(JIS C 1910-1:2017の5.8.4参照)。
相対湿度が70 %を超える場合,電界を正しく測定できないことがある(JIS C 1910-1:2017の5.5参照)。
ほぼ一様な電界中における測定値は,測定時に測定箇所に人がいる場合には,人体全身のばく露に相当
――――― [JIS C 1910-2 pdf 16] ―――――
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C 1910-2 : 2017 (IEC 61786-2 : 2014)
する。一様でない電界中の測定値は,人体ばく露を考える場合には,より限定的な解釈が必要である。す
なわち,電界測定値は,その測定場所における人体の当該部分だけに対するばく露を表す。
人体の電界へのばく露を求めるための測定計画を策定する過程の一部として,測定の目的,及びその目
的を達成する方法を明確に示さなければならない。測定器の選定及び校正への要求事項(例えば,測定器
の通過帯域,強度レンジ,校正周波数など)を決定するために,目的を明確に定義することが必要である。
どのような電界パラメータを測定するか,どこで測定を実施するか,どのように測定するかを,測定計画
に示さなければならない。一般には,単一の測定計画が全ての状況における測定に適しているわけではな
いことに注意することが重要である。
6 測定不確かさ
測定不確かさは,ISO/IEC Guide 98-3に従って評価する。この規格は,測定に影響を及ぼす各物理量に
関連する標準偏差を,実施した測定(タイプA)に基づいて,又は経験(タイプB)に基づいて決めるこ
とを規定している。
測定時に許容される合成標準不確かさを,決定することが望ましい(測定器の不確かさに対する要求事
項は,JIS C 1910-1:2017の箇条5で規定している。)。
異なる測定環境における電界又は磁界の実効値測定に関する合成標準不確かさを求めるために,不確か
さの様々な発生源について適切な算出方法があるとよい。可能性のある不確かさの発生源が,附属書C及
びJIS C 1910-1:2017の箇条6に次のように規定している。
− タイプAの不確かさ
・ 校正の不確かさ
・ 測定結果の繰返し性
・ 測定の再現性
− タイプBの不確かさ
・ 補正係数
・ 非一様磁界及び電界測定時のコイルプローブ内の平均化効果
・ 非一様磁界及び電界中のプローブ位置決めの誤差
・ 周波数応答又は通過帯域制限(フィルタの選択)
・ 測定器の時定数
・ 測定器の経時変化
・ 分解能
・ 気温
・ 物体又は障害物への近接
・ 湿度(電界の場合)
・ 自動レンジ切換機能における測定レンジ
不確かさの要因には,その影響を無視できる程度に減らすことができるものもある。例えば,絶縁材料
でできた計測器台を,電界測定器プローブの正確な位置決めに使用できる。
可能な場合,既知の補正係数を測定値に適用することが望ましい。
ただし,この補正係数は,各軸に対して求めて適用するので,複雑になる可能性がある。
同様に,電気製品又は他の電気機器から発生する磁界又は電界を発生源からの距離の関数として測定す
るときの不確かさは,非常に大きくなる(例えば,100 %を超える。)。発生源からの磁界又は電界が,背
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景磁界又は電界に近付くためである。
分散の和の平方根(すなわち,標準偏差の二乗の和の平方根)として,合成標準不確かさucを求める。
m
uc ci2ui2
1
ここに, ci : 感度係数
ui : 標準不確かさ
拡張不確かさueは,合成標準不確かさのk倍である。ここで,kは包含係数である。
包含係数は,2とする。これは,正規分布の約95 %の信頼区間に相当する。
ue 2uc
測定不確かさの評価例を,附属書Dに示す。
7 測定報告書
測定結果の記録及び報告に要求される情報は,測定の目的によって変わる。測定の目的は,冒頭に明記
する。測定器及び測定に関係する次の情報も,必要に応じて示さなければならない。
− 測定手順
− 製造業者の識別
− 測定器及びプローブの識別
− 測定器の帯域幅
− 最新の校正及び検証試験日
− 測定日
− 測定時刻
− 測定実施者の識別
− 天候
− 湿度(電界の場合)
− 発生源,例えば,周波数及び信号の特性
− 発生源の状態,例えば,負荷電流
− 複数の周波数を含む磁界及び電界に対するスペクトルの周波数分解能
− 報告する磁界及び電界の量,例えば,最大値,合成値,鉛直方向成分,時間加重平均(TWA),実効
値など(SI単位を使用することが望ましい。一般的に使用する単位は,括弧内に表示するとよい。)
− 人体ばく露のデータが含まれる場合には,被験者の行動記録
− 測定を実施した区域及び場所を示す図面,可能な場合,写真添付
− 基準測定点の位置,可能な場合,GPS座標位置
− 直流磁界測定の場合は,地磁気
− 統計的情報,例えば,電界及び磁界の最大値,最小値,中央値,幾何学平均値など
− 拡張不確かさ
− 測定目的に対する結論
− 発生源までの距離
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附属書A
(参考)
典型的な環境における磁界及び電界特性の例
磁界及び電界の特性を理解することで,測定器及び測定手順を正しく選択できる。一般的には,公衆が
立ち入る環境に比べて,作業者は,磁界及び電界強度が高い環境に立ち入る。ほとんどの場合,二つの環
境は,当然,物理的な境界によって区切られている。例えば,変電所内又は中程度の電圧階級の設備構内
には,作業者だけが立ち入りできる区域がある。
一般的に,公衆が受ける磁界又は電界は,電力線に近いほど高い。
高電圧及び大電流設備は,磁界又は電界ができる限り小さくなるように設計されている。
業務の性質上,例えば,活線検査又は保守管理においては,作業者は,磁界又は電界が高い区域に立ち
入る。変電所内においては母線直下の地表面近く,発電所内では発電機の接続部付近,活線保守管理作業
では架空電力線の相導体近くで,磁界又は電界強度は,かなり高くなる。職業環境における他の高磁界発
生源の例として,溶接機,電気分解,誘導加熱などがある。
北米の電力会社の変電所及び電力線下における,作業者及び公衆が立ち入ることができる区域における
商用周波数磁界及び電界の大きさの目安を,表A.1にまとめて示す。
表A.1−北米の電力会社変電所内(職業環境)及び変電所外(公衆環境)における
磁界及び電界の特性例
対象 電界 磁界
作業者立入り区域 公衆立入り区域 作業者立入り区域 公衆立入り区域
735 kV変電所内の区 変電所内の母線下, 変電所のフェンスか ブロッキングインダ 変電所フェンス外側
域 地上2 mにおける最 ら1 m10 m離れた クタンス付近1 000 4 μT
大値13.6 kV/m以上 位置における最大値 μT
1 kV/m程度
電力線の下 地上1 mにおける最大値10 kV/m 地上1 mにおける最大値30 μT
相導体の活線保守管 作業場所における電 − 4導体の束の中にお −
理作業 界計算値は80 kV/m ける磁界計算値
に達する。 150 μT/kAに達する。
人体が受ける電界を (導体束の上でバケ
低減するため,作業 ツ形の工具入れを持
者は導電性服の着用 って処置をすると
が要求されている。 き,電流は導体束の
各導体に分流)
3人の作業者が発電所内で受けた磁界の統計量を図A.1に示す。3日間の作業の間にその磁界を受けた時
間の割合[図A.1 a)]及び磁界強度とその磁界を受けた時間との積[図A.1 b)]を示す。この例は,発電
所における全ての作業者のばく露を代表するものではない。
――――― [JIS C 1910-2 pdf 19] ―――――
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C 1910-2 : 2017 (IEC 61786-2 : 2014)
T・h
磁界強度と時間との積(μ )
時間の百分率(%)
磁界強度(μT) 磁界強度(μT)
a) b)
図A.1−北米の発電所内で典型的な作業者(電気技術者)が受ける磁界
(3日間の記録に基づくもの)
大量輸送システムは,商用周波数より高い周波数の磁界を発生する。公衆ばく露に対するこれらの磁界
の特性を表A.2に示す[6]。これらのシステムで発生する磁界は,乗り物の加速及び減速時に変動する。
表A.2−アメリカ合衆国における大量輸送システムの磁界特性(μT) : 平均値及び最大値
輸送システム 静的 極低周波数 極低周波数 商用周波数 商用周波数の 極低周波数の
5 Hz未満 5 Hz の低い方 60 Hz 高調波 高い方
3 000 Hz 5 Hz55 Hz 65 Hz300 Hz 305 Hz3 000 Hz
フェリー 51.1 0.06 0.02 0.04 0.02 0.01
(76.0) (0.33) (0.10) (0.31) (0.12) (0.03)
エスカレータ 55.7 0.15 0.13 0.04 0.02 0.01
(95.8) (6.14) (6.01) (0.32) (1.05) (0.03)
動く歩道 57.6 0.37 0.31 0.12 0.07 0.03
(121.8) (20.0) (19.54) (1.24) (3.72) (1.90)
ガソリン自動車及 32.1 0.57 0.55 0.09 0.08 0.04
びトラック (96.8) (12.45) (12.45) (1.94) (1.36) (0.78)
電気自動車及びト
ラック
試験台 40.8 0.57 0.34 0.09 0.36 0.1
(128.6) (8.08) (5.61) (1.25) (7.99) (0.86)
テストコース 38.8 0.57 0.48 0.08 0.19 0.07
(104.1) (9.35) (9.27) (1.53) (2.45) (0.69)
ジェット旅客機 55.2 1.35 0.06 0.00 0.02 1.35
(66.9) (21.25) (0.35) (0.06) (0.81) (21.24)
トラム(交流) 47.0 1.37 1.07 0.55 0.30 0.12
(83.5) (9.04) (8.85) (2.90) (1.44) (0.70)
バス(ガソリン車) 40.1 1.68 1.64 0.09 0.19 0.21
(112.4) (14.57) (14.42) (1.42) (2.13) (2.48)
電気バス 38.1 2.04 1.47 0.08 0.89 0.16
(80.8) (48.78) (48.67) (3.88) (22.05) (1.07)
通勤電車 53.8 4.96 1.85 3.42 1.46 0.59
(196.9) (79.93) (45.35) (73.88) (34.03) (4.87)
括弧がない数値 : 平均値,括弧内の数値 : 最大値
――――― [JIS C 1910-2 pdf 20] ―――――
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JIS C 1910-2:2017の引用国際規格 ISO 一覧
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