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C 1910-2 : 2017 (IEC 61786-2 : 2014)
4.2 複数の周波数をもつ磁界及び電界の発生源
4.2.1 一般事項
発生源からの磁界及び電界が一つの周波数の正弦波ではない場合には,その磁界及び電界は,異なる周
波数の正弦波磁界及び電界の重ね合わせとして表す。磁界及び電界のスペクトルは,離散的又は連続的な
周波数成分から成る。離散的なスペクトルを示す発生源の例として,配電線及びAC/DCコンバータがあ
る。このような例では,高調波スペクトルももつ。すなわち,一つの基本波周波数の整数倍のスペクトル
成分だけをもつ。非高調波離散スペクトルは,二つ以上の独立した発生源によって生じる。連続的なスペ
クトルの場合には,離散的なスペクトル成分は見えない。なぜなら,無限に小さい間隔で無限数のスペク
トル線から構成されるためである。連続的なスペクトルの例としては,単一インパルス波又はバースト波
のスペクトルがある。熱雑音も連続的なスペクトルを発生する。もちろん,実際のスペクトルでは離散的
なスペクトルと連続的なスペクトルとが重ね合わさることもある。
4.2の目的は,非正弦波磁界及び電界を既存のガイドライン又は規格の参考レベルとどう比較するかを示
すことである。
100 kHz以下の周波数領域においては,ガイドラインは,神経系への刺激作用のような短期効果に基づ
いている[1719,21]。他の生物学的効果として,熱的なものが知られているが,100 kHz未満では無視で
きる。文献[25]は,電磁界の神経生理学的効果に関する論文を大変良く取りまとめている。
ガイドラインでは,神経生理学的効果を特徴付ける基本制限を定義している。このような基本制限は,
測定可能な量ではないため,ガイドラインは,外部磁界及び電界に対する参考レベルを導入している。基
本制限及び参考レベルは,周波数に依存する。
参考レベルについては,外部正弦波磁界及び電界に有効な実用モデルがある。参考レベルの逆数の曲線
は,外部磁界及び電界から生物学的効果への変換関数とみなすことができる。外部磁界及び電界のスペク
トラムに変換関数を乗じた結果が1未満の場合,外部磁界及び電界は,該当するばく露基準に適合してい
るとみなす。
変換関数の概念は,非正弦波磁界及び電界にも適用できる。外部磁界及び電界に変換関数を乗じた場合,
ばく露に関連するスペクトルになり,これを加重スペクトルと称することができる。離散的スペクトルの
場合には,この加重スペクトルは,各スペクトル成分の磁界及び電界をスペクトル線の周波数における参
考レベルで除したものに相当する。加重スペクトル線を加算する手法として,4.2.24.2.6のような方法が
提案されている。
4.2.2 加重された大きさの和
文献[19],[21]及び[18]は,加重スペクトル線の大きさを加算することを提案している。
例えば,文献[21]は,磁界に対して次の基準を提案している。
10 MHz
Hj
≦1
j 1HR , j
ここに, Hj : 周波数jの磁界強度
HR,j : 文献[21]で定義された周波数jに対する参考レベル
この方法は,スペクトルの位相情報を用いないため,通常,ばく露を過大評価することになる。
4.2.3 加重ピーク値
4.2.2に示す加重された大きさの和を取る方法は,加重スペクトル線の位相を考慮していないため,最悪
状態の評価に過ぎないとICNIRPステートメント[20]で記載している。発生源のスペクトルの位相を考慮
し,加重スペクトルを時間領域に変換することを提案している。このようにして得られた加重時間領域信
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号のピーク値は,ばく露に関連する指標となる。変換関数の値として,参考レベル曲線の逆数を使用する。
変換関数の位相は,参考レベル曲線の傾きから導出する。
時間領域だけで行う方法も文献[20]で提案している。この方法では,磁界又は電界の時間領域における
信号及び加重フィルタのインパルス応答の畳み込みを作る。この加重フィルタの伝達関数は,既に述べた
周波数領域法における変換関数と同じである。時間領域の加重された信号のピーク値も,ばく露に関連す
る指標となる。
数学的には,二つの提案法には違いはない。なぜなら,周波数領域における乗算は,時間領域における
畳み込みと厳密に同じためである。IEC 62311:2007 [11]の箇条8には,加重ピーク値法についても詳細に
記載している。畳み込みを使用する加重ピーク値法は,既に市販の測定器で利用できる。このような測定
器は,リアルタイムで動作し,取扱いは極めて容易であり,任意の信号に対して使用できる。特に,パル
ス,バースト波又はノイズのような信号は,文献[20]及び[11]に示された考え方で評価できる。
4.2.4 インパルス分割
任意の時間的挙動を示す信号に対しては,時間領域信号の評価法が文献[1]の5.3.2で提案されている。
磁界だけを対象として詳細に記載している。磁界の時間領域信号を,連続する単一インパルスに分割する。
それぞれのインパルスの持続時間から対応する周波数を計算し,各インパルスに対する適切な参考レベル
を選択するのに用いる。一般的な場合には,それぞれの磁界インパルスの時間導関数のピーク値は,対応
する角周波数を乗じた参考レベルにおける正弦波信号のピーク値と比較する。
同じ参考レベルを適用し,インパルスが正しく分離して対応する周波数を正確に抽出した場合,多くの
場合において,この手順によって文献[11]及び[20]に記載した加重ピーク値法と同じ結果が得られる。この
類似性は,同じ物理学的及び神経生理学的効果が両方法の根拠となっていることに起因する。ただし,こ
れらの効果の解釈には,多少違いがある。時間領域信号を単一インパルス群に分離し,適切なパラメータ
を抽出する作業は容易ではなく,十分には定義されていない。したがって,この方法の再現性は良くない。
4.2.5 加重実効値
文献[10]で,まず加重スペクトル成分の大きさの二乗を加算し,次いで実際のばく露の指標としてこの
合計値の平方根を取る方法を提案している。パーセバルの定理によれば,加重時間領域信号の実効値は,
周波数領域で求めた加重実効値と厳密に同じである。文献[10]では,時間領域法に対して1秒の平均化時
間を提案している。この方法は,大きさを直接加算することによって生じる可能性のある過大評価を避け
るために導入された。また,文献[11]では,この方法の周波数領域版を,過大評価を避ける方法として提
案している。ただし,この細分箇条の手法の神経生理学的な理論的根拠はない。したがって,この細分箇
条の手法は,実際の状況を過小評価することになる場合がある。
4.2.6 最大加重スペクトル線
文献[1]では,神経生理学的効果に関して異なるスペクトル成分の相加効果はないものと仮定している。
文献[1]の5.3.3によれば,スペクトルが有限数の高調波を含んでおり,かつ,それらの高調波の大きさが
周波数とともに小さくなる場合,各スペクトル成分の適合性を別々に示せば十分である。この手法の理論
的根拠として,文献[8]を文献[1]中で引用している。文献[8]は,概要であることに注意する必要がある。文
献[1]の5.3.2に記載した方法が,かなり過小評価になる場合があることにも注意が必要である。
4.2.7 結論及び推奨
複数の周波数を含む磁界及び電界の評価には,多くの方法があることを示した。過小評価だけではなく,
過大評価の危険性が最も小さいため,現時点では,加重ピーク値法を使用することが望ましい。評価者の
最小の労力で,安定した予測可能な結果を得ることもできる。
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4.3 測定前の考慮事項
測定を実施する前に,測定対象の磁界及び電界の分布について見当を付けておくことは役に立つ。この
ためには,次の情報が必要である(入手可能な場合)。
− 磁界及び電界発生源の同定
− 発生源の幾何学的特性
− 発生源の負荷(電流,電力などによって定義する)
− 測定実施予定場所を適切に示す写真又は地図
− 最新の電気回路図
− 大気条件
− 公衆又は作業者が接近可能な区域
− 金属物体の存在
注記 目視によって確認できる磁界発生源(例えば,天井の照明器具,電気製品)もあるが,確認で
きない発生源(例えば,隣室又は上下階にある電気機器)もある。
最終測定を実施する前に,予備実験の実施が必要な場合がある。この予備実験の内容は,状況による。
最大磁界及び電界を見付けるために区域を迅速にスキャンするだけでよい場合がある。測定位置の間隔,
測定高さ,データ数,データシートの様式,作業及び職務分担の質問表などを決定するために,予備実験
をより詳細に行う必要があることもある。
予備実験では,高調波の有無を確認しておくことが望ましい。高調波を無視できると示すことができる
場合,すなわち,高調波を含まない場合と含む場合とで測定した磁界又は電界の違いが5 %未満のときは,
実際の測定において高調波を測定する必要はない。
測定器の測定レンジも,予備実験で確認しておくことが望ましい。例えば,測定場所によって磁界及び
電界の大きさが大きく変わる場合には,レンジの自動切換機能をもつ測定器がより便利である。過渡信号
には,レンジの自動切換を使わないことが望ましい。
測定目的が疫学研究の場合,最終測定手順を決める過程の一部として,予備実験を行う。
5 測定手順及び注意事項
5.1 交流磁界
測定方法及び手順の策定に当たり,該当する場合には,次に示す磁界発生源及び項目を考慮する。
− 設備の電源
− 変圧器の種類及び場所
− 電源ケーブル及び遮断器の場所
− 供給電圧の大きさ及びピーク電力となる期間
− 電源及び電気装置の周波数(0 Hzを含む)
− 既知の磁界発生源に対する人の相対位置
− 人体における測定場所(例えば,頭,胴体)
− 電動機及び発電機の有無
− 小形ヒータの有無
− 補償用空芯リアクトル用及びフィルタコイル用の空芯コイルの有無
− 接地系統及び接続
磁束密度の測定では,3軸測定器を用いて合成値を得なければならない。
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例えば,磁界の方向及び最大値を知りたい場合,磁界だ(楕)円の向き及び形状を調査する場合,直線
磁界の向きが事前に分かっている場合など,幾つかの場合には,1軸測定器を使用できる。
3軸測定器には,上記の磁界パラメータを測定できるものもある。
プローブ又はセンサ素子の大きさは,測定する磁界の空間変動に対して適切でなければならない。セン
サ素子の面積は,0.01 m2以下が望ましい(JIS C 1910-1:2017の5.8.2参照)。
測定器の通過帯域は,測定対象の磁界の周波数成分に対して適切でなければならない。測定器の通過帯
域が磁界測定値に顕著な影響を及ぼす可能性がある場合(例えば,磁界が二つ以上の周波数成分をもつ場
合)には,通過帯域を記録して報告書に記載する。
電力システムから発生する磁界の場合,周波数成分は,通常,基本波(50 Hz又は60 Hz)及びその数次
高調波である。このような磁界の測定に用いる最小通過帯域は,基本周波数から800 Hzまでとする。例え
ば,電力線近傍のように,高調波成分が十分に小さく,測定結果への影響が無視できることを実証できる
場合,又はより狭い周波数帯域の測定をする特別の理由がある場合にだけ,より狭い通過帯域を用いても
よい。
電力システム以外から発生する磁界を測定する場合には,通過帯域を適切に選択する。ある種の輸送シ
ステムから発生する磁界の基本周波数は低い。これに対して,誘導加熱器,ビデオディスプレイ端末,民
間の航空機及び船舶から発生する磁界,並びに可変速駆動電動機から発生する磁界の高調波は,より高い
周波数となる。
通過帯域をより低周波側へ拡張する場合には,静磁界中のコイルプローブの動きによって生じる誤差を
避けることに注意を払う。このような誤差は,コイルを固定すること,又は適切な周波数帯域を設定する
ことによって,一般的には排除できる。
ほぼ一様な磁界中における測定値は,測定時に測定場所に人が存在すると仮定したときの人体全身のば
く露に相当する。このような状況は,電力線の下で生じる[9]。
発生源と人体との間の距離が20 cmを超える場合には,平均ばく露レベルの概念を使用できる。平均ば
く露レベルを求めるには,人体の位置を考慮して異なる高さ及び場所で磁界の測定を行い,測定値の平均
値を求める。JIS C 1911では,電気設備から発生する磁界への公衆ばく露の測定手順を規定しており,3
種類の高さでの測定を規定している[9]。
距離が20 cm以下の場合には,平均ばく露レベルの概念で人体全身にわたる平均化を行ってはならない。
測定計画には,測定点と発生源(又は壁,フェンス若しくは表面)との距離を明記する。この距離は,
既定値の20 cmとすることが望ましい。特定の状況における測定距離を規定する規格もある(附属書B参
照)。
人体の磁界へのばく露を求めるための測定計画を策定する過程の一部として,測定の目的,及びそれを
達成する方法を明確に示されなければならない。測定器の選定及び校正への要求事項(例えば,測定器の
通過帯域,強度レンジ,校正周波数など)を決定するために,目的を明確に定義することが必要である。
どのような磁界パラメータを測定するか,どこで測定するか,及びどのように測定するかを,測定計画に
示すことが望ましい。一般には,単一の測定計画が全ての状況における測定に適しているわけではないこ
とに注意することが重要である。
磁界は,電流に比例するため,測定実施中に変動する可能性がある。したがって,測定結果を解釈する
ために,この変動を把握しておかなければならない。測定中に負荷電流を記録すること,又は固定位置の
磁界を記録することによって,変動を把握できる。
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5.2 直流磁界
交流及び直流磁界測定における主たる違いは,地磁気の影響である。
直流電力ネットワークについては,JIS C 1911の測定手順を用いることが望ましい。地中直流電力線の
場合には,人体の占める場所における直流磁界は一様と考えてよい(JIS C 1911参照)ので,高さ1 mに
おける1点測定で十分である。磁界の均一性は,計算によって評価できる(図6参照)。
地表
地中ケーブル
ケーブル中心軸までの距離(m)
P=1.4 m D=1.05 m e=35 cm I=926 A
各ケーブルの電流極性= + − − +
地磁気の大きさは50 μT,下面に対して60°,ケーブルと同方向
図6−直流地中ケーブル上の直流磁界特性の例(高さ1 mにおける計算)
測定の開始前及び終了後に,ケーブルのそれぞれの側で地磁気を測定する。地磁気及びケーブルから発
生する直流磁界はベクトルなので,地磁気成分を単純に減算することはできない。測定した磁界は,その
まま記録する。地磁気成分も,記録する。
5.3 交流電界
じょう(擾)乱のない電界の測定は,3軸測定器を用いて行い,電界の合成値を求める。
例えば,電界の方向が既知の場合などには,1軸測定器を使用できる。
測定器の通過帯域は,測定対象の電界の周波数成分に対して適切でなければならない。測定器の通過帯
域が電界測定値に顕著な影響を及ぼす可能性がある場合(すなわち,電界が二つ以上の周波数成分をもつ
場合)には,通過帯域を記録して報告書に記載する。
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- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.220 : 電気学.磁気学.電気的及び磁気的測定 > 17.220.20 : 電気的及び磁気的量の測定
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