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C 5750-4-3 : 2011 (IEC 60812 : 2006)
D)系外に及ぼす危害
・エコロジー
・社会
装置の信頼性問題
C)系全体への危害
1故障要因 B)人への危害
3相互作用 人
装置
による要因
A)装置への危害 2エラー要因
人的安全問題
4外来要因 人−装置系
・自然環境
・社会的環境
図JA.1−人−装置系の潜在危険要因とそれによる危害
JA.3 三要素FMEAの特徴
三要素FMEAには,次の五つの特徴がある。
a) 基本的な人的エラーの見出し語表を定め,正規の人の行為と組み合わせて類推し,当該作業に生じ得
る人的エラーを網羅的に抽出する。
b) 既存の事故データベースから,類似の事故を洗い出し,当該作業に生じ得る人的エラーの抽出に活用
する。
c) 人−装置系で想定し得る危害からトップダウン的にたどって潜在危険要因を抽出する。
d) 潜在危険を保有する,又は内在しそうな部品に着目して,装置の潜在危険要因を抽出する。
e) 人のエラー,装置の故障又は両者の相互作用が及ぼす人−装置系への危害の影響解析を行い,危害リ
スクを評定する。
人−装置系に生じる危害は,系を取り巻く環境の影響を敏感に受ける。装置は物理的及び/又は化学的
ストレスの影響を受け,故障を生じる。人も物理的及び/又は化学的ストレスに加え,心理的及び/又は
生理的ストレスによっても変化を来たし,エラーを起こす。
JA.4 三要素FMEAの構造及び機能
三要素FMEAの構造及び機能を,図JA.2に示す。三つの機能部分に大別できる。左端部はインプット
部で,原因系を記述する。解析の基点は,装置の正規動作及び人(ユーザ)の正規操作に置く。正規の動
作及び操作は,装置の製造業者があらかじめ設定する仕様書及び取扱説明書に基づく。装置の使用システ
ムは一連の正規動作及び正規操作のプロセスからなり,それらのプロセスは要素作業で構成する。その要
素作業ごとの逸脱的環境条件,その環境下で発生するおそれのある装置の逸脱的動作(故障モード)及び
人の逸脱的行為(エラーモード)並びに故障モード又はエラーモードの根本原因を検討し,洗い出す。
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右端部はアウトプット部で,結果系を記述する。原因系が及ぼす人−装置系への影響を解析する。人,
装置及びシステムへの危害を摘出し,そのリスク評点によって対策の優先度を決め,具体的な対策案を検
討する。
中央部はT形マトリックスになっており,当該要素作業における人的エラーをマトリックス解析する部
分である。次の三つの機能を分担する。
a) 意識フェーズとエラー見出し語とを組み合わせて類推し,当該操作における人のエラーモードを抽出
する。
b) 事故データベースから抽出した過去の事例とエラー見出し語とを組み合わせて類推し,当該操作にお
ける人のエラーモードを抽出する。
c) エラー見出し語と意識フェーズとを組み合わせて思考し,当該操作における他の手段で洗い出した人
のエラーモードに対する心理的要因を推理する。
三要素FMEAにおいて,人のエラーの解析に慣れていれば,中央部は省略し得る。この左端部と右端部
を直接結合すると,在来のFMEAに対応する様式になるが,人と装置との間の相互作用を解析し評価する
欄が追加されている。
意識フェーズに基づく 事故データベースか
エラーモードの 人のエラー解析部 らのエラーモードの
原因解析 抽出
エラー見出し語
潜在危険要因抽出部 を利用した解析 影響(危害)解析部
・エラーモード
・操作の要素作業抽出 の抽出 ・影響(危害)解析
・故障モード/エラー ・エラーモード ・リスクの格付け・評点
モード抽出 の原因解析 ・対策案の確認・評価
・モード間の関係分析
図JA.2−人−環境−装置の三要素FMEAの構造及び機能
JA.4.1 エラー見出し語の設定
エラー見出し語は,製品の正規操作の各要素作業と対照することによって,ユーザの逸脱行為を合理的
に類推できるようにガイドとして設定したものである。
エラー見出し語の基本形は,人的エラー発生の現象に着眼した分類,並びに大脳の情報処理プロセスで
エラーを分類するS-O-R(Stimulus-Organism-Response,刺激−生活体−反応)モデルにおける認知ミス,
判断ミス及び操作ミスを組み合わせた分類があり,前者を簡易形,後者を標準形という(表JA.1参照)。
標準の三要素FMEAは,標準形である。
JA.4.2 意識フェーズの導入及びマトリックス解析
エラーポテンシャル理論[21]は,大脳生理学に基づき,作業を実行する人の意識の強さを5段階の“意識
フェーズ”に分類するとき,人のエラー発生の内容,確率などがフェーズによって異なるというものであ
る。
エラーモードの根本原因を分析するときに,意識フェーズとエラー見出し語とのマトリックス解析によ
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って,人の心理的行動について理解を深め,かつ,演えき(繹)的推理によって得られたエラーモードを
認知心理学的に分析するために三要素FMEAを利用する。
JA.4.3 故障モードとエラーモードとの関係
同一要素作業において,同じ危害の原因となり得る装置の故障モード及び人のエラーモードを網羅的に
洗い出した後,それぞれのモード間の相互関係を論理的に解析できる。三要素FMEAでは,このモード間
の関係を考慮しつつ,人,装置及び人−装置系への影響を分析する。
モード間の関係は,異種モード間(エラーモードと故障モードとの間)又は同種モード間(故障モード
間又はエラーモード間)にかかわらず,次の四つの関係が主に現れる。
a) 論理積 二つ以上のモードが同時に発生した場合に潜在危険要因になる(記号 : ∩)。
b) 論理和 少なくとも一つのモードが発生すれば潜在危険要因になる(記号 : ∪。省略可。)。
c) 順序化論理積 矢印で指定した順に全てのモードが発生すると潜在危険要因になる(記号 : →←↑↓)。
d) 排他的論理和 いずれか一つのモードが発生する場合にだけ潜在危険要因になる(記号 : )。
多くの場合,モード間の関係は論理和になる。排他的論理和の関係はほとんど現れないため,通常の論
理和に含めて取り扱う。
表JA.1−エラー見出し語の基本形
a) 現象に着目した分類(簡易形)
忘 誤 理 不 気 見 操 操 禁 悪
れ っ 解 十 を え 作 作 止 戯
る て な 分 取 に に 性 作 ・
行 し に ら く 不 ・ 業 好
う 行 れ い 慣 効 の 奇
う る れ 率 実 心
の 施
低
下
b) -O-Rモデルに基づく分類(標準形)
受容 判断 行動
見 見 追 理 理 理 誤 行 忘 不 過 遅 早 違 順
え る 従 解 解 解 っ わ れ 十 度 す す う 序
に / で な 不 が て な る 分 に ぎ ぎ こ が
く 聞 き し 足 遅 理 い に 行 る る と 違
い く ず い 解 行 う を う
/ も す う ( す
聞 の る ( 余 る
き が 抜 分
に 違 け )
く う )
い
JA.4.4 影響の解析及び危害リスクの評定
危害リスクは危害の発生頻度とその及ぼす影響の大きさとの組合せで評価する。潜在危険の発生頻度及
び危害の影響度についてのランク付け及び評点を定めた例を,表JA.2に示す。この場合,潜在危険が起き
ると直ちに危害に影響を及ぼすものとする。この例では,リスク評点は,(発生頻度評点)×(影響度評点)
によって求める。
a) 発生頻度評点 危害の発生頻度は危害に至るまでに関わるモード間の関係に依存するので,次のよう
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に求める。
− 論理積 : Min[(人の評点),(装置の評点)]
− 順序化論理積 : [最初に発生する事象の評点]
− 論理和及び排他的論理和 : (人の評点)+(装置の評点)−1
b) 影響度評点 影響度の算定は,通常のFMEA又はFMECAにおける方法と変わらない。装置と人とに
分けて影響を評価できるようにするとよい。
c) リスク評点 リスク評価は,人,装置又は人−装置系に分けて行うとよい。リスク評点は,次のよう
に求める。
− (装置のリスク評点)=(装置の発生頻度評点)×(装置の影響度評点)
− (人のリスク評点)=(人の発生頻度評点)×(人の影響度評点)
− (系のリスク評点)=[a)の方法による(発生頻度評点)]×[(装置の影響度評点)+(人の
影響度評点)]
表JA.2−リスク評価のためのランク付け及び評点例
[発生頻度ランク例]
ランク 発生頻度 発生の程度 評点例
a 極めて頻繁 持続的,10 % 8
b かなり頻繁 1 %10 % 4
c 時折,まれ(稀)に 0.1 %1 % 2
極めてまれ(稀)に/
d 上記以下 1
ほとんどない
[影響度ランク例]
ランク 影響度 影響の程度 評点例
死亡,重傷,
I 致命的,重度 8
完全又は重度の装置損傷
軽傷,
II 軽度 4
軽度の装置損傷
微度の傷(擦り傷など),
III 微度 2
微度の装置損傷
IV 無視できる 上記より軽い。人又は装置への影響 1
JA.4.5 逸脱環境の洗い出し
標準から逸脱した人の使用環境及び装置の動作環境を洗い出し,エラー又は故障が起こりやすい水準又
は条件の組合せを,マトリックス図を用いて洗い出す。人の使用環境では,心理的及び/又は生理的環境
条件を重視し,起こりやすさで重み付けして表示するとよい。検討事項の一例を,次に示す。
a) 使用環境条件
− 気象条件(寒暖,乾湿,強風,地震など)
− 使用場所(屋外,屋内,乗り物など)
− 使用条件(連続,間欠,一回限りなど)
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− 故障時の作動状況など
b) 人的環境条件
− 生理的条件(老若,男女,疲労など)
− 心理的条件(喜怒哀楽,単調作業など)
この結果,重みの大きい条件の組合せを優先的に取り上げ,三要素FMEA表の“環境”欄に記入する。
人の生理的条件の一部として“対象者”欄に次の記号を記入する。
C : 幼児(乳児及び児童を含む。)
E : 高齢者
H : 障害者
対象者が限定できないときには,“全”と記入する。
JA.5 三要素FMEAの解析手順
三要素FMEAの標準の解析手順は,図JA.3の10ステップで行う。ステップ3ステップ6は人及び装
置の潜在危険要因を洗い出す作業であり,互いに補完的で,演えき(繹)的方法と帰納的方法とを交互に
行うことによって抽出する要因の網羅性を高めるために行う。ステップ3ステップ6はそれぞれ異なる
手段で構成し,要因の重複抽出をできるだけ減らす方向に設計する。緊急の解析要求などでステップを飛
ばさざるを得ない場合にも,ステップ3[演えき(繹)的方法]及びステップ4(帰納的方法)は,この順
序で最低限実施することが望ましい。この場合は解析を実施する人の知識及び経験への依存度が高まるた
め,できるだけ異なる分野の経験者でグループを構成し,知識及び経験のバランスをとることが望ましい。
これに対し,標準の方法では,データベースを利用するステップを加えることで属人的にならないように
する。
ステップ3ステップ6は,どのステップから始めてもよく,並行して行ってもよい。
なお,標準ステップの演えき(繹)的方法の後に帰納的方法を行うことによって,潜在故障要因の抽出
力が高まり,漏れ及び抜けも少なくでき,効率的であることが実証されている。
JA.6 三要素FMEA適用事例
人−環境−装置の三要素FMEAを市販のコーヒーメーカの使用上の安全解析に適用した事例を,図JA.4
に示す。また,人−環境−装置の三要素FMEAは人手を要する製造プロセスにおいて,作業者と生産設備
とのインタフェースで生じる不具合を解析する目的で,従来の工程FMEAの代わりに用いることもできる。
さらに,人−環境−人の三要素FMEAは医療,教育,設備保全,接客などのサービスにおける不具合及び
欠点の解析に用いられる[24]。
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JIS C 5750-4-3:2011の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60812:2006(IDT)
JIS C 5750-4-3:2011の国際規格 ICS 分類一覧
- 21 : 一般的に使用される機械的システム及び構成要素 > 21.020 : 機械,装置、設備の特性及び設計
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.01 : 品質一般
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- 規格番号
- 規格名称
- JISC5750-1:2010
- ディペンダビリティ マネジメント―第1部:ディペンダビリティ マネジメントシステム
- JISQ9000:2015
- 品質マネジメントシステム―基本及び用語
- JISZ8115:2019
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