JIS C 60695-1-10:2020 火災危険性試験―電気・電子―第1-10部:電気・電子製品の火災危険性評価指針―一般指針 | ページ 2

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C 60695-1-10 : 2020 (IEC 60695-1-10 : 2016)
(出典 : IEC 60695-4:2012の3.2.22)
3.11
定量的火災試験(quantitative fire test)
製品の使用環境に基づいて又は関連して試験片の使用状況を設定し,定義した変数(パラメータ)を理
論的な科学単位によって測定し,火災リスクの数量的な評価に使用できる火災試験
(出典 : IEC 60695-4:2012の3.2.23)
3.12
火に対する反応(reaction to fire)
火災試験において,規定の試験条件で火(3.2)にさら(曝)した場合の,試験片の挙動
注釈1 耐火性(fire resistance)は,火災に対する特別な挙動であり,通常は,火に対する反応とは考え
ない。
(出典 : JIS C 60695-4:2010の3.72を変更)
3.13
実規模火災試験(real-scale fire test)
寸法及び周囲の環境を最終使用状態に模した試験
注釈1 実規模火災試験は,通常,製品が仕様作成者によって定められた条件に従って,及び/又は通
常の慣例に従って用いられることを前提としている。
(出典 : JIS C 60695-4:2010の3.73を変更)
3.14
回路短絡(short-circuit)
電気回路の二つの点の意図しない接続
注釈1 回路短絡においては,回路の損傷,過熱,火災又は爆発の原因となる可能性がある。
3.15
小規模火災試験(small-scale fire test)
小さな寸法の試験片に対して実施する火災試験
注釈1 最大寸法が1 m未満の試験片に対して実施する火災試験を,通常,小規模火災試験という。

4 電気・電子製品が関わる火災危険性

  電気エネルギーの伝達,分配,貯蔵及び使用は,火災危険性に影響する可能性がある。
電気·電子製品における最も多い発火源は,過熱及びアークである。発火の可能性は,製品及びシステ
ムの設計,安全装置及びシステムの使用,並びに使用材料に依存する。
電気·電子製品が稼働しているときには,通常は発熱が伴い,時にはアーク及びスパークが発生する。
危険な状況を生じないように,電気·電子製品の設計の段階で,更に設置,使用及び保守においても考慮
することが望ましい。
電気·電子製品の火災は,多くの場合,回路短絡が原因で発生すると考えてよいが,このほかにも多く
の発火原因がある。このような発火原因には,正しくない設置及び使用並びに不適切な保守を挙げること
ができる。その例としては,一時的又は長時間の過負荷状態での運転,製造業者又は契約者が想定してい

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ない条件での使用,不十分な放熱,及び不完全な換気がある。表1は,電気·電子製品の一般的な発火現
象を記載している。
表1では,特に説明がない場合,発火源が電気·電子製品の内部にあると想定している。この想定は,
実際の状況の多くに当てはまると推定できる。
電気·電子製品が関わる火災は,外部の電気的ではない火災源によって発生することもある。電気·電
子製品の使用に起因しなくとも,危険な状態が発生し,その電気·電子製品が火災に巻き込まれることも
ある。このような状況は,総合的な火災危険性評価,個々の製品の安全規格,又は例えば,IEC TS 62441
の記載事項に従って対処する。
可能性のある発火源の出力を,附属書Aに示す。
製品の設計時には,通常及び異常な稼動状態での発火の防止は,起こり得る火災の拡大を抑えることよ
りも,優先度が高い。
理由を問わず,電気·電子製品が発火した場合を想定し,火災の影響を評価する。その場合に考慮すべ
き点を,次に示す。
a) 火災の拡大及び火炎の広がり
b) 発熱
c) 煙の発生(視界)
d) 毒性放出物の生成
e) 腐食性放出物の生成
f) 爆発の可能性
これらa) e)に関する指針は,附属書Bに示す規格に記載されている。爆発危険がある雰囲気において
使用する電気·電子製品の安全性については,JIS C 60079-0に規定されている。

5 火災危険性試験の基本

5.1 目的

  電気·電子製品に関する火災危険性試験の目的は,製品のどの燃焼特性が火災の潜在的影響を助長する
か,並びに/又はその製品若しくは部品が,火災の発生,拡大及び結果にどのように影響するかを決定し,
更にこの知識を電気·電子製品の火災リスクの減少に利用することである。

5.2 火災危険性及び火災リスク

5.2.1 火災危険性
火災危険性は,火災によって好ましくない結果を生じる可能性がある実際の物又は状況である(3.4参
照)。火災危険性は,燃焼する可能性がある物及び発火源となる可能性がある物を含む。電気·電子製品の
発火は,電気的にエネルギーを与えた部分又は部品から発生する可能性がある。発火を引き起こす条件に
は,化学反応,機械的発熱又は電気的な原因で起こる異常な温度上昇がある(IEC 60695-1-20参照)。
電気·電子製品に起こり得る一般的な発火を,起こり得る結果とともに,表1に示す。

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電気·電子製品が関わる火災は,外部の火災源によって発生することもあり,全体的な火災危険性評価
には,この可能性も考慮することが望ましい。
表1−電気·電子製品の一般的な発火現象
現象a), b) 原因 結果
回路短絡(3.14参照) 防護装置c) は,常に作動するとは限
潜在的な要因による電流回路の接触
らない。
(ターミナルの緩み,導体の脱落,他
の導電性物質の混入など) 部分的には,短期間でも温度上昇は
大きい。
絶縁インピーダンスの変化を引き起
こす部品の劣化 光,煙,可燃性ガス及び火炎が発生す
る可能性がある。
構成部品又は内部部品の突然の故障
周辺部品が局所的に発火する可能性
がある。
赤熱した材料が落下する可能性があ
る。
偶発的なアーク又はスパーク 防護装置c) は,常に作動するとは限
製品外部からの要因(例えば,システ
注記1 製品によっては,通常の稼 らない。
ム·ネットワークの過電圧,導電部品
動においても,アーク又はへの突発的機械的作用など) 発光,可燃性ガス及び火炎が発生す
スパークを発生する。 る可能性がある。
内部的要因(オン·オフ切り替え部分
における部品の劣化又は水分の浸 爆発する危険性がある雰囲気中では
入) 爆発を引き起こす可能性がある。
構成部品又は内部部品の突然の故障
周辺部品又はガスが局所的に発火す
る可能性がある。
一時的な大電流 電気回路の欠陥 防護装置c) は,常に作動するとは限
らない。
製品外部からの要因(例えば,システ
ム·ネットワークの過電圧)
異常な温度上昇(上の三つ以外の原導線内の過電流 防護装置c) の不作動(特別な防護の
因で引き起こされるもの) 不完全な接触 場合は除く。)。防護装置は,遅れて作
注記2 製品によっては,通常の稼漏れ電流(絶縁不良及び発熱) 動することもある。
動においても,熱を放出す 温度上昇はゆっくり進行する。した
構成部品,内部部品又は関連するシ
る。 がって,製品内の熱及び熱による生
ステム(例えば,換気システム)の故
障 成物の蓄積は,発火した場合に容易
に火災を引き起こす。
電気的な接触又は絶縁システムの状
態を変え得る物理的な変形 特に密閉した製品では,可燃性ガス
モータ軸のか(噛)み(回転子の拘束)
の蓄積は,発火又は爆発を引き起こ
急激な熱的劣化 す。
モータ軸の固着(回転子の拘束)は,
モータ巻線の過熱によるくすぶり及
び発火を引き起こす。
注a) 示した結果は,その現象が起こり得る可能性又は帰結の大きさを必ずしも示していない。
注b) これらの四つの現象のいずれかによって引き起こされた機械的変形及び構造的変化は,他の三つのうち,
一つ以上の他の現象を引き起こす可能性がある。
注c) 防護装置には,温度的,物理的,電気的又は電子的な防護装置を含む。
5.2.2 火災リスク
5.2.2.1 火災リスクの定量化
火災リスクを算出するためには,評価する火災の結果の大きさを定量化する必要がある。火災の結果と
は,熱,低酸素状態又は行動不能を引き起こす火災ガス濃度といった危険による,負傷若しくは死亡,又

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は火災被害の拡大などによる財産の喪失に相当するものである。火災全般のリスク評価の手法を確立する
ためには,広範にわたり潜在する火災シナリオを分析する必要がある。
火災の結果(例えば,定量化した評価結果)をc,任意の時間における火災が発生する確率をpとする
場合,その時間における火災リスクRは,通常,pとcとの積[式(1)]で算出する。
Rpc (1)
任意のシナリオ(シナリオ1)において任意の時間に任意の製品が火災にさら(曝)される可能性をp1,
異なるシナリオ(シナリオ2)において同一製品が火災にさら(曝)される可能性をp2というように,全
ての関連するシナリオを考慮したその製品のある時間における合計の火災リスクRtは,次の式(2)で算出
する。
m
Rt= pc
ii (2)
i 1
ここで, pi : シナリオiが起こる確率
ci : シナリオiの結果
m : 考慮したシナリオの数
注記 火災リスクの更なる議論及び火災危険性試験を基にしたシナリオ選定に関しては,ISO/TS
16732:2005に規定されている。
5.2.2.2 火災リスクの軽減
火災リスクを軽減するためには,二つの方法がある。一つは,発生の確率を減少させることである[式
(1)におけるpの減少]。もう一つは,結果の大きさを低減することである[式(1)におけるcの低減]。火災
危険性試験は,pの減少に関係する。
火災の発生確率を減らすことが可能な幾つかの異なる方法がある。最も重要な項目を次に示す。
a) 適切な材料の選定を含む,製品の設計及び選定
b) 耐火エンクロージャ及び耐火区画境界を用いた火災の封じ込め
c) 適切な組立方法及び取付方法
d) 回路保護装置の組込み
e) 火災検出システム及び抑制システムの使用
火災試験(箇条6参照)は,主にa)及びb)のために用い,またc)のためにもある程度用いる。
注記1 火災の封じ込め及び耐火性試験に関するガイダンスは,ISO 834規格群に記載されている。
注記2 火災の検出,安全装置の起動及び火災抑制に関するガイダンスは,ISO/TR 13387-7:1999に記載
されている。

5.3 火災シナリオ

  各火災段階(フェーズ)における火災シナリオは,酸素濃度,一酸化炭素と二酸化炭素との比(CO/CO2),
温度及び熱放射が異なる(表2参照)。
実際又は仮定の火災にさら(曝)される製品の使用環境を分析することは,火災の結果に重要な役割を
果たす条件及び事象の連鎖に関する説明のための手助けとなる。
火災シナリオを用いた製品火災の事象分析は,事象の結果に対する製品の火災反応に対応したものであ

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C 60695-1-10 : 2020 (IEC 60695-1-10 : 2016)
る。電気·電子製品の火災危険性試験の組合せを選定する場合の根拠の一つとしては,火災危険性試験の
組合せによる火災シナリオを記載することが望ましい。この内容は,なぜほかの組合せでなくその試験の
組合せを選択したのかを,使用者に効果的に伝えることになる。
表2−火災段階の特性
火災段階 燃料表 最高温度 酸素容積率 燃料と空 CO 100 CO2
面への 気当量と CO2 CO 2 CO
熱流束 °C % の比 効率
kW/m2 燃料の液面 上部層 流入 排気 (プルーム) v/v %
1 無炎
a) 自己燃焼
非該当 450800 2585 d) 20 20 − 0.11 5090
(くすぶり)
b) 外部照射によ b) c) c)
− 300600 a) 20 20 <1
る酸化熱分解
c) 外部照射によ
b) c) c)
る嫌気性熱分 − 100500 0 0 ≫1

2 換気の良い火
060 350650 50500 約20 約20 <1 <0.05 e) >95
炎d)
3 換気の悪い火炎f)
a) 一般に換気の
悪い区画にお
030 300600 a) 50500 1520 510 >1 0.20.4 7080
ける小さな局
所的な火災
b) フラッシオー
50150 350650 g) >600 <15 <5 >1 h) 0.10.4 i) 7090
バ後の火災
注a) 上限は,所与の可燃物の換気の良い火炎燃焼よりも低い。
注b) 火災室の上部層の温度は,外部から照射される熱放射源及び火災室の幾何学的形状によって決定される可
能性が最も高い。
注c) データは少ないが,熱分解に関して,この比は,材料の化学的特性,局所的な換気及び熱条件に依存して広
く変化すると予想される。
注d) 火災の酸素消費量は,室内酸素量又は酸素流入量と比較して小さく,火炎先端は酸素が乏しい高温ガスか
ら成る上部層の下にあり,すなわち,上部層はCOの発生を有意に増加させるほど低下しておらず,物体と
の接点による火炎の分離はまだ起こらず,燃焼速度は,燃料によって支配される。
注e) O/CO2比は,耐火性がある材料によって囲まれている区画では,1桁高くなることがある。0.75までの当
量比では,この比率の有意な増大はない。当量比が0.75から1までの間で,この比率の幾らかの増加が起
こり得る。
注f) 火災の酸素需要は,通気開口部によって制限され,火炎は上部層に延びる。
注g) 換気の良い火炎と類似しているとみなされる。
注h) プルームにおける当量比は測定されておらず,区画全体の当量比の使用は不適切である。
注i) より低い比率が測定されているが,これは一般的に,燃焼気流が室外に出てからの二次燃焼によるものと
考えられる。
出典 : ISO 19706:2011の表1

5.4 火災安全工学

  原則的に,建築工学における火災シナリオの主な火災安全特性には,3.6の火災安全工学の定義が当ては
まるが,火災安全工学の側面の幾つかは,電気·電子製品に当てはめることができる。電気·電子製品に
火災安全工学を適用する場合には,定量的な火災試験を行う。火災安全工学の指針は,IEC 60695-1-12に
示されている。

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