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C 60695-6-1 : 2006 (IEC 60695-6-1 : 2001)
4. 煙試験方法の概要
4.1 火災シナリオ及び火災モデル 近年,燃焼放出物の分析技術は大きく進歩した。燃焼生成物からな
る混合物の組成は,特に燃焼材料の性質,支配的温度(燃焼している時間の中で多くの時間を占める温度。
最大温度ではない。)及び換気状態,特に火面と酸素との接触の仕方に依存することが分かっている。表1
は,火災の異なる段階がどのように換気と関係するかを示す。実規模の火災とできるだけ一致させるため,
実験室規模の試験条件を表1から導くことができる。
火災は,物理現象と化学現象とが複雑に絡み合ったものである。そのため,実験室規模の装置内で実火
災のすべての様相を模擬することは困難である。火災モデルの妥当性の問題は,すべての火災試験に関連
した最も複雑な技術的問題となっている。
電気・電子製品の火災危険性評価のための一般指針は,IEC 60695-1-1による。
着火後の火災の進展の仕方は,可燃材料の物理的な配置はもちろん,環境条件によっても異なる挙動を
示す。しかし,ある区画内での火災の進展の仕方については,“温度−時間曲線”で示す場合,一般的に“三
つの段階+減衰の段階(図1参照)”であることが分かっている。
第1段階(無炎燃焼分解)は火災室の温度がほとんど上がらない,持続燃焼に先立つ火災の初期段階で
ある。発火及び煙の発生がこの段階の主な危険要因である。
第2段階(火災の進展)は発火で開始し,火災室の温度の急上昇を伴って終了する。煙の発生に加えて,
炎の伝ぱ及び熱の放出がこの段階の主な危険要因である。
第3段階(火災の最大展開)は,火災室内のすべての可燃物の表面が急速,かつ,大幅な温度上昇(フ
ラッシュオーバ)を伴って,突然の発火が部屋中で起こる程度にまで分解してしまっているときに始まる。
第3段階の終わりの時点では,可燃物及び/又は酸素の大部分を消費している。その結果,系の熱移動
特性及び物質移動特性並びに換気に依存する速度で温度が低下する。これが減衰である。
各段階で分解生成物の異なる混合物を形成し,次いでこの混合物がその段階における煙の密度に影響を
及ぼす。さらに,火災シナリオを検討する場合には,付随して起こる熱流束,利用できる酸素量及び煙の
換気設備の条件についての情報が特に必要である。
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表 1 火災の一般分類(ISO/TR 9122-1)
火災 酸素(1) 比率 温度(1) 放射照度(3)
% CO2/CO(2) ℃ kW/m2
第1段階 無炎燃焼分解
1)くすぶり 21 適用外 <100 適用外
(自己継続)
2)無炎燃焼(酸化) 520 適用外 <500 <25
3)無炎燃焼(熱分解) <5 適用外 <1 000 適用外
第2段階 火災の進展(有炎燃焼) 1015 100200 400600 2040
第3段階 火災の最大展開
(有炎燃焼)
1)比較的少ない換気 15 <10 600900 4070
2)比較的多い換気 510 <100 6001 200 50150
注(1) 区画内での一般環境条件(平均)
(2) 火炎近傍の炎流内の平均値
(3) 試験片上の放射照度(平均)
区画温度
第1段階 第2段階 第3段階 減衰期
無炎燃焼分解 火災進展期 最大展開期
0 着火 フラッシュオーバー 時間 t
図 1 区画内における火災の種々の段階
4.2 煙の生成物に影響を与える要因
4.2.1 概要 多くの要因が煙の生成及び煙の特性に影響を与える。そのような特性をすべて記載すること
は不可能であるが,幾つかの重要な変数の影響が確認されている。
4.2.2 分解の形態 煙は燃焼によって発生する。燃焼には有炎燃焼又は無炎燃焼があり,くすぶりを伴う
こともある。そしてこれらの異なった燃焼の形態は,全く別の種類の煙を発生する可能性がある。
無炎燃焼では揮発物が温度上昇によって発生する。揮発物は冷えた空気と混ざると,明るい色の霧状の
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粒子のように見える球状小滴に凝縮する。有炎燃焼では,粒子が非常に不規則な形状の黒色カーボンの多
い煙が発生する。有炎燃焼で生じる煙粒子は,ガス相及び不完全燃焼を引き起こすほど酸素濃度が十分低
い領域において形成する。炎の中の炭素質の煙粒子は,黄色の発光体のように見える(黒体の放射のよう
に)放射エネルギーを放つ。
無炎燃焼で発生する球状小滴の粒径は一般的に1 μmぐらいであるのに対し,有炎燃焼で発生する不規
則なすす粒子の大きさはしばしばより大きいだけでなく,正確に決めることが困難であり,またその大き
さは測定技術に左右される。
煙の量は,無炎燃焼より有炎燃焼の方がはるかに少ないということが木材の火災でしばしば観察される。
しかし,プラスチックでは,無炎燃焼で発生する煙の量が有炎燃焼で発生する煙の量より少ないか多いか
というようなまとまった概念はない。これらの理由によって,煙の試験は試験片での着火及び消火の時間
と同様,着火するかどうかを記録することが重要である。さらに,温度の低い煙が複合部品の背面から発
生することがある。これは,炎にさらされた表面から出る煙とは色及び組成において実質的に異なる。
試験片上の熱流束は,材料の燃え方に影響する。入射放射のより高いレベル(例えば40 kW・m-250 kW・
m-2)はもちろん,低いレベル(15 kW・m-225 kW・m-2)で材料から発生する煙を評価することもよい方法であ
る。このようにして,材料の発煙傾向に対する炎の成長段階の影響を評価できる。
4.2.3 換気及び燃焼環境 煙の発生量は火災シナリオによって決まるものであり,単にどの材料が燃える
かだけには依存しない。幾つかの材料では煙の生成量は,換気を制限することでかなり増加することが分
かっている。
実際の火災シナリオでの煙の発生量を決めるときに常に考慮すべきことは,燃焼速度及び燃焼にかかわ
る面積である。燃焼部分の単位要素当たりで少量の煙を発生する材料が,広い表面積にわたって急速に火
炎伝ぱする実際の火災の場合,多量の煙を発生することもある。
4.2.4 時間及び温度 煙粒子は時間がたつにつれて凝集することから,煙粒子の粒径分布も時間とともに
変化する。また,温度によって変化する性質もある。したがって,発生後時間が経過して冷えた煙の性状
は,発生して間もない熱い煙の性状とは異なることがある。これらの要素は,火災工学者が大きな建築物
中の潜在的な煙の動きを判断するために重要なものである。また,これらの要素は,発煙性試験を開発す
る場合にも考慮する必要がある。
4.2.5 煙粒子の除去機構 大きな煙粒子は,多くの機構によって除去され得る。放射熱源が燃焼ガス中に
存在する蓄積方法による試験では,煙粒子の再循環によって煙粒子の再加熱分解が起こり得る。ほかのよ
り大きな煙粒子の除去機構は,粒子の試験室内壁への付着及びかくはんファンによる作用を含む。これら
の機構は煙が火災空間を循環する実際の火災においても発生する。また,これらの効果は蓄積方法による
発煙性試験において見られるため,これらの試験においては,熱源への試験片の暴露初期段階(例えば,最
初の10分間)が煙発生率の決定に最も適切であることが認識されている。
5. 煙測定の原理
煙は霧状の粒子からなることから,煙量は質量特性(煙粒子の質量),光の不透過特性
及びこれら二つを複合したものから測定することができる([1]参照)。この規格は,視界の遮りに注目し
ており,質量測定法に関しては規定していない。光の不透過特性は,光路中の粒子の数,大きさ及び性状
の関数である。粒子が球状と考えると,煙が光を遮る度合いは,光路中に存在する粒子の断面積の合計に
関係する。これは平方メートル(m2)といった面積の単位で表す。
煙測定は,小規模,中規模又は実規模試験で行われる。煙の測定は,蓄積方法又は静的方法と呼ばれる
閉鎖系で実施することができる。また,煙の測定は動的方法と呼ばれる流動系でも実施することができる。
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静的方法はすべて小規模試験又は中規模試験であり,動的方法はすべての規模での試験で使用できる。
5.1 ブーゲの法則(Bouguers law) 光学的煙測定方法は,吸収体による単色光の減光を解説したブーゲの
法則から導かれる。
I/T ekL (1)
k (2)
1(/L)1n(I/T)
(kの単位は,m-1のような長さの逆数である。)
ここに, T : 透過光線強度
I : 入射光線強度
L : 煙の中の光の透過長さ
k : 線形自然対数吸収係数(又は減光係数) (図2参照)
L
I T
減光係数=kの煙
図 2 煙による光の減衰
5.2 減光面積 煙量測定の実用的な方法は,すべての煙粒子の総有効断面積を求めることである。この
面積は煙の減光面積Sとして知られている。減光面積は,光線中の煙粒子によって投影される影の総面積
と考えることができる。
減光面積は,減光係数及び煙の収容される容積に関連した次の式で表す。
S kV (3)
ここに, Vは煙の収容されるチャンバの容積である。
この式は,煙が均質の場合にだけ適用する。
光線
煙粒子
影
図 3 減光面積
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5.3 常用対数(log10)単位 単位光路の長さ当たりの光学密度(D)の算出に,常用対数を使用する例もある。
Dは線形常用対数吸収係数と呼ばれ,k(線形自然対数吸収係数)と同様にm-1といった長さの逆数の単位を
もつ。
I /T 10DL (4)
D (5)
/1( L) og10 (I /T)
k は k
減光面積Sは,Dから次の式によっても算出できる
S 2.303DV (7)
文献中には数種類の常用対数を使用した算出方法が存在するが,通常使用されるものは無次元の光学密
度 D'=log10(I/T) である。これによって得られた煙量D' は,光の透過長さに比例したものであり,試験
装置特有の値となるため,ある試験装置で得られた結果は,ほかの試験装置で得られた結果と直接比較す
ることはできない。
5.4 光源 煙測定には,白色光及び単一レーザ光を使用する。
煙中を通過する光の減衰は光の吸収及び散乱に依存し,レーザ光の場合は特に波長にも依存するため,
異なる光源を使用した測定システムによって得られた結果を比較する場合は,注意が必要である。
5.5 比減光面積 試験片の質量減少を測定してある試験では,比減光面積σfが算出できる。
(pdf 一覧ページ番号 )
f = S / Δm
ここに,Δmは試験片の質量減少である。
面積/質量となる(例 m2・kg-1)。
比減光面積σfは,小規模試験及び大規模試験の両方で得ることができる煙の基本的な測定値である。こ
れは,次に依存しない。
− 測定における光の透過長さ
− ガス流量
− さらされる製品の表面積
− 試験片の質量
比減光面積σfは,試験片の単位質量減少当たりの煙生成量を明確にするために使用する。
例えば,80 gの試験片を無炎燃焼条件で試験し,質量減少が50 g,残さが30 g,そして50 gの熱分解生
成物の揮発分による減光面積が4 m2であった場合,比減光面積σfは0.08 m2・g-1となる。また,同一試料
を有炎燃焼条件で試験し,質量減少が60 g,残さが20 g,そして燃焼生成物による減光面積が30 m2であ
った場合,比減光面積σfは0.5 m2・g-1となる。
比減光面積からは,火災による煙発生量も火災による煙発生速度も知ることはできないことを理解する
ことが重要である。これらの情報を得るためには,比減光面積σfに加え,試験片の質量減少(Δm)又は試
験片の質量減少速度(m.)のいずれか一方を知る必要がある。発生した煙による減光面積Sは,次の式による。
S fΔm (9)
動的測定システム(6.2参照)での比減光面積は,次の式による。
f kV/m (10)
V : 煙の体積流速
ここに,
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JIS C 60695-6-1:2006の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60695-6-1:2001(IDT)
JIS C 60695-6-1:2006の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.220 : 火災に対する防御 > 13.220.99 : 防火に関するその他の規格
JIS C 60695-6-1:2006の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC60695-6-30:2001
- 環境試験方法―電気・電子―火災危険,火災のもつ潜在的・偶発的危険の試験方法―火災に遭った電気製品からの煙による光の不透過度に起因する視界のさえぎりの評価に関する指針及び試験方法:小規模静的試験方法―煙による光の不透過度測定―試験装置の記述
- JISC60695-6-31:2002
- 環境試験方法―電気・電子―耐火性試験―煙による光の不透過度の測定―小規模静的試験方法―材料