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附属書A
(参考)
イオナイザの特性評価のための基礎知識
絶縁物又は絶縁した導体に帯電している静電気は,その周囲に電界を形成している。その帯電物体に対
し,逆極性に帯電した空気イオンを吸着させることによって静電気を中和し,電界を弱める。
A.1 空気イオン
空気イオンは,一つの帯電した酸素又は窒素分子をとりまく約10個の分子(多くは水分)の集合体(ク
ラスタ)である。通常,空気中に存在するイオンは比較的に少なく,その数は,1 cm3当たり1 000個以下
である。これらの“天然”イオンは,通常,大気中,地殻中,又は建築材料に含まれる放射性物質からの
放射線によって生成される。
中和プロセスでは,1 000個/cm3よりも高いイオン濃度が必要である。放射性物質もイオン濃度を高める
ために使用するが,最も一般的なイオン生成方法は,中性の分子と30 kV/cm(大気圧下)を超える電界強
度をもつ電界とによって加速した電子との衝突による。この方法を一般にコロナ放電式という。
A.2 移動度及びイオン電流
電界E中のイオンは,電界Eに比例した平均移動速度vで移動する。この平均移動速度は,式(A.1)によ
って算出する。
v=kE (A.1)
ここに, v : 平均移動速度
k : イオンの移動度
E : 電界
通常の空気イオンは,12×10−4 m2/(V・s) の範囲の移動度をもつ。
空気が移動度k,電荷eの正イオンを濃度n含んでいるとき,電界Eによって,その電界Eの方向に流
れる密度jの電流が生じる。この電流密度は,式(A.2)によって算出する。
j=enkE=λE (A.2)
ここに, j : 電流密度
e : 電荷
n : 正イオンの濃度
k : イオンの移動度
E : 電界
λ : 空気の正の導電率(又は,さらに詳細には,正イオンに
よる極導電率)。
λ=(enk)。
負イオンは電界と逆の方向に移動するが,このときの負イオンによる電流密度は,イオン電荷の数値と
して電荷eをとるとき,式(A.2)によって算出できる。負イオンによる電流も,電界の方向に向く。
――――― [JIS C 61340-4-7 pdf 16] ―――――
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A.3 中和電流
電荷qをもつ物体がイオン化空気で完全に囲まれているとき,物体の周囲に電界が形成され,周囲に存
在する空気イオンは,電界の順方向及び逆方向に移動する。電界は,点から点へと変化するが,常に電荷
qに比例する。物体に向かう電流は,電荷qの極性とは逆極性のイオンの流れによって生じ,中和電流と
いう。中和電流は,物体の電荷q及び,電荷qとは逆極性のイオンに対する周囲の空気の導電率に比例す
る。
A.4 中和速度
空気の導電率が変化しない場合,電荷中和の相対速度は一定であり,帯電物体の電荷は,空気の透過率
e0を導電率λで除したものに当たる時定数τをもって指数的に減衰する。この時定数は,式(A.3)によって
算出する。
0e
(A.3)
ここに, τ : 時定数
e0 : 空気の透過率
λ : 導電率
空気の中和能力を決めるのは導電率であり,イオン濃度そのものでない,ということに留意を要する。
例えば,煙によって,空気の粒子濃度が増加した場合,イオンの平均移動度すなわち導電率は,10分の1
以下に減少する。空気の単位体積当たりの帯電粒子の数,すなわち,イオン濃度は,それでも,ほぼ一定
のままである。
A.5 イオンの減少及び電界の抑制
式(A.3)を完全に満たす条件は,ほとんどない。
空気の導電率は,中和プロセスによって影響されないと仮定されていた。例えば,ルームイオナイザの
場合,中和されるべき電荷に起因する電界は,空気のイオンを部分的に減少させる。これは,空気の導電
率を下げ,中和を式(A.3)によって予測されたものよりも遅くする。イオンの減少の程度は,帯電物体から
の電界の強さに応じて増加する。中和速度は,中和すべき電荷の量が増加するに応じて遅くなる。
ファン及び圧縮ガスを用いるイオナイザが使われるときには,この影響はあまり多く報告されていない。
中和は,おおむねイオン化空気の風速に依存するようになる。また,帯電物体がイオン化空気に完全に囲
まれていると仮定されていた。そのときには,物体のどの部分からの電界も,式(A.2)に従って,中和電流
に寄与する可能性がある。だが,この場合は,まれなケースである。
電荷からの電束の主要部分が絶縁支持部材を通してひろ(拡)がっている場合,帯電物体に向かう中和
電荷の流れが生じない。この効果を電界の抑制という。物体のすぐ近くの空間の導電率が高くても,そば
に導体又は絶縁体の物体がある場合,他の場所からのイオンが帯電物体に沈着しているイオンに置き換わ
るのを物理的に妨げ,イオンの減少を引き起こす。
実際,時定数τを計算するとき,単純なケースから全ての変化を補正することは不可能である。通常,
この規格で説明しているように,イオナイザの中和特性を実験的に決めることが必要である。
A.6 帯電プレートモニタ(CPM)及び電荷中和
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CPMは,イオナイザの中和特性を測定するために用いる装置で,絶縁した導体の帯電プレートが構成要
素である。この帯電プレートを,適切な外部機器によって,規定した初期電圧に帯電させる。帯電プレー
トの電圧は,帯電プレートをエレクトロメータに接続するか又は帯電プレートからの電界を非接触電圧計
で測定することによってモニタする。
CPMがイオン化雰囲気中に置かれた場合,イオナイザの電荷中和速度は,減衰時間によって特徴づけら
れる。これは,帯電プレートの電圧が初期値から任意に選ばれた最終値まで低下するに要する時間で定義
する。
A.7 CPMでの減衰時間と実際の対象物との関係
CPMは,静電荷を中和するイオナイザの能力を表す再現性のよい測定を容易にするように設計している。
絶縁した,15 cm角の導体の帯電プレートは,既知の電圧へ繰り返し帯電できるように選ぶ。帯電プレー
トは,その静電容量が最小で15 pF,CPMの内部回路と接続したときに総合で20 pFとなるように,接地
面から距離をおいて固定する。通常, 帯電プレートの中心を作業面から15 cmの距離に設置して測定する。
これらの設計パラメータは再現性のある結果を得るという効果があるが,必ずしもCPM以外の他の物
体上の静電荷の中和に関するイオナイザの性能を特徴づけるということではない。多くのパラメータが中
和時間に影響する。
物体の大きさ及び形状は,接地面との位置関係と同様に,物体の総合静電容量に影響を及ぼし,また,
物体の電荷に起因する電界に影響を及ぼす。大きな静電容量をもつ物体は,より多くの電荷を蓄えること
ができ,その中和時間は,静電容量20 pFのCPMの帯電プレートによる中和時間よりも長い結果となる。
イオンは,電界によって物体に引き寄せられ,電界の強度,方向などによって中和時間に違いを生じる。
導体の電荷分布は,同一形状の絶縁物のものとは違いがあり,その結果,異なった電界を形成する。導体
は,また,電荷中和時間に影響を与える接地間抵抗を形成する可能性がある。
中和時間に影響を及ぼす他の現象には,電界の抑制及び中和する物体の近くにおける他の帯電又は接地
物体の存在が含まれる。電界の抑制は,帯電物体が接地した導体の表面のすぐ近くに置かれたときに起き
る。電荷からの電束の主要部分が,この接地した表面に向かい,帯電物体にイオンを引きつける電束が減
少する。同様に,他の帯電物体又は接地物体は,元の帯電物体の近くのイオンレベルを減少するように電
界を変化させる。
CPMは,イオナイザにおける標準的な特性測定を提供するが,別の物体の減衰特性には,少ししか情報
を与えない。重大な静電気抑制要求に関わる,この規格の使用者が,実際の物体に関する電荷中和時間を
測定するには,別の測定手段を用いることが望ましい。そのためには,静電気の電界計及び電圧計を一般
的に用いる。このとき,これらの測定機器の存在が,中和時間に影響を与えることがあることに留意を要
する。
A.8 オフセット電圧
イオナイザが正及び負のイオンの生成に関して平衡していないときには,イオン化領域に置いた物体は
電荷を得る。絶縁した導体の場合には,接地面に対して一定の電圧を得る。これをオフセット電圧という。
この電圧はCPMで測定できる。
A.9 試験領域の準備
イオナイザを評価する場合には,試験領域の準備に特に注意を払う必要がある。試験領域では環境条件
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が変化してはならない。これらの条件の変化は,空調装置のオンオフ制御,扉及び窓の開閉による気流変
化,試験場近くの装置又は人体の動きなどによって生じる。試験領域はCPMからイオンを遠ざける気流
のない場所とする。
A.10 気流によるイオン移送
空気イオンは,二つの典型的な方法によって移動する。それらは,電界に起因する静電気力及び気流に
伴う機械力である。これらは,空気イオンによる帯電物体の中和において,二つの基本的な方法を導く。
第1の方法は,帯電アイテムそのものの電界によって発現した静電気力を活用して,イオナイザからのイ
オンを帯電アイテムに移動又は引き寄せる方法である。この方法は,通常は,電荷からの電界がイオナイ
ザと相互に作用するように,中和すべき帯電アイテムの近くにイオナイザを置く必要がある。第2の方法
は,静電気力が中和に有効となる帯電アイテムの近くまで,気流にイオンをのせて,物理的にイオンを搬
送する方法である。この方法は,通常,イオナイザからの気流を帯電アイテムの方向に向けることで,イ
オナイザを帯電アイテムから距離をおいて設置することができる。
空気イオンを含む気流を試験又は使用するとき,考慮すべき,幾つかの重要な特性がある。第1は,イ
オン再結合である。この現象は,正及び負の空気イオン間の相互の静電気的吸引の結果である。イオン化
空気は永続性が乏しい。言い換えると,短期間に正及び負の空気イオンは,“再結合”し,電荷を交換し,
中性の分子として消散する。距離の増大又は風速の減少につれて起きるイオンの再結合は,減衰時間を増
大させる原因となる。
空気イオンを含む気流の第2の重要な特性は,空気イオンの流れそのものが中和を行うことである。帯
電物体又はCPMの帯電プレートが,直接に空気イオンの流れの中に入っていない場合には,減衰時間は,
通常長くなる。空気イオンの流れの端又は境界にCPMを置いた場合,減衰時間の測定が,通常は不安定
となり再現性が悪化する。空気イオンの流れの端又は境界での減衰時間の測定が,次の事項の影響を受け
ることに注意する必要がある。
− 試験パターンに対するイオナイザの配列の僅かな変化
− イオナイザ及びCPMの配置
− 試験パターンに対するCPMの位置
空気イオンの流れのパターンに影響を及ぼす物体又は周囲の状況は,また,空気イオンの流れの境界で
起きる減衰時間測定に大きな影響を及ぼす。これらの物体又は周囲の状況の例としては,次のものが含ま
れる。
− 試験領域にごく近接した壁
− 空調装置などからの気流
− 試験領域の近くで動く人体による気流
A.11 CPMまわりの気流の妨害
イオナイザの効率は,イオナイザとCPMとの間の気流が妨害されることによって低下する。イオナイ
ザとCPMとの間には障害物がないほうがよい。問題は,顕微鏡又はロボットのような製造工程で用いる
装置によって生じる。
イオン搬送の障害は,気流の偏りによっても生じる。空気イオンの流れをCPMと別の方向に導く気流
の乱れを生じるような装置が,試験領域のすぐ近くに存在する場合には,特別の注意を払う必要がある。
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A.12 “エアー・ブランケット”効果
気流が表面に向けられるときに,興味深い効果が起きる。その気流は,表面を覆うように広がる。この
効果は,ブロワ形イオナイザを使うときに当てはまる。つり下げ形イオナイザの場合,空気イオンを含む
気流の覆い(エアー・ブランケット)は,作業表面に形成される。このエアー・ブランケットは,通常,
数cmの厚さで,(イオナイザからの空気が直接吹き付けられていない場所まで)全作業表面に広がる。こ
の効果を,設置したイオナイザがもっているかを確認する試験では,CPMの帯電プレートを作業表面に接
近させて配置することが必要である。つまり,この現象を観測するには,エアー・ブランケット内に帯電
プレートを配置することが必要である。空気イオンを含むエアー・ブランケットが形成されていると,作
業表面の数cm位置に配した帯電プレートでの測定において,減衰時間が比較的短くなり,作業表面全体
にわたって均一になる。
A.13 測定誤差要因
A.13.1 減衰時間の典型的な変動
同一条件下でない場合,繰り返して行う減衰時間試験では変動が予想される。このため,規定する試験
箇所で繰り返し試験をすること,及び減衰時間の報告に平均又は統計処理を適用することが,通常は必要
である。
A.13.2 帯電プレートの絶縁
CPMが,人工的にイオンを増やしていない大気中に置かれていても,遅い速度での電荷中和が見られる。
これは,天然のイオン(無作為の放射性崩壊による),50 %以上の相対湿度,又は不完全な絶縁物に起因
する。これに対応する減衰時間は自己減衰又は帯電プレートの絶縁の不十分さとして知られている。自己
減衰は十分に長くなければならない。長くない場合,CPMによって測定する減衰時間の精度に影響を及ぼ
すことになる。
A.13.3 帯電電圧
減衰時間は,普通CPMにおいて初期試験電圧(一般的には,1 000 V)から最終試験電圧(一般的には,
100 V)まで減衰するのに要する時間として特定している。初期帯電電圧(CPMの帯電プレートが初期に
帯電する電圧)は,初期試験電圧よりも大きな値であることを確証するとき以外,頻繁には確認しない。
減衰時間は,初期試験電圧から測定するのであるから,初期帯電電圧は,重要な因子でない。ただし,
より高い帯電電圧は,長い減衰時間をもたらすことがある。それゆえに,一貫性のために全ての測定は,
同一の初期帯電電圧で実施するのが重要である。
A.13.4 帯電プレートの近くの物体
CPMの帯電プレートの近くにある絶縁物体は,オフセット電圧測定の精度に影響を与える。際立った関
心事は,CPMのための試験用取り付け台として用いる絶縁物体,例えば,プラスチックスである。プラス
チックスがCPMの支持に用いられ,そのプラスチックスがCPMの帯電プレートの近くにあるとき,プラ
スチックス上の静電荷はオフセット電圧を偏らせる。この問題は時間依存性があり,ゼロボルトに近いオ
フセット電圧測定を実施するときに大きな関心事となる。静電荷は,試験設備の通常の取扱いのとき,又
は減衰時間試験の間の空気イオンを含む気流によって,プラスチックス上に発生する。正確な測定には,
CPMプレートの近くの領域から全ての物体を取り除くことが重要である。プラスチックスがCPMの近く
に用いるとき,それらは,静電気拡散性にすることが望ましい。
A.13.5 試験領域における他の電界を生じる機器
試験領域は,コンピュータ・モニタ,ある種の光源,ある種のプロセス機器及び摩擦帯電源(コンベア
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JIS C 61340-4-7:2011の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61340-4-7:2010(MOD)
JIS C 61340-4-7:2011の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.220 : 電気学.磁気学.電気的及び磁気的測定 > 17.220.99 : 電気及び磁気学に関するその他の規格
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.200 : 熱力学及び温度測定 > 17.200.99 : 熱力学に関するその他の規格