JIS C 6186:2020 光ファイバ用光パワーメータ校正方法 | ページ 3

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C 6186 : 2020 (IEC 61315 : 2019)
3.36
ゼロ点誤差(zero error)
光入力端子に光を入力しない状態における光パワーメータの測定結果。
注記1 ISO/IEC Guide 99:2007の4.28参照。
注記2 本体及び附属書で使用していないが,対応国際規格の記載どおりとした。

4 校正の準備

4.1 組織

  校正機関は,校正に関する適切な要求に確実に従うことが望ましい。
注記 校正に関する実践の情報がJIS Q 17025 [18]にある。
各校正の段階を追った作業指示及び使用する装置を文書化した測定手順書をもつことが望ましい。

4.2 トレーサビリティ

  校正機関は,適切な要求に確実に従うことが望ましい。
注記 校正に関する実践の情報がJIS Q 17025 [18]にある。
校正手順で使用する全ての標準器は,あらかじめ,国立標準機関又は認定された校正機関に対するトレ
ーサビリティを確保した上で,手順書に従って校正する。校正手順の階層ごとに複数の標準器を維持する
ことで,標準器の性能を階層ごとに比較検証できるようにすることが有効である。校正結果に重大な影響
を及ぼすその他全ての校正装置が,全て校正済みであることを確認する。また,要求に応じてこれらの校
正装置及びそのトレーサビリティの連鎖を規定する。再校正の周期を規定し文書化しなければならない。

4.3 測定及び校正に関する注意事項

  ここでは,光パワーメータ又は光ファイバ用光パワーメータの全ての校正及び測定に関する一般的な注
意事項を示す。
温度制御機能のない検出器を用いる場合,校正は,温度制御室で行うことが望ましい。推奨温度は,23 ℃
である。湿度に敏感な検出器を用いる場合又は装置に結露の可能性のある場合は,湿度制御環境が必要と
なる。校正室の湿度変化は,空気の吸収を変化させるため,光パワーが変化する可能性がある。この影響
は,空間ビームで交互測定によって校正する際に湿度が変化するとき,1 360 nmと1 410 nmとの間で特に
顕著となる。参照標準器及び被校正器を,ほぼ等距離の空間ビーム光路で同時測定する場合は,ほぼ同時
に測定結果が変化するため,湿度の変動の影響は,校正結果において無視できる。
校正室は,きれいな状態を保つことが望ましい。コネクタ及び光入力端子は,測定前に常に清掃するこ
とが望ましい。検出器前面のコネクタの品質及び清潔さを確認することが望ましい。測定中は必要に応じ
て光ファイバを作業台に固定して,光ファイバの動きを極力抑えることが望ましい。光ファイバを動かす
よりも,検出器を光ファイバの方に移動することが望ましい。
光パワーメータの励振に使用する光源は,中心波長及びスペクトルバンド幅で規定し,十分狭いスペク
トルバンド幅の光源を用いて,測定値が広い波長域にわたり平均化されないようにすることが望ましい。
光源の安定性を確保するため,例えば,独立に光パワーをモニタすることなどは有効である。
レーザダイオードは,戻り光に敏感なので,安定性を増すため,レーザダイオードと被校正器との間に,
光減衰器又は光アイソレータを用いると有効である。レーザダイオードは,スペクトルバンド幅が狭いの
で,マルチモード光ファイバを用いると光学的基準面上にスペックルパターンを生じ,測定の不確かさが
増すことがある。
光ファイバコネクタ及びアダプタは,光源側と光入力端子又は検出器側との間で多重反射を生じ,測定

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結果に誤差を生む可能性があるので[2],光ファイバコネクタ及びアダプタは,校正用には低反射のものが
望ましい。そうでなければ,補正係数の導入及び不確かさの増加を考慮することが必要となる場合がある。
参照標準器では,検出器の直径は3 mm以上とし,空間ビームを受光しやすく,また,ごみ及びほこり
の影響も抑えやすくすることが望ましい。参照標準器の表面反射は,可能な限り小さいことが望ましい。
光源が拡散光を放射する場合,参照標準器は,積分球タイプが望ましい。平面検出器を用いて数学的に補
正することも可能で,光の遠視野分布に,参照標準器の検出器の角度依存性の測定値を乗じ,遠視野での
光の放射角にわたって積分して補正できる。
検出器は,ある波長域で顕著な温度依存性を示すので,高精度な校正のためには,検出器の温度制御を
検討することが望ましい。

4.4 使用者への推奨事項

  光パワーメータの使用者は,参照光パワーメータを1台以上維持して,光パワーメータ同士を比較し信
頼性を確認することが望ましい。この比較は,光パワーメータを再校正に出す前後で特に重要である。光
パワーメータが校正から戻った後,輸送などが原因で,その表示が変わっていないか,参照標準器との比
較を通じて使用者が判断できるからである。調整に起因する表示の変化は,校正証明書に記載がある。
定期的に,光パワーメータの補正係数又は偏差を比較することで,使用者は過度の経時劣化を検査でき,
再校正の間隔を適正化できる。

5 光パワーの絶対値の校正

5.1 校正方法

  光パワーメータの校正は,通常,被校正器及び不確かさが既知の校正済光パワーメータ(参照標準器)
の両方に光を照射し,参照標準器の測定結果を被校正器に値付けすることによって行う。
許容できるスペクトルバンド幅は,被校正器の分光応答度に依存する。すなわち,波長依存性が強けれ
ば強いほど,光源のスペクトルバンド幅は狭いものを用いる。通常のスペクトルバンド幅は,10 nm以下
とし,スペクトルバンド幅の広いLEDは,校正に使用しない。したがって,光パワーメータの校正には,
“白色”光源及び狭帯域フィルタ(例えば,モノクロメータ)の組合せ,レーザダイオード,又はスーパ
ーコンティニウムレーザ及び可変バンドパスフィルタの組合せを使用する。
光源の種類及び励振ビームの形状によって,表1に示すような六つの校正方法に分類することができる。
表1−校正方法及び対応する代表的な光パワーレベル
光源 空間ビームでの校正 光ファイバ出射ビームでの校正
“白色”光源及び狭帯域フィルタ P≒10 W P≒10 nW0.3 W(MMF)a)
P≒2 nW(SMF)b)
レーザダイオード P≒10 W数 mW P≒10 W数 mW[SMF b)及びMMF a)]
スーパーコンティニウムレーザ P≒1 W数 mW P≒1 W700 W[SMF b)及びMMF a)]
及び可変バンドパスフィルタ
注a) MF : マルチモード光ファイバ(通常,GIファイバ)
b) MF : シングルモード光ファイバ
光ファイバ用光パワーメータの校正には,光ファイバ出射ビームを使用することが望ましい。空間ビー
ムでは,その校正結果を,幾つかの波長における光ファイバ出射ビームでの校正結果を用いて補正するこ
とが望ましい。
校正方法には,交互測定法及び同時測定法がある。被校正器及び参照標準器を光源で交互に照射すると

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き,光パワーは,例えば,適切な安定化を行うなどして,できるだけ一定に保つことが望ましい。同時測
定法で校正する場合には,ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスを使用して,被校正器及び参照
標準器を二つのビームで同時に励振する。この場合,ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスの分
岐比をできるだけ正確に決定するとともに,その安定性を確認しなければならない。
一例として,交互測定法による光ファイバ出射ビームでの校正のための測定系を図3に示す。クラッド
モード除去及び適切なモード励振のための励振器も,測定系に含める。
Reference
参照標準器
power meter
S dB
光源
Source Attenuator
光減衰器 Cladding
励振器
被校正器
(オプション)
図3−光ファイバを用いた交互測定法の校正測定系

5.2 校正条件の設定

  校正条件は,校正手順における測定の条件である。校正条件のいかなる変化も,誤った測定結果を生じ
る可能性があるため,校正条件を設定し,保持することは,校正の重要な要素である。校正条件は,意図
する動作条件になるべく近い条件にすることが望ましい。これによって,動作環境における(追加の)不
確かさを最小限に抑えることができる。校正条件は,適用できる場合,不確かさを付記した公称値の形式
で規定することが望ましい。この規格の要求を満たすために,校正条件には少なくとも次の項目を含めな
ければならない。
a) 校正年月日
b) 周囲温度及びその不確かさ : 例 23 ℃±1 ℃
c) 周囲の相対湿度。校正に影響する場合に示し,規定がない場合は,結露点以下の相対湿度とする。
d) 光学的基準面での公称光パワーレベル
e) 光ビームの形状
1) 空間ビーム(例 平行ビーム)では,光学的基準面でのスポット径,ビームの開口数及びビームの
放射照度分布で規定する。代表的な放射照度分布には,一様分布,ガウス分布又は不規則分布(ス
ペックル状態)がある。
2) 光ファイバの種類,及び適用可能な場合,励振の度合い(例 SGI-50/125又はSGI-62.5/125マルチ
モード光ファイバを用いる場合は,IEC 61280-4-1で定義するエンサークルドフラックスのテンプレ
ート)
f) コネクタアダプタ対 : コネクタの種類,研磨状態,及び励振源の一部としてのアダプタ(適用可能な
場合)
g) 励振源の中心波長
h) 励振源のスペクトルバンド幅

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i) 偏光状態 : “無偏光”又は“状態が不明の偏光”。後者を選択した場合,5.4.3及び5.4.5において偏光
依存感度による不確かさを考慮しなければならない。
校正条件は,a) i)の項目に限定するものではない。ほかに測定の不確かさに大きな影響を及ぼすパラメ
ータがある場合は,それらも報告しなければならない。
空間ビームを使用した校正では,光パワーメータの光学的基準面の受光径よりも直径の小さなビームを
使用し,光学的基準面の中心に照射することが望ましい。
光ファイバを使用する校正では,シングルモード光ファイバ,マルチモード光ファイバのいずれを使用
してもよい。再現性の良いビーム特性をもつことから,シングルモード光ファイバが望ましいが,全ての
波長には適用できない。マルチモード光ファイバを使用する場合は,励振の再現が比較的容易な85 %
95 %の励振(限定モード条件)が望ましい(IEC 61280-4-1で定義するエンサークルドフラックスのテン
プレートがこの条件の良い例である。)。適切な励振を得るために,励振器が必要となる場合がある。マル
チモード光ファイバをレーザダイオードで駆動した場合は,不規則なビームパターン(スペックルパター
ン)が生じることに留意する。この場合,不確かさが増加することになる。
コネクタアダプタ対は,校正に光ファイバを使用した場合,すなわち,空間ビームを使用しない場合に
だけ報告することが望ましい。コネクタアダプタ対は,光パワーメータへの戻り反射が十分に小さい組合
せのものを使用することが望ましい。

5.3 校正手順

  校正手順は,次による。
a) 適切な校正条件を設定し,記録する(5.2参照)。全ての機器の電源を入れ,十分に時間をかけて安定
させる。
b) 取扱説明書に従って,参照標準器及び被校正器の機器状態を設定する。全ての機器の波長を光源波長
に設定する。適切な光パワーレンジを選択する。両測定器の機器状態を記録する。適用可能な場合,
両測定器のゼロ点調整を行う。
c) 参照標準器で光パワーPstd,1を測定する。参照標準器が調整済みでない場合は,参照標準器の校正証明
書に記載されている補正係数CFstdを測定結果に乗じる。必要ならば,5.4.4で算出した補正係数CFchange
も乗じる。測定結果Pref,1=Pstd,1×CFstd×CFchangeを記録する。
d) 被校正器で光パワーを測定する。取扱説明書に従って必要な補正を行う。測定結果PDUT,1を記録する。
e) 一連の補正係数の最初の係数を式(12)で算出する。
Pref,1
CFcomparison,1 (12)
PDUT,1
f) ステップc)からe)までをn回繰り返し,CFcomparison,1からCFcomparison,nまでの補正係数を幾つか算出する。
g) 個々の補正係数から,平均補正係数CFDUTを式(13)で算出し,記録する。
1 n
CFDUT CFcomparison,i (13)
n i 1
必要ならば,偏差Dは補正係数から,式(14)で算出する。
1
DCF 1 (14)
DUT
算出後,被校正器の利用に当たっては,測定結果にCFDUTを乗じなければならない。また,補正係
数が1となるように被校正器を調整することができるが,その場合は,確認のため,再度比較測定を
することが望ましい。

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5.4 校正不確かさ

5.4.1 一般事項
校正不確かさは,補正係数CFDUTの測定不確かさである。合成標準不確かさを,式(15)で算出する。
2 2 2
(
uCF DUT ) setupurefuDUT (15)
ここに, usetup : 測定系による不確かさ(5.4.2)
uref : 参照標準器の不確かさ(5.4.3)
uDUT : 被校正器による不確かさ(5.4.5)
式(15)は,入力量が独立又は相関がない場合にだけ有効である。幾つかの入力量にかなりの相関がある
場合には,その相関を考慮する必要がある(ISO/IEC Guide 98-3:2008参照)。
次に,拡張不確かさを,式(16)で算出する。
U(CFDUT)=k×u(CFDUT) (16)
ここに, k : 包含係数(附属書Aを参照)
5.4.2 測定系による不確かさ
測定系によって,次の不確かさが発生することがある。
a) 光源の光パワーの不安定性による不確かさ : 出力光パワーの固有の経時変化に加えて,レーザ光源の
光パワーは,反射戻り光の変動及び反射戻り光の偏光状態の変動に応じて不安定になることがある。
b) ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスの分岐比による不確かさ(同時測定法の場合) : 例えば,
それらのデバイスの偏光依存性に起因する。
c) 測定系及び測定方法によっては,a)及びb)のほかにも不確かさの考慮が必要な場合がある。
光源の光パワーの不安定性及びビームスプリッタ,又は光ブランチングデバイスの分岐比(同時測定法
の場合)の不安定性は,補正係数の測定にばらつきをもたらす。これらの不安定性による不確かさは,校
正中に測定した補正係数CFcomparison,1CFcomparison,n[式(12)]の実験標準偏差から算出できる。この不確か
さを減少させるために,比較の回数は多くすることが望ましい。
不確かさのタイプA評価の詳細は,附属書Aに規定する。
(
sCF comparison )
usetup,typeA (17)
n
ここに, s(CFcomparison) : 補正係数の実験標準偏差
n : 校正手順における測定サイクルの回数
この不確かさは,測定によって一度評価した標準偏差から算出し,全ての校正に用いてもよいし,タイ
プBの評価から算出してもよい。したがって,不安定性は,校正ごとに大幅に変化したり,被校正器には
依存しないことが望ましい。式(17)のnは,常に現在の校正手順における測定サイクルの回数である。
このタイプA評価の不確かさは,交互測定法を使用する場合の接続の繰返し性,又は校正手順における
測定条件の僅かな変化の影響を受ける。参照標準器(5.4.3)又は被校正器(5.4.5)に起因する不確かさも
(ある程度)考慮に入ることがある。不確かさの要因は漏れなく考慮するが,二重カウントしないことが
望ましい。
5.4.2に示した全ての部分不確かさを合成して,測定系による不確かさを式(18)で算出する。
m
2
usetup u (18)
setup,i
i 1
5.4.3 参照標準器の不確かさ
参照標準器の不確かさは,主として,参照標準器の校正,現在の校正条件の不確かさ及びこれらの校正

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JIS C 6186:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61315:2019(IDT)

JIS C 6186:2020の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 6186:2020の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISC6820:2018
光ファイバ通則