JIS H 7306:2018 超電導―残留抵抗比試験方法―ニオブ・チタン及びニオブ3すず複合超電導線の残留抵抗比 | ページ 2

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)

7.2 超電導転移温度の直上での抵抗(R2又はR2*)の測定

7.2.1  ひずみの影響の補正
ひずみが加えられたニオブ・チタン複合超電導線試料において,低温で測定された抵抗R2*はR2の正し
い値とはならないため,ひずみの影響に対する補正が必要である。ひずみの影響の補正方法については,
7.3による。
7.2.2 低温での抵抗のデータ取得
低温での抵抗の測定は,次による。
a) 室温での抵抗測定が終了した試料を,5.3に規定するR2測定用クライオスタット内にそのまま入れる。
A.1に記載するとおり,試料を水平方向に取り付けることを推奨する。試料の温度を変化させるため
の加熱機能を備えたクライオスタットについては,A.2を参照する。試料をゆっくりと液体ヘリウム
浴に浸して,5分間以上の時間をかけて液体ヘリウム温度まで冷却する。
b) 低温での抵抗R2*の測定中,試料電流I2 (A)を,電流密度が超電導線の総断面積当たり0.1 A/mm210
A/mm2の範囲で通電し,I2 (A),そのときに発生する電圧U (V),及び試料温度T (K)との関係を記録す
る。SN比を十分に高くするために,超電導転移温度の直上での電圧の絶対値が10 μVを超える条件
で測定を実施する。測定したデータのイラスト及びその解析方法を,図2に示す。
注記 下付きの+及び−を付けた電圧は,正電流を流した1回目の測定及び負電流を流した2
回目の測定で得られた値にそれぞれ対応し,U20+及びU20−は,電流を流さない状態で得
られた電圧である。明確にするために,U0revはU0−と一致させないで示す。直線(a)は温
度とともに電圧が急激に増加する領域で,直線(b)は電圧がほぼ一定する領域に引かれる。
図2−温度に対する電圧曲線及び各電圧の定義
c) 超電導状態にある試料に試験電流(I2)を印加し,ほぼ同時に二つの電圧,U0+(正の電流極性での初
期電圧)及びU0rev(電流極性を短時間に反転させたときの電圧)を測定する。正確なR2*の測定には,

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測定の妨げになる過大な電圧が存在しないこと及び試料の初期状態が超電導状態であることが必要に
なるため,次の条件を適用する。
U0 U0 rev
1% (4)
U2
ここで,Uは,試料の低温における常電導状態の平均電圧で,式(5)で定義される。
2
d) 完全に常電導状態になるように,試料をゆっくりと昇温する。5.3に規定するR2測定用クライオスタ
ットを用いた場合,試料の位置を液体ヘリウムの液面から適正な位置まで上げることで達成できる。
昇温速度を1分間当たり0.1 K10 Kに保って,試料電圧と温度との関係を記録する。温度に対する
電圧曲線は,転移して常電導状態になった後,ニオブ・チタン複合超電導線の場合は15 K近くまで,
ニオブ3すず複合超電導線の場合は25 K近くまで測定する。引き続いて,それぞれ15 K未満又は25
K未満の温度で試料通電電流をゼロとし,そのときの電圧U20+を記録する。
e) 試料をゆっくりと液体ヘリウム浴中に下げていき,初期電圧U0+を記録したときと±1 K以内の温度
まで冷却する。この温度で,逆極性(最初に記録したときの逆の極性)で同じ大きさの試料電流I2を
通電し,電圧U0−を記録する。この負電流でd)の手順を繰り返し,温度に対する電圧曲線を記録し,
更に,試料電流I2をゼロにしたときにU20+の電圧を記録したときと±1 K以内の温度において,U20−
の電圧を記録する。
f) 各2本の温度に対する電圧曲線において,電圧の絶対値が温度とともに急激に増加する領域で第1の
接線(a)を引き(図2参照),ニオブ・チタン複合超電導線の場合は電圧が温度に対してほぼ一定にな
る領域で,又はニオブ3すず複合超電導線の場合は電圧が緩やかに,かつ,ほぼ線形に増加する領域
で第2の接線(b)を引く。図2のU*2+及びU*2−は,正極性,負極性における各々これら(a)及び(b)2本
の接線の交点での値として決定する。
g) 補正後の電圧U2+及びU2−は,それぞれU2+=U*2+−U0+及びU2−=U*2−−U0−として算出する。平均
電圧Uは,式(5)によって求める。
2
U
U2 2
U=
2 (5)
2
h) 2*の正確な測定には,U2+及びU2−の測定中に熱起電力によるシフトが許容限界内にあることが要求
されるため,次の条件を適用する。
3% (6)
U2
ここで,Δ+及びΔ−は,それぞれΔ+=U20+−U0+及びΔ−=U20−−U0−として定義する。R2*の測定が式
(4)及び式(6)の条件を満たさない場合,条件を満たすように装置及び測定方法の改良を実施する。
i) 超電導転移温度の直上での抵抗値R2*は,式(7)によって求める。
U2
2*
R= (7)
I2

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7.2.3 その他の測定法
ここに規定した試験方法は標準的な方法であり,それ以外のR2*の測定法についてはA.3に示す。

7.3 ニオブ・チタン複合超電導線の曲げひずみに伴うR2*の補正

  超電導線の中に純銅部材が含まれない場合,R2*をR2とする。
純銅部材を含む試料については,曲げひずみεbをεb=100×(h/r) (%)で定義する。ここで,hは試料の厚
さの1/2,rは曲げ半径である。曲げひずみが0.3 %未満の場合,補正の必要はなく,R2*をR2とする。
純銅部材を含み,かつ,曲げひずみが0.3 %以上の場合には,曲げひずみがない状態における超電導転
移温度の直上での抵抗R2は,式(8)によって求める。
L
R2=R2* ρ (8)
SCu
ここで,Δρは,4.2 Kにおける引張ひずみε(%)に伴う純銅の抵抗率の増加であり,式(9)によって求め
る。SCu及びLは,8.4に規定する。
Δρ (Ωm)=6.24×10−12ε−5.11×10−14ε2 (9)
ここに, ε : 2 %以下
式(9)の計算では,等価引張ひずみεを,平角超電導線では(1/2) εbとし,丸形超電導線では[4/(3π)]εb
とする。純銅の残留抵抗比の曲げひずみ依存性を,A.4に示す。

7.4 残留抵抗比(RRR)

  残留抵抗比の値は,式(1)を用いて求める。

8 試験方法の不確かさ及び安定度

8.1 温度

  室温は,試料を測定用マンドレル又は測定用基板に取り付けた状態で測定する。室温の標準不確かさは,
0.6 K以下とする。

8.2 電圧測定

  抵抗測定において,測定電圧の相対標準不確かさは,0.3 %以下とする。

8.3 電流

  試料にプログラム可能な直流電源装置から直接電流を流す場合,試験電流の相対標準不確かさは,0.3 %
以下とする。試験電流を4端子法によって,標準抵抗器の電圧−電流特性から決定する場合,標準抵抗器
の相対合成標準不確かさは,0.3 %以下とする。直流電源から供給される直流の試料電流のふらつきは,あ
らゆる抵抗測定の間,0.5 %以下とする。

8.4 寸法

  試料の長手方向に沿った電圧端子間距離(L)の測定の相対合成標準不確かさは,5 %以下とする。純銅
マトリックスを含む超電導線について曲げひずみの影響を補正するに当たっては,純銅マトリックスの断
面積(SCu)を試料の公称銅比及び公称寸法を用いて決定する。それぞれ超電導線の直径(d)及びマンド
レルの半径(Rd)の測定は,その相対標準不確かさは,それぞれ1 %及び3 %以下とする。

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9 試験報告書

9.1 残留抵抗比の値

  試験によって得られた残留抵抗比の値を,次のように記載する。
rRRR 1Ure n (10)
ここで,Ureは包含係数がk=2のときの拡張不確かさでUre=2urで与えられ,urは相対合成標準不確か
さ,nは試料数である。
試料数nは,標準偏差の見積りのための正規分布が想定できるよう,4よりも大きいことが望ましい。n
の値が十分に大きくない場合は,一様分布を仮定する。

9.2 試料

  試験報告書には,可能であれば次の項目を含む。
a) 製造業者名
b) 等級及び/又は記号
c) 断面の形状及び面積
d) 断面寸法
e) フィラメント又はサブエレメントの数
注記 サブエレメントは,サブマルチともいう。
f) フィラメント又はサブエレメントの直径
g) ニオブ・チタン複合超電導線の場合は,次の組合せによる体積比
− ニオブ・チタンに対する銅の体積比
− ニオブ・チタンに対する銅・ニッケルの体積比
− ニオブ・チタンに対する銅及び銅・ニッケルの体積比,又は銅・ニッケル対銅対ニオブ・チタン
の体積比
− ニオブ・チタンに対するアルミニウム及び銅の体積比,又はアルミニウム対銅対ニオブ・チタン
の体積比
h) ニオブ3すず複合超電導線の場合は,銅と銅以外の金属との体積比
i) 純銅マトリックスの断面積(SCu)

9.3 試験条件

9.3.1  R1及びR2の測定
次に示すR1及びR2の測定の試験条件及び試験結果を報告する。
a) 試料の全長
b) 電圧測定端子間距離(L)
c) それぞれの電流端子の接触長さ
d) 通電電流(I1及びI2)
e) 電流密度(I1及びI2を線全体の公称断面積で除したもの)
f) 電圧(U1,U0+,U0rev,U*2+,U20+,U0−,U*2−,U20−及びU2)
g) 抵抗(Rm,R1,R2*及びR2)
h) 抵抗率[ρ1=(R1×SCu)/L及びρ2=(R2×SCu)/L]
i) 測定用マンドレル又は測定用基板の材料,形状及び寸法

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
j) 測定用マンドレル又は測定用基板への試料の取付方法
k) 測定用マンドレル又は測定用基板の絶縁材料
9.3.2 R1の測定
次に示すR1の測定の試験条件を報告する。
a) 温度設定及び試料の保持方法
b) m : Rm測定の温度
9.3.3 R2の測定
次に示すR2の測定の試験条件を報告する。
a) 昇温速度
b) 冷却及び昇温の方法
残留抵抗比の測定に関する追加参考事項を附属書Aに記載する。附属書Cに,複合超電導線の残留抵抗
比の参考試験方法における不確かさの評価について記載する。

――――― [JIS H 7306 pdf 10] ―――――

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JIS H 7306:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61788-4:2016(IDT)

JIS H 7306:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7306:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH7005:2005
超電導関連用語