JIS H 7306:2018 超電導―残留抵抗比試験方法―ニオブ・チタン及びニオブ3すず複合超電導線の残留抵抗比 | ページ 3

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
附属書A
(参考)
残留抵抗比測定に関する追加参考事項
A.1 試料の取付け方向
試料が直線状の線の場合,水平方向の取付けは垂直方向の取付けに比べて温度勾配を減らすことができ
るため,線が水平になるように基板に取り付けることが望ましい。ここで,水平方向の取付けとは,線の
方向が液体ヘリウム面に平行であることをいう。
A.2 試料を超電導転移温度を超える温度に昇温させる別の方法
試料を超電導転移温度を超える温度に昇温させる方法として,次に記載する方法も推奨する。これらの
方法においては,試料全体の昇温速度は,1分間当たり0.1 K10 Kにするのがよい。大きな温度勾配を避
けて,ゆっくりと昇温させるためには,ヒータ出力,測定用マンドレル又は測定用基板を含む試料の熱容
量及びヒータと試料との間の距離を注意深く選ぶ。
a) ヒータ法 試料をクライオスタット内の液体ヘリウム浴から取り出した後,測定用マンドレル又は測
定用基板に組み込まれたヒータによって,超電導転移温度を超える温度に加熱する。
b) 断熱法
1) 断熱法 試料,試料ホルダ,ヒータなどを納めたチャンバをクライオスタット内に設置する。チャ
ンバを液体ヘリウム浴に浸す前に,チャンバ内の空気を真空引きし,ヘリウムガスを充する。次
に,チャンバを液体ヘリウム浴に浸し,試料を5 K以下に冷却する。その後,ヘリウムガスを真空
引きして,ヒータ加熱によって試料を断熱状態で超電導転移温度を超える温度に昇温させる。
2) 準断熱法 低温測定の間を通じて,クライオスタット内に試料を液体ヘリウム浴からある距離だけ
離して保持する。測定用マンドレル又は測定用基板に液体ヘリウム浴と通じた熱アンカーを付ける
ことによって,試料を5 K以下の温度に冷却する。試料は,測定用マンドレル又は測定用基板に組
み込まれたヒータによって,準断熱状態のまま超電導転移温度を超える温度に加熱する。
c) 冷凍機法 冷凍機を用いて,測定用マンドレル又は測定用基板に装着した試料を6 K以下の温度に冷
却する。試料は,ヒータ又は冷凍能力を制御して超電導転移温度を超える温度に加熱する。
A.3 R2又はR2*の代替測定方法
R2又はR2*の測定には,次のいずれかの方法を用いてもよい。
a) 標準方法の簡便法 この方法は,ニオブ・チタン複合超電導線に対して適用され,電圧−温度曲線を
1回だけ測定する簡便な方法である。超電導状態にある試料をある方向に電流(I2)を通電して電圧測
定した後,電流方向を逆にして,電圧を測定する。これらの電圧を,図A.1に示すU0+及びU0revとす
る。次に,電流方向を元に戻して通電し,常電導転移した後,転移温度よりも約4 K高い曲線上の平
たん(坦)域で電圧U'2+を測定する。その後,電流をゼロにして,電圧値(U20)を測定し,再び電流
方向を逆にして,電圧(U'2−)を測定する。低温での抵抗は,式(A.1)によって求める。
U2
2*
R= (A.1)
I2

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
ここで,
U 2+−U 2
U 2= (A.2)
2
式(A.2)は,熱起電力の影響をおおむね補償する。R2*測定において,雑音電圧及び熱起電力の影響
が大きくないということを保証するために,式(A.3)及び式(A.4)の条件を満足することが望ましい。
U−
0 U0 rev
1% (A.3)
U2
2− 2
3% (A.4)
U2
ここで,Δ2+及びΔ2−は,Δ2+=|U'2+−U20|及びΔ2−=|U'2−−U20|で,それぞれ定義する。
図A.1−電圧の定義
b) 固定温度法 この方法は,7.2に規定する方法の代わりに,ニオブ・チタン複合超電導線での場合は,
転移温度よりも約4 K高い平たん(坦)な領域において温度を固定して直接R2又はR2*を決定し,ニ
オブ3すず複合超電導線の場合は,20 Kにおいて温度を固定して直接R2を決定する。この方法では,
試料全体が均一,かつ,一定温度であることを確認することが望ましい。ただし,ニオブ3すず複合
超電導線の場合は,20 Kの温度を0.6 Kを超えない合成標準不確かさで決定し,固定温度及び合成標
準不確かさを試験報告書に記載することが望ましい。また,7.2.2に定義する電圧U0+及びU0−を,こ
の方法におけるゼロレベルの電圧として記録することが望ましい。熱起電力の影響を除くため,試験

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電流を反転させて試料の二つの電圧信号(U2+及びU2−)をほぼ同時に測定するのがよい。これによ
って,低温での抵抗R2又はR2*を決定するときに,熱起電力の影響を取り除くことができる。
c) コンピュータ制御方法 コンピュータを用いて,電流方向及び試料の昇温を制御し,電圧−温度曲線
を測定することができる。周期的に電流を反転する又は電流のオン及びオフを繰り返すことによって,
オフセット電圧を補正することで,試料温度を変化させる1周期の間に全ての測定ができる。ただし,
熱起電力の影響を確認する必要がある。
d) 定期的な検査でのその他の簡便な方法 十分な経験をもつ測定者が指定した装置を用いて,次に示す
条件を満足する場合は,温度を測定しない簡便な方法を許容してもよい。簡便な方法による測定が定
期的な検定を通して,この規格に規定する標準方法と同じ結果,すなわち,決められた不確かさ以下
の値が得られることを示すことができる場合,この標準方法に代わって実施してもよい。これらの定
期的な確認作業は,次に示す方法のいずれかによって達成できる。
1) 標準方法を用いた試験機関と簡便な方法を用いた試験機関との比較
2) 単一試験機関における標準方法と簡便な方法との比較
3) 残留抵抗比が既知である標準試料を用いた定期的な簡便な方法での確認
4) 複数の試料を用いた定期的な確認。ただし,試料の一つは標準試料とし,毎回の測定において校正
基準とする。
A.4 ニオブ・チタン複合超電導線の残留抵抗比の曲げひずみ依存性
一般に,銅のような純金属の抵抗率(ρ)は,極低温において加えるひずみの増加とともに増加し,この
増加率は,低いρをもつ超電導線の方が,高いρをもつ超電導線よりも大きい。室温では,金属の抵抗率
に及ぼすひずみの影響はほとんどない。これは,高いrRRRをもつ材料では,ひずみに伴うrRRRの変化がよ
り顕著であることを意味する。参考文献[1]のラウンドロビン試験の結果によれば,低いrRRRをもつ試料の
曲げひずみの依存性は小さい。曲げひずみは,試料を測定用マンドレル又は測定用基板に取り付けるとき
に加わる。曲げひずみは,曲率半径に反比例するため,測定用マンドレルの直径が小さいほど,試料に加
わる曲げひずみは大きい。
純銅の4 Kにおける抵抗率の増加分Δρは,参考文献[2]の第8章に示されるように,冷間加工率rCW(%)
の関数で表される。rCWは,引張ひずみεの値にほぼ等しいため,εの小さい場合は,Δρは式(9)で表され
る。曲げひずみによる銅の抵抗率増加の依存性は,曲げひずみを等価的な引張ひずみに置き換えることに
よって得られる。
図A.2は,1993年及び1994年に実施したラウンドロビン試験の測定値から得られた,純銅マトリック
スをもつニオブ・チタン複合超電導線のrRRRと曲げひずみとの関係を示す。図中に,各試料の,式(9)に従
って計算して得られた線を示す。測定値は,計算値と基本的に一致し,高いrRRRをもつ材料では,曲げひ
ずみに敏感である。図A.3は,ひずみがない場合の50350のrRRRをもつ丸銅線の,式(9)によって得られ
た依存性を示す。図A.4には,丸銅線のひずみがない場合の規格化したrRRRのひずみ依存性を示す。平角
銅線の同様の依存性を,図A.5及び図A.6に示す。この規格の上限である350のrRRRをもつ銅では,ひず
みがないときに比べて2 %の曲げひずみでrRRRが10 %低下した。
高いrRRRをもつ材料の評価に当たっては,加える曲げひずみをできるだけ小さくするため,直線状の基
板を用いるか,又は大きな曲げ径をもったマンドレルを用いて評価することが望ましい。さらに,試料を
取り付けたときにハンドリングによって余計なひずみを加えないように特別に注意を払うのがよい。

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
図A.2−純銅マトリックスのニオブ・チタン複合超電導線のrRRRの曲げひずみ依存性
(計算値と実測値との比較)
rRRR (0)
図A.3−丸銅線のrRRRの曲げひずみ依存性

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
rRRR (0)
図A.4−丸銅線の規格化したrRRRの曲げひずみ依存性
rRRR (0)
図A.5−平角銅線のrRRRの曲げひずみ依存性

――――― [JIS H 7306 pdf 15] ―――――

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JIS H 7306:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61788-4:2016(IDT)

JIS H 7306:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7306:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH7005:2005
超電導関連用語