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ビツキー・ゴーレイ法の9点以上”の条件に相当する信号強度のスペクトルに対しては,三次又は二次の
サビツキー・ゴーレイ法で,9点以上の平滑化処理を一回だけ行う。ただし,表2に記載する点の数を超
えないように平滑化処理を行うよう注意する。
注記1 表2に基づく平滑化処理は,表1に記載されている信号強度以上のスペクトルに対しても有
効である。
注記2 微分モードでのAu M5N6, 7N6, 7のピークは,3本のスペクトルからなるが,0.15 %よりも低い
分解能で測定するとこのスペクトル構造がつぶれてしまう。例えば,約0.3 %よりも低い分
解能で測定すると3本のピークが2本のピークになってしまい,その結果二つの極小値が一
つの極小値[図3 c)のcピーク]として観察される。
表2−分光器の(最大)相対分解能に対応したサビツキー・ゴーレイ法の式に基づく
平滑化処理における最大点数。データ点の間隔は,0.1 eVとする
ピーク番号 帰属 分光器の(最大)相対分解能
n 0.1 % 0.2 % 0.3 % 0.4 % 0.5 %
1 Cu M2, 3VV 9 9 9 9 9
2 Cu L3VV 9 15 19 25 29
3 Al KL2, 3L2, 3 9 19 29 39 49
4 Au M5N6, 7N6, 7 19 29 39 55 69
6.8 分光器のエネルギー軸の補正値の決定
6.8.1 測定された分光器オフセットエラーのΔnを,次の式で求める。
Δn=Emeas, n−Eref, n (1)
ここに, Emeas, n : ピークnの運動エネルギーの測定値
Eref, n : 表3で与えられるピークnの運動エネルギーの基準値
運動エネルギーの基準値は,ダイレクトモード又は微分モードを選択して,適した値を使用する。
注記 参照値は,分光器の校正に真空準位又はフェルミ準位を基準としたエネルギーで与えられる。
従来は,真空準位が使われ,この方法で参照されたスペクトルの例が,参考文献[5][8]に示さ
れている。X線光電子分光も行うのであれば,参考文献[9]及び[10]にあるように,フェルミ準
位を基準とした方がより便利である。
6.8.2 オフセットエネルギーΔ1,Δ2及びΔ3の三つの値,又はΔ1,Δ2及びΔ4の三つの値を調べ,これら
の絶対値が全て2 eV以下ならば,分光器は校正されている。三つのうち一つでも,絶対値が2 eVより大
きい場合は,分光器製造業者の推奨する方法で再校正するか,又は6.8.3で規定するエネルギー軸の校正
法を用いる必要がある。分光器が,初めて再校正された後,6.6で規定する測定を繰り返し,Δ1,Δ2及びΔ3,
又はΔ1,Δ2及びΔ4の絶対値を再決定し,それらの値が全て2 eV以下となっていることを確認する。オフ
セットエネルギーΔ1,Δ2及びΔ3,又はΔ1,Δ2及びΔ4の三つの値を調べる。
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表3−真空準位基準及びフェルミ準位基準の参照運動エネルギー
単位 eV
ピーク番号 帰属 運動エネルギー
Eref, n
ダイレクトスペクトル 微分スペクトル
n 真空準位 フェルミ準位 真空準位 フェルミ準位
1 Cu M2, 3VV 58 62 60 64
2 Cu L3VV 914 919 915 b) 920 b)
3 Al KL2, 3L2, 3 1388 1393 1390 b) 1395 b)
4 Au M5N6, 7N6, 7 2011 a) 2016 a) 2021 2026
注記 この表は,参考文献[11][13]を引用している
注a) 電子線エネルギーが6 keV以下で,かつ,0.3 %る。
b) 0.27 %6.8.3 分光器の調整がなされていない場合,校正した運動エネルギーEcorrと運動エネルギーの測定値Emeas
とは,次に示す線形関係があると仮定する。
Ecorr=Emeas+ΔEcorr (2)
ここに, ΔEcorrは,式(3)によって与えられる。
ΔEcorr=aEmeas+b (3)
エネルギー軸の目盛に比例する誤差a及びエネルギーが0のときのオフセット値bは,負の三つのΔn
値,−Δ1,−Δ2及び−Δ3,又は−Δ1,−Δ2及び−Δ4から最小二乗法によって求められる。これは,コンピ
ュータで処理するか,又は式(4)及び式(5)から求められる。bは,それぞれのEref, nの値に対する測定値のず
れ,ΔEcorrとして扱われる。
1
Emeas,n
n Emeas,n
n n
n 3 n n
a 2 (4)
2 1
Emeas
,n Emeas,n
n 3 n
1 1
b n a Emeas,n (5)
3 n 3 n
6.8.4 Δ1,Δ2及びΔ3,又はΔ1,Δ2及びΔ4,a及びbの値,並びに必要に応じて,行った校正手順につい
て分光器の報告書に記録する。
6.9 次回の校正
6.9.1 次回の校正は,設備に重要な変更又は修理を行った直後,6.9.2の方法でピークエネルギーが2 eV
以上変化したとき,又は3か月を超えないうちに行わなければならない。最初の再校正でΔ1,Δ2及びΔ3,
又はΔ1,Δ2及びΔ4のいずれかが2 eV以上であれば,校正の間隔を半分にしなければならない。2回目の
再校正でΔ1,Δ2及びΔ3,又はΔ1,Δ2及びΔ4のいずれかが,まだ2 eV以上であれば,更に間隔を半分に
しなければならない。校正を繰り返したときに,Δ1,Δ2及びΔ3,又はΔ1,Δ2及びΔ4の全てが2 eVより小
さくなるまで,校正の間隔を短くしなければならない。
注記 一般的に最初は校正の間隔を短くして,オフセットのドリフトの程度を低く保つことが賢明で
ある[1]。この規格を使ってみると,3か月以内にはほとんどの分光器が校正を必要としないこと
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が経験的に分かっている。したがって,分析者の仕事を低減するためにこれとは逆の手順が採
用されている。
6.9.2 分光器の電子部品は,予期しない使われ方によって,壊れたり又は変化したりすることがある。こ
の3か月という期間中で変化の兆候を捉えるためには,定期的に測定している試料の選択されたピークエ
ネルギーを確認し,以前の値,又はもし純物質なら利用可能な文献値などと比較することが有効である。2
eVを超えた違いがあるかどうか確認し,必要であれば再校正する。
注記 AESスペクトルのハンドブックは,ピークエネルギーが微分モード(参考文献[5][9]参照),
ダイレクトモード(参考文献[8]参照)のどちらで記載されていても利用できる。微分モードの
最小値のエネルギーは,直接ピークのエネルギーより,通常は値が1 eV5 eV高くなる。ハン
ドブック間での更なる違いは,次のとおりである。
− 参考文献[5][8]は,全て真空準位を基準としたデータであるが,参考文献[9]ではフェルミ
準位が使われている。フェルミ準位を基準とした値は,真空準位を基準とした値より,通
常は4.5 eV大きくなるため,4 eV大きく表示されている値もあれば,5 eV大きく表示され
ているものもある。ピークエネルギーは,特に異なるモードでは分析器の分解能と微分変
調振幅の強度との両方に依存するため,これらのハンドブックにある値は,相互に,また
分析者が得た値と5 eV以上差があるかもしれない[14]。
− 参考文献[6][8]の分析器の分解能は,公称0.5 %であるが,参考文献[5]及び[9]の分解能は
0.6 %である。
− 参考文献[6]での微分変調振幅は2 eVであるが,参考文献[5]及び[7]では,微分変調の強度
は1 000 eV以下のオージェ電子エネルギーでは2 eV,それより高エネルギーでは,それぞ
れ5 eV,6 eVである。参考文献[8]及び[9]では,微分関数の振幅はそれぞれ5 eV,4 eVで
ある。微分の振幅を高くする効果で,ピークは2 eV程度高エネルギー側にシフトしている。
− X線光電子分光に関連した参考文献[10]に示されたデータは,化合物も含んでいるが,フ
ェルミ準位を参照した唯一のダイレクトモードの高分解能分光器によるものである。
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参考文献
[1] JIS K 0166 表面化学分析−高エネルギー分解能をもつオージェ電子分光器による元素分析及び化
学結合状態分析のためのエネルギー軸の校正方法
注記 対応国際規格 : ISO 17974,Surface chemical analysis−High-resolution Auger electron
spectrometers−Calibration of energy scales for elemental and chemical-state analysis(MOD)
[2] SAVITZKY, A. and GOLAY, M.J.E., Smoothing and differentiation of data by simplified least squares
procedures, Analytical Chemistry, July 1964, vol. 36, no. 8, pp. 1627 1639 with corrections by STEINER, J.,
TERMONIA, Y. and DELTOUR, J., Comments on smoothing and differentiation of data by simplified least
square procedure, Analytical Chemistry, Sept 1972, vol. 44, no. 11, pp 1906-1909
[3] SEAH, M.P. and TOSA, M., Linearity in electron counting and detection systems, Surface and Interface
Analysis, Mar. 1992, vol. 18, no. 3, pp. 240-246
[4] SEAH, M.P., LIM, C.S. and TONG, K.L., Channel electron multiplier efficiencies: The effect of the pulse
height distribution on spectrum shape in Auger electron spectroscopy, Journal of Electron Spectroscopy, Mar.
1989, vol. 48, no. 3, pp. 209-218
[5] DAVIS, L.E., MACDONALD, N.C., PALMBERG, P.W., RIACH, G.E. and WEBER, R.E., Handbook of
Auger Electron Spectroscopy, Eden Prairie, MN: Physical Electronics Industries, 1976
[6] MCGUIRE, G.E., Auger Electron Spectroscopy Reference Manual, New York: Plenum, 1979
[7] SHIOKAWA, Y., ISIDA, T. and HAYASHI, Y., Auger Electron Spectra Catalogue: A Data Collection of
Elements, Tokyo: Anelva, 1979
[8] SEKINE, T., NAGASAWa, Y., KUDOH, M., SAKAI, Y., PARKES, A.S., GELLER, J.D., MOGAMI, A. and
HIRATA, K., Handbook of Auger Electron Spectroscopy, Tokyo: JEOL, 1982
[9] CHILDS, K.D., CARLSON, B.A., LAVANIER, L.A., MOULDER, J.F., PAUL, D.F., STICKLE, W.F. and
WATSON, D.G., Handbook of Auger Electron Spectroscopy, Eden Prairie, MN: Physical Electronics Inc.,
1995
[10] WAGNER, C.D., Photoelectron and Auger energies and the Auger parameter: A data set, in Practical Surface
Analysis, Vol. 1, Auger and X-ray Photoelectron Spectroscopy, Chichester: Wiley, 1990, pp. 595-634
[11] SEAH, M.P., AES: Energy calibration of electron spectrometers, IV−A re-evaluation of the reference
energies, Journal of Electron Spectroscopy, Dec. 1998, vol. 97, no. 3, pp. 235 241
[12] SEAH, M.P., SMITH, G.C. and ANTHONY, M.T., AES: Energy calibration of electron spectrometers I−An
absolute, traceable energy calibration and the provision of atomic reference line energies, Surface and
Interface Analysis, May 1990, vol. 15, no. 5, pp. 293 308
[13] SEAH, M.P. and GILMORE, I., AES: Energy calibration of electron spectrometers III−General calibration
rules, Journal of Electron Spectroscopy, Feb. 1997, vol. 83, nos. 2 and 3, pp. 197 208
[14] ANTHONY, M.T. and SEAH, M.P., Intensity and energy calibration in AES: The effect of analyser
modulation, Journal of Electron Spectroscopy, August 1983, vol. 32, no. 1, pp. 73 86
――――― [JIS K 0165 pdf 14] ―――――
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附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
ISO 17973:2002 Surface chemical analysis−Medium-resolution Auger electron
JIS K 0165:2011 表面化学分析−汎用オージェ電子分光器による元素分析のため
のエネルギー軸の校正方法 spectrometers−Calibration of energy scales for elemental analysis
(I) JISの規定 (II) (III)国際規格の規定 (IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの評価(V) JISと国際規格との
国際 及びその内容 技術的差異の理由及び
規格 今後の対策
箇条番号 内容 箇条 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
番号
及び題名 番号 の評価
1 適用範囲 汎用オージェ電子分光器に 1 JISとほぼ同じ 変更 オージェ電子分光器でプローブとして使用ISO 17973の見直しの際
よる元素分析のためのエネ する電子線は,加速電圧(kV)で表記されに変更を要請する。
ルギー軸の校正方法につい るのが普通であり,エネルギー単位では計測
ての規定 は困難であるために4 keVから4 kVに変更
する。技術的内容に差異はない。
4 記号及び 記号及び略語についての規 4 JISとほぼ同じ 追加 ISO 17973の見直しの際
本体でR(相対エネルギー分解能)が使用さ
略語 定 に変更を要請する。
れているため追加したもので,技術的内容に
差異はない。
6.2 標準試 試料の取付け方法について 6.2 JISとほぼ同じ 追加 本体の内容が,この規格利用者に理解しづら −
料の取付け の規定 いと考え,注記を追記したもので,内容の補
足説明であり,技術的内容に差異はない。
6.8.2 分光器のエネルギー軸の補 6.8.2 JISとほぼ同じ 削除 本体に既に述べられている内容で重複し冗 −
正値の決定についての規定 長になるので注記を削除したもので,技術的
内容に差異はない。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価 : ISO 17973:2002,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
K0
− 追加 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
16
− 変更 国際規格の規定内容を変更している。
5 : 2
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
0
− MOD 国際規格を修正している。
11
4
JIS K 0165:2011の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 17973:2002(MOD)
JIS K 0165:2011の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0165:2011の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0147:2004
- 表面化学分析―用語