JIS K 6848-2:2016 接着剤―接着強さ試験方法―第2部:接着前の金属及びプラスチックの表面調整のための指針 | ページ 2

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K 6848-2 : 2016 (ISO 17212 : 2012)
− 水を酸に加えてはならない。
− かくはん(撹拌)しながらゆっくりと酸を水に注ぐ。
発熱反応が予測される反応液は温度上昇があるので注意する。

5 初期調整技術

5.1 一般

  安全性に厳しい構造物を接着する場合,必ず最適処理(可能な限り表面調整すること)を行わなければ
ならない。最適処理を行うためには,無機コーティング,有機コーティング,又はその両方を組み合わせ
たコーティングのいずれの表面についても,洗浄及び変性の両方を適切に行う技術が必要である。
対照的に接合部が少し負荷されるだけのときは,微量の油を溶解する接着剤を使用することが可能であ
り,表面調整は必要ない。ただし,製造業者の指示に従う。

5.2 取扱い,洗浄及び保管

5.2.1  取扱い
接着しようとする部位は,表面調整に先立って可能な限り小さくする。調整後は,その部位に直接触れ
てはならない。それが難しい場合は,清浄な毛羽立ちのない木綿又はナイロン製の手袋を使用する。
5.2.2 洗浄
油又はグリース系の付着物は,できれば水系洗剤を用いて除去する。ノニオン洗剤がよい結果をもたら
す。金属に対しては,炭化水素類又は付着した汚れだけでなく金属石けん又は金属塩類も除去するため,
アルカリ洗剤が特に有効である。ただし,これらをアルミニウムに用いてはならない。
アルミニウムは,水酸化ナトリウム又は他のアルカリ性物質を基剤にした洗剤に触れることのないよう
に注意する。幾つかの知的財産権のある混合洗剤は,加温して使用するが,陰極電流又は陽極電流のいず
れかを使用してもよい。いずれの洗剤を使用する場合も,成分は常に完全に洗い落とし,温かい清浄な乾
燥した油分のない60 ℃の温風で,約10分間乾燥する。
識別マーク又は塗料を除去するために溶剤を使用する必要があれば,プロパン-2-オール(イソプロピル
アルコール)をできるだけ使用する。代わりにアセトン,メチルエチルケトン又は許容されたハロゲン化
溶剤(箇条4参照)を使用してもよい。溶剤は,熱可塑性プラスチックに溶解,応力割れなどの大きな損
傷を与える場合がある。ポリカーボネート,ポリメチルメタクリレート及びアクリロニトリルブタジエン
スチレン系プラスチックが,特に影響を受けやすい。
超音波洗浄は,小形部品の調整に適している。
蒸気浴の使用は,一般に望ましくないとされているが,チタンとその合金との調整には望ましい。ただ
し,塩素化溶剤は,この場合使用してはならない。
工業プロセスの幾つかは,調整中又は調整後に表面に損傷を与えることがある。装置の使用は,しばし
ば有害なダスト,煙霧又は蒸気を空中に放散する。油煙,離型剤スプレー,及びめっき場の大気が特に有
害である。したがって,表面調整(及び接着)はそのような汚染物質を避けた分離エリアで行う。
5.2.3 保管
実験室と生産現場とでは,保管条件に違いがある。特別な保証が必要な場合,保管は周囲温度(23±2) ℃,
相対湿度(50±5) %に保持する。部品は,軟鋼のような酸化を受けやすい材料を除き,8時間以内に使用す
る。酸化しやすい表面の場合は,表面調整後,接着前は常に乾燥雰囲気に保持し,できるだけ速やかに接
着する。部品に手で触れることなく密閉容器に保持するか,又は漂白剤の入っていないクラフト紙のよう
な汚染しない適切なカバーで覆う。

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工業生産では,最低性能規格を満たすことが求められる。このため,生産者は,組立前の調整表面が最
低性能規格を満たすことを確認しておく必要がある。酸化,縮合及び汚染によって生じる損傷の可能性に
ついて注意する。中でも離型剤による汚染には特に注意し,建屋内では決して使用してはならない。部品
は,調整後,できるだけ早く,望ましくは4時間以内に接着する。

6 表面変性

6.1 物理的変性 : 機械的(粗面化)変性

6.1.1  研磨
研磨は,湿式若しくは乾式の,耐水性研磨紙(粒子径45 μm106 μm)又は研磨不織布を用いて行う。
手順は,次による。
a) 表面全体を,均一に粗面化するまで,一方向に軽く研磨する。
b) )の操作で生じた痕跡が消えるまで,直角方向に研磨する。
c) 直径100 mm以下の円を描くように研磨し,b)で残った痕跡を全て消し去り,表面を均一にする。
d) 研磨くず(屑)を取り除く。乾式研磨では,できれば真空を用いる。さもなければ,適合する換気室
で清浄で乾燥した油分を含まない空気を吹き付ける。湿式研磨ならば,清浄で毛羽立ちのない溶剤を
湿した布で乾燥する。
e) 次工程として,接着工程,又は,表面変性工程に進む。
なお,部品を接着する場合は,乾燥し,1分以内に接着することが望ましい(5.2.3参照)。乾燥は60 ℃
以下の温度で,温かい清浄な乾燥した油分を含まない空気流の使用で早めることができる。
また,研磨材が障害物にならないように,かつ,汚染物が転移しないように注意しなければならない。
6.1.2 ブラスト法
乾式ブラスト法は,金属部品に対して通常用いられている。しかし,過剰な浸食を避けるため工程を弱
め,注意して用いれば,硬質プラスチックに対しても有効となる。硬質プラスチックには二酸化炭素微粒
子又は破砕ナッツ殻のような特殊研磨材が適切である。主要な金属部品は普通粒子径45 μmから106 μm
までの研磨材で乾式ブラストし,表面が均質な外観になるまで調整する。鉄系又は鋼系研磨材はアルミニ
ウム,銅,ステンレス鋼又はチタン部品に使用してはならない。
湿式ブラスト法は,水又は水蒸気に懸濁した20 μm以下の研磨材粒子を用いて表面に鋭角に吹き付ける
方法で,小形金属部品に特に有効である。通常適切な系は水溶性添加物を含んでいることに注意する。こ
のため,表面のさらなる汚染を避けるには,製造業者の指示に従う。
湿式ブラスト法は,チタンには望ましくない。
なお,いずれの方法を用いる場合も,6.1.1のd)及びe)を行わなければならない。

6.2 物理的変性 : 非機械的変性

  機械的研磨又は液体系化学技術を用いることなく表面を変性することを目的として,多くの工程が開発
されている。物理的に誘起される酸化工程によって,プラスチック表面を接着性の高い面に変性できる。
これらの工程によって,ある程度,汚染を除去することができる。
これら特殊技術の二つの主要例として,プラズマ放電及び火炎処理がある。この二つの処理のための最
適条件を開発するには,装置製造業者及び指定研究機関が,協力して適切な技術を工夫することが求めら
れる。
次の記載を参考にするとよい。
a) 酸化ガス炎によって誘発される表面変性は,広範囲のプラスチックの表面を改良する比較的単純で早

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く効果的で経済的手段である。工程は,部品の表面形態の急速な変化に対処することができる非常に
有用な利点をもつ。
b) 同様に,大気圧プラズマ放電(しばしばコロナ放電と呼ばれる。)は,早くて効果的で経済的である。
しかしながら,この技術は部品の表面形態の変化に対処できるものに制限される。その結果,装置は
調整が面倒で,部品は単純で基本的に平たん(坦)でなければ性能を維持するのが難しい。
c) 低圧プラズマ放電法は,火炎酸化よりも本来的に用途が広いと考えられる。複雑形状は一般に問題な
く,表面変性は放電室内で各種ガスの組合せを使用することで最適化できる。ただし,この技術は,
装置が高コストであり,連続稼働するガス炎及びコロナ系方法と違い,プラズマ室はバッチ工程とな
る。
d) レーザ類は,プラスチック表面及び金属表面の両者を調整するために使用される。しかしながら,こ
の技術は,まだ十分に開発されたとは考えられず,代替法がないときだけに使用される。
e) ) d)には液体を含むものはない。そのため表面の乾燥処理を省くことができる。ただし,用いる処
理,その表面自身及び周囲環境によって表面劣化の様相は異なる。原理的には,a) d)を組み合わせ
ることで耐性が上がるが,全ての表面は処理後可能な範囲で可及的速やかに接着しなければならない
(5.2.3参照)。

6.3 化学的変性

6.3.1  背景
化学的処理の通常の目的は,5.2.2に従って洗浄し,6.1.1又は6.1.2に従って粗面化した表面を酸化させ
ることである。ただし,酸化には,通常,強力な酸化剤の使用及び廃棄が必要であるため,カップリング
剤使用の代替方法がこれまで開発されてきているが,いまだ開発中である。これまでのところ,“シラン化
学”をベースとしている傾向がある。これらの手法の多くは,知的財産権をもっている。個々の手法を6.4
に規定する。
6.3.2 化学試薬及び溶剤
化学的処理による表面変性工程の良否は,各工程手順の維持に左右される。専門家の助言は,有効な情
報であり,特にエッチング溶液の品質管理においては,重要である。要求事項は,次による。
要求事項 :
a) 使用する水は,蒸留水又は脱イオン水で50 mg/kg以上の固形物を含まない。pH値は,6.58.5とし,
導電率は,20 μS/cm以下とする。
b) 溶液は,正確に配合し,工業用又は試薬材料の±1 %の正確さ,定期的なサンプリング,分析,及び
適正な記録の活用によって維持する。溶液の配合又は使用においては,ポリエチレン,ポリプロピレ
ン又はテトラフルオロエチレン製の器具だけを使用する。
c) 廃棄物,化学薬品及び溶液は, 法律が定める基準に従い,指定された廃棄物処分業者を通して廃棄処
分する。その場合,常にその業者の指示に従う。
d) 水槽に水を流し入れながら,噴霧又は浸せきのいずれかで水洗いする[a)参照]。いずれの場合も,水
洗いして残留物を完全に取り除く。
e) 水切りテストは,表面が清浄であるかどうかを示すもので,水中に浸せきして行う[a)参照]。水から
引き上げるときの水膜が30秒間途切れてはならない。この条件を満たせば,表面が清浄で接着に適し
ていると仮定できる。ただし,長期耐久性が向上するとしても,接着強さの向上は期待しない方がよ
い。

6.4 組合せ手順

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6.4.1 一般
多くの調整技術が開発され,粗面化は(必要とは限らないが),通常“シラン系カップリング剤”の使用
と関連した化学処理が組み合わされている。
6.4.2 乾式技術
6.4.2.1 背景
乾式技術は,金属及びプラスチックの表面調整に適用できる。知的財産権をもつ処理に基づいた二つの
方法が適用できる。規定された工程の選択については,製造業者に相談する。
6.4.2.2 シラン被覆研磨
表面にシラン被覆した研磨材(通常“シランコランダム”)を用いて,必要ならば,洗浄及び粗面化を行
った後にブラスト処理する(5.2.2及び6.1参照)。使用する知的財産権をもつ方法によっては,接着前の
特殊プライマ処理が必要である。
6.4.2.3 火炎処理
製造業者の指示に従い,適切に調整された表面は(5.2.2及び6.1参照),知的財産権をもつ条件での火炎
にさらすことによって化学的に変性される。
6.4.3 湿式技術
6.4.3.1 背景
規定された2種類の湿式技術は,原理は同じであるが使用材料で大きく異なる。いずれの技術も,シラ
ン系及びその他カップリング剤仕様であり,金属及びプラスチックの表面調整に適用でき,知的財産権を
もつ材料を用いている。したがって,いずれの技術を使用する場合でも,規定された工程の適合性に関し
て,製造業者の指示に従う。
6.4.3.2 研磨工程での変性
初期洗浄(5.2.2参照)後,要求事項(6.1.1参照)に従って,表面を湿式研磨する。その後,知的財産権
をもつ工程で処理してから,製造業者の指示に従って接着する。
使用する接着剤と表面張力とを一致させた水溶液で,接着性良好な表面かどうかを実用的に示すことが
できる。
6.4.3.3 研磨後の変性
5.5.2及び6.1に従い,洗浄及び粗面化を行った後,製造業者の指示に従って接着する前に,知的財産権
をもつ処理方法を行う。

7 調整手順

7.1 一般

  表1及び表2に,より一般的に使用される材料に利用できる調整手順を示す。接合性を最適化するため
には,全ての金属に,個々に規定に沿った処理が必要である。一方,プラスチックの場合は,異なった種
類でも類似した処理方法が使用可能である。さらに,多くのプラスチックは,危険な湿式化学工程を使用
することなく調整することが可能である。
多くの熱硬化性プラスチックは,5.2.2,6.1及び6.2から選定した適切で有効な手順を使用し,脱脂及び
粗面化を行うことで表面処理される。
多くの低表面エネルギーの熱可塑性材料は,6.2に規定する2種類の方法(プラズマ処理及び火炎処理)
のいずれかで通常調整される。表面に離型剤の残留がなく汚染がない及び新規に作製された部品の場合,
洗浄は不要であり,いずれの方法でも低い汚染度で処理できる。洗浄が必要な場合でも,そのプラスチッ

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ク材料は,容易に処理することが可能である。ただし,応力割れ,部分溶解(5.2.2参照)などの有害な作
用を起こすため,可能な限り溶剤の使用は避けることが望ましい。粗面化処理は,通常必要ない。
なお,個々の熱可塑性材料に対して開発された幾つかの化学処理があり,困難な局面においては有効と
なる(6.3.2参照)。7.2では,6.3.2の要求事項を参照しなければならない。
表1−金属及びその合金の調整方法の手順
金属及び合金 手順 注記
アルミニウム及びその合金 脱脂(5.2.2参照)し,粗面化して(6.1
代替として,カップリング剤が使用でき
る(6.4参照)。
参照),必要な手順7.2.1.1でエッチン
グ後に接着する。
陽極酸化 : 陽極酸化した表面は,4時間以内に接着
脱脂(5.2.2参照)し,かつ,軽く研磨
通常(クロム酸又はし(6.1.1参照),その後接着する。することが望ましい。
硫酸で調整)
強陽極酸化 カップリング剤を使用してもよい(6.4
ブラストし(6.1.2参照),7.2.1.2のと
参照)。
おりエッチング後に接着する。この表
面は,過剰処理しない。この場合,表
面を取り除く必要がある。
りん酸陽極酸化 接着前に知的財産権をもつ処理工程に
従う。
クロム 脱脂(5.2.2参照),粗面化(6.1参照)
又はエッチング(7.2.1.3参照)を行い,
接着する。
銅(黄銅及び青銅含む。) 記載の3種類のエッチング溶液いずれも
脱脂(5.2.2参照),粗面化(6.1参照)
又はエッチング(7.2.1.4参照)を行い, 使用できる。
接着する。
マグネシウム 脱脂(5.2.2参照)し,7.2.1.5に従って
接着する。
警告 この金属は,どのような状況で
も粗面化,研磨及びブラストを
行ってはならない。また,蒸気
浴にさらしてはならない。
ニッケル 記載の3種類のエッチング溶液いずれも
脱脂(5.2.2参照)し,粗面化して(6.1
使用できる。
参照)又はエッチング(7.2.1.6参照)
して接着する。
鋼(軟鋼) 脱脂(5.2.2参照)し,粗面化して(6.1
カップリング剤は使用可能であり,望ま
しい方法である(6.4参照)。
参照)又はエッチング(7.2.1.7参照)
して接着する。
鋼(ステンレス鋼) 脱脂(5.2.2参照)し,粗面化して(6.1
カップリング剤は使用可能であり,望ま
しい方法である(6.4参照)。
参照)又はエッチング(7.2.1.8参照)
して接着する。
すず 脱脂し(5.2.2参照),研磨(6.1.1参照) 7.2.1.9参照
又は乾式ブラスト(6.1.2参照)して接
着する。
チタン 蒸気浴(5.2.2参照)し,7.2.1.10の方
この金属は,安全性に厳格な航空宇宙分
法1,方法2又は方法3の特別処理し 野に通常使用されている。
て接着する。
亜鉛 脱脂(5.2.2参照)し,粗面化して(6.1
カップリング剤は使用可能であり,望ま
しい方法である(6.4参照)。
参照)又はエッチング(7.2.1.11参照)
して接着する。

――――― [JIS K 6848-2 pdf 10] ―――――

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