4
K 7376 : 2021
図1−試験装置の各機構(例)
a) 試料台 試験片を固定するとともに,スクラッチ試験中の抵抗を摩擦力として検出する機構をもつ台。
b) 移動ステージ 試験片をX,Y及びZ方向に,試験条件の速度及び距離で移動する機構をもち,圧子
の位置と顕微鏡観察時の視野の中心位置との相対位置を調整可能な機構をもつもの。
c) 圧子 図2に示す形状のダイヤモンドからなる,先端半径R(球R)及び許容差が,5 m±0.5 m,
10 m±0.8 m,20 m±2.0 m又は50 m±5.0 mで,円すいの頂角が60°120°のもの。
図2−圧子の先端形状
d) 観察部 スクラッチ痕を観察するための,総合倍率800倍以上の倍率を備えた光学顕微鏡。
e) 圧子保持部 圧子を固定するとともに,各試験力及び圧子のZ方向の変位を測定する機構。
6.3 付着性試験方法
6.3.1 試験条件
試験条件は,次による。
a) 試験は,温度23 ℃±2 ℃,湿度(50±5) %,かつ,ちりの少ない環境下で行う。
b) 試験片及び圧子の表面は,適切な溶剤を用いて洗浄する。
c) 圧子は,通常,先端半径10 mのものを使用する。スクラッチ痕の観察のときに臨界損傷又は完全損
傷が分かりにくい場合は,先端半径20 m又は50 mのものを使用する。完全損傷が発生する前に基
板の破壊が発生する場合は,5 mのものを使用する。
――――― [JIS K 7376 pdf 6] ―――――
5
K 7376 : 2021
d) 負荷速度は,100 mN/min±1 mN/minとする。試験時間短縮のため負荷速度を変更する場合は,1 000
mN/minを上限とする。その場合は,参考値として取り扱う。
e) 負荷試験力は,500 mNまで印加可能とする。500 mNまでに臨界損傷又は完全損傷が発生しなかった
場合は,1 000 mNまで印加する。なお,前回の試験結果,摩擦力又は押込み深さの変化で完全損傷の
発生が分かる場合は,圧子の損耗を抑えるために負荷試験力の最大値を減らしてもよい。
f) スクラッチ速度は,0.6 mm/min±0.006 mm/minとする。スクラッチ痕が1 mmに満たない場合は,単
位距離当たりの試験力の変化が大きくなるため,3 mm/minを上限として増加させてもよい。その場合
は,参考値として取り扱う。
6.3.2 標準試験片による校正
標準試験片による校正は,次による。
a) 圧子の初回使用時に,標準試験片の臨界損傷試験力,完全損傷試験力及びスクラッチ痕を記録する。
b) 試験を行う前に,a)と同じ条件で標準試験片による付着性試験を行い,圧子の摩耗状態を調べる。試
験結果がa)で記録したデータと大きく異なるときは,圧子を交換する。
c) 付着性試験終了後,b)と同じ条件で標準試験片による付着性試験を行い,付着性試験の間に圧子に大
きな損傷又は摩耗が生じていないことを確認する。
6.3.3 試験操作手順
試験操作手順は,次による。
a) 6.3.1に従って,試験条件を設定する。
b) 試験片を試料台に固定する。
c) 試験部位を光学顕微鏡で観察し,きず又は汚れがないことを確認する。
d) 試験後に光学顕微鏡の総合倍率800倍以上でスクラッチ痕の観察を行い,臨界損傷及び完全損傷が発
生したときのそれぞれの試験力及び各損傷箇所を含むスクラッチ痕の写真を記録する。
e) 試験は,試験片表面の試験箇所を変えて同じ条件で2回以上行い平均値を算出する。
6.3.4 試験結果の典型例
スクラッチ試験における試験結果の典型例として,オレフィンプラスチック基板上に形成した反射防止
膜200 nmを,先端半径10 μmの圧子を用いて負荷試験力3 mNから50 mNまで印加し,スクラッチ速度
0.6 mm/min及び負荷速度100 mN/minの条件で行った試験結果を図3に示す。写真左側から右側に向かっ
てスクラッチ試験を行っている。スクラッチ痕の中央部分で最初に膜の部分的ながれによって基板が露
出した箇所を臨界損傷,続いて,スクラッチ痕全体にわたって基板が露出した箇所を完全損傷とする。な
お,臨界損傷及び完全損傷は,いずれか片方だけ発生する場合もある。
図3のグラフは,圧子保持部から得られた試験力及び押込み深さ並びに試料台から得られた摩擦力を示
す。押込み深さ又は摩擦力の変化によって,臨界損傷及び/又は完全損傷の判断ができる場合がある。
――――― [JIS K 7376 pdf 7] ―――――
6
K 7376 : 2021
図3−スクラッチ試験結果の典型例
6.4 付着力
付着力は,試験条件並びに臨界損傷試験力及び/又は完全損傷試験力をもって表示する。各試験力に代
わって,式(1)によって算出したせん断応力で表示してもよい。この場合,標準試験片の値を100とした場
合の相対値も表示することが望ましい。また,単純な損傷状態でない場合には,付着力の判定の根拠も付
記する。
スクラッチ試験及び励振式スクラッチ試験における試験力とせん断応力との関係式及び関係図を図4に
示す。付着力は,臨界損傷試験力,完全損傷試験力又はプラスチック基板のブリネル硬さ(ISO 2039-1を
参照)若しくはロックウェル硬さ(JIS K 7202-2を参照)が分かっている場合は,式(1)によって計算した
押込み部の接触円の境界(L)に発生したせん断応力によって表示することも可能であるが,この場合は,
プラスチック基板のブリネル硬さ又はロックウェル硬さの値も併記する(JIS R 3255を参照)。
P
(pdf 一覧ページ番号 )
2
RP
1
W
ここで, τ : 押込み部の境界領域に発生したせん断応力(Pa)
P : 抗力(プラスチック基板の押込み硬さで表示)(Pa)
R : 圧子先端の半径(m)
W : 臨界損傷試験力又は完全損傷試験力(N)
――――― [JIS K 7376 pdf 8] ―――――
7
K 7376 : 2021
図4−スクラッチ試験及び励振式スクラッチ試験における試験力とせん断応力との関係図
7 励振式スクラッチ試験
7.1 試験原理
圧子を試験片の表面に対して平行かつスクラッチ方向に対して直角に励振させながら,一定の負荷速度
及びスクラッチ速度で試験片に押し付けることで,圧子と試験片との間に摩擦力が生じる。圧子は,この
摩擦力によって支持部に対し相対位置の遅れを示すこととなる。試験力が増加し光学薄膜に損傷が生じる
と,摩擦力以外の,損傷による凹凸などによって,支持部に対する圧子の相対位置が不規則に変化するた
め,支持部と圧子との相対速度位置関係を電気信号に変換することで,その信号の変化から光学薄膜の損
傷の検知が可能となる。
さらに,光学顕微鏡でスクラッチ痕を観察し,光学薄膜の損傷箇所と信号変化点とを照合することで,
光学薄膜が損傷した臨界損傷試験力及び完全損傷試験力の測定が可能となる。
なお,臨界損傷時点で完全損傷が発生する場合,又は臨界損傷発生後,完全損傷に至らない場合も存在
する。
7.2 試験装置及び器具
試験装置は,図5に示す試料台,移動ステージ,圧子,観察部,センサ部及び励振部で構成する。
――――― [JIS K 7376 pdf 9] ―――――
8
K 7376 : 2021
図5−試験装置の各機構(例)
a) 試料台 試験片を固定する機構をもつ台。
b) 移動ステージ 試験片をX,Y及びZ方向に,試験条件の速度及び距離で移動する機構をもち,圧子
の位置と顕微鏡観察時の視野の中心位置との相対位置を調整可能な機構をもつもの。
c) 圧子 図2に示す形状のダイヤモンドからなる,先端半径R(球R)及び許容差が,5 m±0.25 m,
10 m±0.50 m,15 m±0.75 m,25 m±1.25 m又は50 m±2.5 mで,円すいの頂角が60°
120°のもの。
d) 観察部 試験片表面及びスクラッチ痕を観察するための,総合倍率100倍以上の倍率を備えた光学顕
微鏡。
e) センサ部 センサ部の構造の一例を図6に示す。センサ部全体は,支持部を中心に回転方向に動くこ
とが可能な構造をもち,支持部を介してセンサ部全体が励振する機構となっている。センサ部先端に
取り付けた圧子を試験片に押し付けた状態で,支持部を励振させることで生じる支持部と圧子との相
対速度を電気信号として出力する。
図6−センサ部の構造(例)
――――― [JIS K 7376 pdf 10] ―――――
次のページ PDF 11
JIS K 7376:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 83 : ゴム及びプラスチック工業 > 83.080 : プラスチック > 83.080.01 : プラスチック一般