JIS P 8253:2006 パルプ,紙及び板紙―全塩素及び有機結合塩素の測定方法 | ページ 2

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5.10 高圧ガス

 試料を燃焼させるために酸素を供給しなければならない。燃焼を制御するために他のガ
スを混合する。使用するすべてのガスには,塩素及び臭素が全く含まれないことが重要である。
備考 ガス容器の洗浄に,塩素系溶剤を使用する場合があるので注意する。

6. 装置

 6.16.4の装置は,有機結合塩素の分析を行うときだけに必要とし,使用する。6.7の装置は,
全塩素の分析だけに必要である。

6.1 三角フラスコ

 先細り形状のガラスの共栓又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で被覆したね
じふた(蓋)のついた,耐薬品性ガラス製250 mL容量の三角フラスコ。

6.2 振とう機

 フラスコ(6.1)の内容物を円運動でかくはん(撹拌)するためのもの。内容物がふた(蓋)
に達しない状態でかくはんできるように,動力が調整できるもの。

6.3 ろ過装置

 直径約25 mmのフィルタをのせて吸引できるもの。

6.4 フィルタ

 孔幅の公称値が0.4 mで,ろ過装置(6.3)に適した寸法であり,最大塩素含有量が0.5 g
のポリカーボネート製フィルタ。耐熱ガラス製又はセラミック製の特別に設計したろ過カップを用いても
よい。
備考 空試験の塩素量が多い場合は,フィルタの汚染が考えられる。その場合は,使用前に硝酸塩溶
液(原液)(5.1)で洗浄し,その後,水で洗浄する。

6.5 燃焼装置

 マイクロクーロメータ(6.6)の電量滴定用セルに石英管を接続したもの。燃焼炉は,試料
を通す管の中間部分を最低でも950 ℃,又は1 000 ℃に熱することができるもの。石英又は他の耐熱材料
からなる試料ボートを管に挿入できるものとし,この試料ボートを,管の端の挿入部から燃焼部まで移動
できなければならない。管は,フィルタ(6.4)を装てん(填)した試料ボートが挿入できるように十分な幅
がなければならない。装置は,酸素供給機構を備え,一定量の酸素を管に流す。この酸素にアルゴン,窒
素などの不活性ガスを混合する。燃焼ガスは,塩化物イオンの連続滴定のために電量滴定用セルに供給す
る。
必要な場合は,燃焼ガスを清浄化して乾燥させるために,硫酸(5.3)を入れた加熱洗浄装置を,燃焼管の
出口とセルとの間に設置してもよい。

6.6 マイクロクーロメータ

 2 gの塩化物イオンの分析を繰り返し行ったときの,測定結果の変動係数
が10 %以内のもの。

6.7 試料容器

 容量約1 mLで,石英又は他の耐熱材料からなり,試料ボートに収まるように設計したも
の。
備考 装置によっては,この試料容器が附属しない場合がある。

7. 試料の前処理

 塩素化合物は,微量ではあるが,化学物質中,装置表面,皮膚表面,測定室の空気中
などほとんど至る所に存在する。したがって,試料及び分析用溶液の塩素汚染を避けるために,あらゆる
措置をとることが極めて重要である。特に,測定室内の空気による汚染を監視することが望ましい。この
ような汚染は,漂白プラントなどの戸外からだけではなく,測定室内に保管している試薬(溶剤)からも
発生する。
すべての器材は,希硝酸及び純水を用いて洗浄しなければならない。
周囲の空気から試料を保護するために,試料をポリエチレン袋に入れるか,又はアルミホイルで包んで
おく。試料を取り扱うときは,常に保護手袋を着用し,塩素を含む物質が手袋から試料に移らないことを
確認する。

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湿ったパルプは,40 ℃以下で風乾する。塩素分析用とは別に試料を採取して,JIS P 8127又はJIS P 8203
に規定する方法によって,試料の絶乾率を測定する。
試料は,ピンセット又ははさみを用いて小片にする。小片は,試料の性質及び燃焼装置に適した大きさ
にする。
パルプシート又は板紙の場合には,抽出段階で完全に薬液でぬれるように紙層をはく(剥)離する。試
料が内部まで完全に薬液でぬれない場合には,有機結合塩素が過剰に検出される可能性がある。
塗工又は多層すきの紙及び板紙の場合は,ウイリーミル又は類似の粉砕器で粉砕する。粉砕器は,試料
の汚染を避けるために,他の用途で用いてはならない。試料を粉砕後,粉砕器を十分に洗浄する。
分析に必要な試料量は,試料の塩素含有量に依存し,燃焼装置の寸法の制約を受ける。通常,1回の分
析に必要な試料量は,1060 mgである。
全塩素の分析及び硝酸塩溶液での抽出用に,4個の試料をそれぞれ0.1 mg単位まではかりとる。4個の
試料は,おおよそ同じ質量であることが望ましい。
4個の試料の内2個は,全塩素の分析に使用し,残りの2個は,硝酸塩溶液によって抽出し,有機結合
塩素の分析に使用する。
備考 有機結合塩素の分析が必要ない場合は,9.に進む。

8. 硝酸塩溶液による抽出

 2個の試料を,それぞれ250 mL容量の三角フラスコ(6.1)に入れる。硝酸塩溶
液(5.2)100mL及び活性炭(5.4)15mgをフラスコに加える。同時に試料を入れない二つの空試験用溶液を調製
する。フラスコに栓をして試料が十分にぬれるように激しく振った後,フラスコを振とう機(6.2)にセット
して,少なくとも1時間振とうする。
炭酸塩顔料を多量に含んだ塗工紙又はてん料配合紙を分析する場合は,フラスコ内の混合物が酸性であ
ることを確認する。もしそうでなければ,更に,硝酸塩溶液(5.2)を加えて酸性にする。
ろ過装置(6.3)及びポリカーボネート製フィルタ又はろ過カップ(6.4)を用いて,フラスコの内容物をろ過
する。
少量の硝酸塩溶液(5.2)(約25 mL)を用いて,フラスコ及び漏斗を洗浄する。最後に少量の水で洗浄し,液
体がなくなるまで吸引を行う。
備考 測定室の雰囲気中に存在するハロゲン化合物による汚染の懸念があるので,多量の空気をフィ
ルタを通じて吸引することは避けるのが望ましい。しかし,洗浄液が過度に残ると,燃焼管内
で結露が生じて燃焼を妨げる場合がある(9.参照)。
また,フィルタがあまりに乾燥していると燃焼装置の乾燥部で着火するおそれがあり,その
場合には,塩素量が少なく分析されることがある。

9. 燃焼

 原理的には,燃焼手順は,硝酸塩溶液で抽出していない試料も抽出した試料も同じである。し
かし,有機結合塩素分析用に硝酸塩溶液で抽出した試料はぬれており,全塩素分析用の試料は通常乾燥し
ているので,試料の状態に適した手順で燃焼を行う。
燃焼装置(6.5)は,製造業者の取扱説明書に従って操作する。数種類の装置が市販されており,それぞれ
仕様の詳細が異なるので,使用する装置の形に適合した操作を行う必要がある(附属書A参照)。
セルに既知量の塩酸(5.6)を加え,マイクロクーロメータ(6.6)の性能を確認する。測定結果は,理論値と
の差が5 %以内でなければならない。
機器の動作確認を定期的に行うが,その場合には,試料を用いない。

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備考 多量の塩素を含む試料を分析した後には,燃焼管が塩素化合物で汚染されていることがあるた
め,試料を用いないで動作確認を行った場合には,装置が誤った指示値を出すことがある。
試料がポリカーボネート製フィルタ上の湿った繊維パッドの場合は,フィルタごとにピンセットで折り
たたんで試料ボートに入れる。
試料が乾燥している場合は,試料容器(6.7)に入れ,この容器を試料ボートに入れる。
備考 試料容器(6.7)が装置に附属していない場合には,試料を直接試料ボートに入れる。
試料ボートを装置の乾燥部に移動させ,水分を蒸発させる。水分の蒸発に必要な時間は,水の量だけで
はなく,装置の構造にも依存する。燃焼管の冷却部では,結露水を発生させないようにする。
すす及び結露水が燃焼炉の上流に残らないように,緩やかな燃焼となるように制御することが非常に重
要である。すす及び結露水が上流で発生した場合は,測定値を読みとる前に,すべてのすす及び結露水を
下流側に導くための必要な措置をとる。
試料ボートを管の高温部に移動させる。装置の燃焼シーケンスに従って燃焼を行い,燃焼が完全である
ことを確認する。
すすを炉の下流側で検出した場合は,燃焼は不完全であり測定結果は無効にする。
燃焼装置(6.5)に加熱洗浄装置が設置されている場合,加熱洗浄装置内の硫酸中には,すすがあってはな
らない。すすがある場合は,器具を洗浄し,新しい硫酸を加えて測定をやり直す。

10. 空試験

 試料を分析する日には,少なくとも2回の空試験を試料分析と同じ手順によって行い,燃焼
装置(6.5)及びマイクロクーロメータ(6.6)を検査する。空試験の測定結果は,2 gを上回ってはならない。

11. 装置の点検

 塩素含有量が既知の参照用試料を用いて,操作全体の点検を定期的に行う。参照用試料
は,分析する試料と同じ種類(パルプ,紙,板紙など)であることが望ましい。参照用試料の測定値は,
公称値の91 %以上110 %以下でなければならない。測定値がこの範囲から外れている場合は,再度点検
を行う。依然として測定値が範囲を外れている場合は,装置の漏れ及びその他の不具合について点検を行
う。これらの点検は,装置の操作手順書に従って行う。
備考 参照用試料が入手できない場合は,既知量の2,4,6-トリクロロフェノール標準液[5.7a)]又は
2-クロロ安息香酸標準液[5.7b)]を用いて,あらかじめ選んだ適切な試料の塩素量を標準添加法
によって分析する。この試料を参照用試料とする。

12. 計算

 試料の塩素量の分析手順は,マイクロクーロメータの仕様に依存するので,製造業者の取扱説
明書を参照する。
計算では,空試験の値を差し引き,サンプルの水分による補正を加える。
二つの分析結果の平均値を計算する。個々の分析結果は,平均値との差が10 %を超えてはならない。
平均値が50 mg/kg未満の場合は,最大で5 mg/kgの差が許容できる。この条件を満たさない場合は,試料
が不均一である可能性があるので,試料の調製及び分析を再び行う。
結果は,全塩素及び有機結合塩素について,mg/kg単位で有効数字2けたで表す。

13. 精度

  •  13.1 繰返し精度・・・・[5]
回の分析の繰返し精度は,表1による。

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表 1
平均値 標準偏差 変動係数
mg/kg mg/kg %
全塩素
66 3.3 5
310 3.1 1
650 13 2
970 19 2
有機結合塩素
17 0.6 3.7
31 1.5 4.9
120 3.7 3.1
290 7.3 2.5
1 600 89 5.6

13.2 再現精度

 8か国14試験所での分析結果を表2に示す。試験所には,1種類の試料について3回の
分析を依頼した。平均値及び標準偏差の結果は,各試験所で得た平均値から算出した。
表 2
平均値 標準偏差
試料番号 試験所数
mg/kg mg/kg
全塩素
1 14 560 28.3
2 14 367 25.3
3 14 207 10.2
4 13 347 20.8
有機結合塩素
1 14 224 25.3
2 14 339 27.1
3 14 193 18.5
4 11 26 10.3
試料 :
1 コピー用紙
2 カバECFパルプ
3 マツECFパルプ
4 TCFパルプから製造したコピー用紙
ECF:分子状塩素を用いない漂白法(elemental chlorine free)
TCF:分子状塩素及び塩素化合物を用いない漂白法(totally chlorine free)

14. 測定結果の表し方

 報告書には,次の事項を記載する。
a) 規格名称又は規格番号
b) 測定年月日及び測定場所
c) 試料の種類及び名称
d) 塩素量の平均値(mg/kg)
e) 規定した手順から逸脱した事項

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15. 臭素化合物の影響

 この規格による分析を行う場合,臭素は,塩素と同様な化学的反応をする。した
がって,試料中に臭素が含まれている場合には,分析結果にこの臭素分の誤差が生じる。通常,パルプ及
び紙の中に含まれる臭素は,無視してよいほど微量である。ただし,時折著しい量の臭素が,臭化スライ
ムコントロール剤を含んだ古紙再生製品から発見される場合がある。

――――― [JIS P 8253 pdf 10] ―――――

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JIS P 8253:2006の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 11480:1997(MOD)

JIS P 8253:2006の国際規格 ICS 分類一覧

JIS P 8253:2006の関連規格と引用規格一覧