JIS Q 0035:2008 標準物質―認証のための一般的及び統計的な原則 | ページ 2

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Q 0035 : 2008 (ISO Guide 35 : 2006)
な技能が複合しているために,RMの生産及び認証が大変複雑になっているのである。これらのプロジェ
クトで最大の課題となるのは,プロジェクト計画の円滑な実施を可能にするために,これらの技能を組み
合わせることである。
この規格の内容のほとんどは,RMの生産に適用することができる。特性値のトレーサビリティのよう
な要求事項,特に,測定の不確かさ評価を徹底する必要性は,例えば,RMを校正物質として使用するた
め,ある方法の性能特性を確認する手段として使用するため,又は,別の物質に値を付与するために,ほ
とんどの種類のRMに適用できる。
薬局方の標準(standards)及び物質(substances)は,薬局方監督機関がこの規格の一般原則に従って確定し,
配布している。これらの種類のRMの生産に関しては,特別な指針が存在する。
なお,分析及び有効期限の証明書によって使用者に情報を与えるために薬局方監督機関がとる方法は,
異なるので注意することが望ましい。また,付与された値の不確かさは,関係する要領にあるこれらのRM
を規定どおりに使っても,不確かさを容認するわけではないので,規定していない。

1 適用範囲

  この規格は,付随する不確かさの評価を含め,標準物質の特性に値を付与し,これら値の計量学的トレ
ーサビリティを確立するための妥当な方法を理解し,開発することを支援する目的で,標準物質認証のた
めの一般的及び統計学的な原則を規定する。この規格に規定するすべてのステップを経た標準物質(RM)
には,通常,認証書が付いており,そのRMは認証標準物質(CRM)と呼ばれる。この規格は,国家又は国
際的規模での測定結果の同等性(comparability),精確さ(accuracy)及び両立性(compatibility)を確保する手助け
として,CRMにその可能性を十分もたせたい場合に有用である。
国境を越えて,また長期にわたって比較可能にするために,測定が,該当し,かつ,規定された標準(stated
references)にトレーサブルであることが必要である。CRMは,物質及び/又は試料を取り扱う科学の中で
も,特に化学,生物学及び物理学の測定結果において,トレーサビリティという概念を具体化する上で重
要な役割を果たす。試験所は,測定結果の国際規格へのトレーサビリティを確立するために,容易にアク
セス可能な測定標準(measurement standards)としてこれらのCRMを使用する。CRMによって決められる特
性値は,生産過程で,SI単位又はその他の国際的合意を得ている単位に対してトレーサブルであるとする
ことができる。この規格は,該当する規定の標準までトレーサブルであり,かつ,十分に確立された特性
値を導く方法をどのようにしたら開発できるかを記載したものであり,混合ガスから生物材料にいたる非
常に広範囲の物質(マトリックス),並びに化学組成から物理的及び免疫測定法(immunoassay)によって求
められる特性にいたる非常に広範囲の特性を対象としている。
この規格で示す方法は,RMの生産及び付随する不確かさを含めた特性値の確定について,すべての点
を網羅しようとするものではない。この規格に規定する方法は,大きなグループのRMの生産及び値の付
与のための主流の方法とみなし得るが,特殊なケースについては,適切な修正が必要である。この規格で
規定する統計的方法は,方法の概略を例示するものであり,例えば,正規分布したデータを念頭において
いる。特に,データが明らかに正規分布をしていない場合は,妥当な特性値及び付随する不確かさを得る
ために別の統計的方法を採用してもよい。この規格では,CRMの生産プロジェクトの設計について,一般
的な要項を規定する。
なお,この規格で点線の下線を施している参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO Guide 35:2006,Reference materials−General and statistical principles for certification (IDT)

――――― [JIS Q 0035 pdf 6] ―――――

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なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示す。

2 引用規格

  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Q 0030 標準物質に関連して用いられる用語及び定義
注記 対応国際規格 : ISO Guide 30,Terms and definitions used in connection with reference materials
(IDT)
JIS Z 8101-1 統計−用語と記号−第1部 : 確率及び一般統計用語
注記 対応国際規格 : ISO 3534-1,Statistics−Vocabulary and symbols−Part 1: Probability and general
statistical terms (MOD)
Guide to the expression of uncertainty in measurement, issued by BIPM, IEC, IFCC, ISO, IUPAC, IUPAP and
OIML (GUM)
International vocabulary of basic and general terms in metrology, issued by BIPM, IEC, IFCC, ISO, IUPAC,
IUPAP and OIML (VIM)

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8101-1,JIS Q 0030及びVIMによるほか,次による。使
用する記号を,箇条4に示す。
3.1
標準物質 (reference material: RM)
一つ以上の規定特性について,十分均質,かつ,安定であり,測定プロセスでの使用目的に適するよう
に作製された物質。
注記1 RMとは,総称的な用語である。
注記2 特性には,定量的なもの又は定性的なもの[例えば,物質(substances)又は種の同定]がある。
注記3 使用目的には,測定系の校正,測定手順の評価,他の物質(materials)への値の付与,及び精度
管理(quality control)を含んでいる。
注記4 RMは,ある測定における単一の目的にだけ使用することができる。
3.2
認証標準物質 (certified reference material: CRM)
一つ以上の規定特性について,計量学的に妥当な手順によって値付けされ,規定特性の値及びその不確
かさ,並びに計量学的トレーサビリティを記載した認証書が付いている標準物質。
注記1 値の概念は,同定又は序列(sequence)のような定性的な属性(attributes)を含んでいる。このよ
うな属性に対する不確かさは確率で表してよい。
注記2 標準物質の生産及び認証のための計量学的に妥当な手順は,特にJIS Q 0034及びこの規格に
記載がある。
注記3 JIS Q 0031は,認証書の内容に関する指針を規定している。
3.3
(標準物質の)特性値 [property value (of a reference material) ]
(認証)標準物質の物理学的,化学的又は生物学的特性を代表する量に帰せられる値。

――――― [JIS Q 0035 pdf 7] ―――――

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3.4
(標準物質の)キャラクタリゼーション,値付け [characterization (of a reference material) ]
認証プロセスの一環として,標準物質の特性値を決定するプロセス。
注記1 値付けのプロセスによって,定量化対象の特性に値を与える。
注記2 バッチ認証では,値付けとはバッチの特性値を指す。
3.5
瓶間均質性 (between-bottle homogeneity)
標準物質の特性の瓶間変動。
注記 “瓶間均質性”という用語は,別のタイプのパッケージ(例えば,バイアル)及び別の物理的
形状並びに試験片にも適用される。
3.6
瓶内均質性 (within-bottle homogeneity)
1本の瓶内での,標準物質の特性の変動。
3.7
配合 (blending)
特定の特性をもつ物質を得るために,2種類以上のマトリックス物質を混ぜ合わせること。
3.8
マトリックス物質 (matrix material)
自然界,工業生産現場又はそれ以外から採取した物質。
例 土壌,飲料水,空気
3.9
スパイク (spiking)
マトリックス物質に既知量の化合物又は元素を加えること。
3.10
短期安定性 (short-term stability)
特定の輸送条件下で輸送している間の,標準物質の特性の安定性。
3.11
長期安定性 (long-term stability)
CRM生産者の下で規定された保存条件下にある,標準物質の特性の安定性。
3.12
(標準物質の)寿命 [life time (of a reference material) ]
標準物質の特性の安定性を持続できる期間。
3.13
(RM及びCRMの)保管期限 [shelf life (of an RM/CRM) ]
CRMの生産者がその安定性を保証する期間。
注記 保管期限は,JIS Q 0031で説明するように,認証書の有効期間に等しい。

――――― [JIS Q 0035 pdf 8] ―――――

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4 記号

Ai    バイアス項 (ANOVA)
a グループ数 (ANOVA)
Bi バイアス項 (ANOVA)
b サブグループ数 (ANOVA)
攀 誤差項 (ANOVA)1)
注1) この規格では,誤差という用語は厳密に統計的意味で使用しており,観測値とその数学的
予測値との間の差のことである。
k 包含係数
MS 平均平方 (ANOVA)
n 観測数
n0 (サブ)グループメンバーの(有効)数 (ANOVA)
p 共同実験における試験所の数
sbb 瓶間(不)均質性の標準偏差
slor 併行精度の不足による標準偏差
slts 長期(不)安定性の標準偏差
sr 併行標準偏差
sstab (不)安定性による標準偏差
ssts 短期(不)安定性の標準偏差
swb 瓶内標準偏差
SS 平方和 (ANOVA)
ubb 瓶間(不)均質性による標準不確かさ
uchar 値付けによる標準不確かさ
uCRM 特性値の標準不確かさ
ults 長期(不)安定性による標準不確かさ
usts 短期(不)安定性による標準不確かさ
UCRM 特性値の拡張不確かさ
xchar 値付けから得た特性値
xCRM CRMの特性値
戀戀 間(不)均質性を示す誤差項
長期(不)安定性を示す誤差項
期(不)安定性を示す誤差項
xij 実験における単一測定の結果 (ANOVA)
母集団平均(期待値)
注記1 箇条によっては,認証プロジェクトにおける統計的問題点の解決のための代表的方法を示す
ため記号を使っている。これらの記号は本文の中で説明する。
注記2 記号のMS及びSSは文献から採用したものであって,記号の使い方に関してJISに規定する
規則に従っているわけではない。しかしながら,分かりやすさのためには,科学文献におけ
る慣習が広まることが望ましい。

――――― [JIS Q 0035 pdf 9] ―――――

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5 認証プロジェクトの設計

5.1 概説

  CRMの生産には,プロジェクトで実際に何らかの活動にとりかかる前に多くの計画策定が必要になる。
計画策定のかなりの部分で,物質の必要量並びに均質性試験,安定性試験及び値付け試験についての設計
を取り扱う。同様に,その設計は,これらの試験のための適切な測定方法の選択も含む。生産する試料数
は,計画策定のプロセスにおいて非常に重要な変数となる。試料数及び原料物質の量は,これらすべての
要因によって左右される。均質性試験についての箇条7,安定性試験の箇条8,並びに値付けの箇条9及び
箇条10では,認証プロジェクトの一環として,こうしたプロセスをどのように計画し,実施するかについ
ての指針を示す。フィージビリティスタディも,プロジェクト計画の一部となることがある。

5.2 プロジェクトの明確化

  プロジェクトの計画策定は,どのようなCRMを生産するかについて明確にすることから始まる。こう
した明確化の代表的例を,次に示す。
“一連の微量元素を,環境分析化学に適した含有量レベルで含む土壌のCRMを,認証値に伴う不確か
さx %以下で調製すること”
この記載は,プロジェクトをかなりよく表している。環境化学に適するということは,事例ごとに異な
る場合があるが,物質の範囲を十分絞り込む。同様に,“土壌”もマトリックスに対する選択肢の数を絞り
込む。あらゆる場合において,生産すべきものを規定することが重要である。プロジェクトの設計段階に
おいて,明確化すべき内容をより詳細に規定することができる。最後に,規定された目標不確かさによっ
て,その物質が意図された用途に適するものとなる。例えば,校正標準の値の不確かさは,微量環境分析
法の妥当性確認のための物質の値の不確かさに比べて,相当程度小さいことが望ましい。
特性値のトレーサビリティが確立されている“規定された標準”を正しく選択することは,プロジェク
トの設計にかかわる大きな問題である。これは,どんな標準が利用できるか,測定を日常的に実施する試
験所で特定のCRMが役に立つためには何が必要か,また,何が技術的に可能か,によって大きく左右さ
れる。CRMは,主として,その後の測定をトレーサブルにするために使用するので,適切な標準の選択は,
生産するCRMの値に対し,計量学的,かつ,商業的に決定的な因子である。
同様に,CRMを用いる範囲も明記することが望ましい。ほとんどの場合,使用範囲はプロジェクトの定
義によって示されるが,更に詳細に示す必要がある場合もある。こうした使用範囲は,他の用途を必ずし
も排除するものではないが,こうした用途を(必ずしも)認証書又は提供される文書が対象として含むと
は限らないので注意することが望ましい。RMを使用すべき範囲は,法規及び/又は国際協定に基づくこ
とがある。

5.3 輸送の問題点

  実際の作業を開始する前に,CRMが準備できた後に,既存の規制に従って出荷できるかどうかを考慮す
ることが重要である。人がその物質に直接さらされると,健康又は安全に対してリスクを被るCRMが多
い。適正な包装及び適切なラベリングは,(害のある可能性のあるものも含め)有害物を輸送する場合の規
制を満たすための主要な要件となる。ある特性をもつ物質(例えば,ウイルス,病原菌)の輸送が,法律
又は規制によって禁止されることがあり,このことは,CRMが全く販売できないことを意味することがあ
る。実際の認証プロジェクトを開始する前に,輸送及び包装のあらゆる側面を見直すことが望ましい。

5.4 原料物質の収集

  認証プロジェクトの最初の業務は,必要とする特性をもつ原料物質(starting material)を十分量入手するこ
とである。マトリックス物質の場合,物質の特性に関して制限があることに注意することが望ましい。物

――――― [JIS Q 0035 pdf 10] ―――――

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JIS Q 0035:2008の引用国際規格 ISO 一覧

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JIS Q 0035:2008の国際規格 ICS 分類一覧

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