JIS S 0021-4:2021 包装―アクセシブルデザイン―第4部:取扱い及び操作性

JIS S 0021-4:2021 規格概要

この規格 S0021-4は、包装のアクセシブルデザインに関する取扱い及び操作性について規定。

JISS0021-4 規格全文情報

規格番号
JIS S0021-4 
規格名称
包装―アクセシブルデザイン―第4部 : 取扱い及び操作性
規格名称英語訳
Packaging -- Accessible design -- Part 4:Handling and manipulation
制定年月日
2021年6月21日
最新改正日
2021年6月21日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

ISO 22015:2019(IDT)
国際規格分類

ICS

55.020
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
2021-06-21 制定
ページ
JIS S 0021-4:2021 PDF [28]
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)

pdf 目 次

ページ

  •  序文・・・・[1]
  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[2]
  •  3 用語及び定義・・・・[2]
  •  4 取扱い及び操作のアクセシビリティを高めるための設計上の配慮事項・・・・[3]
  •  4.1 一般・・・・[3]
  •  4.2 重量及び形状・・・・[3]
  •  4.3 開封及び再封のしやすさ・・・・[4]
  •  4.4 使いやすさ及び内容物の取出し・・・・[5]
  •  4.5 保管・・・・[5]
  •  4.6 廃棄及びリサイクル・・・・[5]
  •  5 安全性・・・・[5]
  •  5.1 一般・・・・[5]
  •  5.2 配慮すべき具体的項目・・・・[6]
  •  6 取扱い及び操作性の評価・・・・[6]
  •  6.1 一般・・・・[6]
  •  6.2 計測機器を用いる評価・・・・[6]
  •  6.3 使用者による評価・・・・[6]
  •  7 適合性・・・・[7]
  •  附属書A(参考)包装の取扱い及び操作に関する人間工学及び人間工学的データ・・・・[8]
  •  附属書B(参考)取扱い及び操作の容易な包装の例・・・・[20]
  •  参考文献・・・・[26]

(pdf 一覧ページ番号 1)

――――― [JIS S 0021-4 pdf 1] ―――――

           S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)

まえがき

  この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,公益社団法人日本包装技術協会(JPI)及び
一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があ
り,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

(pdf 一覧ページ番号 2)

――――― [JIS S 0021-4 pdf 2] ―――――

                                      日本産業規格                            JIS
                                                                           S 0021-4 : 2021
                                                                            (ISO 22015 : 2019)

包装−アクセシブルデザイン−第4部 : 取扱い及び操作性

Packaging-Accessible design-Part 4: Handling and manipulation

序文

 この規格は,2019年に第1版として発行されたISO 22015を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本産業規格である。
  なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
  包装は,高齢者及び障害のある人々を含めた幅広い範囲の人々が使いやすいように改善されてきたが,
それでもまだ一部の人々にとっては,取扱い及び操作の際に困難が生じている。包装の取扱い及び操作に
は,握る,持ち上げる,持ち運ぶ,つかむなどの動作が含まれる。年齢又は身体障害のために身体的能力
が低下した人々にとって,これらの動作において生じる困難は,持ち上げたりつかんだりすることが難し
い重さ又は大きさであることに起因している可能性がある。アクセシビリティの問題を象徴するようなこ
れらの事象は,身体的能力が低下した又は制限された人々にも幅広く使用される包装において,早急に解
決することが望ましい課題である。
  包装のアクセシビリティ向上に関わる規格は,開封のしやすさ,明快な情報及び表示といった個々の課
題への対応,医薬品包装における点字利用のような具体的事例を記載するなど,整備されている。これら
の規格は,包装を使いやすくすることに効果的に寄与しているが,前述のアクセシビリティの問題に対し
ては,関連規格群の大綱として取り組まれてきたものの,包装の取扱い及び操作性における様々な場面に
おいて十分に対処方法が規定されているわけではない。
  この規格は,包装の取扱い及び操作性を向上させるための要求事項をアクセシブルデザインの観点から
規定されている。

1 適用範囲

  この規格は,包装のアクセシブルデザインに関する取扱い及び操作性について規定する。この規格は,
能力が異なる人々及び使用状況における包装に関する様々なニーズに配慮している。
  包装の取扱い及び操作性には,持ち運び,開封,再封及び内容物の取出しだけでなく,保管及び廃棄と
いった工程における,握る,持ち上げる,運ぶ,引っ張る,押す,滑らせる,つかむ,ひねる,裂くなど
の動作,及びこれらを組み合わせた動作のような人間の身体的能力が関係する要素が含まれる。これらの
身体的能力に関係する要求事項及び推奨事項は,高齢者及び身体障害のある人々を含む,包装の取扱い及
び操作性に関して様々なニーズをもった人々を対象にしている。
  この規格は,JIS S 0021-2に規定する,特別な力学的手段を必要としない,再封可能及び再封不可能な包

――――― [JIS S 0021-4 pdf 3] ―――――

           2
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
装に適用する。
  この規格は,主として包装の設計者,開発者及び評価者を対象としている。ただし,その他の分野の者
にとっても有益である。
  なお,包装の輸送に関する取扱い及び操作性には,適用しない。また,安全性又はその他の理由のため
に規制を受ける内容物の包装には適用しない(例えば,毒物,危険物,医薬品,医療用機器など)。
  注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
        ISO 22015:2019,Packaging−Accessible design−Handling and manipulation(IDT)
          なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こと
        を示す。

2 引用規格

  次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
    JIS S 0021-2 包装−アクセシブルデザイン−開封性
      注記 対応国際規格における引用規格 : ISO 17480,Packaging−Accessible design−Ease of opening
    JIS Z 0108 包装−用語
      注記 対応国際規格における引用規格 : ISO 21067-1,Packaging−Vocabulary−Part 1: General terms

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,JIS S 0021-2及びJIS Z 0108による。
3.1
アクセシビリティ(accessibility)
  様々な能力及びニーズをもった幅広い使用者が,特定の使用状況において,特定の目標を達成するため
に,製品,システム,サービス,環境及び施設を使用することができる程度
  注釈1 使用状況は,直接的な使用又は支援技術のサポートを受けた状態をいう。
  (出典 : ISO 9241-11[19]の3.2.2)
3.2
再封可能な包装(reclosable package)
  最初の開封後,同様の安全度で再封することができ,安全性を損なうことなく全内容物を取り出すため
に十分な回数にわたって使用することができる包装
  (出典 : JIS S 0021-2の3.8)
  注釈1 “再封可能な包装”はこの規格では使用していないが,対応国際規格どおり記載した。ただし,
          類似の用語で“再封”を使用している。
3.3
使用者による評価(user-based evaluation)
  計測装置を使用するか否かを問わず,使用者が参加する試験方法を用いて,使用者の感覚,身体的側面
及び認知的側面に対する情報を考慮した評価方法
  (出典 : JIS S 0021-2の3.7,JIS S 0021-3[21]の3.5)

――――― [JIS S 0021-4 pdf 4] ―――――

                                                                                             3
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)

4 取扱い及び操作のアクセシビリティを高めるための設計上の配慮事項

4.1 一般

4.1.1 設計に関する一般的配慮事項
  包装は,身体,視覚及び認知能力に障害があるために包装の取扱い及び操作の難易度が上がり,望まな
い結果が生じる可能性のある使用者のことを配慮して設計する。持ち運び,開封,再封,計量,取出し,
保管及び廃棄のしやすさに関連する設計は,このような人たちのアクセシビリティを高めることに配慮す
る(JIS S 0021-1参照)。
4.1.2 図解
  ラベルに示された方向は,取扱い及び操作における運動方向と一致しているとよい。
  例 時計回りに回転するスクリューキャップに示された,時計回りを示す矢印。
4.1.3 操作の分かりやすさ
  包装の取扱い及び操作のために使用者が必要な動作は,設計上の配慮によって操作の前に容易に理解で
きることが望ましい。
  例 開封の際に引き裂く箇所であることを示すため,包装の端に三角形の切込みを入れる。
4.1.4 フィードバック
  包装の取扱い及び操作の動作完了の確認を,可能な場合は任意の方法で提供することが望ましい。
  例 包装が再封されたことが“カチッ”と鳴る音で確認可能とする。
4.1.5 複数同時操作の回避
  押しながら回すなど,複数の動きを同時に行うよう要求しない方がよい。ただし,チャイルドレジスタ
ンス機能など,安全性確保の場合はこの限りではない。

4.2 重量及び形状

4.2.1 重量
  包装は,両手又は片手での取扱いのいずれを意図したものであるかにかかわらず,容易に抱える又は持
ち上げることが可能な軽さであることが望ましい。製品が重すぎる場合には,保持,持ち上げ及び持ち運
びを容易にするため,物理的な補助手段を提供することが望ましい。附属書Aに人間工学的知見及び製品
の重量に関するデータを示す。
  注記 高齢者又はリウマチのような身体障害のある使用者は,筋力が弱っているため,製品を抱える,
        持ち上げる,運ぶなどが困難な場合がある。
  例 持ち上げやすいように,容器側面に取っ手を付加する(附属書A及び図B.1参照)。
4.2.2 形状
  包装の形状は,製品を抱える,持ち上げる,つかむなどによって容易に取扱い及び操作が行えるように
設計することが望ましい。
  包装の形状は,片手しか使えない使用者及び状況に対応できるように設計することが望ましい。

――――― [JIS S 0021-4 pdf 5] ―――――

           4
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
4.2.3 握り部分の形状及び大きさ
  包装の握り部分は,使用者が容易に取り扱え,握ることができるように,手及び腕の力を効果的に伝え
られるような滑り止めの付いた表面仕上げを用いることが望ましい。
  例1 重いPETボトルの側面の溝又はくぼ(窪)み(図B.2参照)。
  例2 軟包装の端のエンボス加工(図B.3参照)。
  握り部分の幅及び形状は,様々な特徴及び能力の使用者が容易に握って保持することができるように,
設計することが望ましい。附属書Aに握り部分の大きさ及び握る力に関する人間工学的知見及びデータを
示す。
  例3 PETボトル又は化粧品容器の胴部のくびれ(図B.4参照)。
4.2.4 バランス及び安定性
  包装は,平らな面の上に置いたときに簡単に転倒しないように,重量バランスの取れた形状に設計する
ことが望ましい。
  注記1 手が震える使用者は,包装を置くときに細かな調整を行うことが難しい。
  注記2 視覚障害のある使用者は,意図せずに包装に触れて倒してしまうことがある。

4.3 開封及び再封のしやすさ

4.3.1 開封及び再封の機構
  包装の開封及び再封の機構は,つかむ,つまむ,回す,ひねる,裂く,押す,引くなどの意図された動
作を容易に理解し,操作できるようにする。
  包装の再封に関し,視覚,触覚若しくはクリック音のような聴覚による情報又は強さの限界を示すこと
によって,包装が閉じられたことを確認する機構を提供することが望ましい[JIS S 0021-2の4.2.4(包装
の再封)参照]。
4.3.2 スクリューキャップ
  スクリューキャップは,つかみやすいようにしなければならない。また,直径は,小さ過ぎたり,大き
過ぎない方がよい。また,つかみやすいように滑りにくくすることが望ましい(附属書A参照)。
  例1 PETボトルのスクリューキャップの縦方向の溝(図B.5参照)。
  例2 通常,飲料用PETボトルには直径30 mmの蓋が用いられる。
4.3.3 トップシール
  開封用のトップシール又は柔らかいシート状の蓋を用いる包装は,つまんで引っ張りやすいように適切
な大きさのつまみを設けることが望ましい。
  例 トップシール包装をつまんで開けやすくする大きなつまみ(図B.6参照)。
4.3.4 引き裂き
  開封のために引き裂く又はがし取る動作が必要な包装は,つまむ動作又はつかむ動作のために使用者
に手先の器用さ又は過度な力が必要とならないように設計するのがよい。

――――― [JIS S 0021-4 pdf 6] ―――――

                                                                                             5
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
4.3.5 蓋
  瓶の蓋は,使用者が痛み及び不快を感じずに開封できることが望ましい。蓋を回す際のトルク及び蓋の
高さが開封性に及ぼす影響を考慮することが望ましい(附属書A参照)。
  注記 トルクに関するデータは,JIS S 0021-2の附属書C(人間の力及び器用さと開封との関係)参照。

4.4 使いやすさ及び内容物の取出し

4.4.1 計量
  包装は,使用者が内容物の必要な量を量り取りやすいよう設計することが望ましい。
  例 一定量を量り取れるキャップ(図B.7参照)。
4.4.2 飛散又は漏出の防止
  包装は,内容物の飛散及び漏出を最小限に抑えられるように設計することが望ましい。
  例 飛散防止機能又は漏出防止機能のある容器(図B.8参照)。

4.5 保管

  アクセシブルデザイン包装は,簡単かつ効率的に保管することが可能で,さらに,保管中に安定性が確
保されるような形状に設計する。
  例 冷蔵庫のドアポケットにぴったり収まる直方体の牛乳容器(図B.9参照)。

4.6 廃棄及びリサイクル

4.6.1 廃棄及び分別
  包装は,廃棄しやすいように,また,材料ごとの分別が適切に行えるようにすることが望ましい。
4.6.2 折りたたみ及び押しつぶし
  包装は,筋力の弱い使用者であっても使用後に容易に折りたたみ,押しつぶして廃棄ができるように設
計することが望ましい。
  例 廃棄するために折りたたみやすくした紙箱及び押しつぶしやすくしたプラスチック容器(図B.10参
      照)。

5 安全性

5.1 一般

5.1.1 誤操作の抑制
  包装は,取扱い及び操作中に誤使用又は誤操作を起こさないように,設計することが望ましい。
  例 子どもの安全に配慮した包装[18]
5.1.2 誤操作対応の安全設計
  包装は,誤使用又は誤操作したときでも,元の状態に戻せる,又は影響を最小限に抑えられるように設

――――― [JIS S 0021-4 pdf 7] ―――――

           6
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
計することが望ましい。
  例 子どもの安全に配慮したパウチ用キャップ(図B.12参照)。

5.2 配慮すべき具体的項目

5.2.1 鋭利な先端又は縁
  包装の表面には,とが(尖)った先端部分及びけがをするおそれのある縁があってはならない。
  注記 高齢者及び視覚に障害のある人は,とが(尖)った先端及び縁で負傷するリスクが高い。
5.2.2 重量
  使用中の思いがけない落下を防止するため,製品を含む包装は重すぎてはならない(4.2.1及び附属書A
参照)。
5.2.3 熱からの保護
  乾燥食品のように,内部に高温の湯を入れて使用する包装は,断熱機構を備えていることが望ましい。
  例 沸騰した湯で戻す必要のある食品用の二重構造包装(図B.11参照)。

6 取扱い及び操作性の評価

6.1 一般

  包装の取扱い及び操作性のアクセシビリティ評価は,計測機器による評価及び使用者による評価の両方
で行う。特に,使用者の行動を直接評価する場合には,計測機器による評価に加え,使用者による評価を
実施する。

6.2 計測機器を用いる評価

  計測機器による評価によって,取扱い及び操作性に関わる特定の性質についての実際的な定量データを
得ることが可能である。この方法で得られるデータとしては,大きさ,重量,強さ,トルク,人の筋力な
どがある。この測定には,JIS S 0021-2の附属書B(計測機器を用いた評価方法の例)を適用することが望
ましい。

6.3 使用者による評価

  使用者による評価によって,包装設計の妥当性,取扱い及び操作に対する使用者の対処方法について理
解を深めることが可能である。使用者による評価は,アンケート又はインタビューといった社会心理学的
方法と併用して用いることが望ましい。これらの使用者による評価で得られたデータは,設計改良のため
の手掛かりとして用いることが可能である。
  一般的な集団で試験する代わりに,被験者の特性及び包装を使用する人の能力に基づいて,その試験に
最適と考えられる集団から試験集団を選ぶことが望ましい。その結果は,一般的な集団にも有効である。
  使用者による評価を計画し,実行する方法に関する一般情報は,JIS S 0021-2及びISO 20282規格群[3]
に記載されている。

――――― [JIS S 0021-4 pdf 8] ―――――

                                                                                             7
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)

7 適合性

  この規格の全ての要求事項を満たすことによって,この規格に適合となる。包装がこの規格の要求事項
を満たしていると宣言する場合には,その包装が,この規格の要求事項を満たしていることを決定するた
めに用いた手順を明記しなければならない。手順をどの程度詳細に明記するかは,受渡当事者間の協議に
よって決める事項である。

――――― [JIS S 0021-4 pdf 9] ―――――

           8
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
                                          附属書A
                                          (参考)
        包装の取扱い及び操作に関する人間工学及び人間工学的データ
A.1 包装の取扱い及び操作性に影響を及ぼす要因を理解するための,包装の取扱いに関するタスク分析
  包装の取扱いに関する評価とその理解のために,タスク分析法を用いることが可能である。タスク分析
には様々な方法があるが,簡易的な階層的タスク分析(HTA : Hierarchial Task Analysis)[4]及び[6]が,人と
包装との相互作用を調査する過程において有効である。この方法は,目的(この場合は,包装の開封及び
使い勝手)を達成するために必要となる手順を特徴付ける構造的かつ客観的な取組方法である。また,特
徴的な部分を抽出することができる,構造化された客観的な方法である。この方法では,まずタスクを抽
出し,図示する。次の段階で分析を行うことで問題点がどこにあるかを特定できるため,使用者が意図し
ない行動を起こす可能性を減らすための包装及び表示の設計の最適化に有効である。使用者による問題点
につながるような動作を可能な限り減らすように,包装及びラベル表示の設計を最適化する手段になる。
以上のように,所定の目的(包装の開封及び使い勝手)を達成するために必要な手順は,タスク分析法に
基づいてタスクを抽出し,図示し,分析することである。
  正式なタスク分析は,適切な資格をもつ人間工学の専門家によって実施されるものであり,地域に暮ら
す認知症高齢者及び視覚障害者のような個々の集団について検討する際に役立つものとなる。
  包装の使用前から廃棄までの過程を表すライフサイクルの各項目において,消費者の視点から消費者側
のタスク,同様に包装を設計する側のタスクに分類したものを,図A.1に示す。
  図A.1に示す各段階において,消費者にとって関心があるであろう基本的な問題が二つある。一つは包
装に関する情報の問題であり,もう一つは手を使った包装の取扱い方である。情報については,消費者が
使用する際の利便性が最大に,間違いが最小になるように,包装には,意図された目的を伝えることがで
きるような内容及び形状に設計されていなければならない。また,取扱い方については,使用者の身体上
の特徴及び生理学的特徴に配慮し,あらゆる使用状況下において安全,便利かつ容易に取り扱うことがで
きるよう設計するのがよい。
  設計する際に有用となる基礎データを得るために,図A.1に示した包装の使用前から廃棄までのライフ
サイクルの項目ごとに,消費者及び包装に関するタスクそれぞれを相対するように列挙し,分析を行う。
  上述したように,綿密なタスク分析は,専門家が実施するような複雑かつ詳細なプロセスであり,複数
のタスク及びサブタスクを複数階層の関係性を用いて分析を行うものであるが,今回のような包装設計の
初期段階においては,簡便な方法を用いることが可能である。
  簡便なタスク分析の例として,シリアルの包装の使用方法に関して,人間と包装との相互作用を手順に
沿って図A.2に示す。
  この例から,包装の種類によって,タスクの数と複雑さとが異なってくるということが分かる。ヨクス
オールら[7]は,各タスクの遂行に要する時間,及び使用者がそのタスクは容易であると認識することが,
製品使用時の使用者の満足度及び間違えたと感じる程度に,大きな影響を及ぼすことを示した。包装の取
扱い及び操作性は,包装の大きさ,形状,重量及び使用状況によって更に複雑になる。
  このため,可能な限り最小の手順で目的を達成できる包装が望ましい。また,使用者に対して,大きな

――――― [JIS S 0021-4 pdf 10] ―――――

                                                                                             9
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
力及び器用さを求めないこと,容易に理解できるものであることが望ましい。
               図A.1−包装のライフサイクルを考える際の包装側及び消費者側のタスク

――――― [JIS S 0021-4 pdf 11] ―――――

           10
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
                1                                  2
                3                                  4
                5                                  6
                7                                  8
                9
           記号説明
             1 : つまみの確認及び引上げ
             2 : 箱の持ち上げ
             3 : 袋の取出し
             4 : 袋の開封
             5 : 内容物を取り出すための袋の調節
             6 : 内容物の取出し
             7 : 箱を置くa)
             8 : 袋の収納
             9 : 箱の再封
             注a) 対応国際規格の図では,上向きの矢印としているが,下向きに修正した。
               図A.2−シリアルの箱の取扱い及び操作性に関する簡略化したタスク分析

――――― [JIS S 0021-4 pdf 12] ―――――

                                                                                            11
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
A.2 物理的要因及び参照データ
A.2.1 一般
  ローソン及びヨクスオール[8]の研究では,包装の開封に影響を及ぼす六つの一般的な身体的因子が確認
された。これらの因子は,包装の操作及び取扱い全般にも適用可能である。その因子とは,次のとおりで
ある。
− 年齢
− 性別
− 握力
− 手及び包装の間の摩擦係数
− 手首の強さ
− 包装の大きさ及び形状
  ヨクスオールらの最近の研究[7]でも,包装をうまく操作できる可能性を表す指標として,指の動き及び
上手な指の使い方があることが示されている。
  しかしながら,いずれの研究も,使用者が両手の使用できる場合を考慮している。片手しか使用できな
い状況についても考慮することが望ましい。
A.2.2 持ち上げ重量及び握り方
  人間は年を取るにつれて体力が低下するため,重いものを持ち上げて運ぶ能力が低下する。さらに,一
人で持ち運ぶことができる最大量は男女間では差があり,一般的に女性が持ち運ぶことができる重量は,
非常に努力したときに男性より約30 %少なく,負担なく持ち運べる際には男性より約20 %少ない。
  一人が両手で持ち上げることができる箱の重量について,図A.3に示す[9]。これは20歳代から80歳代
までの合計214人(男性109人,女性105人)に対する測定データである。男性[図A.3のa)]又は女性
[図A.3のb)]が負担なく持ち運ぶことができる重量は,80歳になるとほぼ同等の約4 kgとなることが
示されている。

――――― [JIS S 0021-4 pdf 13] ―――――

           12
S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
                             a) 男性                               b) 女性
       記号説明
         X : 年齢(歳)
         Y : 重量(kg)
         A : 非常に努力したとき
         B : 少し努力したとき
         C : 負担と感じないとき
                            図A.3−男女の年齢と持ち上げ重量との関係
  若者又は高齢者を対象とし,片手若しくは両手で負担なく持ち運べる重量,又は少し努力すれば持ち運
ぶことができる重量の研究の結果を図A.4に示す[10]。これらのデータは,若者8人(20歳代4人,30歳
代4人),高齢者12人(60歳代3人,70歳代5人,80歳代4人)から得られた。
  この研究結果では,製品を持ち運べる重量を次のとおり示している。
− 片手で負担なく持ち運べる重量は1 kg2 kg
− 片手で持ち運ぶのに少し努力が必要な重量は2 kg3 kg
− 両手で負担なく持ち運べる重量は3 kg4 kg
− 両手で持ち運ぶのに少し努力が必要な重量は4 kg6 kg

――――― [JIS S 0021-4 pdf 14] ―――――

                                                                                            13
                                                                 S 0021-4 : 2021 (ISO 22015 : 2019)
           記号説明
             X : パネル               1 : 片手で負担なく持ち運べる
             Y : 重量(kg)           2 : 両手で負担なく持ち運べる
             a : 若者(男性)         3 : 少し努力すれば片手で持ち運べる
             b : 若者(女性)         4 : 少し努力すれば両手で持ち運べる
             c : 高齢者(男性)
             d : 高齢者(女性)
             A : 最大
             B : 平均
             C : 最小
                           図A.4−持ち運べる重量と男女の年齢との関係
A.2.3 重い包装物の取っ手
  重量によって,又は形状によって簡単につかめない包装があるが,図A.5図A.7の例に示すように,
持ち運んだり内容物を注いだりしやすくなるような取っ手又は機能があるとよい。
  標準的な大きさの手の全ての指を掛けることができるような寸法に改良した取っ手の例を図A.6に示す。
  内容物を注ぐための包装について,取っ手はボトルのできる限り中心近くに配置されており,内容物を
最後まで容易に注ぐことができるように改善されている(図A.7参照)。
                              図A.5−取っ手付きの5 L入り油ボトル

――――― [JIS S 0021-4 pdf 15] ―――――

次のページ PDF 16

JIS S 0021-4:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 22015:2019(IDT)

JIS S 0021-4:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS S 0021-4:2021の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISS0021-2:2018
包装―アクセシブルデザイン―開封性
JISZ0108:2012
包装―用語

JIS ハンドブックから規格の検索、規格番号や名称が調べて探すことができます。
JIS ハンドブック 一覧 規格 種類別