JIS T 9210:2020 馬乗り形電動車椅子―安全要求事項

JIS T 9210:2020 規格概要

この規格 T9210は、電動車椅子のうち,後方からスライドして乗車するものであって,座面昇降機構及び旋回機構を装備した屋内移動用の自操用座位変換形電動車椅子の安全施設及び使用上の情報に対する要求事項について規定。

JIST9210 規格全文情報

規格番号
JIS T9210 
規格名称
馬乗り形電動車椅子―安全要求事項
規格名称英語訳
Safety requirements for horse riding style electric wheelchair
制定年月日
2020年9月23日
最新改正日
2020年9月23日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

国際規格分類

ICS

11.180
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
2020-09-23 制定
ページ
JIS T 9210:2020 PDF [27]
                                                                                   T 9210 : 2020

pdf 目 次

ページ

  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[1]
  •  3 用語及び定義・・・・[1]
  •  4 安全要求事項・・・・[3]
  •  4.1 一般・・・・[3]
  •  4.2 使用時の安全要求事項・・・・[4]
  •  4.3 構造・機構面の安全要求事項・・・・[7]
  •  5 検証及び妥当性確認・・・・[16]
  •  6 使用上の情報・・・・[17]
  •  6.1 一般・・・・[17]
  •  6.2 表示・・・・[17]
  •  6.3 ユーザーマニュアル・・・・[18]
  •  6.4 サービスマニュアル・・・・[18]
  •  附属書A(参考)構造例及び各部の名称・・・・[19]
  •  附属書B(規定)ユーザーマニュアルの記載事項・・・・[21]
  •  附属書C(規定)サービスマニュアルの記載事項・・・・[24]

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――――― [JIS T 9210 pdf 1] ―――――

           T 9210 : 2020

まえがき

  この規格は,産業標準化法に基づき,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
産業規格である。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格に従うことは,次の者の有する特許権等の使用に該当するおそれがあるので,留意する。
− 特許番号 : 特許第5563570
− 氏名 : 株式会社テムザック
− 住所 : 福岡県宗像市江口465
  上記の特許権等の権利者は,非差別的かつ合理的な条件でいかなる者に対しても当該特許権等の実施の
許諾等をする意思のあることを表明している。ただし,この規格に関連する他の特許権等の権利者に対し
ては,同様の条件でその実施が許諾されることを条件としている。
  この規格に従うことが,必ずしも,特許権の無償公開を意味するものではないことに注意する必要があ
る。
  この規格の一部が,上記に示す以外の特許権等に抵触する可能性がある。経済産業大臣及び日本産業標
準調査会は,このような特許権等に関わる確認について,責任はもたない。
  なお,ここで“特許権等”とは,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権をいう。

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                                      日本産業規格                            JIS
                                                                              T 9210 : 2020

馬乗り形電動車椅子−安全要求事項

Safety requirements for horse riding style electric wheelchair

1 適用範囲

 この規格は,電動車椅子のうち,後方からスライドして乗車するものであって,座面昇降機構及び旋回
機構を装備した屋内移動用の自操用座位変換形電動車椅子(以下,馬乗り形電動車椅子という。)の安全設
計及び使用上の情報に対する要求事項について規定する。
  この規格は,馬乗り形電動車椅子の使用に付随する危険源について特定し,それらの危険源に伴うリス
クを排除したり又はリスクを最小限にするための情報を提供する。
  注記 馬乗り形電動車椅子の身体支持部に使用者が体重を預けて姿勢を保ちながら自ら操作し,主に介
        護施設,医療施設及び使用者の住宅といった屋内での移動における使用者の生活の質を向上及び
        改善することを目的としている。

2 引用規格

  次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。この引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
    JIS T 0102 福祉関連機器用語[支援機器部門]

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,JIS T 0102による。
  注記 構造例及び各部の名称は,附属書Aを参照。
3.1
馬乗り形電動車椅子
  使用者が座る座面の高さが調整でき,移乗を始める又は終わる場所(ベッド,トイレなど)に同じ高さ
で密着し,座面の後方からスライドして乗車·降車する形式の電動車椅子
  注釈1 この規格では,馬乗り形電動車椅子を“機体”と呼称している場合がある。
3.2
身体支持部
  使用者の身体に直に接しており,身体を支える部分
  注釈1 座面,アームサポート,チェストサポート,ニーサポート,フットサポート,バックサポート
          などがある。

――――― [JIS T 9210 pdf 3] ―――――

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3.3
座面
  上下動機構によって昇降し,使用者が座るシート
  注釈1 JIS T 9203では,同義語として“シート”を用いている。
3.4
アームサポート
  使用者が肘及び腕を置く,前方及び側方にあるバー又は構造部分
3.5
チェストサポート
  使用者の前方で,使用者が前傾姿勢となった場合,胸の位置で支える部分
3.6
ニーサポート
  機体の前方足元で,使用者の膝を支える部分
3.7
フットサポート
  使用者が機体に乗り込んで,足を置く部分
3.8
バックサポート
  使用者が座面に乗り込んだ後,飛び出し式,取付式などによって背中を支える部分
3.9
両サイドグリップ
  移乗のときに使用者が握って,前後のスライド移動のための支えとなる部分
3.10
上下動機構部
  上下動モーター及び上下動機構からなり,座面を昇降させる部分
3.11
制御部
  走行·停止·旋回のための操作レバー,座面上下動,その他の機能操作スイッチ·ボタン及び表示画面
から構成される部分
3.12
車輪
  駆動輪,キャスター又は操だ(舵)輪からなる部分
3.13
クラッチ
  走行用動力を駆動輪に伝える部分
  注釈1 手動·電動の切替えを行う。

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3.14
座面最高位
  上下動機構によって座面が一番高い位置になった状態
3.15
座面最低位
  上下動機構によって座面が一番低い位置になった状態
3.16
使用者
  馬乗り形電動車椅子に乗車する人
3.17
介助者
  使用者に代わって機体の準備(充電など),使用者が使用する場所への機体の移動,使用者が移乗する
際の介助,使用後の機体の移動·保管まで含めた作業を行う人
3.18
規定最大体重
  製造業者が機種ごとに設定した,馬乗り形電動車椅子に乗ることができる使用者の最大体重(積載物を
含む。)
3.19
クラッチ手動モード
  駆動輪とモーターとの動力伝達をつなぐクラッチを切ることで,手動によって機体を動かせる状態
3.20
規定最大斜面
  登坂性能,静的安定性及び動的安定性が担保されて走行可能な,製造業者が機種ごとに設定した最大角
度斜面
3.21
規定最大段差
  段差乗越え可能な,製造業者が機種ごとに設定した最大の段差

4 安全要求事項

4.1 一般

  馬乗り形電動車椅子は,箇条4の安全要求事項に適合しなければならない。
  この規格では,馬乗り形電動車椅子の使用時と構造·機構面とに区分して安全要求事項を規定している。
各要求事項では,重要な危険源を示し,その危険源に起因するリスクを低減するよう,次の構成で設計す
ることを要求している。ただし,この規格に規定していない危険源が存在する場合は,本質的安全設計,
保護方策及び使用上の情報でリスクを低減しなければならない。また,この規格に規定していない方策に
よってリスクが低減できる場合は,リスクアセスメントによって決定されるほかの要求事項を適用する。
a) 本質的安全設計

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b) 安全防護及び付加保護方策
c) 使用上の情報
  箇条4の安全要求事項を満たしているかは,次の検証方法のうち一つ以上の方法によって検証及び妥当
性確認を行うことが可能である。
− A : 検査
− B : 実地試験
− C : 測定
− D : 運転中の観察
− E : 回路図の精査
− F : ソフトウェアの精査
− G : タスクに基づいたリスクアセスメントのレビュー
− H : 配置図及び関連文書の精査

4.2 使用時の安全要求事項

4.2.1 移乗(乗車·降車)における安全要求事項
4.2.1.1 重要な危険源
  移乗に関する重要な危険源を,次に示す。
a) 移乗のときに,機体後部のフットサポートと移乗元·移乗先(ベッド,トイレなど)との間に足が挟
    まれることによる圧迫。
b) 移乗のときに,座面後部に着座したことで後方に重心がかかることによる,機体の後方への転倒。
c) 降車のため,後ろ向きに移乗先と位置合わせ及び高さ合わせを行うとき,振り向いての後方確認が難
    しいために,位置合わせ及び高さ合わせが不十分なことによる衝突及び転落。
d) 乗車姿勢及び座面昇降のときに,無理な姿勢及び膝関節,股関節などの過度な屈曲による,とう(疼)
    痛発生,足及び下肢への圧迫,使用者の転落など。
e) クラッチ手動モードを解除せずに,使用者が移乗を始めて機体が動くことによる転落。
f) 使用者又は介助者が機体を移乗元·移乗先へ十分に近付けず,隙間ができた状態のままで移乗するこ
    とによって,使用者が隙間から転落。
g) 移乗のときに,使用者又は介助者が誤って操作レバーに接触して機体が動くことによって,移乗でき
    ずに転倒。
h) 移動元·移乗先との機体座面の高さ調整が十分でないことによって,移乗のときに使用者が隙間から
    滑り落ち。
i) 傾斜面で移乗しようとすることによる使用者の転落。
j) 移乗元·移乗先(車輪付きの椅子など)が容易に移動,転倒などすることで,機体座面と離れること
    によって,移乗のときに使用者が転落。
k) 移乗元·移乗先(ベッド,トイレなど)の高さが通常よりも低い場合,足を伸ばした状態で移乗する
    必要がある身体の固い使用者などにとってそのような姿勢維持が困難であるとき,上体が後方に倒れ
    かかる姿勢になってそのまま動き出すことによる後方への転落。

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4.2.1.2 本質的安全設計
  4.2.1.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.2.1.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 移乗のときに,機体後部のフットサポートと移乗元·移乗先(ベッド,トイレなど)との間に足が挟
    まれて圧迫されないように,足を床に置いても機体に挟まれない必要な空間を確保する構造とする。
b) 移乗のときに,座面後部に着座して後方に重心がかかっても,後方に転倒しない構造とする。
c) 降車のため,後ろ向きに移乗先との位置合わせ及び高さ合わせを行うとき,転落及び衝突しないよう
    座面後部に座っても,身体を保持できる位置に両サイドグリップが取り付けられている構造とする。
d) 使用者の身体各部位への屈折及び圧迫が最小となるよう構造設計する。
e) クラッチの切替え操作は介助者が行い,使用者がクラッチを,電動から手動に簡単かつ誤って切り替
    えないように,手の届かない位置にクラッチ切替えスイッチがある構造とする。
f) 移乗時に,使用者が身体を保持しやすい位置に両サイドグリップを取り付ける。
g) 操作レバーに一瞬触れただけでは起動しない設定とする。
h) 降車のため,後ろ向きに移乗先との位置合わせ及び高さ合わせを行うために,座面後部に座ったとき,
    身体を保持できる位置に両サイドグリップを取り付ける。
i) 室内での規定最大斜面及び座面最高位での乗車した姿勢で静的安定性を保持できる構造とする。
j) [4.2.1.1 j)は,移乗先·移乗元の問題であるため,馬乗り形電動車椅子としての本質的安全設計では考
    慮できない。]
k) 低い位置での移乗の際には,使用者が座面を上昇させて身体が座面後部から正規の位置に移乗完了す
    るまでは動き出さないよう,操作レバーは,機体後部から簡単に手が届かない位置にある構造とする。
4.2.1.3 安全防護及び付加保護方策
  4.2.1.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.2.1.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) フットサポートを柔らかな素材で覆う。
b) 移乗のときに,座面後部に座っても後方に転倒しないように,必要に応じて,座面後部下にバランス
    支持部材を取り付ける。
c) バックミラー,バックモニターカメラなど後方確認する器具を取り付けるか,又は前向きに移乗先と
    位置合わせし,その場で旋回できる機構を取り付ける。
d) 使用者の試乗によって,事前に使用に関する適正·不適正のスクリーニングをする。
e) クラッチの手動·電動状態の表示をする。
f) バックミラー及び/又はバックモニターカメラを取り付ける。
g) 距離センサーによって,移乗元と移乗先との距離が離れたことを警告として発する装置を取り付ける。
h) バックミラー及び/又はバックモニターカメラを取り付ける。
i) [4.2.1.1 i)の傾斜面での移乗は禁止事項であるため,馬乗り形電動車椅子としての安全防護及び付加
    保護方策では考慮できない。]
j) [4.2.1.1 j)は,移乗先·移乗元の問題であるため,馬乗り形電動車椅子としての安全防護及び付加保護
    方策では考慮できない。]

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k) 移乗時,身体を保持できる位置に両サイドグリップを取り付ける。
4.2.1.4 使用上の情報
  4.2.1.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.2に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.2.1.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.2.2 移動(始動時,移動中及び停止時を含む。)における安全要求事項
4.2.2.1 重要な危険源
  移動に関する重要な危険源を,次に示す。
a) 移動時(始動時·停止時を含む。)に使用者が誤った操作などによって機体座面から後方に転落。
b) 移動中に長い衣服,マフラー,ガウンなどを車輪が引き込むことによる,後方への転倒。
c) 座面位置が高いまま,胸当てがなく前傾姿勢を取って移動することによる,前方への転倒及び転落。
d) 座面最高位で,重心位置が高くなったまま移動し,重心バランスを崩すことによる転倒及び転落。
e) 普段取らない姿勢が続くことによる疲労及びストレス。
f) 移動中に使用者が誤って操作レバーを操作し,使用者又は介助者の足の上に車輪が乗り上げることに
    よる,足の挟み込み。
g) 後進時に後方が見えにくいこと,視点が高いために床周りが見えにくいことなど,視線角度及び視界
    範囲に起因する衝突及び転倒。
h) 座面後部に移乗して,正しい乗車位置·姿勢にならないまま移動操作及び旋回を行い,加速力及び遠
    心力で身体が振られることによる転落。
i) 移動時(始動時走行時停止時)に生じる加速及び減速に伴う身体バランスの崩れによる転落。
j) 着座が不完全なまま移乗を終えたと思い込んだ状態で発進することによる,後方への転倒及び転落。
4.2.2.2 本質的安全設計
  4.2.2.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.2.2.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 移動時に使用者が後方に転落しにくい座面の構造とする。
      例1 座面の高さを上げるに従って座面角度が前傾姿勢となる。
              転落しない十分な長さとするなど。
b) 移動中に長い衣服,マフラー,ガウンなどを車輪が引き込み,後方に転倒しないように,移動のとき
    の着座位置は,身体状況に合わせ,可能な限り前方で,かつ,高い座位を標準とした設計とする[で
    ん(臀)部から座面後方までの距離を保ち,長い衣服,マフラー,ガウンなどを巻き込みにくくする。]。
c) 座面位置が高く,前傾姿勢を取っても前方に転倒及び転落しないようにチェストサポートが取り付け
    られており,機体のバランスが取れる設計とする。
d) 室内における規定最大斜面での座面最高位で動的安定性を維持できる構造とする。
e) チェストサポート及びアームサポートによる身体保持機構を備える。

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f) 操作レバーに一瞬触れただけでは起動しないタイムラグを設定する。
g) 後進のときは,移動速度が自動的に遅くなるように設定する。
h) 旋回時には,旋回速度及び加速度を自動的に低くなるように設定する。
i) 加速時·減速時·停止時に身体バランスを崩し,転落しないように加速度調整される装置を備えるこ
    と,並びにチェストサポート及びアームサポートを取り付ける。
j) 移乗後,発進の加速時に後ろに転落しにくい構造設計とする。
      例2 乗車時,座面を高くするのに併せて座面の前方方向へ傾斜する構造
4.2.2.3 安全防護及び付加保護方策
  4.2.2.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.2.2.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
b) [4.2.2.1 b)は,使用者の衣服の種類·形状によるリスクが主なため,馬乗り形電動車椅子としての安
    全防護·付加保護方策では考慮できない。]
c) シートベルト(前方への転落防止用を含む。)を取り付ける。
d) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
e) 長時間使用時の休憩アラームを取り付ける。
f) 使用者又は介助者の足の上に乗り上げても負荷の少ないゴムタイヤを採用する。
g) バックミラー及び/又はバックモニターカメラを取り付ける。
h) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
i) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
j) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
4.2.2.4 使用上の情報
  4.2.2.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.3に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.2.2.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。

4.3 構造・機構面の安全要求事項

4.3.1 身体保持機構に関する安全要求事項
4.3.1.1 重要な危険源
  身体保持機構に関する重要な危険源を,次に示す。
− 過放電及び電源喪失によって移動機能及び上下動機能が停止し,降車不能となって長時間乗車を強い
    られた場合に,身体を保持できなくなることによる転落。

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4.3.1.2 本質的安全設計
  4.3.1.1に示した危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
− 座面以外にアームサポート,チェストサポート,ニーサポートなど身体を保持する機構を備える。
4.3.1.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.1.1に示した危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならない。
− バッテリー残量を表示する,及び追加の身体保持機構,バックサポート,シートベルトなどを取り付
    ける。
4.3.1.4 使用上の情報
  4.3.1.1に示した危険源に対する使用上の情報は,B.4に規定する事項として,箇条6によって使用者へ
の情報提供をしなければならない。
4.3.1.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.2 重心バランスに関する安全要求事項
4.3.2.1 重要な危険源
  重心バランスに関する重要な危険源を,次に示す。
a) 座面が高くなることで重心が高くなり,重心バランスを崩すことによって,斜面走行時及び旋回時に
    転倒及び転落。
b) 使用者が高所へ手を伸ばすことによって重心が移動し,それとともにバランスを崩すことによって,
    機体が傾斜して転倒及び転落。
c) 右左折時及び旋回時に,重心に遠心力が働き,バランスを崩すことによって,転倒及び転落,並びに
    機体が周囲に衝突することによる機体と周囲との間への身体の挟み込み。
4.3.2.2 本質的安全設計
  4.3.2.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.2.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 規定最大斜面での座面最高位で動的安定性を保持できる構造設計とする。
b) 規定最大斜面での座面最高位で静的安定性が保持できる構造設計とする。
c) 旋回時の座面最高位で動的安定性が保持できる構造設計とし,せん(尖)鋭部がない外装で,衝撃を
    吸収する構造及び素材とする。
4.3.2.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.2.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.2.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。

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b) シートベルトを取り付ける。
c) シートベルト及び/又はバックサポートを取り付ける。
4.3.2.4 使用上の情報
  4.3.2.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.5に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.3.2.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
  特に重心バランスについては,次の試験を実施する。
a) 静的安定性試験 規定最大斜面で,馬乗り形電動車椅子の座面を最高位に上げて,規定最大体重のダ
    ミー又は乗員を乗せた状態で,斜面に対して上向き(後方安定性),斜面に対して下向き(前方安定性),
    及び機体を斜面水平方向に置いて側方(側方安定性)での転倒の可能性を確認する。また,水平面上
    に置いた馬乗り形電動車椅子に規定最大体重の乗員を乗せ,座面を最高位に上げた状態で,最も不安
    定な状態になるように乗員が両手を上方に伸ばしたときの転倒の可能性を確認する。
b) 動的安定性試験 規定最大斜面に対して,馬乗り形電動車椅子の座面を最高位に上げて,規定最大体
    重の乗員(調整ウエイト含む。)が,機種ごとの最大速度で,斜面に対して上·下·左·右の各方向で
    の旋回·急加速·急停止を行い,機体の転倒及び乗員の転落の可能性を確認する。
4.3.3 上下動機構部に関する安全要求事項
4.3.3.1 重要な危険源
  上下動機構部に関する重要な危険源を,次に示す。
a) 座面上下動によってアームサポート,制御部などの構造物が身体(特に下肢)を圧迫。
b) 製造業者が設定した対象機種において規定最大体重を超えた使用者が使用し,上下動機構,モーター
    及び制御回路に過負荷がかかることによる発火及び破損並びに火傷。
c) 上下動機構部に異物が挟まることでモーターに過負荷がかかり,制御回路に過電流が流れ,回路及び
    配線部から発火及び火傷。
d) 上下動機構部に下肢及び衣服が挟まれることによる使用者の擦過傷及び負傷。
e) 上下動機構部の耐久性不足で上下動機構が停止することによる,降車の不能。
4.3.3.2 本質的安全設計
  4.3.3.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.3.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 座面上下動によってアームサポート,制御部などの構造物が身体を圧迫しない構造設計とする。
b) 規定最大体重を超えた使用者の使用は想定しないものの,規定最大体重又は負荷(若しくは安全係数
    を乗じた負荷)に対応したモーター出力,電源供給及び昇降機構を備える。
c) 上下動機構部への異物挟まりを最小にする構造(カバーなど)とする。
d) 上下動機構部に下肢及び衣服が挟まれないようにカバーされた構造とする。
e) 規定最大体重に相当する負荷による上下動機構部の耐久性試験に適合する耐久性をもつ構造とする。

――――― [JIS T 9210 pdf 11] ―――――

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T 9210 : 2020
4.3.3.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.3.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.3.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 座面上下動操作で身体に負荷がかかった場合,モーターへの過負荷を検知して自動停止する機構を備
    える。
b) 規定最大体重を超えた使用者が乗車し,モーター,制御回路及び上下動機構部に過負荷がかかった場
    合に,警告音及び警告表示を発し,自動停止する機構及び過電流遮断の機構を備える。
c) 上下動機構部に異物が挟まることでモーターに過負荷がかかって過電流が流れた場合,警告音及び警
    告表示を発し,自動停止する機構及び過電流遮断の機構を備える。また,日常点検及び定期点検によ
    ってカバー及び上下動機構部への異物の挟み込みの確認及び検査を行う。
d) 上下動機構部に異物が挟まることでモーターに過負荷がかかって過電流が流れた場合,必要に応じて,
    過電流遮断の機構を取り付ける。
e) 定期点検によって,上下動機構部の動作確認を行う。
4.3.3.4 使用上の情報
  4.3.3.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.6に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.3.3.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.4 座面に関する安全要求事項
4.3.4.1 重要な危険源
  座面に関する重要な危険源を,次に示す。
− 座面の形状及び材質によって,座面とでん(臀)部及び大たい(腿)部との間に圧迫及び摩擦が生じ
    ることによる傷害及びとう(疼)痛の発生。
4.3.4.2 本質的安全設計
  4.3.4.1に示した危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
− 座面とでん(臀)部及び大たい(腿)部との間で圧迫及び摩擦による傷害及びとう(疼)痛が発生し
    にくい座面の構造及び素材とする。
4.3.4.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.4.1に示した危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならない。
− 使用者の試乗によって,事前に使用に関する適正·不適正のスクリーニングを行う。
4.3.4.4 使用上の情報
  4.3.4.1に示した危険源に対する使用上の情報は,B.7に規定する事項として,箇条6によって使用者へ
の情報提供をしなければならない。

――――― [JIS T 9210 pdf 12] ―――――

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4.3.4.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.5 チェストサポートに関する安全要求事項
4.3.5.1 重要な危険源
  チェストサポートに関する重要な危険源を,次に示す。
a) チェストサポートの位置及び形状によって,圧迫リスク又は乗車姿勢の崩れによるとう(疼)痛の発
    生。
b) チェストサポートに負荷をかけたことによる部品の損傷及び脱落。
4.3.5.2 本質的安全設計
  4.3.5.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.5.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) チェストサポートの位置及び形状による圧迫及び乗車姿勢の崩れによるとう(疼)痛が発生しにくい
    チェストサポートの構造及び素材とし,位置調整ができる構造とする。
b) チェストサポートは,設定する負荷で破損しない強度をもつ構造とする。
4.3.5.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.5.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.5.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 使用者の身体に合わせた形状及び素材のチェストサポートを任意選択して提供する。
b) 定期点検によって,チェストサポートの損傷及び変形の確認を行う。
4.3.5.4 使用上の情報
  4.3.5.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.8に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.3.5.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.6 アームサポートに関する安全要求事項
4.3.6.1 重要な危険源
  アームサポートに関する重要な危険源を,次に示す。
a) 身体に負荷のかかるアームサポートの形状及び取付位置のため,圧迫リスク及び乗車姿勢の崩れによ
    るとう(疼)痛の発生。
b) アームサポートに負荷をかけたときに,アームサポートのぜい(脆)弱性及び耐久性不足によって製
    品部位が損傷することによる転落。
c) アームサポートに負荷をかけたときに,重心バランスを崩すことによる転倒。

――――― [JIS T 9210 pdf 13] ―――――

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T 9210 : 2020
4.3.6.2 本質的安全設計
  4.3.6.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.6.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) アームサポートは,とう(疼)痛が発生しにくい取付位置並びに形状及び素材とする。
b) アームサポートは,設定する負荷で破損しない強度をもつ構造とする。
c) アームサポートは,設定する負荷で転倒しないバランス構造とする。
4.3.6.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.6.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.6.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 使用者の試乗によって,事前に使用に関する適正·不適正のスクリーニングをする。
b) 定期点検によって,アームサポートの損傷及び変形の確認を行う。
c) (安全防護及び付加保護方策なし)
4.3.6.4 使用上の情報
  4.3.6.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.9に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.3.6.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.7 ニーサポートに関する安全要求事項
4.3.7.1 重要な危険源
  ニーサポートに関する重要な危険源を,次に示す。
a) 身体に負荷のかかるニーサポートの形状及び取付位置のため,圧迫の発生及び乗車姿勢の崩れによる
    とう(疼)痛が発生。
b) ニーサポートに負荷をかけたときに部品が損傷及び脱落。
4.3.7.2 本質的安全設計
  4.3.7.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.7.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) ニーサポートは,とう(疼)痛が発生しにくい構造及び素材とし,取付位置を調整できなければなら
    ない。
b) ニーサポートは,設定する負荷で破損しない強度をもたなければならない。
4.3.7.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.7.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。

――――― [JIS T 9210 pdf 14] ―――――

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  注記 次に示す細別符号は,4.3.7.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 使用者の試乗によって,事前に使用に関する適正·不適正のスクリーニングをする。
b) 定期点検によって,ニーサポートの損傷及び変形の確認を行う。
4.3.7.4 使用上の情報
  4.3.7.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.10に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。
4.3.7.5 検証及び妥当性確認
  4.1の検証方法の中から適切な方法を選択し,検証及び妥当性確認を行う。
4.3.8 両サイドグリップに関する安全要求事項
4.3.8.1 重要な危険源
  両サイドグリップに関する重要な危険源を,次に示す。
a) 身体に負荷のかかる両サイドグリップの形状及び取付位置のため,圧迫の発生及び乗車姿勢の崩れに
    よるとう(疼)痛が発生。
b) 移乗時に両サイドグリップに体重をかけた場合,機体の重心バランスが崩れることによって,機体が
    後方に傾き,又は転倒し,使用者が転落。
c) 両サイドグリップに負荷をかけたことによる部品の損傷及び脱落。
4.3.8.2 本質的安全設計
  4.3.8.1に示した各危険源に対する本質的安全設計として,次の事項を考慮しなければならない。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.8.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 両サイドグリップは,とう(疼)痛が発生しにくい構造,取付位置及び素材とする。
b) 両サイドグリップに規定最大体重の負荷をかけても機体が後方に傾き,転倒しない構造とする。
c) 両サイドグリップに規定最大体重の負荷をかけても損傷がない強度をもつ構造とする。
4.3.8.3 安全防護及び付加保護方策
  4.3.8.1に示した各危険源に対する安全防護及び付加保護方策として,次の事項を考慮しなければならな
い。
  注記 次に示す細別符号は,4.3.8.1の細別符号に対応するものとなっている。
a) 使用者の試乗によって,事前に使用に関する適正·不適正のスクリーニングをする。
b) (安全防護及び付加保護方策なし)
c) 定期点検によって,両サイドグリップの損傷及び変形の確認を行う。
4.3.8.4 使用上の情報
  4.3.8.1に示した各危険源に対する使用上の情報は,B.11に規定する事項として,箇条6によって使用者
への情報提供をしなければならない。

――――― [JIS T 9210 pdf 15] ―――――

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JIS T 9210:2020の国際規格 ICS 分類一覧

JIS T 9210:2020の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JIST0102:2011
福祉関連機器用語[支援機器部門]

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