JIS X 0170:2020 システムライフサイクルプロセス | ページ 16

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X 0170 : 2020 (ISO/IEC/IEEE 15288 : 2015)
注記2 設計定義では,適用可能な技術及びそれら技術によるシステムソリューションへの貢献を考
慮する。設計は,図面及び詳細な設計記述のような,定義の“実現方法”レベルを提供する。
注記3 この設計定義プロセスは,システムを構成するシステム要素へのアーキテクチャ エンティテ
ィの割当て,分割及び相互の整合性を確固たるものにし,又は確認するために,システムア
ーキテクチャにフィードバックを提供する。
6.4.5.2 成果
設計定義プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) 各システム要素の設計特性が定義されている。
b) システム要求事項はシステム要素に割り当てられている。
c) 設計定義に必要な設計実現手段(enabler)が選択又は定義されている。
d) システムを構成するシステム要素間のインタフェースが定義又は詳細化されている。
e) システム要素の設計選択肢がアセスメントされている。
f) 設計作成物が作成されている。
g) 設計定義の実施を可能にするために必要な全てのイネーブリングシステム又はサービスが利用可能に
なっている。
h) 設計特性と,システムアーキテクチャのアーキテクチャ エンティティとの間のトレーサビリティが確
立されている。
6.4.5.3 アクティビティ及びタスク
プロジェクトは,設計定義プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に示すアク
ティビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) 設計定義の準備を行う。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) システムを構成する各システム要素に要求される技術を決定する。
注記 システム要素(例えば,機械,エレクトロニクス,ソフトウェア,運用操作者の役割など)
には,幾つかの複数の技術が使用されることがある。
2) 必要な設計特性の種別を決定する。
注記 各技術に対して,必要な設計特性の種別(例えば,詳細なパターン,構造,サイズ,量,
基準寸法,テンプレートなど)が定義される。設計特性には,セキュリティに関する次の
ような事項の考慮が含まれる。最小権限の原則,多層防御,システムサービスへのアクセ
ス制限,並びにシステムへの攻撃にさらされる境界面の最小化及び防護。
3) 設計の発展についての原則を定義する。
注記 これには次を含む。
− システム及びそのアーキテクチャが発展する場合には,設計特性の定期的なアセスメ
ントを定義すること。
− システム要素及び技術に起こり得る潜在的な陳腐化を予測すること。
− システムのライフサイクルにわたる時間の経過に伴う,他のシステム要素及び技術へ
の置換えを予測すること。
− 設計定義の最終的な結果を予測すること。
4) 設計定義の戦略を定義する。
5) 設計定義を支援するために必要なイネーブリングシステム又はサービスを識別し計画する。
注記 これは,イネーブリングシステムの要求事項及びインタフェースの識別を含む。設計定義

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のイネーブリングシステムは,共同作業及び設計開発のためのツール並びに設計再利用リ
ポジトリ(設計パターン,設計作成物,設計基準などのためのもの)を含む。
6) 利用されるイネーブリングシステム若しくはサービスを,獲得する又はそれらへのアクセスを取得
する。
注記 設計定義の実現を支援するイネーブリングシステムの支援機能が意図されたように利用で
きるかを客観的に確認するために,妥当性確認プロセスが用いられる。
b) 各システム要素に関連する設計特性及び設計実現手段を確立する。このアクティビティは,次のタス
クからなる。
1) システム要求事項をシステム要素に割り当てる。
注記 システム要求事項の幾つかは,アーキテクチャ定義の中でシステム要素に既に割り当てら
れている場合がある。このタスクの目的は,全てのシステム要求事項に対処するために,
必要な範囲で割当てを完了することである。
2) アーキテクチャ特性を設計特性に変換する。
注記 このタスクでは,システム要素に割り当てられたアーキテクチャ エンティティに関連する
各アーキテクチャ特性を,図面,ダイアグラム,モデル,アーキテクチャ,測定法及びそ
れらの値を列記した表などの必要十分な表現を使用して,設計特性(寸法,形状,材料,
重大な品質特性,データ処理構造など)に変換する。(この段階で関連する場合には)全て
のデータは,実装のための詳細な許容される誤差・あそび値に関連付けられている。
3) 必要な設計実現手段を定義する。
注記 このタスクでは,設計特性の実現に必要な設計実現手段を定義及び/又は選択する。設計
実現手段としては,設計特性に関連するモデル,方程式,アルゴリズム,計算,形式的記
述表現及びパラメータ値,パターン,試行錯誤による発見的な手段などがある。計画され
た運用環境の利用状況における互換性,費用面での可能性,セキュリティ,及びその他の
重大な特性は,必要な設計実現手段を定義する中で考慮する事項である。JIS Z 8530は人
間中心設計・人間工学的設計の指針を提供する。
4) 設計の代替案を詳細調査する。
注記 設計特性の実現可能性をアセスメントし,設計特性を実装できない場合には,アーキテク
チャ又は要求事項の中でトレードオフして調整する。
5) システム要素とシステム外部エンティティとのインタフェースを詳細化又は定義する。
注記 インタフェースは,アーキテクチャ定義プロセスで,アーキテクチャの意図及び理解に必
要なレベル又は度合いまで識別及び定義される。それらは,設計定義プロセスで,設計特
性,並びにシステム要素と,システムを構成する他のシステム要素,及びシステム外部エ
ンティティとのインタフェース及び相互作用に基づいて詳細化される。アーキテクチャ定
義で対処されていない追加のインタフェースを識別及び定義する必要がある可能性がある。
6) 設計作成物を確立する。
注記 このタスクでは,実装技術に依存した専用の作成物を作ることを通してシステム要素の設
計特性を形式性のある記述にする。そうした作成物の例として,データシート(電子部品
についての記述),データベース(ソフトウェアについての記述を格納),文書類(運用操
作者の役割についての記述),及び外部のデータ形式へ変換可能なデータファイル(機械加
工についての記述)がある。

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c) システム要素を取得するための代替案をアセスメントする。このアクティビティは,次のタスクから
なる。
1) 利用する場合があると考えられる非開発項目(NDI)の候補を識別する。
注記 これには,商用既製品(COTS,Commercial-Off-The-Shelf),以前の設計の再利用又は取得
者からの提供品目が含まれる。
2) 意図する適用の目的への適合性を判断するために,期待される設計特性又はシステム要素の要求事
項から作成された判断基準に照らして,各NDIの候補及び新しい設計代替案をアセスメントする。
3) 任意のNDIソリューションの候補,及びシステム要素の新しい設計代替案の中から,好ましい案を
決定する。
注記 システム分析プロセスは,選択を実行する意思決定管理プロセスと同じく,分析又はアセ
スメントで用いられる。
d) 設計を管理する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 設計特性をシステム要素に至るまで対応付ける。
注記1 このタスクでは,詳細設計特性とシステムアーキテクチャのアーキテクチャ エンティテ
ィとの間のトレーサビリティを確立することからなる。
注記2 これは,上位レベルの親システムアーキテクチャが利害関係者の関心事を満たすために
期待されるアーキテクチャ特性(例えば,モジュール性,使用性,相互運用性,事故予
防用の安全機構など)を得るために,可能ならばシステム要素の物理的配置を変更する
ような,アーキテクチャ定義プロセスへのフィードバックをすることを容易にする。
2) 設計及び根拠を捕捉して形あるものに記録する。
注記1 根拠には,主要な実装の選択肢,及び実現手段に関する情報が含まれる。
注記2 詳細設計特性及び実装の選択肢を検証及び妥当性確認するために,検証及び妥当性確認
プロセスが実行される。
3) 設計のトレーサビリティを維持する。
注記 ライフサイクルを通じて,設計特性と,アーキテクチャ エンティティ,識別されたインタ
フェース,分析結果,検証方法又は技法及びシステム要素の要求事項との間で,双方向の
トレーサビリティを維持する。
4) ベースラインのために選定された重要な情報項目を提供する。
注記 構成管理プロセスが,構成品目及びベースラインを確立し維持するために用いられる。こ
のプロセス(設計定義)で,ベースラインのための候補となる情報項目を識別し,CMへ
情報項目を提供する。
6.4.6 システム分析プロセス(System Analysis process)
6.4.6.1 目的
システム分析プロセスは,ライフサイクル全体にわたる意思決定を支援するために,技術面の理解のた
めの厳密なデータ及び情報の基盤を提供することを目的とする。
システム分析プロセスは,技術面のアセスメントに必要な入力の開発に適用する。それは,システム要
求事項,アーキテクチャ,並びに設計の有用性及び完整性に対する信頼を提供することができる。システ
ム分析は,幅広く異なる分析機能,複雑さのレベル及び厳密さのレベルを包含する。
システム分析には,数学的分析,モデル化,シミュレーション,実験及びその他の技法を含む。それら
の分析技法は,技術面での遂行能力・性能・運用時の実績,システムの振る舞い,実現可能性,費用面で

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の可能性,重大な品質特性,技術面のリスク,及びライフサイクルのコストの分析,並びに全てのライフ
サイクル段階にわたるパラメータの可能性のある値の範囲についての感度分析の実行のための技法である。
システム分析は,システムレベルの運用概念,要求事項とする値の決定,要求事項間の対立した矛盾の
解決,代替アーキテクチャ又は代替システム要素のアセスメント,及びエンジニアリング戦略(どのよう
に統合し,検証し,妥当性確認及び保守するか)の評価に関する幅広い分析ニーズに使用される。
分析の正式さ及び厳密さの度合いは,分析して支援する情報ニーズ又は作業成果物の重大性,利用可能
な情報・データの量,プロジェクトの規模,及び結果を得るためのスケジュールに依存する。
注記 このプロセスは,意思決定管理プロセスとともに用いられることがよくある。
6.4.6.2 成果
システム分析プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) システム分析ニーズが識別されている。
b) システム分析の前提条件及び結果の妥当性が確認されている。
c) システム分析の結果が意思決定に提供されている。
d) システム分析に必要とする全てのイネーブリングシステム又はサービスが利用可能になっている。
e) システム分析結果のトレーサビリティが確立されている。
6.4.6.3 アクティビティ及びタスク
プロジェクトは,システム分析プロセスに関する,適用可能な組織の方針及び手順に従って,次に示す
アクティビティ及びタスクを実施しなければならない。
a) システム分析の準備を行う。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) システム分析が要求される問題又は質問を識別する。
注記 これには,分析の技術面,機能面及び非機能面の目標が含まれる。非機能面の目標には,
重大な品質特性,様々な特性,技術面の成熟度,製造面の成熟度,技術面のリスクなどが
含まれる。分析によって回答しようとする,問題の記述又は質問は,分析の目標,並びに
分析結果の期待及び有用性を確立するため,欠くことができない。
2) システム分析の利害関係者を識別する。
3) システム分析の範囲,目標及び実際を忠実に表現するレベルを定義する。
注記 必要とされる,実際を忠実に表現する度合い(正確性又は精度)のレベルは,厳密さの適
切なレベルを決定する要因である。
4) システム分析の方法を選択する。
注記 分析方法は,分析に要する時間,コスト,分析方法が実際を忠実に表現する度合い,技術
面の駆動要因及び分析の重大さに基づいて選択する。分析方法には,幅広いレベルの厳密
さがあり,専門家の判断,人手による簡易計算,表計算,履歴データ及び傾向分析,エン
ジニアリングのモデル,シミュレーション,視覚化並びにプロトタイピングが含まれる。
コスト及びスケジュールの制約によって,ほとんどのシステムでは,重大な特性に対する
システム分析だけを実行することになる。
5) システム分析戦略を定義する。
6) システム分析を支援するために必要とするイネーブリングシステム又はサービスを識別し計画す
る。
注記 これには,イネーブリングシステムの要求事項及びインタフェースの識別を含む。システ
ム分析用イネーブリングシステムには,分析を支援するために必要なツール,関連モデル,

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及び分析に利用できる可能性のあるデータリポジトリが含まれる。選択された方法は,ど
のツールが分析を支援するのに適しているかを決定する主要な要因となる。これには,関
連するモデル及びデータのアベイラビリティを決定することも含まれている。
7) 利用されるイネーブリングシステム若しくはサービスを,獲得する又はそれらへのアクセスを取得
する。
注記 システム分析の実現を支援するイネーブリングシステムの支援機能が,意図されたように
利用できるかを客観的に確認するために,妥当性確認プロセスが用いられる。
8) 分析のために必要なデータ及び入力を集める。
b) システム分析を実施する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) 前提条件を識別し,その妥当性を確認する。
2) 要求されるシステム分析を実行するために,選択された分析方法を適用する。
3) 品質及び妥当性に対して,分析結果をレビューして吟味する。
注記 結果は,それ以前に完了した関連する分析と合わせて調整される。
4) 結論及び勧告を確定する。
注記 このタスクでは,システム分析で扱う内容に関する適切な専門家及び利害関係者を識別し,
参加を得る。
5) システム分析の結果を記録する。
c) システム分析を管理する。このアクティビティは,次のタスクからなる。
1) システム分析の結果のトレーサビリティを維持する。
注記 ライフサイクルを通じて,システム分析結果と,分析が決定を支持しているか又は根拠を
提供しているシステム定義項目(例えば,システム要求事項として求められた定量値,ア
ーキテクチャの代替案)との間で,双方向のトレーサビリティが維持される。これは,適
切なデータリポジトリによって容易になることがよくある。
2) ベースラインのために選定された重要な情報項目を提供する。
注記 構成管理プロセスは,構成品目及びベースラインを確立し維持するために用いられる。こ
のプロセス(システム分析)は,ベースラインの候補を識別し,情報項目を構成管理に提
供する。このプロセスでは,分析結果又は報告がベースライン化される典型的な情報項目
である。
6.4.7 実装プロセス(Implementation process)
6.4.7.1 目的
実装プロセスの目的は,指定されたシステム要素を実現することである。
実装プロセスは,インタフェースを含む要求事項,アーキテクチャ及び設計を,選択された実装技法の
実践方法に従って,適切な技術専門性又は規範を用い,システム要素を作成する作業に変換する。このプ
ロセスの結果として,規定されたシステム要求事項(割り当てられた要求事項及び導出された要求事項を
含む。),アーキテクチャ及び設計を満たすシステム要素を生成する。
注記 これは,単一の要素(概念及び開発段階)及び(生産の段階における)生産の実行の両方に適
用される。これは,支援の段階で必要とされる変更の解決にも適用できる。
6.4.7.2 成果
実装プロセスの実施に成功すると次の状態になる。
a) 要求事項,アーキテクチャ又は設計に影響を及ぼす実装の制約が識別されている。

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  • ISO/IEC/IEEE 15288:2015(IDT)

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