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X 0170 : 2020 (ISO/IEC/IEEE 15288 : 2015)
この規格は,特定のライフサイクルモデルを規定するものではない。その代わりに,ライフサイクルプロ
セスと呼ばれる,システムのライフサイクルの定義に使用できる,一まとまりのプロセスの集合を定義し
ている。この規格は,ライフサイクルモデル内のプロセスについて特定の順序を規定するものでもない。
プロセスの順序は,プロジェクトの目的及びシステムのライフサイクルモデルの選択によって決定する。
5.4.2 システムライフサイクル段階
ライフサイクルは,そのシステムの性質,目的,利用及び周囲の状況によって異なる。各段階(stage)
は,ライフサイクル全体に対する明確な目的及び貢献があり,システムライフサイクルを計画し,実行す
るときに考慮される。
段階は,システムと関連したライフサイクルとの主要期間を表し,システム記述の状態又はシステム自
身に関連する。段階は,そのライフサイクルを通してシステムの主要な進捗及び達成されるマイルストー
ンを記述する。段階は,ライフサイクルの主要な決定ゲートを生み出す。これらの決定ゲートは,システ
ムを作り出す又は利用するときに,コスト,スケジュール及び機能性に関係する固有の不確実性及びリス
クを理解し,対処するために,組織によって利用される。それゆえ,段階は,その中で組織の管理者がプ
ロジェクト及びテクニカルプロセスを概観できるレベルで可視性及び制御をもつ枠組みを組織に提供する。
ISO/IEC/IEEE 24748-1:2018によれば,典型的なシステムライフサイクル段階には,概念,開発,生産,
利用,支援及び廃止の各段階が含まれる。
組織によっては,対照的となるビジネス戦略とリスク緩和戦略とを満たすために,段階を異なった形で
使用する。複数の段階を同時並行させて使用したり,異なった順序で使用したりすることで,通常とは明
確に異なる特性をもつライフサイクルを形成することができる。
ライフサイクル段階についての概念の詳細は,ISO/IEC/IEEE 24748-1:2018にあるライフサイクル管理
の適用の手引で記載している。
5.5 プロセスの概念
5.5.1 プロセスの基準
この規格におけるライフサイクルプロセスの決定は,三つの基本原則に基づいている。
− 各ライフサイクルプロセスは,成果,アクティビティ及びタスクの間に強い関係がある。
− プロセス間の依存関係は,実行可能であることを確保できる範囲までは,可能な限り減らす。
− 一つのプロセスは,ライフサイクルの中で単一の組織によって実行可能である。
5.5.2 プロセスの記述
この規格の各プロセスは,次の属性によって記述する。
− 名称は,プロセスの全体としての適用範囲を表す。
− 目的は,プロセスを実行する目標を記述する。
− 成果は,プロセスの実施に成功することによって期待される観察可能な結果を表す。
− アクティビティは,プロセスの構成要素で,関連の強いタスクの集合である。
− タスクは,成果の達成を支援することを意図した要求事項,推奨,又は容認された行動である。
プロセス記述の形式に関する更なる詳細は,ISO/IEC TR 24774に記載されている。
5.5.3 プロセスの一般的な特性
5.5.2で説明した基本属性に加えて,全てのプロセスに共通する他の属性によって,プロセスを特徴付け
てもよい。JIS X 33002をはじめとするプロセスアセスメントの規格は,プロセス能力測定の枠組みの中で
6段階の達成レベルを特徴付けるための共通プロセス属性を識別している。この規格の附属書Cに,それ
らに定義されている,レベルのより高いプロセス能力の達成に貢献するプロセス属性を一覧する。
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X 0170 : 2020 (ISO/IEC/IEEE 15288 : 2015)
注記 対応国際規格ではJIS X 0145-2(ISO/IEC 15504-2:2003)を参照しているが,JIS X 33002:2017
(ISO/IEC 33002:2015),JIS X 33020:2019などへ改正されている。
5.5.4 プロセス修整(Tailoring)
附属書Aは,この規格の修整を行うために必要な基本的アクティビティを定義する。修整することで,
この規格への適合の主張によって認められている価値が減少してしまう可能性があることに注意するのが
よい。その理由は,修整によって,望ましい規定が削除された度合いを他の組織が理解するのが難しいか
らである。この規格への適合を単独で主張して明言する組織は,多くのプロセスを列挙して,それらに対
して修整適合するよりも,より少ないプロセスを列挙して,それらに対しての完全適合を主張した方が有
利であると判断してもよい。
5.6 この規格のプロセス
5.6.1 はじめに
この規格では,ソフトウェアシステムのライフサイクルで実行する活動を四つのプロセスグループに分
けている。これらのグループ内のライフサイクルプロセスは,その目的及び望まれる成果に関して記述し
ており,これらの成果を達成するために実施すべきアクティビティ及びタスクを列挙している。
四つのプロセスグループ及び各グループに含まれるプロセスを図4に示す。この規格で記述されたプロ
セスは,組織が有用であるとした追加のプロセスの使用を排除又は阻止する意図はない。次に続く四つの
細分箇条で,各プロセスグループについて記述している。
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システムライフサイクルプロセス
合意プロセス テクニカルマネジメント テクニカルプロセス
プロセス ビジネス又はミッション
取得プロセス プロジェクト計画 分析プロセス(6.4.1)
(6.1.1) プロセス(6.3.1)
利害関係者ニーズ及び
供給プロセス プロジェクト 利害関係者要求事項定義
(6.1.2) プロセス(6.4.2)
アセスメント及び制御
プロセス(6.3.2) システム要求事項定義
プロセス(6.4.3)
組織のプロジェクト 意思決定管理プロセス アーキテクチャ定義
(6.3.3) プロセス(6.4.4)
イネーブリングプロセス
リスク管理プロセス 設計定義プロセス
ライフサイクルモデル
(6.3.4) (6.4.5)
管理プロセス
(6.2.1) システム分析プロセス
構成管理プロセス (6.4.6)
(6.3.5)
インフラストラクチャ 実装プロセス
管理プロセス (6.4.7)
情報管理プロセス
(6.2.2)
(6.3.6)
インテグレーション
ポートフォリオ プロセス(6.4.8)
管理プロセス 測定プロセス
(6.2.3) (6.3.7) 検証プロセス
(6.4.9)
人的資源管理プロセス 品質保証プロセス 移行プロセス
(6.2.4) (6.3.8) (6.4.10)
妥当性確認プロセス
品質管理プロセス (6.4.11)
(6.2.5)
運用プロセス
(6.4.12)
知識管理プロセス
(6.2.6) 保守プロセス
(6.4.13)
廃棄プロセス
(6.4.14)
図4−システムライフサイクルプロセス
5.6.2 合意プロセス
組織は,システムの生産者であり利用者でもある。製品又はサービスに対して,(取得者として行動する)
一つの組織は,(供給者として行動する)別の組織に仕事を課すことができる。これは,合意を用いて達成
される。
一般に,組織は,同時に又は順次にシステムの取得者及び供給者の両者として行動する。取得者及び供
給者が同一組織に属するときは余り形式ばらないで合意プロセスが使える。同様に,組織,プロジェクト
及び技術部門のそれぞれの責任について合意するために,組織内でも合意プロセスが使える。図4に,こ
のプロセスグループに含まれるプロセスの一覧を示す。
5.6.3 組織のプロジェクトイネーブリングプロセス
組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,プロジェクトが組織の関係者のニーズ及び期待を満た
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すことができるように,必要な資源を提供することに関係している。組織のプロジェクトイネーブリング
プロセスは,一般的に戦略レベルにおいて次の三つに関係している。
− 組織のビジネス又は事業の管理及び改善
− 資源及び資産の準備及び配置
− 競合又は不確実な状況におけるリスク管理
組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,プロジェクトが遂行される環境を確立する。組織は,
次のことを行う。
− プロジェクトで使われるプロセス及びライフサイクルモデルを確立する。
− プロジェクトを確立する,又は方向転換するか,若しくは取り消す。
− 人的及び財政資源を含む必要資源を提供する。
− 内部及び外部顧客のためにプロジェクトによって開発されるシステム及び他の納入品目に対して品質
測定量を設定し,監視する。
組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,多くの組織に対してビジネスのために行うという強い
印象を与え,商用及び営利的な動機があることを示唆している。しかしながら非営利組織も,利害関係者
への説明責任があり,資源に対して責任があり,非営利活動におけるリスクにも遭遇する組織であるので,
組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,非営利組織にも同様に関係している。したがって,この
規格は,営利組織と同じように非営利組織にも適用できる。図4に,このプロセスのグループに含まれる
プロセスの一覧を示す。
5.6.4 テクニカルマネジメントプロセス
テクニカルマネジメントプロセスは,組織の管理者によって割り当てられた資源及び資産を管理するこ
と,並びに一つ以上の組織が行った合意を果たすために資源及び資産を適用することに関係している。
テクニカルマネジメントプロセスは,プロジェクトの技術面の作業に関係するが,特に次に関係する。
− コスト,期間の長さ及び達成に関して計画すること
− 計画及び達成度を示す実績基準を遵守することを確実なものにするよう助けるために,活動をチェッ
クすること
− 進捗及び達成における未達成の部分を取り戻す是正処置の識別及び選択すること
これらは,次のために利用する。
− プロジェクトのための技術面の計画の立案及び実施
− 技術チームを横断した情報の管理
− システム製品又はサービスの計画に対する技術面の進捗のアセスメント
− 完了までの技術的タスクの制御
− 意思決定プロセスにおける支援
注記1 テクニカルマネジメントは,“エンジニアリング機能を計画,整理及び制御するための技術的
及び管理的資源の適用”である(ISO/IEC/IEEE 24765:2010)。
一般的に,組織の中には,幾つかのプロジェクトが共存する。テクニカルマネジメントプロセスは,内
部のニーズを満たすために企業レベルで使うことができる。図4に,このプロセスグループに含まれるプ
ロセスの一覧を示す。
注記2 テクニカルマネジメントプロセスは,各テクニカルプロセスを実施している期間中に適用す
る。
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5.6.5 テクニカルプロセス
テクニカルプロセスは,ライフサイクルを通して技術的活動に関係する。テクニカルプロセスは,利害
関係者のニーズを製品及びサービスに変換する。テクニカルプロセスは,その製品を適用するか,又はそ
のサービスを運用することによって,必要なときに必要な所で,現時点から将来にわたって持続的に,利
害関係者要求事項を満たし顧客満足を獲得できるようにする。テクニカルプロセスは,モデルとして表現
されたシステムであるか,完成品のシステムであるかにかかわらず,システムを開発して使用するために
適用する。テクニカルプロセスは,システム構造の階層のどのレベルにおいても,及びライフサイクルの
どの段階においても適用する。図4に,このプロセスグループに含まれるプロセスの一覧を示す。
5.7 プロセスの適用
この規格に定義したライフサイクルプロセスは,システムを取得,利用,創出又は供給するときに,ど
のような組織でも使用できるものである。ライフサイクルプロセスは,システムの階層のどのレベルでも,
ライフサイクルのどの段階でも適用できる。
これらのプロセスが実行する機能は,特定の目的,成果及びプロセスを構成するアクティビティ及びタ
スクの集合で構成される。
図4の各ライフサイクルプロセスは,ライフサイクルを通して,必要に応じて呼び出すことができる。
この規格でプロセスが記述されている順序は,プロセスを使用する順番を定めて指定したものではない。
しかしながら,プロセス相互の順序関係は,ライフサイクルモデルを定義することによって導入されるこ
とになる。ライフサイクルを通して,これらのプロセスの使用の詳細な目的及び時期は,次のような複数
の要因の影響を受ける。それは,システムの耐用寿命の期間中にいずれも変化するような,社会的,取引
上,組織上及び技術上の考慮である。したがって,個々のシステムライフサイクルは,同時並行的,反復
的,再帰的及び時間に依存する特性を定常的にもったプロセス群が複合したシステムとなる。
プロセスを同時並行して使用することは,一つのプロジェクト内でも行うことができるし(例えば,シ
ステム構築のための設計活動及び準備活動を同時に実行する場合),複数プロジェクト間でも行い得る(例
えば,複数のシステム要素を異なるプロジェクトの責任の下で同時に設計する場合)。
同一のプロセス又は同一のプロセス集合が同じシステムに繰り返し適用された場合,その適用は反復的
と呼ぶ。プロセスの反復的使用は,プロセスの出力を漸進的に洗練するために重要である。例えば,連続
的な検証活動と統合活動との間の相互作用は,製品の適合に関して信用を徐々に築くことができる。反復
は適切であるだけでなく,反復することが期待される。新しい情報が,プロセス又はプロセスの集合を適
用することによって生まれる。通常,この情報は,要求事項,分析されたリスク又は機会に関する質問
(question)の形態をとる。このような質問は,プロセス又はプロセスの集合のアクティビティを完了する
前までには回答を見つけて解決することが望ましい。
プロセスの再帰的使用は,すなわち,システムの構造の中にあるシステム要素の連続した階層レベルに
おける,同一のプロセス又は同一のプロセス集合の繰返し適用であり,この規格の適用の重要な側面であ
る。どのレベルでもプロセスの出力は,情報,成果物又はサービスのいずれかであり,(例えば,トップダ
ウンで設計する場合の)下位のレベル,又は(例えば,システムを組み上げて実現する場合の)上位のレ
ベルで使用されるプロセスへの入力となる。一つの適用から得られる成果は,システム構造の中の次の下
位(又は上位)のシステムの入力となり,下位における,より詳細な成果,又は上位における,より成熟
した成果の集合へ到達する。このような取組方法は,システム構造の中にある連続する各システムへ価値
を付加する。
システムへの影響は変化する性質があり(例えば,運用環境の変化,システム要素の実装に対する新し
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JIS X 0170:2020の引用国際規格 ISO 一覧
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