JIS X 25022:2019 システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)―利用時品質の測定 | ページ 3

                                                                                              9
X 25022 : 2019 (ISO/IEC 25022 : 2016)
利用時品質のモデルにおいて,使用性という用語は,有効性,効率性,満足性及び利用状況網羅性から
構成される利用時品質の部分集合について言及している。ユーザインタフェース及び相互作用における使
用性及び機能適合性の測定量は,JIS X 25023に含まれる。
許容できない水準のリスク回避性は,不十分な水準の使用性に起因することがある。このことは,不十
分な水準の製品の使用性によって引き起こされることがある。許容できない水準のリスク回避性は,不十
分な水準のその他の製品の品質特性によって引き起こされることもある。
利用時品質の測定量は,利用者とシステムとの間の相互作用の成果を測定する。実装された製品の最終
的な利用時品質は,利用者が意図した目的のために,利用者の環境下で製品を使用するときに測定できる。
利用時品質の測定量は,次のように概念設計及び開発段階でも使うことができる。
− 要求事項 利用時品質の要求事項は,利用者及びその他の利害関係者にプロトタイプで経験させ,意
図した品質に対する高水準の目標を与えるために,設計及び開発プロセスの早期に明示することがで
きる。
− プロトタイプの形成的評価 開発時に,問題の識別及び製品の改善のために,製品の使用性の測定量
及び正規化されていない利用時品質の測定量を使用して,少数の代表的な利用者がプロトタイプをテ
ストすることによって,利用時品質に関する特定の問題を識別することができる。
− プロトタイプの総括的評価 開発時に,正規化された利用時品質の測定量を使用して,多数の代表的
な利用者がプロトタイプをテストすることによって,及び結果として得られる有効性,効率性及び満
足性が潜在的なリスクをどの程度適切に低減するかを見積もることによって,異なる設計解の最終的
な利用時品質を見積もることができる。
− 品質保証及びプロセス制御 実装されたシステムの利用時品質は,要求事項に照らしてテストするこ
とができる。
注記1 附属書Eは,SQuaREの異なる品質モデル間の関係を説明している。
注記2 この規格では,“測定量”(名詞としての用法)という語は,品質測定量を指している。

6.2 利用時品質の測定

  利用時品質は,ソフトウェア又はコンピュータシステムの製品品質だけではなく,製品が使用される特
別な状況にも依存する(ISO/IEC 25063参照)。利用状況は,利用時品質に影響を与え得る,ユーザ要因,
作業要因,並びに物理的環境要因及び社会的環境要因を含む。したがって,製品の利用時品質の比較は,
測定量が同一の利用状況向けに作られているときに限って有効である。
このことが,リスク回避性の水準の予測又は解釈を特別に難しくしている。それは,リスク回避性に影
響を及ぼし得る,利用状況の他の要因を制御することが通常不可能なためである。しかしながら,不十分
な使用性又は不十分な製品品質から帰結し得る潜在的なリスクの根拠を示し,かつ,リスクの低減につな
がる使用性又は製品品質の目標値を提示できることもしばしばある(図2を参照)。使用性又は製品品質
の測定量がこれらの目標値に達しない場合,リスク回避性の測定値の潜在的影響を評価することができる。
例 航空会社の予約システムを設計する場合,誤りから生じる可能性のある潜在的な経済的影響の可
能性を最小限にするため,利用者が意図した日の希望する時刻に,意図した目的地へ到着する飛
行機の便を予約することの有効性(成功率)に,高い目標水準を設定する。
多くの測定量は,特定のニーズを満たすために自分に合うように手直しできるように定義される。した
がって,測定量間の,又は測定量と目標値との意味のある比較は,同じ手段で運用可能とされる測定量,
及び同じ又は十分類似した利用状況(すなわち,同様の環境で同様の作業を行う同種の利用者)に用いら
れる測定量に対してだけ行われる。

――――― [JIS X 25022 pdf 11] ―――――

10
X 25022 : 2019 (ISO/IEC 25022 : 2016)
有効性,効率性及び満足性は,現実的な利用状況で代表的な作業を実施する代表的な利用者を観測する
ことによって評価できる(例えば,附属書B,附属書C及びISO/TS 20282-2で示す方法を参照)。現実的
な使用環境をシミュレートすることによって(例えば,ユーザビリティラボ),又は実際の運用時における
製品の利用を観測することによって,測定量が得られる。利用時品質を仕様化又は測定するために,まず
は,意図した利用状況の各構成要素(利用者,利用者の目標及び使用環境)を識別することが必要である。
この利用状況にできるだけ厳密に合致するように,評価ニーズを設計する必要がある。利用者には,運用
環境において利用者が利用可能な種類の手助け及び支援だけを与えることも重要である。これらの測定量
は,ISO/TS 20282-2に明示されている方法を適用するとき,保証プロセスに対して用いることができる。
幾つかの使用性の外部測定量(JIS X 25023)は同じような方法でテストされるが,利用時品質のテスト
の一部として典型的な作業を達成するための製品のより一般的な使用中に,製品の特別な特徴の使用を評
価する。
注記1 附属書B及びISO/TS 20282-2は,有効性,効率性及び満足性を測定する方法の例を提供して
いる。附属書Aは,利用状況網羅性を測定する方法の例を提供している。また,参考文献[18]
も参照。
注記2 附属書Fは,SQuaREの品質測定の概念について,より多くの情報を提供している。

6.3 利用時品質の測定量の解釈

  幾つかの利用時品質の測定量(例えば,作業の開始から終了までの時間)は,それだけを取り出して個
別に解釈することは困難かもしれない。より解釈しやすいように,利用時品質の測定量を比較可能とする
次に示すような幾つかの方法がある。
a) 適合性 測定量を特定のビジネス要求事項又は使用法の要求事項と比較すること(例 作業を10分以
内に完了する。)。
b) ベンチマーキング 同じ目的に使用する同じ製品又は類似の製品のベンチマークと測定量とを比較す
ること(例 新システムを用いた作業は,旧システムを用いたときより早く完了する。)。
c) 時系列 ある時間にわたって傾向を比較すること(例 システムのプロトタイプの新規版ごとの利用
者によるエラーの減少数)。
d) 習熟 訓練された又は熟達した利用者が使用したときに得られた値と比較すること(例 新規の利用
者と経験を積んだ利用者とを比較して,新規の利用者がどの程度長い時間を要したか。)。
e) 満足性に対する利用者の人数比 これまでの評定値のデータベースが存在する場合,少なくともこれ
までにこの値で評定を行った利用者数に対する割合として測定量を表すことができる。
箇条8の利用時品質の測定量には,これらの方法で正規化された例を含んでいるが,多くの測定量では,
附属書Bに示すように,幾つかの形式での正規化が可能である。
(作り込みエラー又は作業時間のように)正規化されていない測定量は,個々の利用者又は小グループ
の利用者が直面した特定の問題を識別するために使用することができる。
有効性,効率性又は満足性の信頼に足る測定量を得るためには,目標値を達成したことについて,求め
られる水準で統計に基づく信頼を得るために,作業を実施する十分な数の利用者からデータを得る必要が
ある。
注記 ISO/TS 20282-2は,一般の人々が使用する製品の有効性,効率性及び満足性の総括的テスト法
の例を提供している。

6.4 適切な利用時品質の測定量の選定

  特定の利用時品質の測定量を選定することに影響を与えることができる要因は,次のものを含む。

――――― [JIS X 25022 pdf 12] ―――――

                                                                                             11
X 25022 : 2019 (ISO/IEC 25022 : 2016)
− 有効性,効率性,満足性及びリスク回避性の相対的な重要度
− 経済状況,人間の生活,健康又は環境へのリスクを作り出すことができる有効性,効率性又は満足性
の特定の側面
− 特別な測定量を適用するために必要なスキル(技能)及び知識
利用時品質の評価に用いるプロセスに関する更なる情報は,附属書Dを参照。

6.5 他の国際規格が規定する利用時品質の側面

  次の規格は,利用時品質の特定の側面についての更なる情報を提供している。
− JIS Z 8521 JIS Z 8521の有効性,効率性及び満足性の定義は,JIS X 25010の定義と類似しているの
で,この規格の有効性,効率性及び満足性の利用時品質の測定量は,JIS Z 8521で定義した使用性の
測定量にもなり得る(附属書C参照)。
− JIS X 25062では,使用性の総括的テストの結果をどのように文書化するかを規定している。
− ISO/IEC 25063では,使用性を測定するときに識別する必要がある利用状況の要素を説明している。
− ISO/IEC 25064では,(利用時品質に対するニーズを含めて)ユーザニーズをどのように文書化するか
を説明している。
− ISO/TS 20282-2では,消費者製品の有効性,効率性及び満足性を測定する厳密な方法論を提供してい
る。

7 品質測定量を記述するために使用される形式

  次の情報を箇条8の表中の各品質測定量に付与している。
a) D 品質測定量の識別コード。各IDは,次の三つの部分によって構成する。
− 品質特性及び品質副特性を表すコード。有効性及び効率性では,“Ef”及び“Ey”という2文字の
形式を使用し,満足性,リスク回避性及び利用状況網羅性では,“ABc”という3文字の形式を使用
する。ここで,“A”は品質特性を,“Bc”は品質副特性を表す。
− 品質副特性の中で順番につけられた通し番号
− 品質測定量の適用可能な範囲を示す分類G又はS。ここで,G(一般的に適用可能)は広い範囲の
状況で使用することができ,S(ニーズに特化)は特別な状況に関係するときに使用することがで
きる。
b) 名称 品質測定量の名称
c) 説明 品質測定量が提供する情報
d) 測定関数 品質測定量を生成するためにQME(品質測定量要素)をどのように組み合わせるかを表す
数式
e) 方法 測定量を得るために,使用することができる方法の種類
− 利用者効率の測定 有効性及び効率性の測定量(D.3.3.2及びD.3.3.3を参照)
− 顧客行動の測定 顧客がとった行動について収集したデータ
− 自動データ収集 利用者行動を収集するためにソフトウェアを導入することによって収集したデー

− 質問票 満足性の測定量(D.3.3.5を参照)
− ビジネス分析 ビジネス行動及び結果の分析
− ソフトウェア及び使用性分析 人的エラー又はシステムエラーによって引き起こされる潜在的なリ
スクの分析

――――― [JIS X 25022 pdf 13] ―――――

12
X 25022 : 2019 (ISO/IEC 25022 : 2016)
− 利用統計分析 以前に発生した人的エラー又はシステムエラーによって引き起こされた結果の分析
− 状況記述分析 期待される利用時品質を評価するための利用状況の分析
− 検査 潜在的な問題を識別するためのシステムの検査

8 利用時品質の測定量

8.1 一般

  ここでは,JIS X 25010に記載している順,すなわち,有効性,効率性,満足性,リスク回避性及び利用
状況網羅性という順で,品質特性及び品質副特性ごとに,品質測定量を一覧表示している。
有効性,効率性及び満足性の測定量に対して得られた値は,利用状況(6.2を参照)に依存するので,測
定量を作り出す(又は測定量を作り出す予定となっている)利用者,作業及び環境の種別は,測定結果と
組み合わせて記載する必要がある。
規格又は規定を遵守するニーズは,システムに対する要求事項の一部として識別することができる。し
かし,これらの規格又は規定は,品質モデルの適用範囲外である。
注記 この品質測定量の一覧表は,最終的なものではなく,この規格の今後の版で改正される可能性
がある。この規格の読者による,フィードバックの提供が望まれる。

8.2 有効性の測定量

  有効性の測定量は,利用者が明示された目標を達成する上での正確性及び完全性を総合評価する(表1
を参照)。
注記1 有効性の測定量は目標達成の方法は考慮せずに,達成した程度だけを考慮している(D.3.1.2
を参照)。
注記2 “利用者が引き起こしたエラー”という表記は,意図された動作を利用者が行っていないこ
とを示している。エラーの主な原因がシステム設計の悪さである可能性があることを強調す
るために,これらのエラーを“利用エラー”と呼んでいる。
表1−有効性の測定量
ID 名称 説明 測定関数 方法
Ef-1-G 作業完了率 支援なしで正しく完了したX=A / B 利用者効率の
作業の割合 A=完了した個別の作業の数 測定
B=試行した個別の作業の総数
注記1 この測定量は,一人の利用者又は1群の利用者グループに対して測定可能である。
注記2 作業を部分的に完了できる場合は,測定量として目的達成率を適用することがより適切である。
注記3 作業の複雑さが異なる場合,重み付けをした作業を数式で使用できる。X=Σ(i=1..n) Wi×Ai / B。ここで,i
は作業の数,Wiは,その作業の困難さを表し,Wiの合計は,1.0である。
注記4 要求事項の中で識別された作業,又は利用者が試行した作業のいずれかに適用できる。

――――― [JIS X 25022 pdf 14] ―――――

                                                                                             13
X 25022 : 2019 (ISO/IEC 25022 : 2016)
表1−有効性の測定量(続き)
ID 名称 説明 測定関数 方法
Ef-2-S 目的達成率 支援なしで達成した作業の[{X=1−ΣAi | X≧0}] 利用者効率の
目的の割合 測定
Ai=作業出力における欠落した目的又は
間違った目的の割合の値(最大値=1)
注記 潜在的な欠落又は不完全な構成要素のそれぞれには,ビジネス又は利用者への出力値を損なう程度に基づいた
重み付けAiが与えられる(重み付けの合計が1を超える場合,品質測定量は,通常0に設定されるが,これは
否定的な成果及び過度のリスクを示している可能性がある。)。得られる結果が繰り返し可能で,再現可能で,
かつ,有意になるまで,反復して,得点計算方法を一連の作業の出力に適用し,かつ,重み付けを調節するこ
とによって改良する。
例 業務日誌及び連絡先情報についての潜在的なエラーが及ぼすビジネスへの影響について,影響を受ける可能性の
ある顧客と議論し,目的達成率の平均値を(パーセントで)計算するために,次の得点計算方法を決定した。
− インストール 全ての構成要素を成功裏にインストールできた場合,100 %とする。インストールから除外さ
れた,必要な副構成要素の1件ごとに,20 %を差し引く。
− 新しい連絡先 全ての細目を正しく入力した場合,100 %とする。欠落している情報の項目の1件ごとに,50 %
を差し引く。間違った項目欄に入力した情報の項目の1件ごとに,20 %を差し引く。誤字1件ごとに,5 %を
差し引く。
− 新しい会議 全ての細目を正しく入力した場合,100 %とする。間違った時間又は日付を入力した場合,0 %
とする。間違った項目欄に入力された情報の項目の1件ごとに,20 %を差し引く。誤字1件ごとに,5 %を差
し引く。
差引き分の合計が100 %に等しいか,又は100 %を超えたときは,目的達成率を0 %とする。
Ef-3-G 作業エラー 作業中に利用者が引き起こX=A 利用者効率の
したエラーの数 A=作業中に利用者が引き起こしたエラ測定
ーの数
注記1 利用者が引き起こしたエラーの数には,全てのエラー,訂正されていないエラーだけ又は作業結果が正しく
完了しなかったエラーだけを含むことができる。
注記2 例えば,開発中に異なる版のシステムを比較する場合,エラー数の測定量は,実行される同じ作業を異なる
状況で比較するために用いることができる。
注記3 異なる作業で発生したエラーを比較するために,エラー数を各作業で行われた動作の回数に関連付けること
ができる。
注記4 エラーが同じ重要度をもつ場合,又は重み付けがされている場合,比較を行うことだけが適切である。
注記5 どれくらい多くの利用者が,どの問題点を,どのような組合せでもっていたかを示す問題点マトリックスを
用いて,利用者の参加を得て分析することができる。
Ef-4-G エラーが内在す 利用者がエラーを引き起こX=A / B 利用者効率の
る作業 した作業の割合 A=エラーが内在する作業の数 測定
B=作業の総数
注記 Ef-3Gの注記を適用する。
Ef-5-G 作業エラーの多 エラーを引き起こした利用X=A / B 利用者効率の
さ 者の割合 A=エラーを引き起こした利用者の数 測定
B=作業を実行した利用者の総数
注記 Ef-3Gの注記を適用する。

8.3 効率性の測定量

  効率性の測定量は,利用者が目標を達成するための正確性及び完全性に関連して,費やされた資源を総
合評価する(表2を参照)。
注記1 最も一般的な資源は,作業を完了するための時間であるが,他の関連する資源としては,利
用者の労力,材料又は使用上の財務費用を含むことができる。
注記2 効率性の測定量は,通常,異なる製品又は版を使用する場合の効率性と比較するか,又は製
品がない場合の効率性と比較する。効率性は,専門家の効率性と比較することもできる。

――――― [JIS X 25022 pdf 15] ―――――

次のページ PDF 16

JIS X 25022:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 25022:2016(IDT)

JIS X 25022:2019の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 25022:2019の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称