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JIS X 4311:1996 規格概要
この規格 X4311は、画像ビット平面を符号化するためのビット保存(無損失)圧縮方式を規定するもので,2値(白黒を含む2色)画像に特に適する。
JISX4311 規格全文情報
- 規格番号
- JIS X4311
- 規格名称
- 画像及び音声の符号化―段階表現2値画像圧縮
- 規格名称英語訳
- Information technology -- Coded representation of picture and audio information -- Progressive bi-level image compression
- 制定年月日
- 1996年4月1日
- 最新改正日
- 2015年10月20日
- JIS 閲覧
- ‐
- 対応国際規格
ISO
- ISO/IEC 11544:1993(IDT)
- 国際規格分類
ICS
- 33.160.01
- 主務大臣
- 経済産業
- JISハンドブック
- ‐
- 改訂:履歴
- 1996-04-01 制定日, 2001-03-20 確認日, 2005-12-20 確認日, 2010-10-01 確認日, 2015-10-20 確認
- ページ
- JIS X 4311:1996 PDF [83]
日本工業規格(日本産業規格) JIS
X 4311-1996
(ISO/IEC 11544 : 1993)
画像及び音声の符号化−段階表現2値画像圧縮
Information technology−Coded representation of picture and audio information−Progressive bi-level image compression
日本工業規格(日本産業規格)としてのまえがき
この規格は,1993年に第1版として発行されたISO/IEC 11544 (Information technology−Coded representation
of picture and audio information−Progressive bi-level image compression) ,及び1995年に発行された技術に関
する正誤票1を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格(日本産業規格)である。
0. 序文 この規格は,ISO/IEC JTC1/SC29/WG9とCCITT SGVIIIの合同検討機関(以降,JBIGという。)
によって作成されたものを翻訳し,日本工業規格(日本産業規格)として制定したものである。JBIGは,2値画像の段階的
な表現符号化の規格を制定するために1988年に組織された。
段階的符号化は,解像度を低減した画像の圧縮データを始めに伝送し,続いて必要に応じてその圧縮デ
ータに基づく追加の圧縮データを伝送することによって,その画像の画質を向上させる形で画像圧縮デー
タを伝送する。この規格は,段階的モード,段階互換順次モード及び単一段階順次モードをもつ一つの符
号化方式を規定し,必要とする低解像度画像を得る方法を示す。この規格で規定する符号化方式及び低解
像度化方式は,2値画像と同様に階調画像及びカラー画像の可逆符号化としても効果的に利用できる。
0.1 概要 この仕様は,2値画像(白黒画像のような2色だけの画像)の可逆符号化方式を規定する。こ
の方式は,階調画像及びカラー画像にも用いることができる。画像の特性に適応した方式であるため,あ
らゆる画像に対応できる。
この方式は,CCITT勧告T.4及びCCITT勧告T.6に規定されたMMR方式(JBIGより簡易)で得られ
る圧縮率より,スキャナで読み取った印刷文字画像では1.11.5倍,電子計算機で生成した文字画像では
5倍,ディザ等の疑似中間調画像では230倍の高い性能を達成した。
この方式はビット保存方式であって,CCITT勧告T.4及びCCITT勧告T.6と同様にひずみを生じるこ
となく,最終的な復号画像が原画像と同一になる。
この方式は,段階的な表現能力ももつ。段階的に符号化された画像を復号する場合は,最初に原画像の
低解像度化画像が得られ,引き続き送られてくる符号を復号することによって2倍の解像度の画像が得ら
れる。低解像度化は高解像度層から低解像度層に対して行われ,復号動作は低解像度層から高解像度層に
対して行われるので注意しなければならない。段階的な符号化によって送られる最低解像度の画像は,順
次に符号化された画像である。単一段階順次符号化の応用では,この画像が伝送される唯一の画像となる。
段階的符号化には,二つの明確な利点がある。一つは,解像度が広範囲に異なる出力装置に適応できる
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共通のデータベースを設計できる点である。特定の出力機器の解像能力に対応して,圧縮画像ファイルの
うちで必要とする部分だけを伝送・復号すればよい。解像度の向上が更に必要な場合,例えば,表示装置
(CRT) 上に表示された画像をハードコピーとして出力するときなどでは,要求される解像度向上のための
情報だけを伝送すればよい。
段階的符号化のもう一つの利点は,低速度又は中速度の伝送路を用いる応用において,主観的によりよ
い画像を(CRT上で)概観できることにある。低解像度画像は,素早く伝送・表示され,その後,必要な
だけの解像度の向上が行われる。それぞれの解像度向上は,既に伝送された画像に基づいて行われる。段
階的符号化によって,利用者は画像表示途中で素早く内容を理解することが容易になり,そのため利用者
はいつでも画像伝送を中断できる。
Dを,段階的符号化で解像度を2倍にする回数(差分層数という。)とする。IDを,最高解像度画像とし,
その水平方向と垂直方向の画素数をそれぞれXD及びYDとする。RDを,画像IDの標本化解像度とする。
この規格は,RD, XD, YD,又はDをパラメタとし,それらに対してほとんど制限を課さない。RDの最高解
像度値として400dpi(画素/インチ)又は200dpiの解像度を選択すれば,解像度の体系は現行のファクシ
ミリの標準と同等となる。RDに600dpi又は300dpiを選択すれば,原国際規格を印字するのに使用するレ
ーザー印字装置とより適応性をもつ段階的体系となる。
Dの値は,通常,最低解像度がおよそ1025dpiとなるよう選択されると考えられる。典型的な2値画
像は,このような解像度まで縮小されると判読することができないが,このような低い解像度の画像でも
アイコンとしては使用できる。ページのレイアウトは,高解像度で見なくても明白なので,特定のページ
を識別できることが多い。
上に述べたように,この規格は,解像度を2倍にする回数(以下,2倍化数という。)Dに制限を与えな
い。例えば,ハードコピーファクシミリの場合のように段階的符号化の利用価値がないときには,Dを0
に設定することもできる。そうすることによって,JBIG符号化方式のMMR符号化方式に対する圧縮率の
優位性が保たれる(実際には,若干向上する。)とともに,緩衝記憶及びアルゴリズム簡易化の必要がなく
なる。JBIGの単一段階順次符号化方式は,MMR符号化と同等の潜在的な応用に適用できる。段階的符号
化によって符号化された画像のうち最低解像度画像だけが単一段階順次復号器で復号できるが,単一段階
順次符号化で符号化された画像は段階的復号を行う復号器でも復号できる。
この規格は,ビット平面をそれぞれ2値画像とみなして独立に符号化することによって,濃淡画像及び
カラー画像の可逆符号化にも使用できる。濃淡画像及びカラー画像に対するこの符号化は,自然画符号化
規格であるJIS X 4301の可逆モードの代替手法として,用いることができる。予備実験の結果では,1画
素6ビットまでの濃淡画像に対しJBIG方式は,JPEG方式可逆モードより良好な圧縮率を得た。1画素6
8ビットの画像では,JBIG方式は,JPEG方式とほぼ同等であった。この規格は,1ビット平面を超える
画像の処理機能も用意しているが,濃淡信号及びカラー信号をどのようにビット平面に写像するかは規定
していない。実験的には,濃淡画像においては交番符号化(グレイコード)による写像は,通常の自然2
進符号化による写像より優れていた。
0.2 ストライプ及びデータ順序 段階的な符号化と,最高解像度画像を左から右,上から下へと符号化
する伝統的な符号化方式とを区別する必要がある場合は,この伝統的な方式を“順次”とよぶ。順次符号
化方式が段階的符号化方式より優れている点は,ページ(フレーム)緩衝域を必要としないことにある。
段階的符号化は,低解像度画像を利用しながら高解像度画像を符号化するので,最高解像度より一段低い
解像度の画像を記憶するページ緩衝域を必要とする。
JBIGのデータ列を最低解像度階層の画像だけで作成することも可能で,それを単一段階順次符号化とい
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う。このような符号化では,最終解像度画像は,差分解像度階層を参照せずに符号化される。このとき,
(0.1に示したように)Dには0を設定する。画像を段階的符号化する際にも,最低解像度画像は,実質,
単一段階順次符号化で符号化されることに注意する必要がある。最終解像度画像が単一段階順次符号化で
符号化されている場合は,画像を段階的に復号することはできない。
段階互換順次符号化による符号化は,段階的符号化による符号化と“互換”であるといわれる。それは,
生成される(符号器側)又は読み込まれる(復号器側)データ列は,どちらのモードでも全く同一の情報
を搬送しているからである。段階的符号化と段階互換順次符号化とは,符号器によって生成される符号化
データの各部分の順序だけが異なり,段階的復号と段階互換順次復号とは,復号器で用いられるデータの
各部分の順序だけが異なる。
この互換性は,符号化前に画像を小さい部分に分割することによって達成される。これらの部分は,画
像をその各解像度,すなわち“階層”ごとに,水平方向の帯,すなわち“ストライプ”に分割することに
よって生成される。段階互換順次符号化では,“ストライプ”を記憶する(ページ緩衝域より十分小さい)
緩衝域と,それぞれの解像度階層及びビット平面を適応的エントロピ符号化するために必要な個々の“状
態”メモリとを必要とする。
図0.1は,3解像度階層,1階層当たり3ストライプ及び1ビット平面のときの分解構造を示す。
表0.1は,九つのストライプに対して定められた伝送順序を示す。
図0.1 階層数3,ストライプ数3及びビット平面数1でのデータ配列
表0.1 2値の場合に取り得るデータ順序
HITOLO SEQ 順序例
0 0 0, 1, 23, 4, 56, 7, 8
0 1 0, 3, 61, 4, 72, 5, 8
1 0 6, 7, 83, 4, 50, 1, 2
1 1 6, 3, 07, 4, 18, 5, 2
SEQビットによる段階的伝送の伝送順序と順次的伝送の伝送順序との識別に加え,HITOLOビットによ
る解像度の伝送順序の識別があることに注意する必要がある。符号器は,高解像度から低解像度方向に動
作し,HITOLO順序によってストライプを符号化するのが自然である。復号器は,低解像度画像から画像
を復号しなければならないので,ストライプを復号するのは逆方向になるのが自然である。応用が復号器
に段階的符号データを直接伝送する符号器を用いるときは,いずれか一方が順序を並び替えるために緩衝
域の働きをしなければならない。応用がデータベースを含む場合は,(適切に設定された)データベースは,
緩衝域として使用可能であり,(HITOLOの正常設定も含めた)順序の変更に使用できる。これによって,
符号器及び復号器からこの緩衝域の要件を取り去ることができる。
ストライプの垂直方向の大きさは,画像全体に対して通常は十分に小さい。最低解像度層のストライプ
当たりの行数Loは,自由パラメタの一つである。例えば,Loをストライプの幅がおよそ8mmになるよう
に選ぶとする。このような選択がなされた場合,ビジネス用文書大の画像ではストライプの数はおよそ35
ストライプとなる。
図0.2のようにビット平面の数が2以上の場合は,12通りのストライプの伝送順序が定義される。表0.2
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にそれを示す。上に示したとおり,HITOLOビットは伝送する解像度の順序を示し,SEQビットは段階的
伝送と順次的伝送との識別を示す。ILEAVEビットが1のときは,複数のビット平面のインタリーブがあ
ることを示す。SMIDビットが1のときは,6.2.4の表11に示しているように,ストライプに対応する指標
sのループが解像度とビット平面のループとの中間にあることを示す。
図0.2 階層数3,ストライプ数3及びビット平面数2でのデータ配列
表0.2 複数プレーンでの可能なデータ順序
HITOLO SEQ ILEAVE SMID 順序例
0 0 0 0 (00, 17)
01, 02 06, 07, 08 12, 13, 14) (03, 04, 05 09, 10, 11 15, 16,
0 0 1 0 (00, 17)
01, 02 03, 04, 05) (06, 07, 08 09, 10, 11) (12, 13, 14 15, 16,
0 0 1 1 (00, 17)
03 01, 04 02, 05) (06, 09 07, 10 08, 11) (12, 15 13, 16 14,
0 1 0 0 (00, 17)
06, 12 03, 09, 15) (01, 07, 13 04, 10, 16) (02, 08, 14 05, 11,
0 1 0 1 (00, 17)
06, 12 01, 07, 13 02, 08, 14) (03, 09, 15 04, 10, 16 05, 11,
0 1 1 0 (00, 17)
03 06, 09 12, 15) (01, 04 07, 10 13, 16) (02, 05 08, 11 14,
1 0 0 0 (12, 05)
13, 14 06, 07, 08 00, 01, 02) (15, 16, 17 09, 10, 11 03, 04,
1 0 1 0 (12, 05)
13, 14 15, 16, 17) (06, 07, 08 09, 10, 11) (00, 01, 02 03, 04,
1 0 1 1 (12, 05)
15 13, 16 14, 17) (06, 09 07, 10 08, 11) (00, 03 01, 04 02,
1 1 0 0 (12, 05)
06, 00 15, 09, 03) (13, 07, 01 16, 10, 04) (14, 08, 02 17, 11,
1 1 0 1 (12, 05)
06, 00 13, 07, 01 14, 08, 02) (15, 09, 03 16, 10, 04 17, 11,
1 1 1 0 (12, 05)
15 06, 09 00, 03) (13, 16 07, 10 01, 04) (14, 17 08, 11 02,
二つの新しい変数のILEAVEとSMID,及び上に示した二つの変数のHITOLOとSEQによって,全部で
12通りの伝送順序の表現が可能となる。4種の2値変数から組合せ可能な16通り中,残りの4通りに対す
るストライプ伝送順序は存在しない。ビット平面が一つの場合,ストライプの伝送順序は,ILEAVEとSMID
には依存せず,これらの値は無意味なものとなる。
ビット平面p,解像度階層d及びストライプsにおける符号化データCs, d, pの値は,ストライプの伝送順
序には依存しない。HITOLO, SEQ, ILEAVE及びSMIDの変数によって与えられる違いは,データ列上の符
号データのつなぎ合わせの順序に過ぎない。これは,前に示した互換性の特徴となる。
単純化のためにこの0.の残りの部分では,一つのビット平面を仮定し,ビット平面を表す添字pをCs, d, p
の表記から省略する。
0.3 符号器の機能ブロック 図0.3に符号器の構成を示す(単一段階順次符号化では,最低解像度層の符
号器だけを使用する。)。
図0.3 符号器の構成
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X 4311-1996 (ISO/IEC 11544 : 1993)
図0.3は,概念的とはいえ,全く同じアルゴリズムをもつD個の差分層符号器で構成されているが,実
際には一つの物理的な差分層符号器を再帰的に使用してもよい。
0.3.1 低解像度化及び差分層符号器 図0.3における低解像度化及び差分層符号器のブロックは,それぞ
れ機能的には同じであるため,ここではある一つの層に注目して示す。図0.3の各ブロックでは,二つの
解像度層が関係している。単純化のために,以降では入力する画像を“高解像度画像”,出力される画像を
“低解像度画像”とする。ここでの“高解像度”及び“低解像度”とは,通常,最高解像度又は最低解像
度を指すものではない。
図0.3の低解像度化及び差分層符号器のブロックは,図0.4に示す補助ブロックに分解される。
なお,システムによっては必ずしも図0.4に示される機能ブロックのすべてを必要としない(信号名は,
4.の信号表を参照)。
図0.4 低解像度化及び差分層符号器
また,この0.では表0.3に示す略語で図中の各ブロックを表す。
――――― [JIS X 4311 pdf 5] ―――――
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- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.160 : オーディオ,ビデオ及びAV技術 > 33.160.01 : オーディオ,ビデオ及びAV技術一般