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h) 任意の片手で操作又は利用できる。
備考 利用者は,両手操作を必要とせずに片手だけでも操作できる。片手で物を支えながら別の手で
レバーを操作するなど,両手での作業を前提とした設計をしない。
例 1. 操作部は,左右のどちらの手でも操作できる。
例2. 複数キーの同時押しによる入力方法を用いない。
例3. 利用者が,片手で原稿台ガラスへ原稿のセットができるように,自動原稿送り装置を任意の位
置で停止(フリーストップ)できる。
例4. 用紙ガイド及び原稿ガイドは,片手で容易にセットできる。
i) 手,足,指,又は義肢の限定された動きだけでも操作又は利用できる。
備考 筋力低下,麻ひ(痺),手の震え,不随意運動,加齢による筋力低下などのために,操作ボタン,
キー,スイッチなどを正確に押すことが難しい場合には,同時複合操作を必要とせず,片手で
操作できる。
例 1. 操作部は,強くつかむ,つまむ又は手首をひねる動作を必要とさせない。
例2. 主操作キーは,できるだけ大きくし,キー表面は,凹形状とする。
例3. スタートキーには,誤操作防止のためにキーガードを設ける。
例4. タッチパネル操作部の入力部は,義手などでも操作可能な感知方式を用いる。
例5. 操作部位の周辺には,こぶしが入る程度の空間を設ける。
4.3 推奨要件
事務機器の情報アクセシビリティを確保・向上させるために推奨する要件は,次による。
a) 認知又は記憶能力への過度な負荷をかけないで操作又は利用できる。
参考 JIS S 0024の附属書(参考)参照。
b) 文化の差異又は言語の違いがあっても,操作又は利用できる。
例 操作部の言語は,利用者に合わせた言語を用いることができる。
c) 初めて操作又は利用する人にとっても,操作又は利用できる。
備考 事務機器の利用に学習を必要とする利用者を限定する機器には,適用しない。
例 1. 音声ガイドに従って操作できる。
例2. 事務機器の基本機能を利用する場合には,マニュアルを見なくても直感的に操作できる。
5. 操作に関する要件
5.1 アクセス可能な機能・仕様の適用範囲
事務機器の基本機能は,この規格で規定する情報アクセシ
ビリティを実現しなければならない。その他の拡張機能は,推奨範囲とする。
複合機の機能は,複写,ファクシミリ,プリント,スキャナなどであり,それぞれの操作範囲として次
の項目を規定する。
a) 基本機能及び操作範囲 附属書1(規定)に示す。
b) 拡張機能及び操作範囲 附属書2(参考)に示す。
5.2 同等の情報アクセシビリティ機能要件
この規格が規定する仕様・機能・技術と実質的に同等又は
それ以上に高齢者・障害者に対し情報アクセシビリティが確保・向上できるものであれば,この規格が規
定しない仕様・機能・技術の使用を妨げない。
例 1. 視覚に頼れない利用者は,事務機器の液晶タッチパネルから入力することは難しいが,操作パ
ネルを使わず音声認識技術を用いて声で入力し,操作できる。
例2. 情報アクセシビリティ機能をもつパーソナルコンピュータなどの他の情報機器を接続すること
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によって,複合機及びプリンタの情報アクセシビリティを向上させることができる。
5.3 操作に関し配慮すべき要件
情報アクセシビリティ開発者は,アクセス可能な,事務機器を企画・
開発・設計するときは,利用者が意図したタスク(仕事,作業,課題など)が達成できるように,次の作
業要件を考慮しなければならない。
タスクの詳細に関しては,附属書1(規定)及び附属書2(参考)に示す。
なお,作業要件にかかわる操作の概要を次に示す。
a) 機器への接近 机又は床へ設置された事務機器を操作するときは,妨げるものがなく容易にアクセス
できる。
b) 操作手順 事務機器は,利用者の特性に合わせた操作可能なユーザーインタフェースを備える。
c) 操作の開始・終了 事務機器の使用開始及び終了は,利用者自身によって操作できる。
ただし,ファクシミリなどでは,常時通電し電源管理を行わない場合もある。
d) 入力・設定操作の確認 事務機器の操作は,視覚,聴覚,触覚などの複数の感覚を用いて確認可能な
機能を備える。
e) 操作の一貫性 利用者の思考過程及び行動特性を考慮して,操作手順は,分かりやすく一貫性をもた
せる。
f) 表示・出力の調節 画面表示及び音声出力の調節機能がある場合には,利用者の特性に合わせて調節
ができる。
g) 操作の時間制限 事務機器の操作で,一定の時間内に利用者からの入力を必要とする場合には,制限
時間の調節の可否及び制限時間を事前に告知する。
h) 誤操作の防止 身体機能の程度によらず,誤操作しないように配慮する。
i) 初期状態への復帰 誤操作した場合には,操作の途中でも,簡単な操作で初期状態に戻ることができ
る。
j) 異常時の操作 事務機器に異常が発生した場合には,利用者自身によってできるかぎり操作可能な状
態に復帰できる。又は,床置き形複写機などでサービスマンコールが必要な場合には,その状態を利
用者に知らせることができる。
5.4 操作表示部に関する要件
a) 表示に関する要件 表示に関する要件は,次による。
1) 操作部に文字を印刷する場合には,適切な大きさの文字及び適切なコントラストを用いなければな
らない。
− 文字の大きさは,高さ5 mm以上が望ましい。
− コントラストは,4対1以上が望ましい。
2) 画面表示装置には,文字の拡大,コントラスト調整などの付加機能があることが望ましい。
3) 色情報を用いる場合には,色だけによる情報提示を行わない。
例 1. 色だけによる選択手段を用いない。又は,文字などを併用する。
例2. 状態表示の情報を表示灯の点灯,消灯,点滅及び図記号によって補完する。
4) 操作部に色を用いる場合には,色覚障害に配慮した適切な配色を行い,容易に識別できるようにし
なければならない。
5) 表示部は,輝度及び配色の調整が可能な場合には,利用者が広範なコントラスト及び色を選択でき
なければならない。
6) 車いすのような座位姿勢からの視認性を確保しなければならない。
――――― [JIS X 8341-5 pdf 7] ―――――
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例 視認可能な表示部の位置又は視野角を確保する。
7) 点滅表示を用いる場合には,光感受性発作を誘発しない点滅周波数を用いなければならない。
参考1. 米国法では,製品は,画面のちらつきが発生しないように,2 Hzを超え55 Hz未満の周
波数帯を用いてはならないと書かれている。
[Section508 Electronic and Information Technology Accessibility Standards (米国リハビリテ
ーション法第508条)(CFR Part 1194) 25(i)参照]。
参考2. 光の明滅によって光感受性発作(光源性てんかん)を誘発することがある。20 Hzの時間
周波数にピークがあり,特に赤と青とを交互に点滅することは,光感受性発作を誘発しや
すい。利用者の安全性に関することであるので最大限の配慮が必要であると書かれている。
(JIS X 8341-2 5.5.2参考 参照)。
8) パーソナルコンピュータから操作する場合の静止画表示又は動画表示は,その内容を文字でも表示
しなければならない。
b) 音情報に関する要件 音情報に関する要件は,次による。
1) 音声出力を用いる場合には,市販のヘッドホン又はイヤホンで聞くことができなければならない。
備考 報知音は,除外する。
2) 音声出力を用いる場合には,視覚的に音声出力の“入り切り”が確認できなければならない。
3) 音声出力を用いる場合には,音声出力の入り切りができ,更に,音量が調整できなければならない。
参考 米国法では,公共の場所で音声出力を提供する場合には,少なくとも65 dBのレベル以上
まで出力を増幅できる段階的音量調節装置を備えていなければならないと書かれている。
また、周囲の騒音レベルが少なくとも45 dBを超える場所では,騒音より少なくとも20 dB
高い音量ゲインを利用者が選択できなければならないと書かれている [Section508
Electronic and Information Technology Accessibility Standards (CFR Part 1194).25 (f) 参照]。
4) 音声出力を用いる場合には,音声出力の中断,停止及び再スタート操作ができなければならない。
5) 注意を喚起する報知音を用いる場合には,日本工業規格(日本産業規格)などに従わなければならない。
参考 正常な操作でない場合には,製品から何らかの報知を出すことができる。
c) 形状に関する要件 形状に関する要件は,次による。
1) 操作に用いる重要なキー,例えば,スタートキー,ストップキーなどは,視覚及び触覚で識別でき
なければならない。
例 テンキーの“5”は,識別のための凸を付ける(JIS S 0011参照)。
2) 操作部は,肢体不自由な状態又は操作が緩慢な状態でも利用できる形状にしなければならない。
d) 操作に関する要件 操作に関する要件は,次による。
1) キーにリピート機能がある場合には,リピート機能は,リピートを開始するまでの時間及びリピー
トの間隔を調節できなければならない。
参考 米国法では,キーリピートが可能な場合には,そのリピートまでの待ち時間を最短で2秒
までに調整できなければならない。キーリピート間隔は,1文字当たり2秒に調整できな
ければならないと書かれている [Section508 Electronic and Information Technology
Accessibility Standards (CFR Part 1194).23 (k) (3) 参照]。
2) タッチパネルは,補助具(義手など)でも操作できなければならない。
例 義手で使用することができない静電容量方式は,用いないようにする。
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3) 時間的な制約を必要としないことが望ましい。
4) 時間的な制約を必要とする操作がある場合には,時間調節ができなければならない。
備考 制限時間を超える場合には,製品から何らかの報知を行うことができるようにする。
5) 操作中にいつでも初期状態に戻ることができなければならない。
備考 初期状態とは,設定時の取消し又はリセットキー操作によってモード移行した結果の状態
をいう。
e) フィードバックに関する要件 フィードバックに関する要件は,次による。
1) 制御スイッチ及びキーは,タッチパネルを除き,その状態が視覚に加え,触覚又は聴覚でも分から
なければならない。
例 複写機能,ファクシミリ機能及びスキャナ機能の選択をトグルスイッチで実現する場合には,
その選択された機能が,視覚及び触覚で分かり,更に,聴覚でも分かる。
2) 電源スイッチは,その投入・切断の状態が,視覚に加え,触覚又は聴覚でも分からなければならな
い。
5.5 機械的な操作部に関する要件
a) 位置に関する要件 位置に関する要件は,次による。
1) 床置き形の事務機器は,車いすを含めた座位姿勢からでも操作できなければならない。
2) 床置き形の事務機器は,車いすを含めた座位姿勢から手差しを含め,少なくとも一つの給紙トレイ
は,操作できる位置になければならない。
参考 米国法では,以下のように床置き形の事務機器の操作部は,寸法基準内に位置すると書か
れている[Section508 Electronic and Information Technology Accessibility Standards (CFR Part
1194).25 (j) 参照]。
自立形で,携帯用でなく,設置して使用するように設計され,操作の可能なコントロー
ル装置を備えている製品は,次の各項に準拠しなければならない。
− 操作可能なコントロール装置の位置は,垂直面を基準として決定しなければならない。
垂直面は,左右幅1 220 mmで,その面の中心に操作可能なコントロール装置が前述の1
220 mm幅内の製品の最大突出部に位置する。
− 操作可能なコントロール装置が基準面から奥へ255 mm以下の距離にある場合には,コ
ントロール装置の高さは,床面から最大1 370 mm,最低380 mmとする。
− 操作可能なコントロール装置が基準面から奥へ255 mm以上610 mm以下の距離にある
場合には,コントロール装置の高さは,床面から最大1 170 mm,最低380 mmとする。
− 操作可能なコントロール装置の位置は,基準面から610 mmを超えて奥にあってはなら
ない。
b) 形状に関する要件 形状に関する要件は,次による。
1) 操作部の形状は,容易に識別できなければならない。
備考 操作部位は,保持部及び操作方向が容易に識別できる。
2) 操作部は,片手でも操作できる形状でなければならない。
3) 操作部は,動作が限定された手又は指だけでも操作できる形状でなければならない。
c) 操作に関する要件 操作に関する要件は,次による。
1) 操作部は,片手で操作できなければならない。
2) 操作部は,動作が限定された手又は指だけで操作できなければならない。
――――― [JIS X 8341-5 pdf 9] ―――――
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3) 利用者が操作部を,強くつかむ,つまむ,又は手首をねじる必要がなく操作できなければならない。
例1. 用紙補給のときに給紙トレイを引出し及び格納する場合には,不自由な手,順手又は逆手
でも操作できる。
例2. 給紙トレイをボタン操作で引き出せる。
4) 機器の操作は,適切な力量で操作できなければならない。
参考 米国法では,操作力量は,22.2 N以下とすると書かれている。[Section508 Electronic and
Information Technology Accessibility Standards (CFR Part 1194).23 (k) (2) 参照]。
5) 押しながら回すなどの複合動作を必要とする操作があってはならない。
5.6 用語に関する要件
操作に関する用語は,文化・言語の違い,専門知識の有無にかかわらず分かり
やすい表現・用語を用い,必要に応じて用語の解説を提供しなければならない。
例 1. 絵文字など図式的に機能を表現したものを用いる場合には,文字表記と併記する。
例2. 文字だけでなくアイコンも併用する。
例3. 言語の切り替えが簡単にできる。
例4. 法令,日本工業規格(日本産業規格),学術用語などがある場合には,それらに準拠した用語を用いる。
例5. 専門用語及び略語を多用しない。
5.7 代替手段
特定の製品機能の操作が困難な場合には,これを補うために他の身体機能によって操作
が可能な次の代替手段を提供しなければならない。
a) 必要に応じて高齢者・障害者支援技術を利用できる。
b) 代替手段の接続・切断ができる場合には,接続・切断の状態が複数の手段で確認できることが望まし
い。
c) パーソナルコンピュータから事務機器を操作できる場合には,利用者に必要な操作機能は,キーボー
ドなどから操作できる。その場合には,スクリーンリーダなどの支援技術との接続性を保障する。
5.8 操作環境に関する要件
事務機器が利用される環境を想定し,利用者の状況及び周囲の人々への影
響に対して配慮しなければならない。事務機器を利用する場合には,利用者が容易に機器へ接近できなけ
ればならない。
例 1. 取扱説明書には,機器を使用する上で必要とされるスペースについて明記し,設置される場所
及び周囲に配慮する。
例2. 車いす利用者が機器にアクセスできる周辺スペースについて,利用者が情報入手できる。
例3. 車いす使用者が機器の前で回転できる直径1 500 mmのスペースを確保する。日本の[高齢者,
身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)参照]。
例4. 機器の周辺には,車いす使用者の移動の障害となる段差及び傾斜のない床面を確保する。これ
らは,車いす使用者の転倒事故の原因ともなる。
例5. 機械前面の下方を凹んだ形状とし,車いす利用者が操作パネルへ接近しやすくする。
例6. 特に弱視者又は高齢者にとっては,事務機器の操作に当たって十分な照度を必要とする。
5.9 情報セキュリティに関する要件
事務機器を利用する場合には,情報のセキュリティを確保したア
クセス可能な操作方法を提供しなければならない。
なお,バイオメトリクス(生体認証)を利用して個人識別をする場合には,利用者の特定の身体的な特
徴に頼らない代替の方式も選択できなければならない。
例 1. 指紋,声紋,網膜スキャンなどの身体的特長を利用して認証する場合には,代替手段として身
体的特徴を利用しない個人識別機能も提供する。
――――― [JIS X 8341-5 pdf 10] ―――――
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JIS X 8341-5:2006の国際規格 ICS 分類一覧
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JIS X 8341-5:2006の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISX6910:2004
- 事務機器―複写機・複合機の仕様書様式及びその関連試験方法
- JISX8341-1:2010
- 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第1部:共通指針