JIS X 9501-1:2019 情報技術―クラウドコンピューティング―サービスレベル合意書(SLA)の枠組―第1部:概要及び概念 | ページ 2

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X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
図2−SLAコンポーネント及びSLAコンテンツ領域

1 適用範囲

  この規格は,クラウドサービスレベル合意書(Service Level Agreement。以下,SLAという。)に利用可
能な,一連の共通クラウドSLAビルディングブロック(概念,用語,定義及びコンテキスト)について規
定する。
この規格は,次の項目を規定する。
a) クラウドSLAの概要
b) クラウドサービス合意書とクラウドSLAとの間の関係の確認
c) クラウドSLA構築に利用可能な概念
d) クラウドSLAにおいて一般的に利用される用語
この規格は,クラウドサービスプロバイダ(Cloud Service Provider。以下,CSPという。)とクラウドサ
ービスカスタマ(Cloud Service Customer。以下,CSCという。)との両者の利益及び使用のためのものであ
る。その狙いは,両者間の混乱を避け,共通の理解を促すことにある。クラウドサービス合意書とそれら
に関連するクラウドSLAとは,CSPによって変わるものであって,場合によっては,同一のCSPの同一
のクラウドサービスについて,異なるCSCが,異なる契約条件で,交渉するような状況が起こり得る。こ
の規格は,CSCが異なるCSPのクラウドサービスを比較する際に,CSCを支援するためのものである。
この規格は,クラウドSLA,又は全てのクラウドサービス若しくは全てのCSPに適用可能なサービスレ
ベル目標(Service Level Objectives。以下,SLOという。)及びサービス品質目標(Service Qualitative Objectives。
以下,SQOという。)の,標準セットとして利用される標準構造を提供するものではない。
このような取組み方は,CSPに,提供するクラウドサービス固有の特性に合わせてクラウドSLAを調整
するという柔軟性を与える。
この規格は,法的要求に優先するものではない。

――――― [JIS X 9501-1 pdf 6] ―――――

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X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 19086-1:2016,Information technology−Cloud computing−Service level agreement(SLA)
framework−Part 1: Overview and concepts(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。

2 引用規格

  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS X 9401:2016 情報技術−クラウドコンピューティング−概要及び用語
注記 対応国際規格 : ISO/IEC 17788:2014,Information technology−Cloud computing−Overview and
vocabulary(IDT)
ISO/IEC 17789,Information technology−Cloud computing−Reference architecture

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS X 9401:2016によるほか,次による。
ISO及びIECは,次に示すサイトにて,標準化用途の用語データベースを保守している。
− IEC Electropedia : http://www.electropedia.org/
− ISO Online browsing platform : http://www.iso.org/obp
3.1
アクセシビリティ(accessibility)
様々な能力をもつ最も幅広い層の人々に対する製品,サービス,環境又は施設のユーザビリティ。
注記1 このアクセシビリティの概念は,障がい(碍)があると公式に認定された利用者だけに限定
せずに,利用者のあらゆる範囲の能力を扱おうとしている。
注記2 ユーザビリティの概念に基づくこのアクセシビリティの考え方は,想定利用者内の能力の広
がりに注意を払いながら具体的状況を考慮し,できるだけ高い水準の有効さ,効率及び満足
度を達成することを目指している。
注記3 ここで定義された“アクセシビリティ”の特定の意味と,“到達できる,又は入ることができ
る”という辞書上で用いられる“アクセス可能な(accessible)”という用語の意味とを,明
確に区別することが,ISO/IEC 19086規格群の文脈上重要である。
(JIS X 8341-6:2013の3.2参照)
3.2
ビジネス継続性(business continuity)
事業の中断・阻害などを引き起こすインシデントの発生後,あらかじめ定められた許容レベルで,製品
又はサービスを提供し続ける組織の能力。
(JIS Q 22301:2013の3.3参照)
注記 JIS Q 22301:2013では“business continuity”を“事業継続”としているが,この規格では“ビジ
ネス継続性”としている。

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3.3
クラウドサービス合意書(cloud service agreement)
対象のサービスを管理するための,CSPとCSCとの間で取り交わされる,文書化された合意。
注記 クラウドサービス合意書は,一つ以上の文書の中に保存された一つ以上のパートによって構成
されている。
3.4
クラウドサービスレベル合意書,クラウドSLA(cloud service level agreement,cloud SLA)
対象のクラウドサービスのためのクラウドサービスレベル目標(3.5)とクラウドサービス品質目標(3.6)
とを包含する,クラウドサービス合意書(3.3)のパート。
3.5
クラウドサービスレベル目標,SLO(cloud service level objective,SLO)
クラウドサービスの特定の定量的な特性についての,CSPによるコミットメント。この値は,間隔尺度
(3.9)又は比例尺度(3.17)によって把握される。
注記 一つのSLOの誓約は,ある一定の範囲として表現してもよい。
3.6
クラウドサービス品質目標,SQO(cloud service qualitative objective,SQO)
クラウドサービスの特定の品質に関する特性についての,CSPによるコミットメント。この値は,名義
尺度(3.11)又は順序尺度(3.12)によって把握される。
注記1 クラウドサービス品質目標は,列挙型のリストとして表現してもよい。
注記2 品質の特性は,一般的に人間による説明を必要としている。
注記3 順序尺度は,存在又は非存在を許容している。
3.7
災害復旧(disaster recovery)
災害後の所定の期間内に,重要なビジネス機能を許容可能なレベルにまでサポートする,組織のICT要
素の能力。
(ISO/IEC 27031:2011の3.7参照)
3.8
障害通知ポリシー(failure notification policy)
CSC及びCSPがサービス停止をCSPに通知するプロセス,及びCSPがサービスの停止が発生したこと
をCSC及びクラウドサービスパートナ(Cloud Service Partner。以下,CSNという。)に通知できるプロセ
スを明示するポリシー。
注記 このポリシーには,サービスの停止に関する更新プログラムの提供,通知及び更新の受信者,
サービス停止の検出からサービス停止の通知の発行までの最長時間,サービス停止の更新再長
時間間隔,並びにサービス停止の更新方法が記載されているプロセスを含んでもよい。
3.9
間隔尺度,インターバルスケール(interval scale)
同じ大きさの間隔からなる値であり,任意のゼロ点をもつ,連続尺度又は離散尺度。
(JIS Z 8101-2:2015の1.1.8参照)

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3.10
メトリック(metric)
測定の実施及び測定結果の理解のための条件及びルールを定義するための測定の基準。
注記1 メトリックは,特定の抽象的なメトリックの概念を提示している。
注記2 メトリックは,特定のゴールに対して指定された時点で測定されるべき特定のプロパティが
必要とする与えられたコンテキスト内で,実際に適用される。
3.11
名義尺度,ノミナルスケール(nominal scale)
順序付けされていない名前をもつカテゴリからなる,又は慣習的な順序をもつ尺度。
(JIS Z 8101-2:2015の1.1.6参照)
3.12
順序尺度,オーディナルスケール(ordinal scale)
順序付けされた名前をもつカテゴリからなる尺度。
(JIS Z 8101-2:2015の1.1.7参照)
3.13
個人識別可能情報,PII(personally identifiable information,PII)
a) その情報に関連するPII主体を識別するために利用され得る情報,又はb) II主体に直接若しくは間
接にひも(紐)付けられるか又はその可能性がある情報。
注記 PII主体が識別可能か否かを判断するため,その個人を識別するためにそのデータを保有するプ
ライバシー利害関係者,又は他のものが合理的に利用することができる,全ての手段を考慮す
るのがよい。
(JIS X 9250の2.9参照)
3.14
PII管理者(PII controller)
私的な目的でデータを使う個人を除く,PIIを処理するための目的及び手段を決定するプライバシー利害
関係者(一人以上)。
(JIS X 9250の2.10参照)
3.15
PII主体(PII principal)
PIIに関連する個人。
(JIS X 9250の2.11参照)
3.16
PII処理者(PII processor)
PII管理者に代わり,かつ,その指示に従ってPIIを処理するプライバシー利害関係者。
(JIS X 9250の2.12参照)
3.17
比例尺度,レシオスケール(ratio scale)
同じ大きさの間隔からなる値,及び絶対ゼロ点又は自然なゼロ点をもつ,連続尺度。
(JIS Z 8101-2:2015の1.1.9参照)

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3.18
救済措置(remedy)
CSPが,指定されたクラウドサービスレベル目標(3.5)を満たしていない場合に,CSCが得られる代償。
注記 英語のこの用語の定義は,ショーターオックスフォード(Shorter Oxford)英語辞書で定義され
た“legal reparation(法的賠償)”の意味に基づく。
3.19
回復力,レジリエンス(resilience)
障害発生後に迅速に運用状態を回復するクラウドサービスの能力。

4 略語

  BLOB バイナリラージオブジェクト (Binary Large Object)
CSA クラウドサービス合意書 (Cloud Service Agreement)
CSC クラウドサービスカスタマ (Cloud Service Customer)
CSP クラウドサービスプロバイダ (Cloud Service Provider)
CSN クラウドサービスパートナ (Cloud Service Partner)
ICT 情報通信技術 (Information and Communications Technology)
IPR 知的財産権 (Intellectual Property Rights)
IT 情報技術 (Information Technology)
PII 個人識別可能情報 (Personally Identifiable Information)
RPO 目標復旧時点 (Recovery Point Objective)
RTO 目標復旧時間 (Recovery Time Objective)
SLA サービスレベル合意書 (Service Level Agreement)
SLO クラウドサービスレベル目標 (Cloud Service Level Objective)
SQO クラウドサービス品質目標 (Cloud Service Qualitative Objective)
VM 仮想マシン (Virtual Machine)

5 クラウドサービスのためのSLAの概要

  クラウドサービスレベル合意書(クラウドSLA)は,対象のクラウドサービスのためのクラウドサービ
スレベル目標及びクラウドサービス品質目標を含むクラウドサービス合意書の一部である。
クラウドSLAは,JIS X 9401の6.2に記載されるクラウドコンピューティングの基本となる特性を説明
することが望ましい。これには,次のことが含まれる。
− オンデマンドセルフサービス CSCは,人間がCSPとやりとりすることなくクラウドサービスを利用
してもよい。クラウドサービス合意書(CSA)(箇条6参照)及びそれに関連したクラウドSLAは,
自動化されたソフトウェアツール及び財務的取決めによって提示され,また,合意してもよい。
− リソースプール パブリッククラウド配置モデルは,関係のない多くのCSC間でのリソースの共有を
許す。プライベートクラウドモデルは,使用者が同じ組織内のリソースを共有することを許す。ハイ
ブリッドクラウドモデルは,使用者に同じ組織内の幾つかのリソースの共有と,必ずしもお互いに関
係の必要性がない複数のCSC間での幾つかのリソースの共有を許す。コミュニティクラウド配置モデ
ルは,何らかの関係があるCSC間でのリソースの共有を許す。
− マルチテナンシ クラウド環境は,サーバ,ストレージ及びネットワークの大規模仮想化の利用を通

――――― [JIS X 9501-1 pdf 10] ―――――

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JIS X 9501-1:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 19086-1:2016(IDT)

JIS X 9501-1:2019の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 9501-1:2019の関連規格と引用規格一覧

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規格名称