JIS X 9501-1:2019 情報技術―クラウドコンピューティング―サービスレベル合意書(SLA)の枠組―第1部:概要及び概念 | ページ 4

                                                                                             13
X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
するのは,CSCの責務としてもよい。その一方で,CSPがサービスレベルを監視し,自動的に請求プロセ
スを始動する場合もあり得る。もしCSPが監視するならば,クラウドSLAの請求(又は請求欠如)は検
証を必要としてもよい。

8.5 例外

  例外は,SLO,SQO又は関連する救済策が適用されない状況を記述する。これらは,合意内容に依存す
るものであり,特定の地域の法律に従ってもよい。例外の例として,計画された停電,自然災害,及びCSP
の管轄外の他の要因を含む。

9 クラウドSLAコンポーネント

9.1 一般事項

  箇条9及び箇条10で示すクラウドSLAコンポーネントは,クラウドSLAで一般に使われる概念を定義
する。このような概念の理解を共有することは,CSC及びCSPの両方にとって重要である。さらに,この
ような概念及びその関連用語,並びにメトリック(metrics)が,それらが対象とするクラウドサービスに
よって確立されたコンテキストに依存していることを認識することは重要である。箇条9と箇条10とに記
載されたSLO及び関連メトリック,並びにそれぞれのクラウドSLAコンポーネントに記載されたSQOは,
CSPがクラウドSLAを使用するための規範的な又は網羅的なリストであることを意味しない。
それぞれのコンポーネントには,説明(description),関連(relevance),並びに関連するSLO及びSQO
が含まれている。幾つかのSLO及びSQOは,クラウドSLAに何が含まれているのかを説明するステート
メント(statement)として記述されているのに対して,その他のSLO及びSQOは,関連する概念の説明
が記述されている。
箇条6で記載したように,次に示すクラウドSLAコンポーネントを,CSAを構成する一つ以上の文書
にわたって含んでいてもよい。

9.2 対象サービスコンポーネント

9.2.1  説明
対象サービスコンポーネントは,クラウドSLAが対象とするクラウドサービスを認定する。クラウド
SLAのその他の全ての部分は,対象サービスコンポーネントの中で認定されたサービスに適用する。
例えば,あるクラウドSLAは,次のように示すことができる。
“このサービスレベル合意書は,XYZ社が提供する次のサービスに適用する。
− XYZオンラインメール
− XYZ BLOBストレージ”
もし一つのクラウドSLAが複数サービスを対象とする場合,それぞれの対象サービス向けに別々のSLO
及びSQOを提供する必要がある。
9.2.2 関連
CSPは,一つ以上のクラウドSLAの対象となるクラウドサービスを幾つでも提供してもよい。提示され
たクラウドSLAに対して,CSCは,どのクラウドサービスが対象となっているのかを正確に知ることが
重要である。

9.3 クラウドSLA定義コンポーネント

9.3.1  説明
定義コンポーネントは,CSP固有である用語又は合意書を理解する上で特に重要である用語を含む。定
義コンポーネントは,可能であれば業界標準の定義を使用することを期待されている。

――――― [JIS X 9501-1 pdf 16] ―――――

14
X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
9.3.2 関連
CSCにとって,SLA固有に定義した用語と同じように,クラウドSLAに対して重要な用語の定義を理
解することは重要である。

9.4 サービスモニタリングコンポーネント

9.4.1  説明
サービスモニタリングコンポーネントには,CSPによってモニターされている対象サービス向けのパラ
メータ及びCSCに提供されたデータを記載する。これらのパラメータは,この仕様で説明するもの及びそ
の他のパラメータを含んでもよい。
9.4.2 関連
CSPは,レポート機能,又はCSCがサービスの性能をモニターできるようなモニタリングツールを提供
してもよい。レポート機能及びモニタリングツールによって,CSCがSLOを満たすかどうかを決めても
よい。
9.4.3 クラウドサービス品質目標
モニタリングパラメータ CSPがモニターしている対象サービスのパラメータ及びCSCに提供される
データの一覧
モニタリングメカニズム CSCが利用可能なメカニズム(例えば,ログ)の一覧で,モニターしたパラ
メータの説明及びこれらのメカニズムの利用可否を管理する条件の説明を含む。

9.5 ロール及び責任コンポーネント

9.5.1  説明
ロール及び責任コンポーネントは,CSP及びCSCの両者のロール及び責任の説明を提示する。クラウド
コンピューティングは,CSC側にもCSP側にも多くのロールがある。このようなロールの多くはISO/IEC
17789で説明されている。クラウドサービス固有の関連情報をもつロール及びそれらのロールの責任を明
確に説明することは,クラウドサービスを成功裏に使用及び操作するために重要である。
9.5.2 関連
CSCとCSPとの間のロール及び責任を明確に説明することで,混乱を防ぐことができる。

10 クラウドSLAのコンテンツ領域及びそれらのコンポーネント

10.1 一般事項

  次に示すクラウドSLAのコンテンツ領域は,CSPが提示できるクラウドSLAの領域である。クラウド
SLAのコンテツ領域は,一つ以上のSLAコンポーネントによって示される。クラウドSLAのコンテンツ
並びに関連SLO,SQO及びメトリックは,使用している特定のクラウドサービスによって確立されるコン
テキストに依存する。

10.2 アクセシビリティコンテンツ領域

10.2.1 アクセシビリティコンポーネント
10.2.1.1 説明
アクセシビリティ(3.1)コンポーネントは,CSPが対象サービスの一部として実装する支援技術を示す。
10.2.1.2 関連
世界中にICTの使用を妨げる障がいのある人が何百万人もいる。拡大鏡,画面読上装置,点字読取装置
及び代替入力装置といった支援技術は,障がいのある人がクラウドサービスを含むICTを使用しやすくす
るために,クライアントコンピューティングプラットフォーム上で利用できる。

――――― [JIS X 9501-1 pdf 17] ―――――

                                                                                             15
X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
障がいのある人にクラウドサービスを提供するために使用できる標準仕様には,次のようなものがある。
− W3C Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0。この規格は,JIS X 8341-3:2016としても発行済。
− ISO/IEC TR 29138 (all parts),Information technology−Accessibility considerations for people with
disabilities
− JIS Z 8071:2017 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針
さらに,行政には,米国のSection 508 of the Rehabilitation Act of 1973及びヨーロッパのEN 301 549,
Accessibility requirements for public procurement of ICT products and servicesのようなアクセスしやすいICTに
関する政策及び要件がある。
10.2.1.3 クラウドサービス品質目標
アクセシビリティ標準 対象サービスにおいてCSPが準拠するアクセシビリティに関する標準を記載
するステートメント
アクセシビリティ方針 対象サービスにおいてCSPが準拠するアクセスしやすいICTのための政策及び
規制を記載するステートメント

10.3 可用性コンテンツ領域

10.3.1 可用性コンポーネント
10.3.1.1 説明
可用性は,認可された構成要素の求めに応じてアクセス可能1) 及び利用可能である状態を表す特性であ
る(JIS X 9401参照)。可用性コンポーネントは,対象のサービスがアクセス可能及び利用可能であること
を確定するための手法を規定する。
注1) 可用性のコンテキストにおいてアクセス可能とは,クラウドサービスが,そのインタフェース
を介して正常にアクセスできることを意味する。
10.3.1.2 関連
可用性は,CSCに対してある時点において対象サービスが要求に応答し,サービス記述書に定められて
いる機能を処理している状況を示す,高いレベルの指標を提供する。
クラウドサービスが利用できない期間は,一般に“ダウンタイム”と呼ばれている。障害以外の理由に
よってクラウドサービスが利用できない“計画的なダウンタイム”のような場合があってもよい。クラウ
ドサービスは利用できないが,ダウンタイムとしてみなさない期間のことを“許容可能なダウンタイム”
と呼ぶ。
可用性は,定義された時間間隔において,ダウンタイムを差し引いた合計時間として,しばしば表現さ
れる。
10.3.1.3 クラウドサービスレベル目標
可用性 ある一定の期間における,クラウドサービスがアクセス可能及び利用可能である時間の合計又
はパーセンテージ。
可用性は,各時間間隔における,ダウンタイムの合計を差し引いた定義された間隔の合計時間として
算出してもよい。計画されたダウンタイムは除いてもよい。
より詳細については,ISO/IEC 19086-2を参照。

10.4 クラウドサービスパフォーマンスコンテンツ領域

10.4.1 一般事項
クラウドサービスのパフォーマンスは,クラウドサービスのパフォーマンスを表現するために,クラウ
ドSLAの中で使用できる個々のコンポーネントを含む。パフォーマンスの定義は,クラウドサービス,

――――― [JIS X 9501-1 pdf 18] ―――――

16
X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
CSP及び(潜在的に)CSCによって異なることに注意する。ここに記載されているコンポーネントは,規
範的なものではない。
10.4.2 クラウドサービス応答時間(Cloud Service Response Time)コンポーネント
10.4.2.1 説明
クラウドSLAに含められるクラウドサービスの応答性に関連する幾つかの特性がある。
応答時間は,クラウドサービスへの起因要素,及びその起因要素の応答までの時間である。
10.4.2.2 関連
起因要素は,CSC,CSN,CSP,プログラムイベントなどの様々なソースによって開始される場合があ
る。
応答時間は,クライアントシステム,作業量及び処理内容が同一の場合でも,異なるクラウドサービス
間で異なる場合がある。応答時間を比較する場合,a) 同じメトリック定義が使用されているか,及びb) 他
の変化する要素を等しく保持できるか(ネットワーク遅延,ネットワーク転送量,伝送遅延,転送待ち時
間など)を考慮して行う。
より詳細については,ISO/IEC 19086-2を参照。
10.4.2.3 クラウドサービスレベル目標
クラウドサービスの最大応答時間監視 定義された起因要素又はクラウドサービスへの入力と,応答の
中で定義されたポイントとの間の最大時間
クラウドサービスの応答時間の平均 一連のクラウドサービスの応答時間監視の統計的な平均。
平均を計算する方法の仕様は,クラウドサービスに関連付けられたメトリックに対して定義される。
クラウドサービスの応答時間の分散 統計的な分散は,一連のクラウドサービスの応答時間監視内にあ
る可能性がある平均応答時間からどのくらい離れているかで示される。
分散は,多くの場合,一連の測定の平均値からの標準偏差であるとして説明されている。
このSLOは,ある期間での応答時間の安定性を示すために使用することができる。それは,平均的な
応答時間からどの程度のばらつき又は統計的な分散があるかを示している。
ユーザが可変負荷レベルでシステムパフォーマンスを測定したい場合,又は特別なイベントに対して
システムのパフォーマンスを測定したい場合には,応答時間の分散も重要である。
10.4.3 クラウドサービス容量コンポーネント
10.4.3.1 説明
この細分箇条では,クラウドSLAに含めることができるサービスの容量に関連するサービス特性につい
て説明する。容量に関連するこれらの特性には,クラウドリソースの容量(ストレージ領域,処理能力な
ど)だけでなく,リソースへのアクセスに使用されるネットワークの容量も含まれる。
10.4.3.2 関連
クラウドシステムの容量が変わる可能性があるため,どんな容量が存在するか,及びCSCによってどの
ように使用されるかを理解することが重要である。従来の資産ベースのシステムでは,容量は固定されて
いるが,クラウドシステムでは,容量は動的であり,システムがCSC要件を満たしていることを確認する
ために容量は追跡される必要がある。クラウドサービスの請求金額は,容量及び/又は容量の制限に基づ
いている場合がある。
10.4.3.3 クラウドサービスレベル目標
同時クラウドサービス接続の制限 クラウドサービスでサポートされている同時接続の最大数
利用可能なクラウドサービスリソースの制限 利用可能なリソースの最大容量。すなわち,ディスク容

――――― [JIS X 9501-1 pdf 19] ―――――

                                                                                             17
X 9501-1 : 2019 (ISO/IEC 19086-1 : 2016)
量,CPUパワー,メモリサイズ,ページビューなど。
クラウドサービスの処理量 クラウドサービスによる全ての時間単位内で処理できる,入力数又は相互
依存のある一連の入力(つまり,処理)の量。通常は,1秒当たりのweb要求,1秒当たりのページ要
素及び1秒当たりの処理として測定する。
クラウドサービスの帯域幅 一定期間に転送できるデータの量
10.4.4 弾力性コンポーネント
10.4.4.1 説明
弾力性コンポーネントは,サービスのインスタンスに割り当てられているリソース量を動的に調整する
クラウドサービスの能力について記載している。この調整は,クラウドサービスインスタンスの現在の作
業量に基づいて実行される。すなわち,作業量の増加は,リソースの割当てを増やし,作業量の減少は,
リソースの割当てを減らすことを意味する。
したがって,弾力性は,作業量の変動の監視,及びより多くのリソースの割当て,又は不要になったリ
ソースの割当ての解除に対応する手順があるか否かに依存する。手順は,手動又は自動でもよい。手動の
場合は,変化する作業量に応じて必要なリソースの量を見積もるのはCSCの責任である。自動の場合は,
CSC又はCSPから直接やり取りすることなく実行される。自動の場合は,手順は,現在の作業量の実際の
変化量の監視に基づくリアクティブ,将来の負荷状況を予測するために幾つかのアルゴリズムを使用する
プロアクティブ,又は両方の組合せとすることができる。
弾力性は,一つ以上のリソースタイプに関連する。例えば,仮想マシンは,指定された仕様のプロセッ
サの数,メモリのサイズ,ネットワークインタフェースの数,ハードドライブのサイズなどのリソースを
組み合わせたものである。Webベースのアプリケーションサービスのためのリソースには,並列ユーザセ
ッションの数及び/又は並列処理の数である。
10.4.4.2 関連
弾力性は,クラウドサービスの主な特性の一つである。CSCは,サービス構成中にクラウドサービスに
十分な量のリソースを割り当てる必要はないが,クラウドシステムが必要に応じて時間の経過とともにリ
ソースを増加させ,不要になったリソースを減少させる能力に頼ることができる。CSCは,リソースを手
動で追加及び削減をしたり,又はCSCがリソースの増減のルールを設定できるCSPツールを使用できる。
したがって,CSCは,クラウドサービスのリソースを過剰に用意する必要がないため,作業量のピークに
対処するためだけに使用するリソースの使用料を継続的に支払う必要がなくなる。
10.4.4.3 クラウドサービスレベル目標
弾力性 クラウドサービスの弾力性の特性は,次の二つの目的の見地から評価することができる。
弾力性速度 弾力性速度量は,クラウドサービスが次のいずれかのリソース要求に対してどの程度速く
反応できるかを示す。
− CSCが,リソースの再割当て要求(手動の場合)をした場合。
− 作業量の変更が行われた場合(自動の場合)。
速度は,しきい値で表すことができる。この数量は,測定プロセスによって決定することができるた
め,メトリックを定義する。
弾力性精度 弾力性の精度は,リソース割当てが特定の時点での実際のリソース要件をどの程度正確に
満たしているかを示す。
− 手動の場合,精度は,リソース割当ての細分性,つまり,再割当て可能な最小リソース量に依存
する。したがって,手動の場合,精度は,測定を必要としないクラウドサービスの技術的な特性

――――― [JIS X 9501-1 pdf 20] ―――――

次のページ PDF 21

JIS X 9501-1:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC 19086-1:2016(IDT)

JIS X 9501-1:2019の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 9501-1:2019の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称