JIS Z 2244-1:2020 ビッカース硬さ試験―第1部:試験方法 | ページ 2

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表2−記号及びその内容
記号 内容
α 正四角すい圧子頂点の対面角(呼称角度136°)(図1参照)
F 試験力(N)
d くぼみの対角線長さd1とd2との平均値(mm)(図1参照)
HV 試験力(kgf )
ビッカース硬さ 2
くぼみの表面積(mm )
1 試験力(N)
2
gn くぼみの表面積(mm )
2F sin
1 F 1 2
2 2
gn d gn d
2 sin
2
呼称角度α=136°
標準重力加速度gn=9.806 65 m/s2
F
ビッカース硬さ.0189 1
d2
不確かさを少なくするため,圧子の実角度αを用いてビッカース硬さを計算してもよい。
注記 標準重力加速度は,kgfからNへの換算係数である。

5.2 硬さの表示

  ビッカース硬さは,次の例のように表示する。

640 HV 30 /20
試験力の保持時間(20秒)。ただし,規定の保持時間範囲(10秒15秒)
と異なる場合に記載する。
適用した試験力をkgfで表した近似値。ここでは,30 kgf=294.2 N
硬さ記号
ビッカース硬さ値

6 試験装置

6.1  試験機 試験機は,JIS B 7725に従って,所定の試験力又は規定された範囲の試験力を負荷できな
ければならない。
6.2 圧子 圧子は,JIS B 7725に規定された正四角すい形状のダイヤモンドでなければならない。
6.3 くぼみ測定装置 くぼみ測定装置は,JIS B 7725の規定を満たさなければならない。
顕微鏡の倍率は,くぼみの対角線が最大視野の25 %を超え,75 %未満に拡大できるように設定すること
が望ましい。対物レンズは多くの場合,視野の端部ではゆがみを生じるからである。
測定にカメラを用いるくぼみ測定装置のカメラ視野が,光学系視野限界を考慮して設計されている場合
は,その100 %を用いることが可能である。
くぼみ測定装置に要求される分解能は,測定する最も小さいくぼみによって決まり,表3による。測定

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装置の分解能を決定するには,光学顕微鏡の分解能,スケールのデジタル分解能及び全ての可動支持台の
刻み幅を該当する場合に応じて考慮することが望ましい。
表3−測定装置の分解能a)
くぼみの対角線長さd
測定装置の分解能
mm
0.020≦d<0.080 0.000 4 mm
0.080≦d≦1.400 dの0.5 %
注a) 対角線長さ0.020 mm未満のくぼみを測定する場合の分解
能は,受渡当事者間の協定による。

7 試験片

7.1 試験面

  試験面は,特に材料規格で規定がない限り,平滑で,酸化被膜(スケール)及び異物がなく,潤滑油を
除去した状態とし,くぼみの対角線長さを正確に測定できるように仕上げる。
硬質金属の試験片では,表層を0.2 mm以上除去することが望ましい。

7.2 前処理

  試験片の前処理は,試験面の損傷,過熱,冷間加工などによる表面硬さの変化が生じないような方法で
行わなければならない。
マイクロビッカース硬さのくぼみは浅いので,試験片の仕上げには特に注意する。測定する材料の特性
に適した研磨又は電解研磨方法を用いるのがよい。

7.3 厚さ

  測定を行う試験片又は層の厚さは,くぼみの対角線長さの少なくとも1.5倍とする。試験後の試験片の
裏面には変形が認められてはならない(附属書A参照)。
硬質金属の試験片の厚さは,1 mm以上であることが望ましい。
注記 くぼみの深さは,対角線長さのおよそ1/7(0.143 d)である。

7.4 曲面の試験

  曲面を試験する場合には,測定値に表B.1表B.6に規定する補正係数を乗じて補正する。

7.5 不安定な試験片の支持

  断面が小さいとき又は不規則な形のときには,試験片に試験力を加えている間,試験片が動かないよう
に専用支持台を用いるか,又はミクロ組織試験と同様に適切な素材に埋め込み,適切に支持することが望
ましい。
注記 試験片を樹脂に埋め込む場合には,樹脂の硬化に伴う発熱,プレス成形の際の圧力,温度など
が試験片の硬さに影響することがあるので注意する必要がある。

8 試験

8.1 試験温度

  試験温度は,通常,10 ℃35 ℃の範囲内とする。この範囲以外で試験した場合は,試験報告書に記載し
なければならない。管理された条件下で試験を行う場合には,23 ℃±5 ℃で行う。

8.2 試験力

  試験力の代表値を表4に示す。ただし,試験力は,980.7 Nを超えてもよいが,受渡当事者間の協定がな

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い限り,下限値は0.009 807 Nとし,くぼみの対角線長さが0.020 mm以上となるように選択する。
硬質金属に対しては,試験力は294.2 N(HV 30)が望ましい。
表4−試験力の代表値
ビッカース硬さ試験 低試験力ビッカース硬さ試験 マイクロビッカース硬さ試験
試験力F 試験力F 試験力F
硬さ記号 硬さ記号 硬さ記号
N N N
HV 5 49.03 HV 0.2 1.961 HV 0.001 0.009 807
HV 10 98.07 HV 0.3 2.942 HV 0.002 0.019 61
HV 20 196.1 HV 0.5 4.903 HV 0.003 0.029 42
HV 30 294.2 HV 1 9.807 HV 0.005 0.049 03
HV 50 490.3 HV 2 19.61 HV 0.01 0.098 07
HV 100 980.7 HV 3 29.42 HV 0.015 0.147 1
− − − − HV 0.02 0.196 1
− − − − HV 0.025 0.245 2
− − − − HV 0.03 0.294 2
− − − − HV 0.05 0.490 3
− − − − HV 0.1 0.980 7

8.3 定期点検

  試験を行う前の1週間以内に,定期点検を実施する。定期点検は,附属書Cによる。ただし,定期点検
は,試験日に実施することが望ましい。定期点検は,試験力を変更した場合は実施することが望ましい。
圧子を交換したときには,定期点検を実施しなければならない。

8.4 試験片の支持及び向き

  試験片は,堅固な支持台の上に載せ,支持台の表面は,異物(スケール,油,汚れなど)のない状態に
しておかなければならない。試験片は,試験中に試験結果に影響するずれが起こらないように,支持台上
にしっかり固定しておく。
大きな冷間加工を受けた材料などの異方性材料では,くぼみの2本の対角線長さが異なる場合がある。
そのため,可能であれば,対角線を冷間加工方向に対して約45°の方向とすることが望ましい。また,製
品規格で,2本の対角線長さの差の限度を規定してもよい。

8.5 試験面の顕微鏡焦点

  試験面及び目的の試験位置が観察できるように,くぼみ測定装置の顕微鏡焦点を合わせる。
注記 顕微鏡焦点を試験面に合わせることが不要な試験機もある。

8.6 試験力の付与

  圧子を試験面に接触させた後,試験面に対して垂直の方向に試験力を加える。そのとき,衝撃,振動又
は過負荷を与えないようにして,規定の試験力に到達させる。規定の試験力に到達するまでの所要時間は,
7 1
5
秒とする。
注記1 時間の許容幅は非対称となっている。例えば, 7 1
5
秒は,7秒が公称時間で,2秒(7秒−5
秒と計算する。)以上,8秒(7秒+1秒と計算する。)以下が許容範囲である。
ビッカース硬さ試験及び低試験力ビッカース硬さ試験の場合,圧子の押込み速度は,0.2 mm/sを超えて
はならない。マイクロビッカース硬さ試験の場合は,圧子の押込み速度は,70 μm/s以下とする。
試験力の保持時間は, 14 秒とする。ただし,保持時間に依存して硬さが変化する材料で,この範囲が
1
4

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不適切なものを除く。この規定時間の範囲を外れる試験の場合は,保持時間を,硬さの表示に明記しなけ
ればならない(5.2参照)。
注記2 ひずみ速度に敏感で,それによって耐力値が変化する材料がある。押込み終了時に,この影
響で硬さ値が変化する可能性がある。

8.7 衝撃及び振動の影響防止

  試験中,試験機は衝撃及び振動を受けないようにする。

8.8 隣接するくぼみ間の最小距離

  くぼみの中心間の距離及びくぼみの中心から試験片の縁までの距離の最小値を,図2に示す。
全てのくぼみの中心と試験片の縁との距離は,鋼,ニッケル合金,チタン合金,銅及び銅合金では,当
該くぼみの対角線長さの平均値dの2.5倍以上とし,軽金属(チタン合金を除く),鉛及びすず並びにそれ
らの合金では,3倍以上とする。
隣接する二つのくぼみの中心間距離は,鋼,ニッケル合金,チタン合金,銅及び銅合金では,くぼみの
対角線長さの平均値の3倍以上とし,軽金属(チタン合金を除く),鉛及びすず並びにそれらの合金では,
6倍以上とする。二つの隣接するくぼみの寸法が異なる場合には,大きい方のくぼみの対角線長さの平均
値を基準とする。
b
3d 2.5 d
a
c
6d 3d
a 試験片端
b 鋼,ニッケル合金,チタン合金,銅及び銅合金の場合
c 軽金属(チタン合金を除く),鉛及びすず並びにそれらの合金の場合
図2−ビッカースくぼみの最小間隔

8.9 対角線長さの測定

  くぼみの2方向の対角線長さを測定して,その平均値から,ビッカース硬さを計算する。全ての試験に
おいて,くぼみの外側の境界は,顕微鏡の視野の中で明瞭な輪郭とならなければならない。
顕微鏡の倍率は,対角線長さが視野の25 %を超え,75 %未満になるようにするのがよい(6.3参照)。
注記1 通常,試験力が小さくなると測定結果のばらつきが大きくなる。これは,くぼみの対角線測
定において限界値が生じる,低試験力ビッカース硬さ試験及びマイクロビッカース硬さ試験
において顕著である。マイクロビッカース硬さ試験では,光学顕微鏡を用いる場合,対角線
長さの平均値を決定するための測定精度は,±0.001 mmよりよくなることはない。

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注記2 ケーラー照明を用いた光学システムの調整に関わる有用な情報を,附属書Gに示す。
平面では,対角線長さ間の差異は5 %以下であることが望ましい。この値を超える場合は,試験報告書
に記載しなければならない。

8.10 硬さ値の計算

  硬さ値は,表2の式によって求める。また,JIS Z 2244-2の表を用いて求めることもできる。表面が曲
面の場合は,附属書Bに規定する補正係数を適用しなければならない。

9 測定結果の不確かさ

  不確かさの評価は,JCGM 100:2008に従って行うことが望ましい。
要因のタイプには関係なく,硬さの不確かさの評価は,次の二つの方法によって行うことができる。
− 一つは,直接検証に関わる全ての要因の評価を基にする方法である。Eurametガイドラインが,利用
できる。
− もう一つは,基準片[認証標準物質(CRM)]を使用した間接検証を基にする方法である。附属書D
にガイドラインを示す。
不確かさに影響する全ての特性を定量化することは,必ずしも可能ではないかもしれない。このような
ときには,試験片に繰り返して付けたくぼみの統計解析によって,タイプAの標準不確かさが評価できる
こともある。タイプA及びタイプBの標準不確かさが集約された場合は,寄与は重複して評価してはなら
ない(JCGM 100:2008の箇条4参照)。
注記 タイプA評価は,定義された測定条件下で得られる測定された量の値の統計解析による測定不
確かさの成分の評価である。タイプB評価は,測定不確かさのタイプA評価以外の方法で決定
される測定不確かさの成分の評価である(ISO/IEC Guide 99参照)。

10 試験報告書

  試験報告書が必要な場合には,受渡当事者間の協定がない限り,少なくとも次の項目を含まなければな
らない。
a) この規格によって試験した旨の表示,例えば,JIS Z 2244-1
b) 試験片の識別に必要な表示
c) 得られた硬さ測定の結果(5.2の様式で報告する。)
d) 試験の温度(8.1に規定した範囲外の場合)
e) 異なる硬さに換算した場合,その換算の基準及び方法
ビッカース硬さを他の硬さ又は引張強さに正確に換算する一般的な方法はないので,そのような換
算は,比較試験によって信頼できる換算基準が得られない限り避けることが望ましい(ISO 18265参
照)。
注記 硬さ値の厳密な比較は,同一の試験力を用いる場合に限られる。
f) 平面の試験で,対角線長さ間の差異が5 %を超えた場合,その内容
g) 試験日
h) この規格に規定されていない作業,又は任意とみなされている全ての作業
i) 結果に影響を及ぼした環境条件の詳細

――――― [JIS Z 2244-1 pdf 10] ―――――

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JIS Z 2244-1:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 6507-1:2018(MOD)

JIS Z 2244-1:2020の国際規格 ICS 分類一覧

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