JIS Z 4573:2016 三酢酸セルロース線量計測システムの使用方法 | ページ 2

4
Z 4573 : 2016 (ISO/ASTM 51650 : 2013)
4.3 CTA線量計フィルムは,吸収線量分布評価には特に有効である。これは,CTA線量計フィルムは,
細長い短冊状の形にして扱うことができ,自動送り測定装置を用いて測定することによって,多点分光測
定装置を使う場合よりも高分解能な線量分布評価を行うことができるためである。

5 一般

5.1   CTA線量計は,可塑剤であるトリフェニルフォスフェイト,及び溶媒として,例えば,ジクロロメ
タン混合物を加えた三酢酸セルロースを型に流し込むことによって生産する(参考文献[7],[13]参照)。
5.2 商業的に入手できる線量計フィルムは,幅8 mm,長さ100 mを1巻きとしたリールの形になってい
る。
5.3 電離放射線は,CTAと可塑剤との化学的反応を誘起し,紫外域の吸収帯を生成又は強める。これら
の放射線によって誘起される吸収帯内の適切な波長で測定した吸光度は,吸収線量との間に定量的な関係
がある。ICRU Report 80(参考文献[2]参照)には,現在使用されているCTA線量計測システムの科学的
基盤及び歴史的進展が記載されている。
5.4 未照射と照射済みとのCTA線量計の単位厚さ当たりの吸光度差は,測定に使用する波長に依存する。
一般的には,製造業者が感度及び照射後の安定性が最適となる波長を用いるのがよい。

6 影響量

6.1   線量計応答に影響する吸収線量以外の要因を,影響量と呼び,それらについては6.26.5による(参
考文献[20]参照)。このような影響量の例として,温度及び線量率がある。
6.2 照射前の条件
6.2.1 線量計の前処理及び包装
特に,低線量率(ガンマ線)照射の場合,線量計は前処理及び包装を必要とすることがある(6.3.4参照)。
注記 管理された相対湿度の条件下でCTAフィルムを前処理し,更に水分不浸透の小袋でCTAフィ
ルム素子を包装して防湿することによって,最も信頼できる線量計応答が得られる。
6.2.2 製造後の経過時間
照射前の吸光度は,時間とともに徐々に上昇する。これは,空気(酸素)にさらされることによる。し
たがって,CTAフィルムのリールの外周における照射前の吸光度は,内側における吸光度よりも大きくな
ることがある。このため,フィルムの外周分を切り捨てることが望ましい。線量計を使う前に照射前の吸
光度を測定するか,又は照射前の吸光度と校正時に記録した吸光度の平均値とを比較して,考慮の必要な
重大な変化がないことを確認する。
注記 単位厚さ当たりの吸光度の計算に使われる照射前の吸光度には,使用者によって照射前に測定
された吸光度又は使用者が決定した照射前の吸光度の平均値が用いられる。
6.2.3 温度
線量計応答を阻害する影響を少なくするために,製造業者が推奨した温度範囲外での使用は避ける。
6.2.4 相対湿度
線量計応答に与える影響は明らかにされていない。
6.2.5 露光
線量計は,可視光には反応しないが紫外光の影響を受けるため,それに係る特性を評価することが望ま
しい。照射前における紫外光の露光はフィルムの照射前の吸光度を増加させることがあり,それは紫外光
の強度に依存する(参考文献[8]参照)。

――――― [JIS Z 4573 pdf 6] ―――――

                                                                                              5
Z 4573 : 2016 (ISO/ASTM 51650 : 2013)
6.3 照射中の条件
6.3.1 照射時の温度
線量計応答は,特に低線量率の場合,温度の影響を受けるため,それに係る特性を評価しなければなら
ない(参考文献[5],[8],[15],[16]参照)。
6.3.2 吸収線量率
線量計応答は,吸収線量率に影響を受けるため,それに係る特性を評価しなければならない(参考文献
[4],[6][10],[13][15]参照)。
6.3.3 分割線量
線量計応答は,累加的な照射の影響を受けるため,それに係る特性を評価しなければならない。
6.3.4 相対湿度
線量計応答は,特に低線量率で相対湿度が高い場合,影響を受けるため,それに係る特性を評価しなけ
ればならない(参考文献[5],[8],[10],[13],[15]参照)。
6.3.5 露光
線量計は,可視光には反応しないが紫外光の影響を受けるため,それに係る特性を評価することが望ま
しい。照射中における紫外光の露光はフィルムの吸光度を増加させることがあり,それは紫外光の強度に
依存することがある(参考文献[8]参照)。
6.3.6 放射線エネルギー
線量計応答に与える影響は明らかにされていない。しかし,300 keV以下の電子エネルギーを使って厚
さ125 μm厚のCTAフィルムを照射するとフィルム中に線量勾配が形成されてしまう。
6.4 照射後の条件
6.4.1 経過時間
線量計応答は,照射から線量計の吸光度測定までの時間中に変動する。この特性は事前に評価し,測定
時間を特定しなければならない(参考文献[5],[6],[8],[10],[16]参照)。
注記 吸光度は,高線量率で電子線照射後,最初は減少し,その後は室温では15分以上の保存時間中,
徐々に上昇していく。線量計応答は照射してから約2時間後に最も安定する。したがって,線
量計の吸光度は,一定の時間,例えば,照射後2時間後に測定することが望ましい(参考文献
[8],[10],[13]参照)。
6.4.2 温度
CTAフィルムは照射後の保存温度に影響を受けるため,それに係る特性を評価しなければならない。使
用者は照射後の保存温度を決められた範囲内に維持する必要がある(参考文献[8]参照)。
6.4.3 取扱条件
照射後は,熱処理などは行わない(参考文献[10]参照)。
6.4.4 相対湿度
照射後の吸光度の変化率は相対湿度の影響を受けるため,それに係る特性を評価しなければならない。
使用者は照射後の保存時の相対湿度を決められた範囲内に調節する必要がある(参考文献[5],[8],[13],
[15]参照)。
6.4.5 露光
線量計は,可視光には反応しないが紫外光の影響は受けるため,それに係る特性を評価することが望ま
しい。照射後における紫外光の露光はフィルムの照射後の吸光度を増加させることがあり,それは紫外光
の強度に依存することがある(参考文献[8]参照)。

――――― [JIS Z 4573 pdf 7] ―――――

6
Z 4573 : 2016 (ISO/ASTM 51650 : 2013)
注記 フィルムの照射後の吸光度は,保存期間が長い場合(24時間以上の場合),変動することが明
らかになっており,それは照射後の保存期間中における温度及び相対湿度に依存する。吸光度
測定が,線量計測システムの校正時とは異なる保存時間で行われる場合,使用者は長い期間に
おける影響について特性を評価し,保存条件を決定することが望ましい(参考文献[8],[15]参
照)。
6.5 応答測定の条件
6.5.1 露光
線量計は,可視光には反応しないが紫外光の影響を受けるため,それに係る特性を評価することが望ま
しい。照射後における紫外光の露光はフィルムの照射後の吸光度を増加させることがあり,それは紫外光
の強度に依存することがある(参考文献[8]参照)。
6.5.2 温度
日常における測定中の温度条件は,線量計の校正時の条件と同じにしなければならない。
6.5.3 相対湿度
日常における測定中の相対湿度条件は,線量計の校正時の条件と同じにしなければならない。

7 CTA線量計測システム及びその検証

7.1   CTA線量計測システムの構成
CTA線量計測システムの構成は,次による。
7.1.1 三酢酸セルロース線量計フィルム
7.1.2 校正された分光光度計(又は相当する機器)
指定された分析波長で吸光度が決定でき,また,分析波長範囲,選択波長及び吸光度測定の正確さ,ス
ペクトルバンド幅並びに迷光排除を特定できる技術資料があるものとする。
7.1.2.1 吸光度測定の正確さを検証する方法,例えば,測ろうとする吸光度を含む範囲で校正された光学
吸収フィルタを測る方法とする。
7.1.2.2 波長校正を検証する方法,例えば,校正された光学吸収フィルタを用いる方法とする。
7.1.3 ホルダー
吸光度を測定するとき,線量計の中心が分析光ビーム光路内,かつ,光路に対して垂直となるように,
再現性のよい線量計を取り付けるためのものである。
注記 長いテープ状のCTAフィルムの吸光度を測定するためには,自動送り線量計読取装置が一般的
に使われている。
7.1.4 校正された厚さ計(任意)
厚さ計の校正方法,例えば,測ろうとする厚さを含む範囲で校正された厚さのブロックゲージを測る方
法。
7.2 計測マネジメントシステム
ISO/ASTM 51261に従って校正した線量計測システムの校正曲線及び使用のための手順を含む(箇条9
参照)。
7.3 機器の性能検証
7.3.1 あらかじめ定めた間隔で,又は使用中に機能低下が認められたときは,分光光度計の波長及び吸光
度のスケールの健全性を測定波長又はその近くの波長で点検し,その結果を記録しなければならない。検
証の方法については,十分な性能を検証するために機器の仕様書と比較し,その結果を記録するのがよい

――――― [JIS Z 4573 pdf 8] ―――――

                                                                                              7
Z 4573 : 2016 (ISO/ASTM 51650 : 2013)
(参考文献[19]参照)。
7.3.2 あらかじめ定めた間隔で厚さ計を校正し,その結果を記録しなければならない。また,厚さ計は再
現性及びゼロ点ドリフトがないことを確認するために,測定前,測定中,及び妥当性の考慮が必要な場合
には,測定後に点検しなければならない。

8 納入時の線量計の評価

8.1   線量計の受領,承認及び保管に関する手順を確立しなければならない。
8.2 新しい保有線量計の受領の際には,使用者は,製造業者の証明書に記載してある当該の線量計バッ
チの特性を確認し,納入検査を実施しなければならない。例えば,使用者は,厚さ,照射前の吸光度,及
び放射線応答のばらつきが仕様書の範囲内であることを検証することが望ましい。
8.3 追加的な試験若しくは検証又は再校正のための使用には,十分な数の線量計を保持する。
8.4 線量計は,製造業者が推奨する手順書又は公開されたデータ若しくは経験に従って,適切な方法で
保管する。

9 校正

9.1   保有線量計の各線量計バッチを最初に使用する前に,線量計測システムは,ISO/ASTM 51261及び
校正プロセスの詳細及び品質保証の要求事項が規定された使用者の手順書に従って校正しなければならな
い。
9.2 使用者の線量計測システムの校正は,使用者の施設での照射前,照射中及び照射後の条件に関連す
る影響量を考慮しなければならない(箇条6参照)。
注記 以前の経験,製造業者の推奨(提案)事項又は技術的文献(参考文献[3][16]参照)に“線量
計が照射される条件によっては,線量計応答に影響する,又は,不確かさが増加する”と記載
されている場合は,線量計の校正のための照射は,ルーチン使用する場合と同様の照射条件で
実施する方がよい(詳細は,ISO/ASTM 51261参照)。
9.3 特定の線量範囲又は照射後の測定時間に対応するために,複数の校正曲線が必要となる場合がある。

10 ルーチン使用

10.1 照射前
10.1.1 線量計は,使用者の手順書及び製造業者の推奨事項に従って保管し,使用期限内でかつ校正期限内
の保有線量計から取り出すことを確実に行う。
10.1.2 フィルムの照射前における吸光度を測定する(6.2.2参照)。
10.1.3 各線量計の素子について,外観的な不具合,例えば,CTAフィルムのかききずの存在を目視検査
する。許容できない欠陥のある個々のフィルム素子又は一連のフィルムは廃棄する。
10.1.4 包装された線量計に識別のために適切に印を付ける。
10.1.5 照射のために放射線加工対象となる製品のあらかじめ規定した場所に線量計を設置する。
10.2 照射後の分析手順
10.2.1 線量計を回収する。
10.2.2 線量計の吸光度測定までは,規定した条件下で,承認既定した場所に保管する(6.4参照)。
10.2.3 線量計の単位厚さ当たりの吸光度は,規定の時間(6.4.1参照)に,及び照射後の潜在的な変化を
考慮した条件(6.5参照)で測定する。

――――― [JIS Z 4573 pdf 9] ―――――

8
Z 4573 : 2016 (ISO/ASTM 51650 : 2013)
10.2.4 規定した手順に従って,線量計の性能を検証する(7.2参照)。
10.2.5 各線量計に対し,次の手順を実行する。
10.2.5.1 かききずなどの不具合がないか,各線量計を検査する。いかなる不具合も記録する。
注記 線量計にかききずが発見された場合,かききずが分光光度計のビーム光路にかからないように
線量計を逆さにしてホルダーに取り付けることによって信頼性のある測定ができる場合がある。
10.2.5.2 必要に応じて,線量計は測定前に汚れを取り除いてきれいにする。乾いたローリント又はリント
フリーの布で拭くこと程度はしてもよい。
10.2.5.3 分光光度計のホルダーに線量計を取り付ける。
10.2.5.4 選択した分析波長で吸光度を測定し,記録する。
10.2.5.5 可能であれば,分析光ビームが通過した領域の線量計素子の厚さを測定する。
注記 代わりに,製造業者の公称する平均値又は使用者が決定した平均値を使用してもよい。
10.2.5.6 測定した厚さ又は平均値を使って単位厚さ当たりの吸光度を計算する。
10.2.5.7 単位厚さ当たりの吸光度及び適切な校正曲線から吸収線量を決定する(箇条9参照)。
10.3 付加情報
10.3.1 200×103 Gyを超える線量を照射した線量計フィルムは,ある程度もろくなるので,注意して取り
扱わなければならない。このことは,必要とされる試験又は取扱方法によっては,実用的な線量範囲を制
限してしまう場合がある。
10.3.2 準備中及び測定中に指紋又は外部の汚れが付くことを避けるため,線量計表面を素手で触らない。
これらの表面汚れは,測定に影響を与える。線量計の取扱いにはピンセットを使い,素子の端をつまむか,
又はパウダーフリー手袋を使う。

11 文書化の要求事項

  使用者の計測マネジメントシステム(7.2参照)に従って測定の詳細を記録する。

12 測定の不確かさ

12.1 全ての線量測定は,不確かさを評価する必要がある。その適切な推奨手順が,ISO/ASTM 51707及
びISO/ASTM 51261に記載されている(参考文献[18]参照)。
12.2 評価には,校正に由来する要因,線量計応答の再現性,機器の再現性及び影響量の効果から生じる
全ての不確かさの要因が含まれていることが望ましい。不確かさの要因の完全な量的な分析は,不確かさ
バジェットシート(一般的には,表)を用い,それに測定値を入力して行う。一般的には,不確かさバジ
ェットシートは,評価の方法,統計的分布及び大きさを含む不確かさの全ての重要な要因を識別できる。
12.3 この規格に基づいてCTA線量計測システムを使用し,達成される拡張不確かさは,一般的に包含係
数k = 2において6 %8 %程度とする(包含係数k = 2は,正規分布においては,約95 %の信頼の水準に
相当するものである。)。

13 キーワード

  吸収線量,三酢酸セルロース,CTA,線量,線量計,線量計測システム,電子線,ガンマ線,電離放射
線,照射,放射線,放射線加工,放射線滅菌

――――― [JIS Z 4573 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS Z 4573:2016の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/ASTM 51650:2013(IDT)

JIS Z 4573:2016の国際規格 ICS 分類一覧