JIS Z 6018:2015 文書管理アプリケーション―電子データのアーカイビング―コンピュータアウトプットマイクロフォーム(COM)/コンピュータアウトプットレーザディスク(COLD) | ページ 6

                                                                                             23
Z 6018 : 2015
附属書C
(参考)
銀マイクロフォームの長期保存
C.1 一般
文書のアーカイブが必要なアプリケーションで使用する銀マイクロフォームは,製造業者が推奨する方
法で保存する。保存期間が,10年以内であればオフィス環境でもよい。長期保存の場合(典型的には100
年以上)は,幾つかの危険要素を考慮に入れて保存条件を決める。長期保存用の処理条件は,表C.1を参
照。
C.2 阻害要因
C.2.1 一般
マイクロフォームの長期保存を阻害する主要な要因は,次の四つである。
− 生物学的要因
− 化学的要因
− 物理的要因
− 機械的要因
C.2.2 生物学的要因
生物学的要因は,ゼラチンの汚染及び腐敗を起こす微生物(かび,胞子,菌類など)を含む。保存場所
の表面及び空気の品質が重要な汚染の発生要因である。
C.2.3 化学的要因
考慮しなければならない化学的要因は,次のとおりである。
a) 乳剤及び支持体の製造品質が悪い
b) 不適切な現像処理
c) 外部(環境汚染)又は内部(不適切な容器の揮発性有機物からの化学物質放散)からの保存区域の汚

d) 銀及び非銀マイクロフォームの継続的な接触
C.2.4 物理的要因
考慮しなければならない物理的要因は,次のとおりである。
a) 太陽光又は紫外線への長期間の露出
b) 過度の温度又は湿度での保存
c) 温度又は湿度が突然又は過度に変化する環境での保存
d) 微生物又は昆虫に起因する劣化
e) 物理的な変化を起こす微粒子との接触
C.2.5 機械的要因
考慮しなければならない機械的要因は,次のとおりである。
a) 不適切な取扱いに関連したリスク
b) 読取り,コピー,テスト機器などの保守の悪さ又は不適切な使い方による損傷

――――― [JIS Z 6018 pdf 26] ―――――

24
Z 6018 : 2015
C.3 まとめ
表C.1−長期保存のための処理及び保存条件
主要な要因 推奨又は仕様 規範的な参照
処理条件 − 定着液はpH4pH5に設定 ISO 18901
ISO 18917
− 最低水洗温度は25 ℃。現像温度との差は,0から−3 ℃
以内。
− 最高乾燥温度は60 ℃
− チオ硫酸塩残留量は0.007 g/m2以下
条件 ISO 18901
− ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン又はポリ
カーボネートの安定化した密封プラスチック箱 ISO 18917
− ゴムひも又は粘着テープは使用不可
保存 − 施錠したキャビネット ISO 18911
アクセサリ及び備品 − ステンレス鋼,陽極酸化処理アルミニウム若しくはほう
ろう(琺瑯)又は適正に焼付塗装した金属
− 内部に電気回路を引いていない格納容器
− 木,合板又は接着板の格納容器は推奨しない。
保存室 − ほこりのないマイクロフォーム保存専用室 ISO 18911
− ほこりを出す紙のような他のアーカイブ媒体の保存に
は使わない。
− クラス100 000未満の空気ろ過
− 禁煙
− ほこりを出さない床(じゅうたん不可)が望ましい。
− アクリル又はビニール塗装を推奨。フタル酸樹脂塗料は
避ける。
− 動きの多い場所で1時間8回,静かな場所で4回の換気
がある安定した環境
照明条件 − 常時暗くしておく。 ISO 18911
− 太陽光又は紫外線に長時間さらさない。 ISO 10977
− 必要な場合150 lx以下にする。 ISO 12040
温度条件 − 周辺温度は21 ℃以下 ISO 18911
− 急激な温度変化を避ける。
− 温度変化は4 ℃/時
相対湿度 − 20 %40 % ISO 18911
火災又は水害からの保護 ISO 18911
− 火災又は水害に対応した設備(火災検知器,消火機器,
耐火扉の壁など)
− 水害防止のため地下に設置しない。
− 屋上に保存しない(最も火災にさらされやすい場所)。
取扱い条件 − 参照用のコピーを使用する。 ISO 18911
− 指紋,きず,汚れ及び染みを避ける(手袋着用を推奨)。
− 損傷を与える可能性のある読取り,コピー及び検査機器
の故障予防保守
モニタリング条件 − 定期的な抜出検査による濃度及び見た目の検査概要 ISO 18911
− 温度及び湿度の定期検査
バックアップ手法 − 銀塩のバックアップコピーを別な場所に保存 ISO 18911
注記 表C.1は,各要因の右側に示した国際規格を参照又は準拠するのが望ましい。

――――― [JIS Z 6018 pdf 27] ―――――

                                                                                             25
Z 6018 : 2015
附属書D
(参考)
証拠として使うために作成するマイクロフォーム
D.1 一般
証拠の提示は,非常に厳格なシステムからより柔軟なものまで,それぞれの国の法的システムによって
異なる。さらに,証拠規則に影響を及ぼす法令は変化するものであり,各国特有の規範はしばしばその文
化的要素に関連している。そのため,普遍的な証拠手法を標準化することは不可能だという結論に行きや
すい。
しかし,証拠は法律の違いを越えて世界中の国家で真実の表現としての役割を果たすという共通の機能
をもっている。紙に書いたものが証拠の形式であると世界規模で広く受け入れられて以来,使用する媒体
に関しては事実上の標準化がみられる。
今日,デジタル文書の広範囲な利用及び国境を越えて普通に行われている情報の交換は,形式に固執す
るよりも,むしろ明白な信頼性に基づいた証拠機能によって法律の多様性を越えた証拠記録手法の記述を
求めている。
D.2 機能仕様
証拠として使うためのデジタルデータの記録及び保存には,次の機能が必要である。
a) それを最初に記録した後は,情報へのいかなる変更も禁止する。
b) 記録の証拠効果の継続を保証する。
c) 記録に世代ランク(オリジナル,コピーなど)情報を付与する。
d) 必要な期間は,保存する。
e) 必要な期間は,情報へのアクセス利用性及び可動性を保証する。
f) 必要な期間は,情報の利用性及び見読性を保証する。
D.3 マイクロフォームの証拠特性
D.3.1 必須要件
証拠として要求される可能性のあるデータを含むマイクロフォームには,7.2.5によるタイムスタンプ及
び8.3によるスタンプを入れる。
D.3.2 COMマイクロフォームでオリジナル文書を作成
D.3.2.1 一般
オリジナル文書をマイクロフォームに保存するときは,オリジナル文書が当該機関の意思決定に基づい
てCOMマイクロフォームに保存されたことを当該文書のテキストの中に明記する必要がある。マイクロ
フォーム作成が特定の組織に委ねられたときは,文書の中で委託先と場所とを明記する必要がある。
文書のコピーを一つだけ記録する場合は,第一世代の銀マイクロフォームがオリジナルである。オリジ
ナルCOMマイクロフォームからのコピーを保有する場合は,紙の書簡のコピーを保持するのと同じ方法
で複製を保持することを推奨する。複製は,オリジナルマイクロフォームと同じ非改ざん性をもたなけれ
ばならない。
複数の文書コピーを作成する必要がある場合(例えば,契約に関係する複数の組織が自分のコピーを保

――――― [JIS Z 6018 pdf 28] ―――――

26
Z 6018 : 2015
有しなければならない場合など)は,同じファイルを必要な部数だけ処理する。この処理は,同一日に同
じCOMレコーダで同じ形のフィルム及び処理薬品で行う。マイクロフォームのタイムスタンピングを使
う場合は,各コピーには異なる時間が表示される。
D.3.2.2 署名の付与
オリジナル文書で署名を使うときは,グラフィック機能のあるCOMレコーダを使う。署名ファイル(例
えば,グラフィックタブレットを使用して作成できるような)は,文書の必要部分又はリンクファイルの
いずれに含めてもよい。署名は,オリジナル文書の中に含めるか,又はリンク文書として同じマイクロフ
ォーム上に保存する別文書として作成してもよい。
複数の署名が必要なときは,署名はまとめて同じマイクロ画像上に作成する。
ドキュメントに手書きの情報を加えることが必要なときは,この情報は同じマイクロ画像上に署名と同
じ方法で作成する。
文書の署名及びマイクロフォームへの手書き情報の記録は,適正な情報セキュリティ手法によって文書
の完全性チェックの条件にしてもよい。
D.3.2.3 有用な情報
有用な情報は,マイクロフォームのタイトルに含める。マイクロフィッシュではヘッダ,マイクロフィ
ルムでは先頭データページの前に含める。必要なら各データページの下に入れてもよい。
オリジナルマイクロフォームのタイトルには,“オリジナル−デジタル文書”のヘッダを入れる。
複数の文書コピーがあるときは,“オリジナル−デジタル文書のうちX番コピー”のようなタイトルを
付ける必要がある。
コピーランクもタイトルで示してよい(例えば,フォルダの最初のコピーには,“コピー1/2”,2番目は
“コピー2/2”)。
D.3.3 記録の遡及性
証拠としての遡及性(金融取引,フードチェイン,e-コマースなど)をもたせるマイクロフォームには,
“遡及可能”のタイトルを付ける。各マイクロフォームの日付は,記録が改ざん不能になった正確な時間
を示す。
D.3.4 証拠コピー
D.3.4.1 紙の証拠コピー
元は紙であった文書をマイクロフォームにコピーするときは,タイトルに“証拠コピー−紙文書”と表
示する必要がある。
このタイプのコピーを作成する場合は,元の文書の記号的内容及びグラフィカルな見た目を再製できる
機能のあるCOMレコーダを使う。
COMレコーダによる紙文書の再製には,事前に文書のデジタル化が必要である。文書のデジタル化の
パラメータを決定するには,COMレコーダの仕様を考慮する必要がある。常にコピーの美しさよりも正
確性を優先しなければならない。元の文書のデジタル化の過程で元の文書の意味的内容又はグラフィカル
な見た目に影響を与える可能性のあるフォームオーバレイの網掛け,ロゴタイプ又はそれがないことによ
って再製文書の表現を大きくゆがめるその他の要素のような,いかなる“クリーニングアップ”も行って
はならない。
ページの枠消しは禁止する。
ページの曲がり補正は認める。
フォームオーバレイ及びデータを組み合わせたときに読みにくくなるときは,可能ならフォームオーバ

――――― [JIS Z 6018 pdf 29] ―――――

                                                                                             27
Z 6018 : 2015
レイを滑らかにすることで読みやすさを改善するデジタル化を推奨する。
どの場合でも,オリジナル文書のデジタル化の設定は,マイクロフォーム上で最良の結果が得られるこ
とを目標にしてCOMレコーダの仕様に従って選択する。スクリーン上の見た目のよさよりもマイクロ画
像の品質を向上させる設定を優先する。
D.3.4.2 デジタル文書の証拠コピー
マイクロフォーム上のデジタル文書の記録がコピーの場合は,タイトルには“証拠コピー−デジタル文
書”と表示する。
マイクロフォームコピーの正確性には,文書ファイルからのオリジナル画像の記号的内容及びグラフィ
カルな要素のCOMレコーダでの再現が含まれる。
文書が電子フォーム(例えば,インターネット上で記入された管理フォーム)の場合は,コピーの正確
性はフォームの記号的内容及びグラフィカルな要素及び記入された内容をCOMレコーダで統合して再製
することが必要である。フォームに複数のウィンドがあり,そのうちの一つが空白になっている場合は,
同じフォームから別のウィンドとして同時に再製しなければならない。
D.4 文書の送信
COMマイクロフォームに記録された情報が反対意見又は文書の交換(例えば,法的論争)の対象にな
る場合は,次のようにして紛争のときまで使えるようにしておくことができる。
a) 論争に関係する紙のページの再製物として
b) 論争に関係する画像のデジタル化の後,普及している媒体及びデジタル フォーマットで
c) マイクログラフィック現像処理が可能な場合はマイクロフォームの複製で
並行記録オプションが存在するとき及びCOLD媒体がよい状態にある場合は,この媒体から取り込まれ
たページをデジタル媒体で渡せる。ネットワーク又は紙へのプリントのいずれでも送れる。
紛争又は疑惑がある場合は,紛争の際に第一世代の銀COMマイクロフォームを提出する必要がある。
D.5 検査方法
D.5.1 一般
特に偽造が疑われる場合は,検査知識をもつ専門家を使うことに加えて次の点をよく調査しなければな
らない。
D.5.2 比較調査
可能なら調査対象のマイクロフォームと同じ処理又は同じワークショップからのマイクロフォームを比
較することを推奨する。比較項目には全体的な様子,極性,フィルムのつや消し及び/又は銀コーティン
グ並びにフィルムの厚さも含める。
マイクロフィッシュについては,反りの違い及び長さの違いをチェックする。
D.5.3 スタンピング検査
マイクロフォームのスタンプを同じ作成ユニットで作られた他のスタンプと比較することを推奨する。
マイクロフォームの日付で製作ユニットの法的な存在がチェックできる。マイクロフォームの作成日,
COMレコーダのタイプ及び示されたフィルムの履歴を照合してもよい。

――――― [JIS Z 6018 pdf 30] ―――――

次のページ PDF 31

JIS Z 6018:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 11506:2009(MOD)

JIS Z 6018:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 6018:2015の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ6000:1996
マイクログラフィックス用語