JIS Z 8404-1:2018 測定の不確かさ―第1部:測定の不確かさの評価における併行精度,再現精度及び真度の推定値の利用の指針 | ページ 3

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Z 8404-1 : 2018 (ISO 21748 : 2017)
注記 対応国際規格では不確かさに関わる表現に不適切なところが残っているが,この規格では特に
注記なしで適切に修正した。

5 原則

5.1 個々の測定結果及び測定プロセスのパフォーマンス

5.1.1  測定の不確かさは,個々の測定結果に関するものである。これに対し,併行精度,再現精度及びか
たよりは,測定又は試験プロセスのパフォーマンスに関するものである。測定又は試験プロセスとは,JIS
Z 8402規格群に基づく共同実験において,実験に参加した全ての試験所によって用いられた単一の測定方
法である。この規格では,測定方法は,ISO/IEC Guide 99:2007の2.6で定義されているように,一つの詳
細な手順の形で規定されていることを前提としている。また,測定又は試験方法のパフォーマンスに関す
る共同実験の検討から導き出したプロセスのパフォーマンスに関する数値は,同じプロセスによって得ら
れる個々の測定結果の全てに当てはまることを暗黙の前提としている。この前提が成り立つためには,測
定プロセスに関する適切な品質管理及び品質保証のデータの形での裏付けが必要である(箇条7参照)。
5.1.2 後に示すように,個々の試験品での違いを更に考慮する必要がある場合もあるが,この点を念頭に
置いたうえで,既によく調べられていて完成度の高い測定プロセスについては,個々の試験品に関して個
別的で詳細な不確かさの検討を行う必要はない。

5.2 再現性データの適用性

  この規格は,次の二つの原則に基づいている。
− 第一に,共同実験によって得られた再現標準偏差は,測定の不確かさ評価のための有効な根拠である
(A.2.1参照)。
− 第二に,共同実験の枠組みにおいて検討対象でなかった要因の効果については,無視できることを実
証するか,そうでなければ,明確な形で考慮しなければならない。後者の場合は,共同実験に用いら
れた基本モデルを拡張することを意味する(A.2.3参照)。

5.3 統計的モデルの基本式

5.3.1  この規格の基礎となる統計的モデルは,式(1)による。
y B cixi e (1)
ここに, y : 適切な関数から計算された測定結果
μ : 理想的な結果の(未知の)期待値
δ : 測定方法に固有のかたより
B : かたよりの試験所成分
x'i : xiの公称値からの偏差
ci : 感度係数。これは y ix
に等しい。
e : 併行条件下での偶然誤差
B及びeは,分散がそれぞれ 2
L
r2 湫掉 布に従うと仮定する。これらの項は,共同実験のデータ
の解析のためにJIS Z 8402-2:1999において用いられたモデルを構成している。
方法のかたよりδ,試験所のかたよりB,及び偶然誤差eのそれぞれに対して得られた標準偏差は,共
同実験の条件下におけるばらつきの全体的な指標であるので,残りの和
cix iは,δ,B又はeに含まれた
偏差以外の偏差x'iについて取る。すなわち,この和を取ることは,共同実験の過程では実施しなかった操
作の影響を組み込む方法となる。

――――― [JIS Z 8404-1 pdf 11] ―――――

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こうした操作の例を,次に示す。
a) 試験品の調製。通常は,試験品ごとに行うが,共同実験の場合には,試料配布に先立って実施されて
いる。
b) 日常のサブサンプリングの効果。共同実験の対象となる試験品については,通常,共同実験の前に均
質化を行っている。偏差x'iは,期待値ゼロ及び分散u2(xi)の正規分布に従うものと仮定している。
このモデルの論理的根拠を,附属書Aに示す。
注記 一般に,誤差は測定結果と参照値との差と定義される。GUMでは,“誤差”(一つの値)と“不
確かさ”(複数の値のばらつき)とを明確に区別している。ただし,不確かさの評価では,偶然
効果に起因するばらつきを明確にし,これらを明示的にモデルに含めることが重要である。式
(1)のように,期待値ゼロの“誤差項”を含めることによって,この目的を実現できる。
5.3.2 式(1)のモデルが与えられると,測定結果の不確かさu(y)は,式(2)によって評価することができる。
u )(
2 2 2 2 2 2
u ( y) sL ci u (xi )
sr (2)
Ls : Bの推定分散
ここに, 2
rs :
2 eの推定分散
u)( : δの標準不確かさ。これは認証値 をもつ参照計測標準
又は参照標準物質の測定によるδの推定の不確かさに相
当する。
u(ix) : x′iの標準不確かさ
再現標準偏差Rsは sR2 sL2 rs2
sr2 であるので, sL2 2
は Rsで置き換えることができ,式(2)は式(3)となる。
u ( )
2 2 2 2 2
u (y) sR (3)
ci u (xi )

5.4 繰返し性データ

  この規格では,繰返し性データは,主に精度に対する確認の目的で用いる。この確認は,他の検討と併
せて,ある特定の試験所が,共同実験によって得られた再現精度のデータ及び真度のデータを,自身の不
確かさ評価に使えるかどうかを調べるためのものである。また,繰返し性データは,不確かさの再現性成
分の計算にも用いる(7.3及び箇条11参照)。

6 併行精度,再現精度及び真度の推定値を用いた不確かさの評価

6.1 測定の不確かさの評価の手順

  この規格の基礎となる原則(箇条5参照)から導かれる測定の不確かさを評価する手順は,次による。
a) 使用する測定方法に関して公開されている情報から,その方法の併行精度,再現精度及び真度の推定
値を入手する。
b) その試験所の測定のかたよりが,a)において入手した推定値から予想される範囲内にあるか否かを確
認する。
c) 現在の測定で実現されている精度が,a)において入手した併行精度及び再現精度の推定値から予想さ
れる範囲内にあるか否かを確認する。
d) )で推定値を参照した共同実験では適切に考慮されていない測定に対する影響があるかどうかを明確

――――― [JIS Z 8404-1 pdf 12] ―――――

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にし,それぞれの影響の感度係数と不確かさとを考慮して,これらの効果によって生じると思われる
測定結果のばらつきを定量化する。
e) かたより及び精度がb)及びc)において確認したような管理状態にある場合は,再現精度の推定値[a)]
に,真度に付随する不確かさ[a)及びb)]及び追加された成分の影響[d)]を合成して,合成標準不
確かさを求める。
これらの各手順については,箇条7箇条11で詳しく示す。
注記 かたよりが管理状態にない場合は,この規格では,プロセスを管理状態に置くための是正措置
を講じることを前提としている。

6.2 予想される精度と現実の精度との差

  現実の精度が6.1 a)で推定値を参照した共同実験から予想されるものとは異なる場合は,それに伴う不
確かさへの寄与を調整することが望ましい。精度が応答の大きさに比例するという,よくある場合につい
ては,8.5において,再現精度の推定値の調整の仕方を示す。

7 測定方法のパフォーマンス値の,特定の測定プロセスでの測定結果への適用可能性の確認

7.1 一般

  共同実験の結果から,測定方法のパフォーマンスの指標(sR,sr)が得られ,場合によっては,測定方法
のかたよりの推定値も得られる。これらは,測定方法のパフォーマンスに関する“仕様”を構成する。特
定の目的のためにその測定方法を採用するときに,試験所は,通常,この“仕様”を満たしていることを
示す必要がある。多くの場合,これは,併行精度が管理状態にあること(7.3参照)及びかたよりの試験所
成分が管理状態にあること(7.2参照)を実証するための検討,並びに継続的なパフォーマンス確認[品質
管理及び品質保証(7.4参照)]によって達成できる。

7.2 かたよりの試験所成分の管理状態の検証

7.2.1  一般
7.2.1.1 試験所は,ある測定方法を導入するに当たり,かたよりが管理状態であること,すなわち,かた
よりの試験所成分が共同実験から予想される範囲内にあることを実証することが望ましい。次の説明にお
いては,日常的に試験される試料の値にできるだけ近い参照値をもつ試料を使って,かたよりの確認が行
われていることを前提としている。かたよりの確認に使用される試料の参照値が,日常的に試験される試
料の値からかけ離れている場合には,8.4及び8.5に従って,得られた不確かさへの寄与を調整することが
望ましい。
7.2.1.2 かたよりの試験所成分の確認は,一般に,試験所の測定結果と何らかの参照値との比較であり,
Bの推定である。式(2)はBの変動に伴う不確かさがsLで表されることを示しており,sL自体はsRに含ま
れる。ただし,かたよりの確認自体に不確かさがあるので,この確認に付随する不確かさは,原則として,
その測定方法を使って将来得られる結果の不確かさを増大させる。このため,かたよりの確認に付随する
不確かさは,sRに比べて小さいこと(理想的には0.2 sR未満)が重要であり,以下の指針は,かたよりの
確認に付随する不確かさが無視できることを前提としている。これが実際に成立し,かつ,かたよりの試
験所成分が予想より大きいという証拠が見付からない場合には,式(3)を修正せずに適用できる。かたより
の確認に付随する不確かさが大きい場合には,式(3)に基づいて評価する不確かさを大きくすることが賢明
である。例えば,不確かさのバジェット表(3.15参照)に項目を追加する。
共同実験における真度の調査から,その測定方法に無視できないかたよりがあることが判明している場
合には,試験所のかたよりを評価するとき,判明しているその測定方法のかたよりを考慮に入れることが

――――― [JIS Z 8404-1 pdf 13] ―――――

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望ましい。例えば,その測定結果に判明している補正を加える。
7.2.2 かたよりの試験所成分が管理状態にあることを実証する方法
7.2.2.1 一般
かたよりの管理は,例えば,次の方法のいずれかによって実証することができる。この規格では,一貫
性をもたせるため,全てのかたよりの検定において同一の一般的な基準を使用する。もちろん,より厳格
な検定を行ってもよい。
7.2.2.2 認証標準物質又は計測標準の利用
試験所lは,併行条件下で認証標準物質又は計測標準の参照標準に対するnl回の繰返し測定を行い,こ
の参照標準について,試験所lのかたよりの推定値Δl(試験所の平均値mから認証値 を減じた値に等し
い。)を求める。実行可能ならば,不確かさが s2wln
<0.2sRとなるようにnlを選択することが望ましい。
一般に,ここで用いられる参照標準は,測定方法の真度を評価するときに用いられた認証標準物質又は計
測標準と同じではない。さらに,Δlは,一般にBとは等しくない。記号の表記はこの規格に合わせ変更し
ているが,JIS Q 0033:2002に従って,式(4)が成立している場合,測定プロセスは管理状態にあると判断す
る。
<2

D (4)
式(4)のσDは,式(5)で与えられるsDで推定する。
2
sw
sD2sL2 ln

(pdf 一覧ページ番号 )

                      ここに,         nl :  試験所lによる測定の繰返し回数
sw : nl回の繰返し測定又はその他の併行実験から求めた試験
所内標準偏差
sL : 共同実験によって得られた試験所間標準偏差
式(4)の基準を満たしていることは,かたよりの試験所成分Bが共同実験によって得られたデータの母集
団に含まれることの裏付けと考えられる。ここで,認証標準物質又は計測標準は,校正用標準としてでは
なく,独立した確認用物質又は管理用物質として使用されていることに注意する。
注記1 試験所は,2より小さい係数を用いるか,又は別のより感度の高いかたよりに対する検定を
実施することによって,式(4)より厳格な基準を任意に採用してもよい。
注記2 この手順では,参照値の不確かさは,σDと比べて小さいと仮定している。
7.2.2.3 不確かさが既知の基準試験方法との比較
試験所lは,基準試験方法と試験所で用いている日常の試験方法との両方を用いて,適切な数nl個の試
験品を試験し,nl対の値(yi, iy)を得る。ここで,yiは試験品“i”に対して基準試験方法によって得た
iyは試験品“i”に対して日常の試験方法によって得た値である。次に,試験所は,かたより
結果であり,
iyとの差の標準偏差
の平均値 Δを式(6)から,また,yiと
y s Δyを式(7)によって計算する。
nl
1
Δy (yi yi ) (6)
nli1
nl
1 2
s Δy ΔyiΔy (7)
nl 1 i 1

――――― [JIS Z 8404-1 pdf 14] ―――――

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ここに, Δi
y yi yi
実行可能ならば,標準偏差が s2 Δyn
/ l <0.2sRとなるようにnlを選ぶ。式(4)及び式(5)の場合と同様に,
2 2 2
sD sL s (Δyn
)/ l であるとして, Δ<0.2sDのとき,測定プロセスは適正に稼動していると考えられる。
y
この場合には,式(3)を変更せずに用いる。
注記1 試験所は,2より小さい包含係数を用いるか,又は別のより感度の高いかたよりに対する検
定を実施することによって, Δ<0.2sDより厳格な基準を任意に採用してもよい。
y
注記2 この手順では,参照法に付随する標準不確かさはσDに比べて小さいこと,及び偏差
Δi
y yi yi は分散が近似的に一定とみなせる母集団からのものであることを仮定している。
7.2.2.4 同じ方法を使用する他の試験所との比較
試験所lが,かたよりを推定することができる別の共同実験(例えば,JIS Q 17043において定義されて
いるような技能試験)に参加している場合には,そのデータをかたよりの管理状態の確認に利用してもよ
い。次の二つのシナリオが考えられる。
a) その共同実験が,独立に付与された値及び不確かさをもつ計測標準又は標準物質について試験を行っ
た場合。この場合,7.2.2.2の手順がそのまま適用できる。
b) その共同試験によって,y1,y2, yqのq(≧1)個の値が合意によって付与された場合。この場合,
1y, 2y,
試験所は,その試験結果が yであったとき,かたよりの平均値Δyを式(8)によって,ま
q
た,付与された値との差の標準偏差s(Δy)を式(9)にょって計算する。
q
1
Δy i
y yi (8)
qi1
q
1 2
s Δy ΔyiΔy (9)
q 1 i 1
ここに, Δi
y yi yi
2 2 2
sD sL s (Δy)/q として, Δ<2sDであれば,その試験所の測定プロセスは適切に稼動していると考え
y
られる。この場合,式(3)を変更せずに用いてよい。
注記1 この手順では,付与された値はqよりも多数回の測定結果に基づいており,そのため,付与
された値の不確かさは無視できること,かつ,偏差Δyiは分散が近似的に一定とみなせる母集
団からのものであることを仮定している。
技能試験では,付与された値yiとの差をとり,技能試験の標準偏差σ0で除すことによって,回答された
iyを,z-スコア
結果 zi i
y yi /0に変換する場合(JIS Q 17043:2011参照)がある。z-スコアが使われ,
技能試験の標準偏差がその測定方法のsR以下である場合,q個の付与された値から得られるz-スコアの平
均値が 2 q の範囲内にあることが,その試験所のかたよりが管理状態にあることの十分な証拠となる。
これは,計算上は便利であり,注記1に示す等分散の仮定にあまり影響されない。ただし,この基準は,
通常,7.2.2.4の記載に比べ厳格になることに留意する。試験所は,より厳格な基準を採用することは自由
であるが(注記2参照),厳格な同等性のためには7.2.2.4に記載した計算は必要である。
注記2 試験所は,7.2.2.4の記載より厳格な基準を採用することは自由である。

――――― [JIS Z 8404-1 pdf 15] ―――――

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