JIS Z 8504:2021 熱環境の人間工学―WBGT(湿球黒球温度)指数を用いた熱ストレス評価

JIS Z 8504:2021 規格概要

この規格 Z8504は、人がばく(曝)露される熱ストレスを評価し,熱ストレスの有無を確立するためのスクリーニング方法について規定。

JISZ8504 規格全文情報

規格番号
JIS Z8504 
規格名称
熱環境の人間工学―WBGT(湿球黒球温度)指数を用いた熱ストレス評価
規格名称英語訳
Ergonomics of the thermal environment -- Assessment of heat stress using the WBGT (wet bulb globe temperature) index
制定年月日
1999年10月20日
最新改正日
2021年3月22日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

ISO 7243:2017(IDT)
国際規格分類

ICS

13.180
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
1999-10-20 制定日, 2006-05-20 確認日, 2010-10-01 確認日, 2015-10-20 確認日, 2021-03-22 改正
                                                                    Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)

pdf 目 次

ページ

  •  序文・・・・[1]
  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[1]
  •  3 用語及び定義・・・・[2]
  •  4 方法・・・・[2]
  •  5 WBGTの決定・・・・[3]
  •  6 代謝率の決定・・・・[3]
  •  7 着衣の効果の決定・・・・[4]
  •  8 測定のタイミング及び時間・・・・[4]
  •  8.1 測定のタイミング・・・・[4]
  •  8.2 測定期間・・・・[4]
  •  9 空間及び時間的に不均一な場合・・・・[5]
  •  9.1 環境の不均一性(空間的変動)に関する測定仕様・・・・[5]
  •  9.2 WBGT指数の時間変化に関する測定仕様・・・・[5]
  •  9.3 代謝率の時間変化に関する測定仕様・・・・[5]
  •  9.4 衣服の時間変化に関する測定仕様・・・・[6]
  •  10 解釈・・・・[6]
  •  附属書A(参考)WBGT熱ストレス指数の基準値・・・・[7]
  •  附属書B(規定)WBGT値の算出に用いられる各因子の測定及びセンサの仕様・・・・[9]
  •  附属書C(参考)黒球温度の代替・・・・[11]
  •  附属書D(参考)自然湿球温度の推定・・・・[13]
  •  附属書E(参考)代謝率の推定・・・・[15]
  •  附属書F(参考)着衣補正値(CAVs)・・・・[16]
  •  参考文献・・・・[17]

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)

まえがき

  この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本人間工学会(JES)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規
格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規
格である。これによって,JIS Z 8504:1999は改正され,この規格に置き換えられた。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

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                                       日本産業規格                             JIS
                                                                              Z 8504 : 2021
                                                                             (ISO 7243 : 2017)

熱環境の人間工学−WBGT(湿球黒球温度)指数を用いた熱ストレス評価

Ergonomics of the thermal environment-Assessment of heat stress using the WBGT (wet bulb globe temperature) ndex

序文

  この規格は,2017年に第3版として発行されたISO 7243を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本産業規格である。
  なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。

1 適用範囲

  この規格は,人がばく(曝)露される熱ストレスを評価し,熱ストレスの有無を確立するためのスクリ
ーニング方法について規定する。
  この規格は,労働日(8時間まで)にわたる全ばく露中の暑熱の影響の評価に適用し,非常に短い暑熱
ばく露には適用しない。
  この規格は,屋内及び屋外の職場環境の評価,並びに他の種類の環境の評価に適用し,また,作業に従
事できる成人男女にも適用する。
  注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
        ISO 7243:2017,Ergonomics of the thermal environment−Assessment of heat stress using the WBGT (wet
            bulb globe temperature)   ndex(IDT)
          なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こと
        を示す。

2 引用規格

  次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
    ISO 7933,Ergonomics of the thermal environment−Analytical determination and interpretation of heat stress
        using calculation of the predicted heat strain
    ISO 13731,Ergonomics of the thermal environment−Vocabulary and symbols

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,ISO 13731による。
  ISO及びIECは,次のURLにおいて規格に用いる用語のデータベースを維持している。
− ISO Online browsing platform: http://www.iso.org/obp
− IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
3.1
湿球黒球温度,WBGT(wet bulb globe temperature)
  暑熱環境にばく露された個人における熱ストレスを評価するための,代謝率を考慮した簡易な指数
  注釈1 WBGTは,自然湿球温度(tnw)及び黒球温度(tg)という二つのパラメータの測定結果を組み
          合わせたものである。測定するセンサが太陽からの直達日射(太陽からの熱負荷)の影響を受
          ける場合,屋外でも屋内でも,気温(ta)の因子を含めることで黒球温度の重み付けが小さくな
          る。
3.2
有効湿球黒球温度,有効WBGT,WBGTeff(effective wet bulb globe temperature)
  衣服の影響を加味したWBGT値
  注釈1 実際の着衣が標準作業服[基礎着衣熱抵抗値0.6 clo,水分透過指数im=0.38(ISO 9920参照)]
          と同等の熱負荷である場合,WBGT値の補正は必要ない。
3.3
着衣補正値,CAV(clothing adjustment value)
  標準作業服とは異なる熱特性をもつ衣服の影響を考慮してWBGT値を補正するための値

4 方法

  暑熱環境にばく露された人の受ける熱ストレスの程度は,次の要因に依存する。
a) 周囲の環境と人体との間の熱伝達に影響を与える環境特性
b) 身体活動の結果としての体内の熱の産生
c) 環境との熱交換を補正させる着衣
  熱ストレスに対する環境の影響を詳細に分析するには,気温,平均放射温度,気流速度及び絶対湿度の
四つの基本的な因子に関する情報を必要とする(ISO 7726参照)。しかし,この影響の評価は基本的な因
子によって導くことができるパラメータを測定することによって可能であり,これらのパラメータはその
環境の物理因子の関数である。WBGT指数は,人に対する熱ストレスの一次的近似を与えるために用いら
れる(箇条5参照)。
  体内の熱負荷は,活動に起因する代謝エネルギーによって生じている。この代謝率は通常,箇条6で規
定する方法で推定される。
  この標準の熱ストレスしきい(閾)値は,綿の長袖シャツ及び綿のズボンの着装を前提として設定され
ている。そのため,他の衣服を着装した場合は,補正が必要となる(箇条7参照)。
  熱ストレスを推定する方法は,これらの異なるパラメータの評価,時間の変動,場所,期間及び活動量

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                                                                    Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
の変化を考慮した平均値の計算に基づいている(箇条8参照)。
  提示されたWBGT基準値(ばく露限界)は,最大8時間までの持続的なばく露を前提としている。この
方法を用いて得られたWBGT値は,WBGT基準値(ばく露限界)と比較される。
  算出されたWBGT値が基準値より大きい場合,暑熱環境に起因する障害のリスクが増加するため,次の
対応が必要である。
− 適切な方法によって作業場での熱ストレス又は熱負荷を直接軽減する。
− ISO 7933を用いて熱ストレスを詳細に分析する。
  この基準で述べられているばく露しきい値は,暑熱に起因する疾患のリスクを低減するように設計され
ているが,熱ストレスばく露に関連する他の障害(火傷及び事故のリスク,生産性の喪失,快適性の欠如
など)の可能性を排除するものではないことに留意することが望ましい。

5 WBGTの決定

  式(1)及び式(2)は,WBGTの計算式を提供し,異なるパラメータ間の関係を示す。
− 日射がない場合
                         WBGT    0.7tnw0.3tg (1)
− 日射がある場合
                         WBGT    0.7tnw0.2tg 0.1ta (2)
  黒球温度は,太陽及び他の熱源を含めた全ての放射による熱負荷を評価する。式(2)は,太陽からの直達
日射による環境下では黒球温度の放射が過大評価される傾向を考慮した式である。すなわち,直達日射を
伴う場合又は伴わない場合の双方において適用可能であることを示す[式(1)及び(2)]。
  基準値(WBGT)は,作業日の8時間の平均的な熱ストレスレベルを想定して設定されている。ばく露
環境を代表可能な分析のための時間間隔は,約1時間である。その環境に空間的及び/又は時間的変動が
ある場合,9.1及び9.2に規定するように,これらの変動を調整する必要がある。
  附属書Bは,WBGTの計測に関連するセンサの要件を規定する。
  注記1 WGBTを評価するために使用される計器における実際のセンサは製品によって異なる。附属書
          Bに規定するセンサの形状とともに,附属書Cに示す黒球サイズによる影響の補正を参照。
  注記2 WBGTを算出するために望ましい方法は,附属書Bに規定するセンサを用いた直接測定であ
          る。ただし,気温,平均放射温度,相対湿度,及び気流速度の四つの因子によってWBGTの推
          測値の算出が可能である(附属書C及び附属書D参照)。

6 代謝率の決定

  体内で産生される熱量は熱ストレスの重要な因子である。さらに,この有効な推定値は評価に不可欠で
ある。体内で消費された総エネルギー量を表す代謝率は,ほとんどの作業(外部仕事エネルギー量がごく
僅かである場合)における熱産生量の良い推定値となる。
  代謝率は表E.1に示すように安静,低代謝率,中程度代謝率,高代謝率,極高代謝率に分類してもよい。
断続的な作業の場合,9.3に規定する時間加重平均を用いなければならない。

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
  より詳細な推定が必要な場合は,ISO 8996に規定されている方法を用いることが望ましい。

7 着衣の効果の決定

  附属書Aに示される基準値(ばく露限界値)は,標準着衣としての綿の作業服(基礎着衣熱抵抗値0.6
clo,水分透過指数im=0.38)を基準着衣として規定された。標準着衣とは異なる着衣,特に異なる蒸発抵
抗をもつ着衣は,熱ストレスレベルに対して異なる効果をもつ可能性が高い。標準的な作業服とは異なる
衣服材料及び異なる形状の着衣については,WBGT温度単位で着衣補正値(CAV)が提供される。CAVは,
測定されたWBGTに加算されて,実際に着装された着衣によってもたらされる熱ストレスの推定値を等
価な熱ストレスの温熱環境である有効WBGT(WBGTeff)として式(3)によって規定する。
                        WBGTeff   WBGTCAV       (3)
  附属書FにCAVの一覧を示す。着衣の影響は複雑である可能性があり,CAVは実験室における実験結
果によって決定された,人に対する熱ストレスを考慮に入れるための単純化した調整値であり,第一次的
近似であることに留意が必要である。
  CAVが直接分からない組合せの着衣を着装した場合,CAVは,類似の熱特性をもつ衣服によって推定し
てもよい。広範囲の衣服の熱特性は,ISO 9920に示されている。
  CAVが決定できない組合せの着衣については,この規格は使用しないものとし,ISO 7933を用いた熱ス
トレスの詳細な分析を行う必要がある。
  CAVは,附属書Aで基準値が示される着衣の調整なし(CAV=0)で適用される“通常の作業服”とは
異なる衣服を着用することによる影響を示す近似値である。一般に,CAVは,蒸発熱抵抗値の増加(又は
水分透過指数の減少)とともに増加する。他の影響を与えるものは,放射熱,環境の気流速度,身体の動
き,衣服の形状及び環境の湿度である。これらのうち,CAVは,高い蒸発熱抵抗値と高い湿度との組合せ
によって大きく影響を受ける。このような場合,CAVの単純化された特性を考慮すると,安全性の余裕を
見込んで,CAVは高めに設定する必要がある。CAVに対する放射の影響は明らかにされていない。

8 測定のタイミング及び時間

8.1 測定のタイミング

  WBGT指数の決定は,測定が行われた時点において作業者が受けていた熱ストレスの推定ができるに過
ぎない。そのため,熱ストレスが最も生じそうな時期,すなわち,暑い夏の時期に測定することを推奨す
る。同様の理由で,ばく露環境を代表するタイミングは,日中又は熱ストレスが生じる可能性が最も高い
時期が最も適切である。
  一日の作業が明らかに異なる種類,又はカテゴリーに分類される場合,それぞれ異なる種類ごとに測定
及び評価をする必要がある。
  例 午前中が主に軽作業で,午後は重労働を行う場合,又はWBGT値が一時間を超えて大幅に異なる場
      合。

8.2 測定期間

  WBGTの測定は,代表的期間として1時間以上が必要である。個々の測定時間は,センサの応答時間に
依存し,場合によってはかなり長時間である可能性がある(特に黒球温度)。全てのセンサは,記録を開始

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する前にあらかじめ定常状態にしておく必要がある。したがって,測定期間の合計は,分析の時間基準と
して使用される1時間よりも長くなる可能性がある(9.2参照)。
  環境測定値を高分解能(例えば,毎秒又は毎分)で記録し,大量のデータをデジタル形式で記憶するこ
とが可能である。どのようなパラメータの値及び因子を測定する場合でも,計器の時定数,精度及び感度
を考慮に入れる必要がある。

9 空間及び時間的に不均一な場合

9.1 環境の不均一性(空間的変動)に関する測定仕様

  WBGT値は,通常,熱にばく露される人々の腹部の位置で測定する必要がある(ISO 7726参照)。人の
周囲の環境が均一でない場合,測定は熱ストレスが最も高い位置で行わなければならない。通常の作業場
所にセンサを配置することができない場合,作業場所及び同様の影響を受ける場所にセンサを配置する必
要がある。
  注記 ISO 7726では腹部の高さとして,立位で1.1 m,座位で0.6 mとしている。

9.2 WBGT指数の時間変化に関する測定仕様

  環境及び活動による分析結果が時間内に観測パラメータが時間によって不均一である場合,代表的な平
均値を決めなければならない。最も正確な手順は,時間の関数として温熱因子を連続的に展開し,それを
時間積分して平均値を導き出すことである。多くの場合この方法を用いることが困難なため,それぞれの
温熱因子の変動がぼぼ一定の範囲にある場合には,一定値とみなす。各温熱因子の平均値は,得られたそ
れぞれのレベルの時間による加重平均によって求める。
  平均値を算出するための時間基準Tは約1時間であり,これは,潜在的な熱ストレスばく露を代表する
値である。したがって,時間の関数としての展開がn個のレベルに分解されたパラメータp(例えば,環
境の三つのパラメータを同時に測定する場合の気温,自然湿球温度,黒球温度又はWBGT)の平均値は,
式(4)によって表される。
                             pt
                              1  1   p2 t2       pn tn
                         p                               (4)
                                    t1 t2   tn
  ここで,p1,p2,pn··· はそれぞれt1,t2,tn···(t1+t2+···tn=T=1h)の時間におけるそれぞれのパラメー
タの値である。
                        tt
                         1  2     T  1h   (5)
  測定回数は,因子の変動の速度,使用したセンサの応答性,及び測定時に必要な測定精度に依存する。

9.3 代謝率の時間変化に関する測定仕様

  式(4)は,基準値表によって測定又は推定された値に基づく代謝率の時間加重平均値の決定に適用される。
代謝率は,附属書Eで示す5段階のいずれかのレベルの一つに分類される。平均代謝率は,式(4)によって
求められる。ここで,パラメータは代謝率であり,基本活動ごとに,表E.1に示した代謝率の平均値を採
用する。
  採用する代謝率値に疑義がある場合,又は全ての測定又は推定が不可能である場合,より高い代謝率に
対応する基準値を用いる。

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)

9.4 衣服の時間変化に関する測定仕様

  服装がばく露期間を通じて変動する場合,式(4)に従って時間加重平均WBGTeff値を使用しなければなら
ない。

10 解釈

  附属書Aに示すWBGTeff指数の値は,参考値として示されている。これらは,労働(作業)に従事でき,
健康な人に適用される。WBGTeff値が対応するWBGTeff基準値以下である場合,更なる処置は必要ではな
い。WBGTeff値が対応するWBGTeff 基準値より大きい場合,箇条4に従って更なる処置を講じなければな
らない。
  基準値は,比較的長時間の作業における暑熱の影響を表す。これらは,特に高温の環境又は瞬間的に激
しい身体活動の結果として,個体が短時間(数分)さらされる熱ストレスのピーク値を考慮していない。
そのような場合,ばく露が非常に短い場合でも,平均的な活動又は平均的環境のWBGT値が基準値を超え
なくても,実際の熱ストレスが,許容値を超えることがある。この規格を用いて実施される評価に加えて,
ピークばく露については更なる検討をすることが望ましい(ISO 7933参照)。
  この規格の目的上,暑熱順化者として,評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間,高温
作業条件(又は類似若しくはそれ以上の極端な条件)にばく露された人を規定する。また,この規定では
暑熱順化者を対象としている。この条件に当てはまらない場合は,その者は順化していない(暑熱非順化
者)とみなされる。

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                                                                    Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
                                          附属書A
                                          (参考)
                            WBGT熱ストレス指数の基準値
  時間加重平均(TWA)有効WBGT(TWA−WBGTeff)は,衣服について調整された時間加重の平均値で
ある。
               表A.1−順化者及び未順化者における代謝率区分別のWBGTeffの基準値
            代謝率(クラス)       代謝率       暑熱順化者の          暑熱非順化者の
          (説明は表E.1参照)       W a)        WBGT基準値             WBGT基準値
                                                     ℃                    ℃
       クラス0 : 安静                 115             33                     32
       クラス1 : 低代謝率             180             30                     29
       クラス2 : 中程度代謝率         300             28                     26
       クラス3 : 高代謝率             415             26                     23
       クラス4 : 極高代謝率           520             25                     20
         ここで示したWBGTeffの値は,既存の基準との整合性をとるために示されている。これらの規格は
       将来再検討されるため,図A.1の値又は関連する式が再考される可能性がある。新しく検討される値
       は,おおよそ±1 ℃の違いがある。
         注a) 代謝率は,皮膚表面積1.8 m2とした値である。皮膚表面積が1.8 m2以外の者に適用する際は,
              附属書Eを参照。
  表A.1に示す基準値(ばく露限度)は,表A.1及び表E.1に記載された作業のカテゴリーに基づく最良
の推定値を用いることが望ましい。評価している暑熱環境に応じて算出されたWBGTeff値がWBGTeff基準
値よりも大きい場合,更なる暑熱対策が必要となる(箇条4参照)。
  より正確な代謝率の推定値が利用可能である場合,基準値(ばく露限界)は,表A.1の線形補間によっ
て得てもよい。
  図A.1は,代謝率とWBGTeffとの間の連続的な関係を示す。表A.1に示すように,図A.1の値及び関連
する式は,表の値とは異なる場合がある。図A.1の実線は,正常で健康な暑熱順化者の熱ストレスばく露
の持続可能なレベルを示している。破線は,正常で健康な非順化者にとって持続可能なレベルの熱ストレ
スばく露を示している。これらの関係は,表A.1の代わりに使用してもよい。
  WBGT指数は,体格又は類似の特性(例えば,肥満,身長,体重)に関連するいかなる効果も考慮して
いない。

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
 記号説明
   X : 代謝率a)(W)
   Y : WBGTeff(℃)
   実線 : 暑熱順化者
   破線 : 暑熱非順化者
   注a) 表A.1の注a)を参照。
                              図A.1−代謝率によるWBGTeffの基準値
  値は,正常で健康な成人における持続可能な熱ストレスばく露のレベルに基づく。
  図A.1の値は次のように決定が可能である。
  暑熱順化者(実線)
  WBGTeff基準値(WBGTref) : 
                         WBGTref  56.711.5log10M   ℃
  暑熱非順化者(破線)
  WBGTeff基準値(WBGTref) : 
                         WBGTref  59.914.1log10M   ℃
  ここで,Mは代謝率(W),115<M<520の範囲である。
  注記 図A.1及び回帰式によって代謝率Mを用いて算出したWBGTrefの値は,表A.1に示されている基
        準値と必ずしも一致しない。基準値としては表A.1の値を用いることが一般的である。

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                                          附属書B
                                          (規定)
         WBGT値の算出に用いられる各因子の測定及びセンサの仕様
B.1   自然湿球温度センサ
  自然湿球温度は,自然な対流中で,すなわち,強制通風することのない環境に置かれたぬれたガーゼで
覆った温度センサが示す値をいう。自然湿球は,環境中の気温,放射,湿度及び気流にさらされる。
  自然湿球温度は,通風乾湿計によって測定される熱力学的温度とは異なる。
  温度センサは,次の特性に従わなければならない。
a) センサの受感部の形状 : 円筒形
b) センサの受感部の外径 : 6 mm±1 mm
c) センサの長さ : 30 mm±5 mm
d) 測定範囲 : 5 ℃40 ℃
e) 測定精度 : ±0.5 ℃
f)  センサの受感部分全体は白いガーゼのような吸水性の高い素材(例えば,綿)によって覆う。
g) センサの支持部は,6 mmに等しい直径とし,かつ,センサの指示部からの熱伝導を減少させるために
    20 mmのガーゼで覆う。
h) そのガーゼは,覆いがきつ過ぎたり緩過ぎたりすると精密な測定に支障を来すので,筒状に編み,セ
    ンサの周りにきちんと覆いかぶせる。
i)  ガーゼは清潔に保つ。
j)  ガーゼの下部は,水つぼの蒸留水に浸す。空気中にある部分の長さは,20 mm30 mmとする。
k) 水つぼは,周囲の環境の熱放射によって水温が上がらないような設計にする。
B.2   黒球温度センサ
  黒球温度は,次のような特性をもつ中空黒球の中心に位置するセンサが示す温度をいう。
a) 直径 : 150 mm
b) 平均放射率 : 0.95(つや消し黒球)
c) 厚さ : できるだけ薄い。
d) 測定範囲 : 20 ℃120 ℃
e) 測定精度
  − 20 ℃50 ℃の範囲 : ±0.5 ℃
  − 50 ℃120 ℃の範囲 : ±1 ℃
  黒球温度を測定する際は,黒球本体が意図しない遮蔽は避けることが重要である。
  注記 黒球部分の材料の違いは時定数に影響するが,定常状態の黒球温度の値には影響しない。黒球部
        分が銅のような高い熱伝導率をもつ材料の場合,より低い熱伝導率をもつ材料によって作られた
        場合に比べて小さい時定数となる。

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
B.3   気温の測定
  基本的な因子である気温の測定は,適切な方法を用いることさえできれば,形状がいかなるものであっ
てもよい。ただし,気温の測定に関わる測定精度は保たなければならない。気温センサは,特に,センサ
の周囲の通風を妨げない状態で,放射による影響を受けないようにする。
  気温の測定範囲は10 ℃60 ℃,精度は±0.5 ℃である。

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                                                                    Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
                                          附属書C
                                          (参考)
                                      黒球温度の代替
  附属書Bに規定する黒球温度センサは,この規格の要件を満たす唯一のセンサ仕様である。近似値とし
て,正しい仕様の黒球温度の推定のために必要な補正がなされる場合,附属書Bに規定する以外の黒球を
使用してもよい。式(C.1)式(C.4)を用いて補正を行ってもよい。黒球の大きさを補正するには,環境因子
(例えば,気温,気流速度など)の測定が必要であることに留意することが重要である。黒球温度の推定
の精度は,環境測定の精度に依存する。測定時の誤差は重要な意味をもつため,補正にはこれらの誤差を
含むこととなる。これが,B.2の仕様を満たす黒球が唯一の黒球といわれる理由である。
  黒球の大きさを補正するためには気流速度が必要である,気流速度が分からない場合は,補正を行うこ
とは不可能である。
  黒球面センサ(例えば,t=tgの球面温度計)の平衡温度tは,式(C.1)によって求める。
                        t   1 gt    gtr                                             (C.1)
                       ここで,         ta :  気温
                                        tr :  平均放射温度
                                        g :  放射反応率
  強制対流(v>0.2 ms−1)の場合,gは,式(C.2)によって推定することが可能である。
                                  1
                        g                  (C.2)
                            11.13vd0.6
                                   a
                                      0.4
                       ここで,         va :  気流速度(ms−1)
                                        d :  センサの直径(m)
  式(C.1)は,センサの放射率が1であると仮定しているが,黒以外の色の球体の場合はそうではない。よ
り一般的な式は,式(C.3)である。
                            1 g ta  gt
                        t           g r (C.3)
                            1   1
                       ここで,          ε :  センサの放射率
  銀色の表面のεは0.1と低く,黒球は1.0に近い数値となる。
  適切な補正を行うには,黒球の直径,気流速度,放射温度及び気温の全てのパラメータが影響すること
を考慮すべきであることが分かる。
  より正確には,gは,放射熱伝達係数(hr)を総熱伝導係数(hc+hr)で除した数値である。
  式(C.4)は,直径d(m)の黒球温度tgdによって直径150 mmの黒球温度tg150を予測するために使用する。
                                        0.60.4
                                 11.13vda
                        tg150 ta          0.6
                                              tgd ta  (C.4)
                                   12.41va
  式(C.4)によって,直径100 mmの球体の黒球温度が25 ℃,気温が20 ℃,気流速度が0.5 ms−1である場
合,直径150 mmの球体の黒球温度は25.5 ℃であると推定される。(表C.1参照)

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
                          表C.1−直径150 mm黒球温度への近似換算の例
     黒球直径         黒球温度           気温           気流速度         直径150 mmの黒球の
        d                tg               ta               va               推定温度 tg150
       mm                °C              °C             ms−1                  ℃
        50               22               20              0.5                   22.5
       100               25               20              0.5                   25.5
        25               25               25              0.2                   25.0
        50               30               25              0.5                   31.4
       100               40               25              0.75                  41.7
       120               45               25              1.0                   46.3
        25               25               20              1.0                   28.7
        50               30               30              0.75                  30.0
       100               40               30              0.5                   41.0
       120               50               30              0.2                   50.9
        25               25               25              0.25                  25.0
        50               30               30              1.0                   30.0
       100               40               35              2.0                   40.6
       120               50               40              2.0                   50.7

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                                                                    Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
                                          附属書D
                                          (参考)
                                   自然湿球温度の推定
  計算によるtnwの間接的な評価は,特に気流速度が低く,自然対流の条件下では,複雑であり,不確かな
値となりがちである。それでも,幾つかの興味深い適用がある。
  湿り芯の熱収支方程式に基づいて,式(D.1)(反復法によって解かれる)を用いて,気温(ta,℃),平均
放射温度(tr,℃),気流速度(va,ms−1)及び相対湿度(RH,%)のそれぞれの値によって自然湿球温度
(tnw,℃)の推定値を得ることが可能である。
                                                     4          4
                         4.18va0.444
                                 ta tnw  108
                                              tr 273    tnw 273
                                                                    (D.1)
                                   0.421
                               77.1va  pt
                                        as nw  RH  pt
                                                    as a    0
  ここで,平均放射温度は次の式で与えられる。
                                     4 1.1108  va0.6
                        tr   tg  273               tg ta     273  (D.2)
                                          g  d0.4
                       ここで,          d :  黒球の直径(m)
                                         εg :  平均放射率(mean emissivity coefficient)
                                        pas :  飽和水蒸気圧(kPa)
  この推定式は,直接測定が不可能な場合に限り使用することが望ましい。可能な限り,自然湿球温度を
附属書Bに従って直接測定することが望ましい。自然湿球温度を計算する際に用いる環境測定値は,測定
誤差を伴っていることに留意しなければならない。これらの測定誤差はどのように推定する際においても
累積し得るものであり,計算結果は,常に注意深く確認しなければならない。附属書Bに定義する自然湿
球の測定方法が最も正確な方法である。
  式(D.1)を用いた自然湿球の計算例を表D.1に示す。

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Z 8504 : 2021 (ISO 7243 : 2017)
              表D.1−式(D.1)によって自然湿球温度(15 ℃30 ℃の範囲)を推定した例
     気温     直径150 mmの黒球温度    気流速度   相対湿度    推定自然湿球温度   推定WBGT
      ta              tg150              va        RH              tnw            WBGT
      ℃               ℃               ms−1       %              ℃               ℃
      25.0            40.0               0.3        20             17.3            24.1
      25.0            55.0               0.3        20             21.1            31.3
      25.0            40.0               0.9        20             16.7            23.7
      25.0            40.0               0.3        50             21.7            27.2
      25.0            55.0               0.3        50             25.0            34.0
      25.0            40.0               0.9        50             21.4            27.0
      25.0            40.0               0.3        80             25.5            29.8
      25.0            55.0               0.3        80             28.4            36.4
      25.0            40.0               0.9        80             25.3            29.7
      35.0            35.0               0.3        20             19.7            24.3
      35.0            50.0               0.3        20             23.1            31.2
      35.0            65.0               0.3        20             26.4            38.0
      35.0            35.0               0.9        20             19.1            23.9
      35.0            50.0               0.9        20             22.5            30.7
      35.0            35.0               0.3        50             26.5            29.1
      35.0            50.0               0.3        50             29.2            35.5
      35.0            35.0               0.9        50             26.3            28.9
      35.0            50.0               0.9        50             28.9            35.2
      45.0            45.0               0.3        20             26.1            31.8
      45.0            60.0               0.3        20             29.0            38.3
      45.0            45.0               0.9        20             25.6            31.4
      45.0            60.0               0.9        20             28.3            37.8

JIS Z 8504:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 7243:2017(IDT)

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