JIS Z 8524:1999 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―メニュー対話 | ページ 6

24
Z 8524 : 1999
3.5 経験的評価 経験的評価とは,代表的な最終利用者を用いた推奨事項の適用可能性を判定するため
の試験手続きの適用を指す。この方法は,試作システム又は実システムが利用でき,予想される又は実際
の利用者層を代表する利用者が参加できる場合に最適である。多種の試験手続きを使用できるが,どの場
合でも,被験者は,最終利用者集団を代表するもので,結果を利用者集団全体に一般化できるほど十分な
人数とする必要がある。例えば,速い応答時間が重要かを判定するための経験的評価には,メニューシス
テムを用いて幾つかの代表的作業を行う利用者の研究が必要である。ある推奨事項の適用可能性を測るた
めに,特別な試験方法を考案する場合もある。例えば,利用者の知っている慣習的又は自然な選択肢の組
分けがあるかを調べるのに“カード分け手法”(分類作業)を適用する場合がある(推奨事項本体の5.1.1)。
経験的評価は,試験方法及びその評価方法に適切な技能をもつ者が実施すべきであることを留意するの
がよい。
4. 適合 ある推奨事項が,この附属書の2.で述べた判定基準に基づき適用可能な場合,次にその推奨事
項が満たされているか否かを判定する必要がある。適合は,次に挙げる幾つかの方法を用いて決定する。
備考 各推奨事項について適合を決めるうえで適した方法は,附属書A付表1のチェックリスト中に
推奨事項ごとに掲げてある。
− 測定
− 観察
− 資料的論拠
− 分析的評価
− 経験的評価
例えば,自然な分類を当てはめられるかを決める方法として資料的論拠を用いた場合(この附属書の3.),
適合の検討は,メニューの選択肢に自然な組分けが行われているかを観察することで行う。適用可能性判
定の結果は,しばしば適合を判定するうえで重要であることを注意しておく。次に種々の適合手法につい
て詳しく述べる。
5. 適合手法の解説
5.1 測定 測定とは,メニューシステムの性質に関する何らかの変量を測ること又は算出することを指
す。そのような性質の例として,応答時間,タッチスクリーン上の接触領域,選択肢群の大きさなどがあ
る。適合は,測定から得られた値を,推奨事項での値と比較することで判定する。
5.2 観察 観察とは,ある観察可能な条件が満たされているか(例えば,4色を超える色数が使われてい
ないか,メニューの見出しは左そろえ又は中央そろえになっているか,下位メニューにつながる選択肢に
は右向きの矢印が付いているかなど)を確認するため,メニューシステムを検討又は点検することを意味
する。観察は,メニューシステムを系統立てて調べ,観察可能な性質についての条文に従っているかを判
定するのに必要な技能をもつ誰にでも可能である。観察された性質と推奨事項とを比較して,適合を判定
する。

――――― [JIS Z 8524 pdf 26] ―――――

                                                                                             25
Z 8524 : 1999
5.3 資料的論拠 適合の場合には,資料的論拠とは,条件付き推奨事項に対するメニューシステムの適
合に関連した文書情報すべてを指す。そのような情報には,利用者の習慣又は癖,試作品での試験データ,
類似システムの設計からの試験データなどが含まれる。例えば,評価対象のメニューシステムで採用され
た選択肢の組分けが,利用者や仕事に対して適しているかを,類似システムからの試験データから検討す
る場合がある。この場合,基本的に,その推奨事項に対する類似システムでの適合の資料的論拠に基づい
て,適合を判定する。
5.4 分析的評価 この附属書の3.4で述べたように,分析的評価とは,メニューシステムの性質について
の該当する(すなわち,その性質に関しての)専門家による“有識者的”判断のことである。この方法は,
他の情報や知識の文脈でだけ判断できるような性質の評価に,一般に,用いる。他にも,分析的評価は,
システムが設計文書の形でだけ存在したり,経験的評価用にユーザ母集団が得られなかったり,時間や資
源に限りがある場合に,適合を査定する適切な方法となる。例えば,“開始メニューへ戻る単純な手段”(本
体の6.2.3)及び“見分けやすいメニューの見出し”(本体の6.1.1)推奨事項への適合を判定するのに,分
析的評価を利用する。この例で“単純”とか“見分けやすい”は,判定によるべき事柄である。すなわち,
開始メニューへ戻る方法があるか,又はメニュー見出しがあるかは,観察で得られるが,しかし,単純で
あるか又は見分けやすいかを査定するのに専門家を必要とする。
分析的評価は,メニューシステムの関連する性質を判断するのに必要な技能及び経験をもつ適切な資格
者なら誰でも行うことができることは,この附属書の3.4で指摘した。適合の場合には,専門家は,メニ
ュー設計案の適切さと使いやすさを確実に判断するのに必要な技能と知識をももたねばならない。分析的
評価は,設計の筋道の正しさを検証できても設計結果を検証できないことを注意するとよい。結果の検証
は,経験的評価を使用してだけ行い得る。
5.5 経験的評価 経験的評価とは,代表的な最終利用者を用いての,推奨事項の適合を判定する試験手
続きの適用を指す。この附属書の3.5で述べたように,この方法は,試作品又は実際のシステムが利用で
き,予想される又は実際の利用者層を代表する利用者が得られる場合に最適である。多種の試験手続きを
使用できるが,どの場合でも,被験者は最終利用者集団を代表するもので,結果を利用者集団全体に向け
て一般化できるほど十分な人数とする必要がある。メニューシステムを利用している利用者の作業成績を
分析することによって,種々の条件付き推奨事項の適合を判定することもできる。例えば,メニュー選択
肢を見つけるのに時間がかかりすぎていれば,これは,自然な並べ方になっていないことを示している(本
体の5.1.1参照)。学習時間やキー入力時間,誤りを分析して,指示子が覚えやすいかを判定することがで
きる(本体の7.2.5参照)。そのような試験は,開発過程(例えば,手早く試作システムを作って)で行わ
れることも,システムの設計及び具体化の後(システム評価手法を用いて)で行われることもある。また,
主観的又は客観的な利用者データを基盤として行われることもある。ある推奨事項の適合を測る特別な試
験を計画することもある。例えば,キーボード文字指示子を決める規則が覚えやすいか判定するのに,習
熟性研究を計画することもある(本体の7.2.5参照)。
通常は,経験的評価を用いてそのテスト結果と,あるメニュー推奨事項とを比較し適合を判定する。し
かし,有効性の観点,すなわち,メニューシステムが作業能率を改善したり,難しい作業を少しでも容易
にしたり,できない仕事をできるようにしたりして利用者を支援するなどの観点から,テスト結果を評価
することもしばしば必要である。
6. 手順 あるメニューシステムをこの規格中の推奨事項に照らして評価する際に,次の手順に従って行
ってもよい。

――――― [JIS Z 8524 pdf 27] ―――――

26
Z 8524 : 1999
附属書A図1 決定の手順(評価の状況)
6.1 “もし の場合”型条件付き推奨事項
a) 適用可能性 条件付き推奨事項は,推奨事項の本文中に(例えば,本体の5.1.1),又は細分箇条の標
題部(例えば,本体の7.2)中に暗黙に,“もし―の場合”形条件をもつ。各条件付き推奨事項では,
if条件が成立するかを調べる方法として提案されている方法を用いて,“もし―の場合”形推奨事項が
適用できるかどうかを決める(例えば,本体の5.1.4では,資料的論拠,分析的評価,又は経験的評価
によって速い探索時間が重要か否かを決めることになる。)。また,本体の5.1.1,5.1.2及び5.1.3,若
しくは5.2.1及び5.2.2のように条件付き推奨事項が一つの組になっているとき,提案された方法によ
って適用できるアプローチを決定する。附属書A付表1のチェックリストには,論理和(“又は”)・
論理積(“及び”)を使って条件付き推奨事項の組合せ方を示している。

――――― [JIS Z 8524 pdf 28] ―――――

                                                                                             27
Z 8524 : 1999
b) 適合 a)によって適用すると決めたすべての推奨事項に対し,提案された方法によって適合の検討を
行う(例えば,本体の5.1.4が適用可能な場合には,分析的評価又は経験的評価手法を用いて,できる
だけ多数の選択肢とレベルが一つのメニューパネルに配置されているかどうかを判定する。)。
6.2 他の条件付き推奨事項
a) 適用可能性 “もし―の場合”形でない条件付き推奨事項は,一般にすべてのメニューシステムに当
てはまる。しかし,多くの推奨事項の箇条(例えば,本体の7.3)は,その特徴を採用している特定の
メニューシステムにだけ適用可能である。機能キーをメニュー選択に使用していれば,その箇条の条
件付き推奨事項は適用可能である(そして“もし―の場合”部分の適用可能性を,この附属書の6.1
と同様に決定する。)。
b) 適合 a)で適用可能性が決まった“もし―の場合”形でない条件付き推奨事項では,附属書の6.1b)
に述べたような推奨事項への適合についての情報が必要である。例えば,初期メニューに戻る簡単な
手段が用意されているか(本体の6.2.3)という点での適合を判定するのに,分析的評価と経験的評価
は適切な方法である。もし推奨事項に従わないそれなりの理由がある場合には,その理由と選択した
設計案は,この標準の使用者にとっての関心事である。
上に述べた手順を適用する手助けとして,チェックリストを附属書A付表1に記載する。さらにこの規
格の適用例を附属書Bに記載する。
7. チェックリスト
備考 この規格の利用者は,附属書中のチェックリストを,チェックリストの意図した用途に用いる
ために自由に複製してよいし,完成したチェックリストを刊行してもよい。
附属書A付表1のチェックリストは,この規格中の各条件付き推奨事項の適用可能性と適合を決定する
際に,メニューシステムの設計者や評価者の補助となるよう意図したものである。このチェックリストは,
この規格中のすべての条件付き推奨事項の縮約版を含み,適用可能性を決定するうえでの助けとなる論理
的構造を提供する。条件付き推奨事項の多くは,多数の代替的解決案が可能である。チェックリストは,
そのような相互依存性を“及び”,“又は”論理接続記号で表現している。これら接続記号は,箇条中の条
件付き推奨事項についてだけ示す(箇条には,その箇条に適用可能な度合いに対して固有の“及び”が付
けられているとみなす。)。ある場合には,複数を選択することも可能なため“及び/又は”が指定されて
いる。
7.1 チェックリストの説明
7.1.1 条件付き推奨事項の列 チェックリストの第1列は,縮約版の条件付き推奨事項を含み,論理接続
記号で結ばれ,細分箇条ごとに分かれている。各条件付き推奨事項には,細分箇条の番号が付けられてい
るので,使用者は,容易に各条件付き推奨事項の全文を当該細分箇条に見ることができる。
7.1.2 適用可能性の列 チェックリストのこの部分の初めの二つの列は,適用可能かどうかの結果を,
“可”,“否”列にチェックマークで示し記録するようになっている。さらに,各条件付き推奨事項に対し
て適用の可能性を調べるにはどの方法が適切かを示し,設計者,評価者が用いた方法にチェックマークを
付ける列を提供する。ある推奨事項の適用可能性を調べるのに適当しない方法の列に網掛けを施して,使
いやすくしてある。適用の可能性を調べる方法の記号は
− S=システム文書の分析
− D=資料的論拠
− O=観察

――――― [JIS Z 8524 pdf 29] ―――――

28
Z 8524 : 1999
− A=分析的評価
− E=経験的評価
− DM=その他の方法
他の方法を使用した場合は(DMにマークした場合)その方法を注釈列に記述してもよい。用いた方法
にマークを付けることは,このチェックリストでは随意とされていることを指摘しておく。
7.1.3 適合の列 チェックリストのこの部分は,各条件付き推奨事項に適合しているか決定するのに,ど
の方法が適切かを示し,設計者,及び評価者によって使われた方法にチェックマークを付ける列を用意す
る。適合しているかどうかの検査結果が,肯定的なら“適”列にチェック,否定的なら“否”列にチェッ
クする。
適合しているかどうかの検査方法の記号は
− M=測定
− O=観察
− D=資料的論拠
− A=分析的評価
− E=経験的評価
− DM=その他の方法
適用可能性と同様,他の方法を使用した場合は(DMにマークした場合),その方法を注釈列に記述する。
用いた方法にマークを付けることは,このチェックリストでは随意とされていることを指摘しておく。
7.1.4 注釈 注釈列は,各条件付き推奨事項に関する付加的な文や注釈を記入する。また,別の方法を使
用した場合,その方法の解説を記入したり,査定時の情報(専門家の名前,資料の表題など)を示すのに
も使ってもよい。ある状況では,別の方法が適切な場合もあるので,そのような独自の解決案を注釈列に
記入するとよい。この記述には,解決案がメニュー設計の推奨事項,及び該当する対話の原則にどのよう
に関連しているかを含めてもよい。
7.2 要約データ このチェックリストの使用者は,評価の結果を適合指数 (AR : Adherence Rating) を算
出することで要約できる。ARは,適用可能な条件付き推奨事項のうちの,適合しているものの割合であ
る(すなわち,“適”列のチェック数を“可”列のチェック数で割ったもの。)。AR値と一緒に,すべての
データ(すなわち,“適”の数と“可”の数)を報告することを強く推奨する。メニューシステムの複雑さ
によっては,システムの各メニューごとにチェックリストを記入し,各メニューのARを平均して,メニ
ューシステム全体の平均ARを決めたほうが有益であるかもしれない。しかし,メニューシステムのAR
は,算術的な計数値以上のものではなく,各項の重み(それ自体での,及び利用の状況下での)を考慮し
なければ,適用可能な推奨事項がどれほど適合しているかの信頼すべき測定値とはなり得ないことに注意
したほうがよい。

――――― [JIS Z 8524 pdf 30] ―――――

次のページ PDF 31

JIS Z 8524:1999の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9241-14:1997(IDT)

JIS Z 8524:1999の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8524:1999の関連規格と引用規格一覧