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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
附属書C(参考) 不均一な現実の大気の影響
この規格の本体では,“大気が音の伝搬経路に沿って一様である”,すなわち,“気圧及び気温並びに水蒸
気のモル濃度がそれぞれ単一の固定値で示される”と仮定している。この附属書では,不均一な現実の大
気中での音の伝搬における気象変数の変動の影響について考える。
C.1 高度による変化
表C.1に示す年平均水蒸気のモル濃度hm(単位 : パーセント)の垂直分布は,利用
できるデータの最善のもの (3) を用いて構築したもので,ISOの標準大気(ISO 2533参照)による,北緯
45度付近の中緯度地域の年平均気温Tm(単位 : ケルビン)及び気圧pm(単位 : キロパスカル)の垂直分
布とも矛盾なく対応する。次に示す式は,ジオポテンシャル高度H(単位 : キロメートル)が011km(対
流圏)及び1120km(成層圏)のそれぞれの範囲で,前記の気温及び気圧の垂直分布と適合するように定
めた式である。
a) 海面から11kmまでの範囲
Tm=Tms−6.5H (C.1)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(C.2)
hm=A0×10G1 (C.3)
ここに, G1= A1H+A2H2+A3H3+A4H4+A5H5A6H6
b) 11kmから20kmまでの範囲
Tm=216.65 (C.4)
pm=22.632×exp [−0.157 688 (H−11) ] (C.5)
hm=A7×10G2 (C.6)
ここに, G2= A8H+A9H2+A10H3+A11H4
Tms及びpms : 海面の高さにおける年平均気温 (288.15K) 及び気圧
(101.325kPa)
定数は,次のとおりである。
A0 : 1.00271 : A1=−0.12223 : A2=0.04546 : A3=−0.031545 :
A4=0.0076472 : A5=−0.00079906 : A6=0.000029429 : A7=1.8395×10−20 :
A8=5.44894 : A9=−0.60683 : A10=0.0283643 : A11=−0.000474746 :
表C.1に示す純音の空気吸収の減衰係数は,これらの大気のパラメータについて,本体式(6)によって計
算される厳密な中心周波数で,本体の式(3)(5)までを用いて求めたものである。表C.1から,すべての周
波数について年平均減衰値が高度と共に大きく変化していることが分かる。
――――― [JIS Z 8738 pdf 31] ―――――
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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
表C.1 気温,気圧,水蒸気のモル濃度及び空気吸収による純音の減衰係数の
中緯度平均海面上のジオポテンシャル高度に対する依存性
ジオポテ 減衰係数愀 一
ンシャル 気温 気圧 モル濃度
高度 周波数Hz
H, km Tm,K pm, kPa hm, % 63 125 250 500 1000 2000 4000 8000
0 288.15 101.325 1.002 71 0.12 0.43 1.18 2.30 4.06 9.53 30.48 109.03
0.5 284.90 95.461 0.887 02 0.13 0.44 1.10 2.02 3.81 10.04 34.01 121.27
1 281.65 89.875 0.793 85 0.14 0.43 1.00 1.79 3.70 10.76 37.76 132.05
2 275.15 79.495 0.609 35 0.15 0.40 0.79 1.53 4.02 13.61 48.49 151.09
3 268.65 70.109 0.435 13 0.15 0.34 0.66 1.65 5.41 19.26 61.61 143.83
4 262.15 61.640 0.302 50 0.14 0.29 0.70 2.27 8.03 25.81 60.50 99.20
5 255.65 54.020 0.211 67 0.12 0.30 0.96 3.38 10.87 25.46 40.67 58.97
6 249.15 47.181 0.144 86 0.14 0.43 1.48 4.68 10.62 16.26 21.95 37.47
7 242.65 41.061 0.088 43 0.22 0.74 2.14 4.16 5.66 7.17 11.55 28.53
8 236.15 35.600 0.043 22 0.43 0.90 1.26 1.48 1.82 3.05 7.89 27.19
9 229.65 30.742 0.016 46 0.26 0.30 0.33 0.42 0.77 2.16 7.69 29.72
10 223.15 26.436 0.005 95 0.10 0.11 0.13 0.24 0.64 2.23 8.57 33.82
11 216.65 22.632 0.003 80 0.06 0.07 0.10 0.21 0.67 2.51 9.81 38.87
12 216.65 19.330 0.002 74 0.05 0.06 0.09 0.23 0.77 2.91 11.46 45.49
13 216.65 16.510 0.002 01 0.04 0.05 0.09 0.25 0.88 3.39 13.40 53.24
14 216.65 14.102 0.001 60 0.03 0.05 0.09 0.28 1.02 3.96 15.68 62.32
15 216.65 12.045 0.001 44 0.03 0.04 0.10 0.32 1.18 4.63 18.34 72.95
16 216.65 10.287 0.001 47 0.03 0.04 0.11 0.36 1.37 5.41 21.47 85.41
17 216.65 8.787 0.001 68 0.03 0.04 0.12 0.42 1.60 6.33 25.13 99.99
18 216.65 7.505 0.002 07 0.02 0.05 0.13 0.48 1.87 7.40 29.42 117.06
19 216.65 6.410 0.002 57 0.02 0.05 0.15 0.56 2.19 8.66 34.44 137.05
20 216.65 5.475 0.882 93 0.02 0.05 0.17 0.65 2.56 10.14 40.31 160.45
備考1. 減衰係数は,式(C.1)式(C.6)までによって決まる気温,気圧及びモル濃度について計算された。
2. 愀 63Hz8000Hzの八つの推奨周波数に対応する31オクターブバンドの厳密な中心周波数について計算された。
C.2 局地的な変化
C.2.1 表C.1に示した,気圧,気温及び湿度の,平均値からの局所的な変化の様子は複雑である。これら
の気象条件の変動の影響が空気吸収に及ぼす影響は,次のようにまとめることができる。
C.2.2 海抜高度に対する気圧の変化が表C.1の気圧の値から±5%より大きくなることはほとんどない。気
圧が±5%変化しても減衰係数の変化は±5%未満である。したがって,実用的には,表C.1に示した気圧
の平均垂直分布からの偏差は通常の場合無視してよい。
C.2.3 高度が一定であっても気温及び水蒸気のモル濃度は,時間及び場所によって大きく変化する。例え
ば,地表面近傍での変化の幅は,表C.1に示された高度による変化の平均値に対する変化の幅にほぼ匹敵
する。その結果,空気吸収の減衰の計算では,計算を行おうとする時間,場所の気温及びモル濃度に関す
る局所的な情報が必要不可欠である。
しかし,通常の場合,気象情報は,地表面近傍の1点(地面からおおむね10mの高さであることが多い。)
で測定(又は予測)された時間平均値に限られている。この時間平均したデータが,ある特定の時刻にお
ける,地面に沿った音の伝搬経路の気象条件をどのように代表するかについての判断は,利用者の課題と
して残されたままである。
C.2.4 気象の情報が地表面近くのものに限られる場合には,次の二つの事実に着目するとよい。
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a) 本体の式(3)(5)までによって計算される空気吸収の挙動を支配する大気の変数は,水蒸気のモル濃度
である。
b) 地表近傍の接地境界層では風による大気循環の結果として大気混合が起きるため,通常,昼の時間帯
には水蒸気のモル濃度は,高さによらず一定であることが多い。
伝搬経路が大気混合層の十分内側にある場合は,モル濃度が大気混合層の上端の高さまで一定であると
仮定して,地表面近傍で測定した気象条件を用いて空気吸収の減衰を計算しても,多くの場合,実用的に
問題ない精度が得られる。混合層の厚さは,夜間の10m程度から夏の晴天の午後の1km程度までの範囲
で変化する。混合層の厚さが不明の場合は,ラジオゾンデで観測するか,又は専門家から情報を得ること
が望ましい。
C.3 層状大気への応用
C.3.1 純音
C.3.1.1 表C.1に示した平均の減衰係数から分かるとおり,その高さによる変化が極端に大きくなることが
あり,垂直又は斜め方向への長距離伝搬の空気吸収の減衰を計算する場合には,本体8.2.2に示した適用限
界を考慮しても,大気が均質であると仮定することは難しい。これによって大きな誤差を招くことを避け
るためには,大気を水平な層の重なりとしてモデル化することが望ましい。その場合の空気吸収の減衰の
計算手順を次に示す。
C.3.1.2 層状大気中を伝わる音の伝搬経路に沿って幾つか点を選び,その各点の気温T,気圧p及び水蒸気
のモル濃度hの値を設定する。これらの値は,測定するとき,又は表C.1を作るときに用いたような予測
モデルによって入手する。次に,選定した各点で,周波数fでの減衰係数を本体の式(3)(5)までを用いて
計算する。点の数 (n) は,伝搬経路に沿った減衰係数の連続的な変化が有限長の伝搬経路セグメントの集
まりでうまく近似できるよう,十分に大きくすることが望ましい。ただし,個々のセグメントは,音の波
長よりも十分長く,かつ,セグメント内では減衰係数が一定とみなせるように設定する必要がある。
C.3.1.3 伝搬経路全体にわたって総合した純音の空気吸収減衰 f) は,式(C.7)によって,n個のセグメン
トからの寄与を合成して求める。
n
Lt ( f ) [ (C.7)
i( f ) ][ si]
i 1
ここに, 愀椀 f) : i番目の経路セグメント(長さ 槿 の中間点における,周
波数fでの空気吸収の減衰係数の平均
C.3.2 N1オクターブバンドフイルタで分析した広帯域の音
C.3.2.1 不均一な大気の中を伝搬する広帯域の音の減衰は,本体8.1に規定する広帯域の音についての方法
とそれを補足するC.3.1の手順によって計算してもよい。
C.3.2.2 本体8.2に規定する純音計算法を用いる場合は,必然的に,C.3.1の手順を用いることになる。C.3.1.2
で用いる周波数fは,対象とするバンドについて,本体の式(6)で計算した中心周波数fmとする。このとき,
式(C.7)の fm) は,音源から受音点までの(又は逆に受音点から音源までの)伝搬経路について,空気
吸収によるバンド音圧レベルの減衰を総合した値を与える。
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C.3.2.3 附属書Dに記載のスペクトル積分法を用いる場合は,計算はもっと複雑なものになる。周波数の
離散的な関数である式(C.7)を用いて f) を求めるため,まず,各周波数帯域内の幾つかの周波数につい
てC.3.1の手順を繰り返し実行する。次に,附属書Dに記載されているように,得られた一連の純音の減
衰係数を式(D.1)に代入し,周波数上での積分を数値的に行って,音源から受音点(又は逆に受音点から音
源)までの伝搬経路全体にわたるバンド音圧レベルの減衰 受音点のバンド音圧レ
ベルが既知である,D.3に記載するケース2の場合には,純音の減衰係数を周波数の関数として求めなけ
ればならないが,通常,そのときの音の伝搬経路は非常に長いことが多く,この方法を適用することは難
しい。その理由は,本体8.1.2に規定するように,実際のバンドパスフィルタでは,通過帯域外の周波数で
の減衰が不十分であることに起因する誤差が大きいためである。
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1オクターブバンドフイルタで分析した広帯域の音の
附属書D(参考)
N
減衰を計算するスペクトル積分法
D.1
序文
D.1.1 この附属書は,N1オクターブバンド音圧レベルに適用できる,空気吸収の減衰を計算するためのス
ペクトル積分法について記載する。この方法は,本体8.2.2に示した条件にかかわりなく,様々な実際の状
況に適用できる。
D.1.2 この方法の利用者は,実用面上の限界があることを知っておく必要がある。すなわち,計算の実行
に時間がかかること,この方法で算出する減衰値から計算される(又は測定される)音圧レベルの中には
暗騒音及び計測器の電気的な雑音によって,又は使用する現実のバンドフィルタが理想と異なるために生
じる本質的な誤差(本体8.1.2参照)によって,市販される計測機器では測定できないものがあるかもしれ
ないことである。しかし,この附属書に記載する方法によれば,本体8.2で規定する近似的な純音計算法
に比べて複雑ではあるが,一段と精確な推定値を得ることができる。
D.1.3 この方法の一般的な特色を示すため,次の三つの事例について示す。ケース1は,音源位置でのバ
ンド音圧レベルが既知であるときに,音源から離れた受音点でのバンド音圧レベルを算定する場合である。
ケース2は,受音点のバンド音圧レベルが既知であるときに,それに対応する音源位置のバンド音圧レベ
ルを算定する場合である。ケース3は,音の伝搬経路の気象が特定の条件にあるときの受音点のバンド音
圧レベルが既知であるとして,同じ場所で気象条件が異なるときに測定されるであろうバンド音圧レベル
を算定する場合である。
なお,この附属書に記載する計算方法は,どんなケースの場合も空気吸収減衰だけを対象としており,
それ以外の機構による減衰は対象にしていない。
D.1.4 この附属書に記載する解析的な方法は,本体の式(6)に示すとおり,10のべきによる系でバンドパス
フィルタの中心周波数,上端周波数及び下端周波数を設定している。これを2のべきによる系で設定する
場合には,適宜,用いる式を変更する必要がある。
D.2 ケース1 : 音源の位置でのバンド音圧レベルが既知の場合
D.2.1 音源から受音点までの伝搬経路上で空気吸収の減衰を受けた後の,受音点RでのN1オクターブバン
ド音圧レベルLBR (fm) は,式(D.1)で計算される。
なお,このレベルは,基準音圧p0=20 湎豎 pを基準とするデシベル値である。
20
dB・・・・・・・・・・・・・(D.1)
02
ここに, Ls (f) : 音源位置での音の音圧スペクトルレベル pを基準とする
f
o
デシベル値,f0は基準の周波数幅1Hz
f) : 音源から受音点までの経路の全長について式(C.7)を用い
て計算される純音の空気吸収減衰,単位 : デシベル
fL及びfU : 実効的な下端及び上端の周波数,単位 : ヘルツ
f) : 音源と受音点の双方の信号の解析に用いるフィルタの相
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JIS Z 8738:1999の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 9613-1:1993(IDT)
JIS Z 8738:1999の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.140 : 音響及び音響測定 > 17.140.01 : 音響測定及び雑音除去一般