JIS Z 8738:1999 屋外の音の伝搬における空気吸収の計算 | ページ 8

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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
対減衰特性,単位 : デシベル
備考 周波数f,fL及びfULは,フィルタの各バンドについて対象とする周波数範囲全体にわたる積分
を実行する際に都合のよいように,厳密な中心周波数fmで基準化してもよい。その場合,厳密
な中心周波数は,式(6)で計算する。
D.2.2 音圧スペクトルレベル,純音の減衰値及びフィルタの相対減衰特性を,周波数の連続関数として解
析関数で表現できる場合,原理的には,式(D.1)を厳密な形で評価することができる。ただし,実際は,離
散的に与えられる周波数のところで指定される被積分関数の三つの要素の値を,適切な周波数範囲にわた
って数値的に合成することによって,積分を実行することが多い。
D.2.3 音源位置での音圧スペクトルレベルLs (f) は,通常,音源が所定の稼働状態にあるときの実効的な位
置について,測定又は予測で得たバンド音圧レベルLBS (fm) から算定することが多い。この規格の目的を
考えると,音源位置での音の音圧スペクトルレベルLs (fm) (単位 : デシベル)は,バンドパスフィルタそ
れぞれの中心周波数において,式(D.2)を用いて,対応する理想バンドパスフィルタの帯域幅についての補
正を差し引くことによって,推定してもよい。
dB・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(D.2)
なお,式(D.2)に出てくる,理想フィルタの帯域幅BWi(単位 : ヘルツ)は,式(D.3)によって与えられる。
3 3
BWi f2 f1 fm 10 20N10 20N (D.3)
ここに, f2及びf1 : バンドの上端周波数及び下端周波数
N : 本体6.4の備考に記載する帯域幅を表す指標
D.2.4 式(D.2)で示された手順は,音のスペクトルが連続,かつ,広帯域で離散周波数成分を含まない場合
に適用できる。それに対し,音のスペクトルが広帯域の音及び離散周波数成分を共に含む場合は,まず,
その複合スペクトルのそれぞれの成分について,本体8.4の方法を用いて減衰値を算定することが望まし
い。離散周波数成分については,本体6.の方法で減衰値を算定する。ただし,この場合は,算出されるバ
ンド音圧レベルから理想フィルタの帯域幅に関する補正値を差し引いてはならない。
D.2.5 スペクトルの広帯域成分については,相前後するバンドの中心周波数間の任意の周波数で音圧スペ
クトルレベルLs (f) を求めるために,線形補間して算出してもよい。ただし,音源位置でのバンド音圧レ
ベルのうち,一番周波数の低いバンドの値を算定する際に用いるフィルタの相対減衰特性の低周波側の遷
移帯域の周波数をカバーするため,その(一番周波数の低い)バンドの通過帯域下端周波数より下の周波
数での音圧スペクトルレベルを推定する特別なプロトコルが必要になる。同様に,一番周波数の高いバン
ドの音圧レベルを算定する際に用いるフィルタの相対減衰特性の高周波側の遷移帯域周波数をカバーする
ためにも,その通過帯域の上端周波数よりも上の周波数で音圧スペクトルレベルを推定する特別なプロト
コルも必要になる。
備考 実用的に興味の対象となる音源の大半においては,受音点の位置について計算される一連のバ
ンド音圧レベルのうち,周波数の低い方及び高い方から12のバンドの音圧レベルを省略して
も,受音点の周波数補正した音圧レベルを計算する上で,精度に大きな影響が及ぶことはない。

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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
D.2.6 音源から受音点までに至る音の伝搬経路の気象条件が一様であれば,本体の式(2)(5)までに示され
る手順を適用して,任意の周波数について純音の減衰 f) を計算することが簡単にできる。伝搬経路の
気象条件が一様でないときは,大気を水平な層の連続として表し,それぞれの層内では,気象条件が厚み
方向に平均した値として一様になっていると想定すればよい。次に,C.3.1に示した手順に従って伝搬経路
で生じる空気吸収による純音の減衰値を周波数ごとに算定し,各周波数バンド成分及び(存在する場合に
限られるが)離散周波数成分のそれぞれについて,式(D.1)の積分を実行する。
D.2.7 音源位置でのバンド音圧レベルを算定するために用いるフィルタの式(D.1)中の相対減衰特性△A (f)
は,受音点(のバンド音圧レベル算出)に用いるフィルタと同じものであることが望ましい。相対減衰特
性(すなわち,フィルタの減衰値から製造業者が指定する基準減衰値を差し引いたもの。)は,バンドごと
に実験して決めるか,又は製造業者から提供してもらうのがよい。又は選択したフィルタの設計上での相
対減衰特性を解析的に表現して式(D.1)の評価に用いてもよい。スペクトル分析器が内蔵するフィルタの相
対減衰特性の解析的関数表現については,フィルタの製造業者に問い合わせる。
D.2.8 式(D.1)の積分を評価するために指定しなければならない残りの事項は,数値積分における下端から
上端までの周波数範囲及び刻み幅である。
D.2.9 多くの場合,現実のフィルタでは相対減衰特性が対称ではない。組になっているN1オクターブバン
ドフィルタセットの中でもフィルタバンドごとに減衰特性は異なる。周波数の増加に対する減衰値の変化
の度合いは低周波側の遷移帯域(通過帯域から減衰の大きい阻止帯域へ移り変わる周波数の部分のこと。)
よりも,高周波側の遷移帯域において急激であることが多い。さらに広帯域の音を放射する音源の多くは,
可聴周波数範囲の低域及び中域周波数では音圧スペクトルレベルの傾斜が周波数に対して若干正であるか,
周波数とおおむね独立であるが,高周波数(1kHz程度以上)では広帯域音圧スペクトルの傾斜が負である
ことが多い。これらの理由によって,一般に式(D.1)の積分範囲は,次のように設定するのが望ましい。
1f
fL 1 及びfU=2f2 (D.4)
5
1オクターブバンドフィルタの基準下端周波数及び基準上端周波数は,10のべきによる系では,式(D.5)
N
で計算する。
203N 3N
f1 10 fm 及び f2 10 20fm (D.5)
なお,積分の範囲を式(D.4)に示したf1の5分の1からf2の2倍までという周波数範囲よりも広げること
が必要になるときもあるが,たいていはもっと狭い範囲で足りる。
D.2.10 積分する際の周波数刻みの大きさは,注意深く選択する方がよい(31オクターブバンドフィルタで
は,721オクターブが目安)。バンドパスフィルタの通過帯域周波数f1f2では,相対減衰特性がおおむね一
定であるため,31オクターブバンドフィルタの場合,周波数刻みの間隔をおおむね241オクターブバンドま
で広げてもよい。

D.3 ケース2 : 受音点の位置でのバンド音圧レベルが既知の場合

D.3.1 受音点のバンド音圧レベルが既知であり,その受音点から音源までの伝搬経路だけについて空気吸
収の減衰を考えるものとすれば,音源位置SでのN1オクターブバンド音圧レベルLBS (fm) (単位 : デシベ
ル)は,式(D.1)を修正した式(D.6)を用いて,計算することができる。
dB・・・・・・・・・・・・・・・(D.6)

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なお, f) の符号は,式(D.1)では負になっているが,この式(D.6)では,受音点から音源へさかのぼる
ときの音圧レベルの上昇を表すため,正になっている。
D.3.2 受音点の音圧スペクトルレベルを算定する際は,特に注意する。その理由は,バンド音圧レベルの
測定値に解析に用いるフィルタによってもたらされる誤差が必ず含まれるからである(本体8.1.2参照)。
D.3.3 受音点における音圧スペクトルレベルを近似的に算定する方法は,音源位置でのバンド音圧レベル
に対して式(D.2)で算定したのと同様に,理想フィルタの帯域幅の補正値を受音点のバンド音圧レベルから
差し引くことである。しかし,受音点位置の音圧スペクトルレベルの傾斜は,音源位置の場合に比べると,
はるかに急激に周波数と共に変化する。その傾向は,1kHzより高い周波数で特に強い。したがって,中心
周波数の間で任意の周波数での音圧スペクトルレベルを求める場合は,内挿する手順の選択について十分
注意深く配慮する。2kHz付近より高い中心周波数では,中心周波数間で音圧スペクトルレベルを線形補間
する方法は,適切でないかもしれない。受音点で測定された音のバンド音圧レベルのうち,一番高い中心
周波数のバンドの上端周波数より高い周波数,及び一番低い中心周波数のバンドの下端周波数より低い周
波数に対しては,音圧スペクトルレベルを外挿すべきではない。
D.3.4 受音点のバンド音圧レベルが長距離を伝搬した音を測定したデータであったり,吸音性の高い条件
下で測定したデータである場合,しばしば,高周波帯域のバンド音圧レベルの指示値が,測定器の電気的
な雑音の影響を受けていることがある。その場合,音源から放射された音響信号のバンド音圧レベルが正
しく測られていないことになり,音源位置のバンド音圧レベルを不正確に算出してしまうことを避けるた
め,雑音の影響を受けたバンド音圧レベルは解析から除外すべきである。又は,雑音の混入で失われたバ
ンド音圧レベルを,適切な外挿手順を用いて推定する。
D.3.5 受音点の音の音圧スペクトルレベル,及び伝搬経路における純音の空気吸収減衰の適切な推定値を
決めた後,音源位置のバンド音圧レベルが既知であるケース1の場合と同様の手順で式(D.6)の計算を行う。
ただし,推定した音圧スペクトルのレベルが,フィルタの低周波側遷移帯域(通常,高周波数のバンドで
ある。)について積分周波数範囲で負の傾斜をもち,その絶対値が,その低域側遷移帯域でのフィルタの相
対減衰特性の正の傾斜を超える場合には,バンド音圧レベルの計算を行うべきではない。

D.4 ケース3 : 音の伝搬経路下の気象条件が異なるときの空気吸収の減衰に換算する場合

D.4.1 ある受音点で気象条件1(例えば実験した日の条件)のときに測定したN1オクターブバンド音圧レベ
ルLBR1 (fm) を,気象条件2(例えば,基準気象条件)のときのバンド音圧レベルLBR2 (fm) に換算する場合
は,式(D.7)を用いてもよい。
fU
Lt1 ( f )
[1.0LR 1 ( f ) A( f ) ]
Lt2 ( f )
10 df
fL
10 log10
LBR 2 ( fm ) dB (D.7)
f0
ここに, LR1(f)及び f) : 気象条件1のときの受音点の音圧スペクトルレ
ベル及び純音の空気吸収減衰
f) : 気象条件2のときの純音の空気吸収減衰
D.4.2 式(D.7)の積分を評価する手順は,ケース1及びケース2の評価を行う場合と同様にして必要な入力
が与えられた後に実行する。その場合,D.3.4及びD.3.5に記載した事項に特別に注意を払う必要がある。

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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
附属書E(参考) A特性音圧レベルの減衰計算の例
E.1 本体8.3に規定する計算の方法を明確にするため,トラック又は乗用車が高速走行する幹線道路近傍
から500m離れた場所で等価騒音レベルを推定する問題を考える。音源の騒音レベルは,距離15mの点に
おけるオクターブバンド音圧レベルの長時間の平均で与えられる。気温は15℃,相対湿度は50%,気圧は
1基準気圧とする。
E.2 500m地点における等価平均オクターブバンド音圧レベルLp, 500は,15m地点における等価平均オクタ
ーブバンド音圧レベルLp, 15から,式(E.1)によって求める。
Lp, 500=Lp, 15− 愀 (E.1)
ここに, 愀 厳密な中心周波数での空気吸収の減衰係数,単位 : デシベル
毎メートル
s : 音の伝搬距離,単位 : メートル
: 空気吸収以外の機構による減衰,単位 : デシベル
E.3 (距離減衰,地表面効果などの)空気吸収以外の機構による減衰を,周波数に関係なく,30.5dBと仮
定する。減衰係数は,本体の式(3)(6)までを用いて計算することも可能であるが,与えられた気温,相対
湿度及び気圧の値について本体の表1から読みとってもよい。伝搬経路長(単位 : キロメートル)は式(E.2)
によるものである。
(500 15)
s .0485 km (E.2)
1 000
E.4 計算手順は,表E.1のように進める。
E.5 表E.1の最後の列に示してある,二乗平均したA特性オクターブバンド音圧をパワー合成して常用対
数を取ると,距離500mの地点の等価騒音レベルの推定値51.8dBが得られる。ただし,この計算では,本
体8.2.2に規定の距離及び周波数に関する条件を満たさないという理由で500m地点の4kHzと8kHzでの
オクターブバンド音圧レベルを計算から省いた。これらのバンドは計算可能であっても,極めてレベルが
低く,等価騒音レベルへの寄与は無視できる程度にとどまると思われる。
表E.1 減衰の計算
f Lp, 15 愀 ats Lp, 500 A weightings LpA,500
Hz dB dB dB/km dB dB dB dB
31.5 75 75 0 0 44.5 −39.4 −5.1
63 80 30.5 0.1 0 49.5 −26.2 23.3
125 83 30.5 0.5 0.2 52.3 −16.1 36.2
250 84 30.5 1.3 0.6 52.9 −8.6 44.3
500 83 30.5 2.2 1.1 51.4 −3.2 48.2
1000 79 30.5 4.2 2.0 46.5 0 46.5
2000 74 30.5 10.1 4.9 38.6 +1.2 39.8
4000 70 30.5 36.2 17.6 − +1.0 −
8000 62 30.5 129.0 62.6 − −1.1 −
備考 減衰係数は,近似値として与えられ,基準のA特性は,IEC 60651で定められる。

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Z 8738 : 1999 (ISO 9613-1 : 1993)
附属書F(参考) 参考文献
[1] IEC 60651 : 1979, Sound level meters
[2] LETESRU, S. (ed. ) nternational Meteorological Tables, WMO-No.188. TP94, Geneva, Switzerland : World
Meteorological Organization
[3] VALLEY, S. L. (ed. ) andbook of Geophysics and Space Environments, Office of Aerospace Research, U. S.
Air Force, 1965, pp.3-31 to 3-37

JIS Z 8738:1999の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9613-1:1993(IDT)

JIS Z 8738:1999の国際規格 ICS 分類一覧