JIS Z 8825:2013 粒子径解析―レーザ回折・散乱法 | ページ 5

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か解析する。すなわち,散乱光の,
a) 角度依存性
b) 強度依存性
c) 波長依存性
d) 偏光の影響
を測定に用いる。これらの影響を,装置,場合によっては独立に又は複合的に解析する。
大きな球形粒子の散乱光強度は,粒子の幾何断面積に比例する。
非球形粒子の場合に,その散乱パターンを正確に計算してこれを粒子径解析に用いることはいまだ研究
段階である。
球形粒子はその直径だけで完全に特徴付けられるので,現在のレーザ回折・散乱装置では,球を仮定し
た散乱パターンを基にして,粒子径分布を測定・算出している。このため,不規則形状粒子の測定結果は,
他の測定手法による結果とは同じにはならない。各不規則形状粒子は配向によって断面積が異なり,散乱
パターンも異なる。不規則形状粒子の測定結果は,その散乱パターンが最もよく一致する粒子径分布をも
つ球形粒子として表される。JIS Z 8819-1は,球等価粒子径として表現する慣例を認めている。
大きい粒子においては,散乱光は直径xの2乗に比例して増加する。一方,波長よりも十分小さい粒子
(粒子径x<λ / 10,レイリー領域)では,散乱光は直径xの6乗に比例する。
A.4 光散乱理論
(参考文献[6-10]参照)
レーザ回折・散乱“スペクトル”から粒子径分布への変換については,次の二つの主要操作が重要であ
る。第一に均一粒子の光散乱パターンを与える数学モデルであり,次に測定された散乱パターンから粒子
径分布への逆演算である。
光学的に均一で単一球形粒子による偏光していない入射光に対する散乱光強度の角度方向分布は,次の
式で表すことができる。
I0 2 2
I 2 2 S1 S2 (A.1)
2k la
ここに, k : 媒質中の波数
la : 散乱体から検出部までの距離
I0 : 入射光強度
S1(θ),S2(θ) : 一般的に散乱理論から求められる無次元複素関数で,
散乱角θの関数として,それぞれ垂直偏光及び水平偏
光の入射光強度で規格化された振幅を表す(振幅の2
乗が光強度に対応する。)。
1908年,グスタフ・ミーは,定義された境界条件のマクスウェル方程式を解くことによって,既知の波
長をもつ無限平面波に既知の光学的性質をもつ均質な球が照射されるときの光散乱特性を求め,複素関数
のS1(θ) 及びS2(θ) を示した。このミー理論は,全ての大きさの球に有効な厳密解を与える(参照文献[6-8])。
この理論を使用するときの前提は,次による。
a) 全ての粒子が,光学的に均一で,等方性で,球体である(ほかに,均一被覆球のように,解の求まる
特殊な形状,条件もある。)。
b) 粒子は既知の波長の平面波によって照射される。
c) 粒子及び分散媒の屈折率の実数部及び虚数部が既知である。

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d) 粒子表面に電荷又は電流がない。
粒子の散乱パターンは振幅,波長及び偏光に依存して360°全方向で計算できる。これらの関数S1(θ),
S2(θ) 及びI(θ) を,実際にコンピュータで計算するためのアルゴリズムが開発されている(参考文献[10])。
この理論に基づく計算をきちんとするには,光学的特性である粒子の複素屈折率(実数部及び虚数部の
両方を含む),及び分散媒の実数部屈折率が必須である。ただ,これらの情報は簡単には得られない場合が
多い。特に,屈折率の虚数部の値は光の波長に強く依存することが多く,更に,例えば,表面粗さのよう
な粒子特有の表面構造の効果を表すための有限値を加える場合もある。
フラウンホーファ回折近似は,粒子径測定に用いられた最初の光学的モデルである。それは薄い金属板
の開口部を通過した既知波長の平面波について定式化された。バビネの原理によれば,円形開口による回
折パターンと,同じ直径をもつ完全に不透明な円盤による回折パターンは完全に一致する。レーザ回折・
散乱法にこの近似を用いる仮定は,次による。
1) 粒子は光を完全に吸収する。すなわち,粒子の輪郭での回折だけが考慮されている。
2) 全ての粒子が円形断面をもつ(ただし,他の規則的な形状についても計算は可能である。)。
3) 粒子は既知の波長の平面波に照射される。
4) 前方小角範囲の回折だけが考慮されている(θが小さい)。
5) >> λ
小さい粒子,例えば,フラウンホーファ回折近似での範囲を超えた粒子の場合は,粒子径分布を求める
際の計算誤差を防ぐために物質の光学的特性の正確な値が不可欠になる。
フラウンホーファ回折近似では,偏光及び粒子透過光は考慮しないので,粒子屈折率の値を必要としな
い。
こうした近似に対して,次の式が成り立つ,
愀 sin
S12 S22 4 1
(A.2)
sin
上記の一般式(A.1)は,次の式のように簡略化される。
I0 4 J1 sin
I (A.3)
k2 la2 sin
ここに, α : 無次元粒子径パラメータ,α=πxnm / λ
J1 : 一次の第一種ベッセル関数
注記 大きな角度に適用するときは,式(A.3)の右辺に更に項 (1+cos2θ) / 2を乗じる(参考文献[34])。
この式(A.3)の利点は,散乱体の光学的特性に関する情報を必要としないという点で比較的簡単なことで
ある。そのため,光学的性質が未知若しくは変化する材料である場合,又は異なる材料の混合物であるよ
うな場合にしばしば用いられている。実際にはこの近似は,大粒子(直径が波長より大きい場合,すなわ
ち,α >>1のとき)に対して適用可能である。一方,小粒子(フラウンホーファ回折近似の適用範囲を超
える粒子)の場合には,粒子径計測誤差を避けるために粒子の光学的性質を把握することが不可欠になる。

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A.5 光学モデルの選択
最近の装置では,一般的にはフラウンホーファ回折近似又はミー理論を用いて球形粒子の粒子径を算出
する。前記のように,粒子径の大きさが比較的大きくない場合には,二つのモデルの結果は異なる。適切
な光学モデルを選択する上で測定試料の光学的特性を考慮すべきである。粒子径が50 μmより大きく相対
屈折率が1.2よりも大きな粒子については,ミー理論とフラウンホーファ回折近似とは同様な結果になる
ので光学的特性は必要ない。
a) 透明粒子
b) 不透明粒子
記号
Np : 粒子の複素屈折率
計算条件 : 分散媒屈折率 nH2O=1.33,波長 λ=633 nm
図A.2−ミー理論に基づく粒子径,屈折率による消散係数の変化

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ミー理論は,光学的特性が既知の等方性で均質な球形粒子の全ての粒子径に対して,散乱パターンの全
領域について厳密な解を与える。また,光散乱への振幅,波長,及び偏光の影響も計算できる。
フラウンホーファ回折近似は,粒子径が光の波長より大きく,及び/又は不透明な粒子に適用され,粒
子の光学的特性は必要としない。また,前方小角散乱(散乱角が小さい領域)だけに適用され,偏光及び
粒子を透過する光は考慮しない。
図A.2 a) に透明粒子,図A.2 b) に光吸収のある不透明粒子に対する消散係数をミー理論によって計算
した結果を示す。フラウンホーファ回折近似ではこれは全粒子径に対して一定値2になる。
これらのグラフは,約50 μm以上の透明粒子,及び,約2 μm以上の不透明粒子(nIp>0.2)の場合には,
ミー理論及びフラウンホーファ回折近似が一致することを示している。粒子径が250 μmにおいては,
二つのモデルが一致するかどうかは屈折率の実数部及び虚数部の値に依存する。二つのモデルが一致しな
い範囲については,厳密解であるミー理論は50 μm以下(大きさは複素屈折率に依存)の粒子径領域で消
散係数が大きく変動する。また,両グラフはサブミクロン領域で消散係数が急激に減少することを示して
いる。
a) 粒子径3 μm
b) 粒子径100 μm
計算条件 : 分散媒屈折率 nH2O=1.33,波長 λ=633 nm,粒子屈折率 Np=1.59−0.0i
図A.3−フラウンホーファ回折近似及びミー理論に基づく透過粒子の散乱パターンの比較

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図A.2は,約50 μm以下の粒子において,測定試料の光学的特性に依存し,得られる粒子径分布に誤差
が生じることを示している。散乱パターンについても,粒子径又は屈折率によって,二つのモデルが一致
する領域,及び一致しない領域が,同様に存在する。図A.3 a) に3 μm,図A.3 b) に100 μmの透明粒子
について,ミー理論及びフラウンホーファ回折近似から得られる散乱パターンを示す。
粒子径,屈折率の実数部及び虚数部(吸収項)を考慮し,二つのモデルのいずれかを選択する。最小粒
子径が約50 μm以上の粒子径分布をもつ粒子群に対して,フラウンホーファ回折近似及びミー理論に基づ
く結果は通常とてもよく一致する。250 μmの粒子に対して,二つのモデルの一致の程度は,複素屈折率
に強く依存する。不透明な粒子ではよく一致し,透明な粒子では一致しない。小さい粒子の場合は,ミー
理論を用いるのがよい。ミー理論を適用する場合,測定試料の光学的特性がよく知られている必要がある。
この点についての検討及びさらなる測定が必要になる場合もある。
適用した理論モデル及び光学的特性が妥当であるかどうかは,得られた粒子径分布から計算した試料濃
度と実際の濃度とを比較することで一定程度判断できる。光学モデル又は用いた屈折率のいずれかが適切
でないときに,大きな差が生じる。また,他の技術(例えば,顕微鏡,又は沈降法)を用いて,小粒子径
の粒子が測定結果に影響を与えるほど含まれているかどうかを確認することができる。ただし,1個の粗
大粒子と同等の体積になるには,非常に多くの個数の小粒子が必要となる点に注意する必要がある。
A.6 散乱光の検出
様々なサイズの単一粒子について,散乱光強度の角度変化を図A.4に示す。
記号
x : 粒子径
計算条件 : 分散媒屈折率 nH2O=1.33,波長 λ=633 nm,粒子屈折率 Np=1.59−0.0i
図A.4−ミー理論に基づく散乱パターン(単一粒子)
単一粒子において粒子径0.1 μm及び粒子径100 μmの粒子の散乱光強度のダイナミックレンジ(強度比)
は,約1013である。このダイナミックレンジは,現在使われている検出器に対して非常に大きい。体積は
粒子径xの3乗に比例するので,体積基準の散乱光強度を用いることでダイナミックレンジを小さくでき

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