JIS Z 8829:2021 粒子径解析―粒子軌跡解析(PTA)法

JIS Z 8829:2021 規格概要

この規格 Z8829は、粒子軌跡解析法(粒子トラッキング解析法,PTA法)を用いて,液体中に分散した固体,液体又は気体の粒子の自己拡散を解析することによって,個数基準の粒子径分布を評価する方法について規定。

JISZ8829 規格全文情報

規格番号
JIS Z8829 
規格名称
粒子径解析―粒子軌跡解析(PTA)法
規格名称英語訳
Particle size analysis -- Particle tracking analysis (PTA) method
制定年月日
2021年3月22日
最新改正日
2021年3月22日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

ISO 19430:2016(MOD)
国際規格分類

ICS

19.120
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
2021-03-22 制定
                                                                                   Z 8829 : 2021

pdf 目 次

ページ

  •  序文・・・・[1]
  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[1]
  •  3 用語及び定義・・・・[1]
  •  4 記号及び略語・・・・[2]
  •  5 原理・・・・[3]
  •  5.1 一般事項・・・・[3]
  •  5.2 解析に必要な値・・・・[4]
  •  5.3 測定範囲・・・・[4]
  •  5.4 測定精度及び不確かさ・・・・[6]
  •  6 装置・・・・[9]
  •  6.1 一般事項・・・・[9]
  •  6.2 試料セル(液中分散した試料)・・・・[9]
  •  6.3 レーザ(又はレーザ以外の光源)・・・・[9]
  •  6.4 光学顕微鏡・・・・[9]
  •  6.5 デジタルビデオカメラ・・・・[9]
  •  6.6 追跡用及びデータ処理用コンピュータ・・・・[10]
  •  7 手順・・・・[10]
  •  7.1 一般事項・・・・[10]
  •  7.2 試料調製・・・・[11]
  •  7.3 測定装置の設定及び初期設定・・・・[11]
  •  7.4 測定・・・・[12]
  •  7.5 結果の評価・・・・[13]
  •  8 測定系の適格性の確認及び管理・・・・[14]
  •  8.1 一般事項・・・・[14]
  •  8.2 装置の設置における要求事項・・・・[14]
  •  8.3 装置の保守・・・・[14]
  •  8.4 装置の運転・・・・[15]
  •  8.5 測定装置の適格性確認・・・・[15]
  •  9 データ記録・・・・[16]
  •  10 試験報告書・・・・[17]
  •  附属書A(参考)理論・・・・[19]
  •  附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表・・・・[22]

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Z 8829 : 2021

まえがき

  この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本粉体工業技術協会
(APPIE)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべ
きとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

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                                       日本産業規格                             JIS
                                                                              Z 8829 : 2021

粒子径解析−粒子軌跡解析(PTA)法

Particle size analysis-Particle tracking analysis (PTA) ethod

序文

  この規格は,2016年に第1版として発行されたISO 19430を基とし,規格利用者の利便性を図るため,
技術的内容及び構成を変更して作成した日本産業規格である。
  なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
技術的差異の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。

1 適用範囲

  この規格は,粒子軌跡解析法(粒子トラッキング解析法,PTA法)を用いて,液体中に分散した固体,
液体又は気体の粒子の自己拡散を解析することによって,個数基準の粒子径分布を評価する方法について
規定する。
  注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
        ISO 19430:2016,Particle size analysis−Particle tracking analysis (PTA)   ethod(MOD)
          なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”こと
        を示す。

2 引用規格

  次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
  この規格の基としたISO 19430には,引用規格が規定されていないが,この規格では次に示すJISを引
用する。その注記にJISの対応国際規格を記載する。
    JIS Z 8819-1 粒子径測定結果の表現−第1部 : 図示方法
      注記 対応国際規格における引用規格 : ISO 9276-1,Representation of results of particle size analysis−
            Part 1: Graphical representation
    JIS Z 8819-2 粒子径測定結果の表現−第2部 : 粒子径分布からの平均粒子径及びモーメントの計算
      注記 対応国際規格における引用規格 : ISO 9276-2,Representation of results of particle size analysis−
            Part 2: Calculation of average particle sizes/diameters and moments from particle size distributions

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。

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Z 8829 : 2021
  ISO及びIECは,標準化に使用する用語データベースを次のアドレスで維持している。
− ISO Online browsing platform: http://www.iso.org/obp
− IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
3.1
光散乱(light scattering)
  異なる光学的な特性をもつ二つの媒体界面において起きる光の伝ぱの変化
  (出典 : JIS Z 8890:2017,10001)
3.2
蛍光(fluorescence)
  励起後,約10−8 s以内しか持続しないルミネセンス
  (出典 : JIS Z 8120:2001,01.01.11)
3.3
ルミネセンス(luminescence)
  熱放射以外の放射で,放射,電気などのエネルギーを吸収して物質が励起状態となった後に,吸収した
エネルギーを放射の形で放出する現象
  注釈1 ルミネセンスには蛍光,りん光などがある。
  (出典 : JIS Z 8120:2001,01.01.10)
3.4
流体力学径(hydrodynamic diameter)
  液体中の実粒子と同一の拡散係数をもつ液体中の球形粒子の直径(球相当径)
  (出典 : ISO/TS 80004-6:2013,3.2.6)

4 記号及び略語

  この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。
 CCD         電荷結合素子
 CMOS        相補型金属酸化物半導体
 CV          変動係数(標準偏差を算術平均値で割ったもの)(ISO 27448:2009,3.11)  %
 Dx          一次元の並進拡散係数                                                  m2/s
 Dxy         二次元の並進拡散係数                                                  m2/s
 Dxyz        三次元の並進拡散係数                                                  m2/s
 η          分散媒の粘度                                                          Pas
 nsteps      各粒子の軌跡のステップ数(各粒子が連続して観察されているフレーム数)
 T           絶対温度                                                              K
 t           時間                                                                  s
 X           流体力学径                                                            m
 X50,0       中位(メジアン)径 : ここでは個数基準である。すなわち,粒子の個数で50 %m
             がこの径より小さく,50 %が大きい。
 X10,0       積算粒子径分布の10 %に対応した粒子径(個数基準)                      m

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                                                                                   Z 8829 : 2021
 X90,0       積算粒子径分布の90 %に対応した粒子径(個数基準)                      m
 XPTA        個数基準平均粒子径                                                    m
    2
 ()   x         一次元の平均二乗変位                                                  m2
      2
  xy
 (,)         二次元の平均二乗変位                                                  m2
        2
  xyz
 (,,)        三次元の平均二乗変位                                                  m2

5 原理

5.1 一般事項

  PTA法は,液体中に分散した粒子の光散乱,蛍光などの光学現象及び粒子のブラウン運動を利用して,
粒子径分布を測定する方法である。試料を光照射(一般的には可視領域の波長のレーザビームによる。)す
ると,粒子の屈折率と周囲の媒体の屈折率との差異によって光散乱が生じる。複数の粒子からの散乱光は,
拡大機構をもつ光学系(例えば,顕微鏡)によって,個々の光点として観察される。一方,粒子が蛍光を
発する場合には,試料を光照射[一般的には,400 nm(紫)から650 nm(赤)までの波長のレーザビーム
による。]することによって,光散乱現象と同時に蛍光が生じ,複数の粒子からの蛍光を拡大光学系を用い
て散乱光同様に個々の光点として観察される。それらの光点は,電荷結合素子(CCD)カメラ又は相補型
金属酸化物半導体(CMOS)カメラのような適切な検出器を用いることで,画像として観察される。光点
の時間的な動きを一連の連続した画像として記録(ビデオキャプチャ)することで,ソフトウェアによっ
て個々の粒子の位置の時間経過に応じた連続的な変化(軌跡)の解析が可能である。
  注記1 ナノ粒子トラッキング解析(NTA)法という用語が,歴史的な経緯によって,PTA法を表すた
          めに使用される場合もある(例えば,ASTM E2834-12:2012[1])。PTA法はナノ粒子(ISO TS 80004-
          1:2015,2.4)だけでなく広範囲の粒子径をカバーする。NTA法は,PTA法の一部ともいえる。
  ランダムなブラウン運動をする個々の粒子の軌跡を,フレームからフレームへと追跡することによって,
単位時間当たりの粒子の平均二乗変位(位置の変化)を計算することが可能であり,この変位は,ストー
クス−アンシュタインの式によって粒子の流体力学径に関連付けられる。粒子の移動,すなわち,並進ブ
ラウン運動は三次元の移動であるが,一次元,二次元又は三次元の拡散係数を用いて粒子流体力学径を求
めることが可能である。附属書Aに理論の詳細を示すが,次の式(1)式(3)で要約することが可能である。
  注記2 この規格では,“フレーム”は,ビデオキャプチャによって得られる瞬間的な静止画像を意味す
          る。
                                   2kTt
                          x2
                         ()   Dtx
                                     B
                                           (1)
                                   3πX
                                     4kTt
                          xy 2
                         (,)    Dt
                                 xy
                                       B
                                             (2)
                                     3πX
                                        2kTt
                          xyz 2
                         (,,)    Dtxyz
                                          B
                                               (3)
                                        π X
                 2
  平均二乗変位 ()   xは,x方向及びy方向において独立して測定される可能性があり,粒子径について二
                                                                       2
                                                                   xyから,式(2)に示す関係を
つの独立した値が求められる[式(1)]。ほとんどのPTA法測定装置では,(,)
用いて粒子径を評価する。三つの式のいずれにおいても,粒子は二次元的に運動するとは想定されていな
いことに留意する必要がある。三次元の自由運動をしている粒子を,xy観察平面上へ二次元的に射影した
像が観察される。附属書Aに示すように,粒子の運動ベクトルのx方向,y方向及びz方向の成分は独立

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Z 8829 : 2021
変数である。
  光散乱では,照射光と散乱光との波長が同一なのに対して,蛍光では照射光と異なる波長の光が観察さ
れる。光散乱が,屈折率が周囲の媒体とは異なる全ての物質で構成される粒子で生じるのに対し,蛍光は
蛍光発光する限られた物質で生じる。蛍光で特定の粒子(特定の物質で構成される粒子又は特定の物質が
付着した粒子)を区別することも可能で,ある種の用途には有用な方法であるが,この規格の次以降の箇
条では,光散乱現象を用いる一般的な粒子軌跡解析法について規定する。
  注記3 蛍光を用いる場合には,蛍光強度の粒径依存性は,光散乱強度の粒径依存性と異なるため,測
          定粒径範囲は,5.3に示す測定範囲とは一致しない。

5.2 解析に必要な値

  式(1)式(3)は,粒子の自己拡散係数の測定値に基づいて流体力学径を算出するには,温度及び粘度が既
知でなければならないことを示している。

5.3 測定範囲

5.3.1  一般事項
  他の測定手法と同様,PTA法では測定可能な粒子径及び粒子数濃度範囲に限界がある。これらの限界は,
粒子を構成する物質,分散媒及び粒子径分布の多分散性に大きく依存する。一般的なPTA法測定装置は,
約10 nm約2 μmの粒子径の範囲に適用可能であるが,これらの上限及び下限は,試料の性状のほかにも
使用する光学系(CCD,レーザ波長,レーザ強度など)を含む装置の設定及び性能に依存する。
5.3.2  測定可能な最小粒子径
  測定可能な最小粒子径は,粒子の光散乱を有意に観察できるか否かによって決まる。粒子を構成する物
質と分散媒との屈折率の比が,粒子を光点として追跡するための散乱光量に影響を及ぼす。屈折率の比が
大きいと,散乱光が強くなるため,入射光強度,光源波長,検出感度など装置固有の条件が同じであって
も,測定可能な最小粒子径は小さくなる。
  粒子の計数には,一般的には,有意に観察された連続的な軌跡が用いられる。計数の精度は,5.4.4に規
定する。
  試料の多分散性は,粒子を有意に追跡できるか否かに影響し,そのため個数基準粒子径分布における粒
子径区間に含まれる粒子数濃度の測定精度及び測定の不確かさに影響する。基礎となる散乱光量の粒径依
存性が,ビデオキャプチャ及び画像解析における識別可能な信号の最小値と最大値との比率(ダイナミッ
クレンジ)と関連する。多分散試料では,大きな粒子の散乱光は,小さな粒子の散乱光よりもはるかに強
いため,小さな粒子を検出し追跡することが困難になる。表1の値は,単分散試料について得られたもの
である。単分散球形金粒子の分散液の場合,最小粒子径は,典型的には15 nmであるが,約10 nm約20
nmの範囲となることもある。
  一般的に使用される粒子分散液(粒子と分散媒との組合せ)の検出下限粒子径を,次に示す。

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                                                                                   Z 8829 : 2021
                       表1−測定可能最小粒子径(水中,単分散粒子分散液)
                                                                     単位 nm
                          粒子の材質         おおよその検出下限値(流体力学径)
                   金                                       15
                   ポリスチレン                             45
                   シリカ                                   75
                   生体物質                                 60
                   その他の金属又は金属酸化物               25
  試料及び測定条件が検出限界に及ぼす全般的な影響については,5.3.35.3.6に示す。表1に示した値は,
室温の水に分散した場合の典型的な値である。これらはおおよその値であり,シリカの場合は多孔度によ
って,又は生体物質の場合は種類などの要因に応じて変化する可能性がある。
5.3.3  測定可能な最大粒子径
  他の測定法と同様,PTA法では測定可能な粒子径及び粒子数濃度範囲に限界がある。測定可能な最大粒
子径は,粒子径の増大に従って粒子のブラウン運動速度が遅くなることによって制限される。大きな粒子
の動きは遅いため,長い観察期間が必要となる可能性がある。また,非常に大きな粒子は,同じ多分散試
料中のより小さな粒子を追跡できないほど強い散乱を生じ,フレア(観察光学系に向け極めて明るい光が
当たる際に生じる,暗部への光漏れ)を生じさせる可能性がある。
  粒子と分散媒との密度差及び/又は粒子径が非常に大きければ,沈降又は浮上によって分離することが
ある。こうした影響は,PTA法測定において常に考慮しなければならない。
5.3.4  試料及び試料採取量
  多くの用途において,PTA法測定に用いる試料の体積及び観察領域の体積(観察領域内の試料液体の容
量)についての知識が重要な場合がある。一般的なPTA法測定装置では,測定のために約1 mLの試料が
必要になる。
  試料の観察領域への供給方法及びサブサンプリングの方法は測定装置の型式によって異なるが,一般的
な装置では観察領域の体積は,約0.1 nL1 nLの範囲である。横方向(観察面方向)には,システムの視
野によって典型的には100 μm×100 μmの範囲に制限される。視野の中で,粒子が光点として識別可能な
像を結ぶ長さの範囲(実効的な被写界深度)内に入る粒子が,観察される。観察領域の,縦方向長さ(観
察面に直行する長さ,深さ)は,この被写界深度,照射レーザ光の観察面に直行する方向のビーム径,及
び観察粒子の散乱効率によって制限される。この値は典型的には10 μm程度である。100 μm×100 μm×10
μmとすると,観察領域の体積は0.1 nLとなる。より大きな視野をもつ又はより低い倍率の光学系の場合
には,観察領域の体積はより大きくなる。
  注記1 JIS B 7440-7の3.3(視野)に定義されているように,“視野”は,画像検出系によって取り込ま
          れる画像領域である。
  注記2 実効的な被写界深度は,光点の強度光学系,撮像装置,及び粒子の追跡と軌跡の解析とを行う
          ソフトウェアに依存する。粒子が大きい,照射光強度が大きいなどによって,散乱光量が大き
          くなり,光点の強度が大きくなるほど,被写界深度は深くなる。また,レーザ光のビーム径が
          大きくなるほど拡大光学系のレンズの焦点距離が短いほど深くなり,絞りを絞る(F値が大き
          い)ほど深くなる。さらに,撮像装置のダイナミックレンジが大きいほど,又はソフトウェア
          を含めたシステム全体の識別性能が高いほど,深くなる。

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Z 8829 : 2021
  試料の代表値を測定するためには(特に低粒子数濃度では),試料採取量を増やす必要がある。フローセ
ルを用いて試料を流しながら測定する方法,又は測定セル中に複数の観察領域を設けて,同一試料の複数
部分を測定する方法は,試料採取量を実質的に増加させるための有効な手段である。
5.3.5  最大粒子数濃度
  試料を調製する場合又は既存の試料への適用可能性を評価する場合には,粒子数濃度の限界を考慮しな
ければならない。この細分箇条では,粒子数濃度の観点からPTA法の限界について規定する。この規格に
おいて規定される濃度は,測定の原理に基づいて,全て,モル濃度又は質量濃度ではなく,粒子数濃度で
ある。試料調製の段階においては,適切な変換,例えば,粒子質量濃度から粒子数濃度への適切な変換を
行い,濃度を調整することが可能である。PTA法は,高度に希釈された試料を必要とし,最適な粒子数濃
度は試料に依存する。適切な粒子濃度は,一連の多段階希釈の予備試験によって評価することが望ましい。
試料濃度に関してあらかじめどの程度の情報を得ているかによるが,適切な希釈を選択するために,数回
の希釈の試行を必要とする場合がある。
  観察領域内の粒子の数が追跡できる軌跡の数を決定し,それによって測定の統計的結果の質を決定する。
追跡する粒子が多いほど,得られる粒子径分布がより代表値に近くなる。しかし,粒子の数が多すぎると,
視野内の粒子を独立に追跡することが困難になる(5.3.4参照)。粒子の軌跡が交差する場合(高濃度試料
で発生する。),解析のための有効な軌跡とはならず,より解析される軌跡データが少なくなる。
  PTA法で測定可能な最大粒子数濃度は,典型的には,1 mL中109粒子である。この数値は,測定装置の
構成(観察領域の体積)に依存した数値である。
5.3.6  最小粒子数濃度
  PTA法測定は,規定レベルの標本化繰返し精度に達するのに十分な粒子軌跡を解析する必要がある。原
理的には,ただ一つの粒子を追跡することが可能であるが,これは,必要とする測定に対して十分な代表
性又は再現性がない可能性がある。したがって,最小粒子数濃度は,使用者が得ようとしている結果の代
表性又は再現性によって決まる(5.4参照)。さらに,使用者が広い粒子径分布をもつ試料を評価する場合,
その粒子径分布を得るために解析すべき粒子径区間の数がより多くなり,その各々の粒子径区間内に含ま
れる多くの粒子の軌跡を解析することが望ましいために,必要とされる最小限の粒子数濃度はより大きく
なる。
  観察領域の体積に対して光学視野が広い(5.3.4に示された一般的な値より大きい)装置では,測定可能
な最低粒子数濃度は,1 mL中106粒子と小さくなる。この数値も測定装置の構成(測定体積)に依存した
数値である。

5.4 測定精度及び不確かさ

5.4.1  一般事項
  通常,PTA法測定は光を散乱する粒子の追跡及び解析を複数同時に行うが,まずはそれぞれの粒子の拡
散係数及びそれによって導かれる流体力学径を個別に決定し,続いてそれらの解析結果を統合して個数基
準粒子径分布を求めることに留意する。データ処理アルゴリズムは,製造業者によって異なることに注意
する。
5.4.2  測定精度
  異なる粒子の軌跡の本数は,標本抽出の代表性のレベルを決める。標本の適切な統計的代表性を確保す

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                                                                                   Z 8829 : 2021
るには,十分な数の粒子を追跡することが重要である。
  粒子径100 nmの単分散試料に対する,PTA法測定で解析に用いた軌跡数,フレーム数,映像時間長さ
と,CVで表したモード径の測定精度とのおおよその関係の例を表2に示す。
       表2−PTA法測定における軌跡数,フレーム数,映像時間長さ及びモード径の測定精度の
                                         おおよその関係
            軌跡数            フレーム数         映像時間長さ     モード径の測定精度(CV)
                                                      s                     %
              400                130                   5                  10 %未満
              700                230                   8                   8 %未満
            1000                 300                  10                   5 %未満
            2000                 600                  20                   3 %未満
       注記 これらのデータは,ポリスチレン球の粒子径100 nm単分散試料に対して求めたものである。
  表2は,実験を計画する際の指針として用いることが望ましい。
  表2では,全てのデータセットについて,粒子径分布の区間幅を5 nmに維持した。測定においては,異
なる区間幅を使用してもよい。区間幅が大きくなると,サンプル数が増加し,より良好な統計的再現性が
得られるが,粒子径の測定分解能(5.4.6参照)は損なわれる。
  与えられた区間幅に対して,記録された軌跡の数は,データ精度の指標として使用することが可能であ
る。このようなポアソン分布では,ある粒子径区間内の軌跡数の平方根が精度の推定値を与える。精度の
評価は,同じ試料を3回以上測定し,各粒子径区間に対してCVを得ることによって実施することが望ま
しい。
  PTA法測定の精度は,多分散性の度合い,粒子軌跡長及び粒子径を含む多くの要因によって影響を受け
る。したがって,表2は比較的理想的な場合の値である。これは,より多分散性の高い試料に対しては,
所望の精度を達成するために,より多くの軌跡を解析しなければならないことを意味する。JIS Z 8827-
1:2018の附属書A [2] には,要求精度を満たすために必要な計数粒子数の推定について説明がある。この
計算手法を用いることによって,必要な軌跡の数を推定することが可能である。表2は,モード径に対し
て,所与のCVを達成するための最少のフレーム数又は映像時間長さを示す。軌跡数,フレーム数及び映
像時間長さは,表2に示すデータの実験的変動の範囲内では,おおよそ線形関係に従う。
5.4.3  粒子径範囲
  PTA法の粒子径制限については,既に5.3.2及び5.3.3で下限及び上限の粒子径について規定している。
また,多分散試料の場合,より小さい粒子の測定に対する,より大きい粒子の影響によって,測定できる
粒子径範囲が狭くなる可能性があることも示した。
  粒子径範囲が大きいほど,粒子径分布におけるそれぞれの粒子径区間に割り当てられる軌跡の個数が小
さくなる場合がある。区間数を増やすことなく粒子径範囲を広げると,粒子径分布の区間がより粗くなる。
この規格の使用者は,各粒子径区間に必要とされる精度に基づいて,各区間ごとに十分な軌跡数を確実に
解析することが望ましい。これは,粒子径範囲が広いと,必要とされる軌跡の総数が著しく大きくなる可
能性があることを意味する。
5.4.4  計数効率
  ほとんどのPTA法測定装置は,視野内の粒子の数の指標を提供し,これを用いて観察領域内の総粒子数

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Z 8829 : 2021
濃度を推定することが可能である(5.3.4参照)。装置の光学特性及び試料の多分散性が,この計算に含ま
れる不確かさに関係する。焦点深度及び照射レーザのビーム径が有限であるために,観察他領域中の粒子
だけが追跡され,カウントされる。
  粒子の測定は,PTA法測定装置の感度に大きく依存する。より大きな粒子は,より小さな粒子よりも容
易に検出することが可能である。したがって,非常に異なった粒子径の粒子を含む試料は,より大きな粒
子を過剰抽出(又は過剰カウント)する可能性がある。この測定の統計的性質によって,粒子軌跡長は一
定ではない。短すぎる軌跡又は交差する軌跡は,処理ソフトウェアによって除外される。なお,PTA法測
定装置の製造業者は,軌跡長の最小しきい値の自動最適化処理を採用する手法,使用者が最小しきい値を
手動で設定する手法など種々の手法が用いられている。
  大きな粒子によるもう一つの影響は,それらの動態に関係し,小さな粒子は大きな粒子よりもフレーム
間で大きな距離を移動する。これらの粒子が視野から出る場合には,その粒子を計算から除外してもよい。
視野の縁にある大きな粒子はより長く追跡され,したがって,総カウント数に,より多く寄与する可能性
が高い。逆に,視野外の小さな粒子は,同じ位置にある大きな粒子よりも,より迅速に視野に入る可能性
が高い。したがって,所与の粒子径の1フレーム当たりの粒子数が報告されているのであれば,こうした
粒子のサイズによる動態の変化だけによってサイズによる計数効率の偏りが生じることはない。
5.4.5  粒子径の精確さ
  5.1の式(1)式(3)に基づき,粒子径(流体力学径,X)は,試料温度及び粘度の値(温度依存性あり)の
不確かさ,並びに追跡時の粒子平均移動変位の測定誤差に依存する。
  温度の±3 Kの不確かさは,直径評価において約±1 %の追加の誤差をもたらす。したがって,この規格
を適用する場合は,試料の温度は±3 K又はより高い精度で測定されなければならない。また,測定を開
始する前に,試料及び機器を熱的平衡状態にする必要がある。新たに注入した試料は,測定前に1分間
2分間平衡化させることが望ましい。
  粘度の値は,多くの場合,所与の分散媒について一覧表などから得られる。粘度は温度によって変化す
る。その変動は,測定時間内にわたって±2 %未満でなければならない。およそ室温にある水の場合,粘度
データと温度とが相互依存の関係にあるため,粘度の精確さに対する±2 %の要求事項は,絶対温度の知
見に対するより厳しい(±3 Kより良い精度の)要求事項を意味する。
  各々の粒子軌跡は,粒子追跡中の多くのステップ(フレーム間の変位)を含み,粒子がより長く追跡さ
れるほど,その流体力学径の精度が高くなり,偏りがゼロに近づく[3]。したがって,各粒子について ()   x 2
[式(1)を参照]を評価する際の不確かさは,1nsteps に比例する。ここで,nstepsは,各軌跡のステップ数
(各粒子が連続して観察されているフレーム数)である。
  粒子ブラウン運動由来ではない振動又は移動は,報告される粒子径の低下をもたらすので,回避されな
ければならない。したがって,測定に影響を及ぼす振動を防止するための措置を講じなければならない。
追跡ソフトウェアは,ブラウン運動由来ではない運動を検出し,それを補正するか,又は少なくともオペ
レータにその存在を警告しなければならない。
5.4.6  粒子径分解能
  粒子径分解能は,似た粒子径をもつ二つの粒子群を区別する能力を意味する。このパラメータは,単一
の粒子に対する測定精度の不確かさ,及び粒子径分布の各粒区間におけるデータの再現性と計数効率(5.4.4
参照)とによって決まる。

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6 装置

6.1 一般事項

  PTAの装置構成は,基本的機能をもつ各機器の集合体として構成され,必要に応じて各種の特殊な試験
項目に望ましい,又は必要とされる付加的な周辺機器によって拡張され得る可能性をもつ。次に,装置の
基本構成を説明する。
  PTA法測定を行うために必要とされる最低限の機器の構成を図1に示す。なお,図示の方向は,xy平面
における粒子軌跡を意味することに注意する。また,照射光源(以下,レーザという。)及び追跡画像検出
機構の配置は,撮像部(カメラ部)がy方向に沿って指向した状態でx軸を中心に回転させて配置しても
よい。レーザ照射方向(図のx軸方向)と観察方向(図のz軸方向)とは直交する必要はなく,試料の暗
視野結像が可能であればよいため,直角ではない角度も通常に用いられている。

6.2 試料セル(液中分散した試料)

  測定する試料は,試料セル内に注入する。このセルは,試料に対して不活性であり,試料を安定した温
度に保持することができなければならない。試料及びセルの温度は測定可能であるものとし,試料の温度
は±3 Kの精度で測定しなければならない。セルは,レーザによる試料への光照射と試料粒子からの散乱
光の収集とを可能にするために,少なくとも部分的に光学的に透明でなければならない。

6.3 レーザ(又はレーザ以外の光源)

  レーザは,その光強度及び波長が,いかなる場合でも試料に対し,破壊又は改質することなく,粒子か
らの適切な散乱を提供するものでなければならない。また,波長及び強度は,撮像部による画像取得に適
したものでなければならない。観察領域内の粒子への照射強度を最大にし,観察領域外の粒子の散乱によ
って発生する光学的ノイズを最小にする光線が形成されていなければならない。また,照射に伴う局所的
加熱,又は光泳動をできるだけ最小限にする必要がある。
  蛍光を発する粒子と発しない粒子とを区別する特別な計測を行う場合は,波長は蛍光励起に関わる波長
条件及び蛍光シグナルの収集に使用される光学フィルタの波長条件を考慮して,適宜正しく選択されてい
なければならない。

6.4 光学顕微鏡

  散乱(又は放射)光は,集光され,一般的な光学顕微鏡に類似する一連のレンズ,フィルタ,及びミラ
ーによって画像取込み機構に導入される。粒子からの散乱光を撮像及び粒子の動きを追跡するのに十分な
倍率をもつ。

6.5 デジタルビデオカメラ

  撮像装置は,試料中の粒子によって散乱された微弱な散乱光を撮像するのに十分な感度をもつCCD又
はCMOS検出器を備えたデジタルカメラである。カメラフレームレート(典型的には毎秒10フレーム
60フレーム)は,粒子ごとに十分な撮像データが収集され,正確な粒子軌跡の解析とそれによる粒子径の
決定とができなければならない。濃度を適切に検出するための要件として,カメラフレームレートは一般
的には,使用者によって調整可能ではなく,代わりに,製造業者によるカメラの選択によってより共通的
に設定されることに注意することが望ましい。

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6.6 追跡用及びデータ処理用コンピュータ

  ブラウン運動をしている粒子の散乱光に伴う軌跡映像を撮影する。映像を,解析用ソフトウェアを用い
て解析する。ソフトウェアは,次の3種の処理が可能であることが望ましい。ビデオ画像の各々を処理し,
個々の粒子を識別し,位置を決定し,カウントする。また,ビデオの別々のフレーム内の同じ粒子を認識
することによって,フレームからフレームへ粒子を追跡する。最終的には,各粒子の拡散係数を計算し,
収集されたデータを統合し,出力する。
   記号説明
     1  解析用コンピュータ                       5  測定試料セル
     2  高感度デジタルカメラ                     6  レーザ光源
     3  拡大光学系                               7  液中分散試料
     4  測定対象領域
                                  図1−PTA法測定装置の概略図

7 手順

7.1 一般事項

  この箇条は,PTA法によって,粒子を測定するための一般的な手順を規定する。測定装置の製造業者に
よって,段階ごとに具体的な推奨事項がある場合は,それに従う。
  図2は,一般的なPTA法測定の測定手順を示す。実線は必須となる手順を示し,点線は任意に用いる手
順を示す。任意に用いる手順は,データのノイズレベル及び繰返し精度を改善するのに役立つ。

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                                                                                   Z 8829 : 2021
                                                          試料照明
      試料前処理                試料導入
                                                        (散乱光取得)
                                                         粒子(光点)
                                                           動画取得
     装置の初期化                                                              適切な測定時間で
                                                                                 繰り返し測定
                                機械ノイズ又は
                                                           軌跡解析
                                ドリフトの補正
                                                          粒子径評価
                                                           (換算)
                               独立した次試料の
                                                           分布解析
                                 次測定準備
                                                          データ分析
                                                           及び出力
                                   図2−PTA法測定手順の概要

7.2 試料調製

  PTA法による粒子径の測定には,適切な液体に分散させた少量の試料(5.3.4参照)を用いる。測定に用
いる試料が,測定しようとする試料全体を適切に代表していることを確認することが重要である。サンプ
リングにおける課題については,JIS Z 8833[4]を参照することを推奨する。測定前の試料分散に関しては,
JIS Z 8824[5]を参照することを推奨する。適切な試料調製及びサンプリングは,再現性の高い測定に重要
である。
  試料は,適切な液体(分散媒)に均質に分散する。分散媒は,透明媒体1)でなければならない。分散媒
は,試料となじみがよく,かつ,分散粒子及びPTA法測定装置の物理化学的特性に影響を与えないもので
なければならない。分散媒は,粒子を安定に分散させ,粒子のブラウン運動による変位が観察可能になる
ような適切な粘度のものでなければならない。分散媒の粘度は,測定中の温度範囲において2 %以内の精
度で分かっていることが望ましい。
  注1) 透明媒体は,透過光が著しく減衰しない媒体である(ISO 22891:2013,3.9)。
  使用者は,測定する試料を注入し,そこから観察領域に供給するために一時貯留するための試料容器に
汚染及び測定に影響する他の粒子がないことを確認する。清掃は,製造業者の仕様に従って行わなければ
ならない。
  試料を分散する前に,分散媒が妨害粒子を含まないことを確認しなければならない。分散する前に,分
散媒だけをPTA法測定することが,一般的に行われる。既に分散された試料の希釈を行う場合は,粒子の
界面活性を変えないように,原液の分散媒と同じ屈折率,塩分,界面活性剤,PHなどを合わせたブランク
分散媒を用いなければならない。十分な数の軌跡を解析するために,個々の粒子を明確に識別し,追跡で
きるように希釈しなければならない。典型的には,測定可能な粒子数濃度は,10 mL−1109 mL−1(5.3.5及
び5.3.6参照)の範囲である。

7.3 測定装置の設定及び初期設定

  粒子径の分布を測定する前に,装置を適切に初期化しなければならない。電源は,コンピュータ,撮像

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Z 8829 : 2021
機器,照射光源,温度制御機器,及びモータ,バルブ又はポンプに供給しなければならない。各機器間の
接続通信状態が正しいことを確認するとともに,できるだけ安定した環境を提供するために熱的平衡にし
ておかなければならない。試料温度は,±3 Kの精度で検出できるとともに,測定開始から終了までの期
間中安定でなければならない。
  最初の設定で,粒子が最適に観察可能なように調整する。光学系又は測定試料セルの移動によってx,y
方向に,焦点の調整によってz方向に観察する位置を調整する。粒子からの散乱光強度が最大化され,か
つ,背景の干渉が最小化され,できるだけ大多数の粒子が鮮明な焦点で見えるように,調整する。
  試料の正しい領域の焦点が合うと,適切な画像取込みが行われるように調整項目を設定することが望ま
しい。調整項目には,カメラのゲイン及びシャッタ速度,ガンマ補正,グレースケール変換並びに映像時
間長さを含む。設定は,測定中の特定の試料に対して適切でなければならない。例えば,小さな粒子に対
しては,弱い粒子の散乱光の検出を可能にするために,比較的長いシャッタ速度及び高ゲイン設定が必要
になるが,一方,大きな粒子は,フレアを起こさないためにこの逆が必要になる。フレームレート(毎秒
10フレーム60フレーム)を高くすることは,小さな,急速に拡散する粒子には適切であるが,散乱光強
度の低下に対して適切なシャッタ速度が必要であることによって制限される。必要なフレーム数又は映像
時間長さは,必要とされる繰返し精度の程度に応じて決まり,フレーム数又は映像時間長さが増加するこ
とによって,測定精度は次第に高くなる(5.4.2参照)。

7.4 測定

7.4.1  試料供給
  試料は,手動又は自動で(任意の送液量で)観察領域に供給する。試料は,試料採取体積(5.3.4参照)
において安定なままでなければならず,有意な粒子位置のドリフト,付着など(例えば,大きな粒子の場
合は沈殿,気泡の場合はクリーミング)を回避しなければならない。
  多くの装置では,小さな一定のドリフト速度を補償する方法を提供し,測定への影響を無視することが
可能である。しかし,試料が流れているときにドリフトが早すぎる場合,粒子の追跡を制限する可能性が
ある。したがって,その場合は測定値に影響を及ぼす可能性がある。
7.4.2  試料照明
  試料は,試料から最適なコントラスト(媒体及び粒子)が得られるような適切な波長をもつレーザ(6.3
参照)又は別の強い指向性の光源によって照射される。一般的に用いられる波長は,400 nm(紫)から650
nm(赤)までの範囲である。
  試料は,粒子の追跡のための最良のコントラストを得られるように照射することが望ましい。これは,
粒子がビデオキャプチャシステム(6.6参照)上ではっきりと見えるが,背景レベルは最小限に抑えるべき
であることを意味する。取得画像のコントラストが悪いと,追跡に成功する粒子が少なくなる。これによ
り小さな粒子の計数効率が減ることによって,粒子径分布測定結果に影響を及ぼすことがある。
  カメラのピクセル分解能(nm/pixel)のこう(較)正は,通常,製造業者によって行われ,オペレータで
は行わないことに注意する必要がある。しかし,機器が改造されているか,又は新しい光学系が据え付け
られている場合には,オペレータがこう(較)正を行う場合がある。その場合は,製造業者の指示に従っ
てこう(較)正を実施することが望ましい。
  画像取得系におけるコントラストは,照射レーザを試料に適切に集束させることによって最適化されな
ければならない。幾つかのパラメータは,装置によって自動的に調整される。これらの手順は,製造業者

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によって異なる場合がある。製造業者の推奨する設定及び手順に従い,画像コントラストを改善する。
7.4.3  粒子撮像及び軌跡
  試料の温度及びドリフトが安定化し,適切な測定パラメータ設定を選択した後,照射された試料の一つ
以上のビデオ画像を記録することが可能である。複数のビデオ画像を記録する場合,全く新しい粒子集団
を観察領域に導入するために,試料を変更するか,又はフローセルなどで流しながら粒子を交換しつつ測
定を行うことが望ましい(すなわち,新しい試料を測定セルに送ることが望ましい。)。他の粒子径解析法
の例に従って,3回以上の分取された試料を測定することが必要である。繰返し精度条件下で測定する必
要がある粒子数は,測定目的の要求精度に依存する。ビデオ画像の記録時間の長さ及び必要な軌跡の数は,
5.4による。
7.4.4  トラッキング(粒子の追跡及び軌跡の解析)
  解析条件の設定後,ビデオ画像に撮像された全フレームでの各粒子の光点の中心がソフトウェアによっ
て位置決めされる。その後,各粒子に対して,ビデオ画像として取得した全フレームについての各フレー
ム間で移動した粒子の間隔と移動位置とを測定する。一つのビデオ画像から,数百又は数千の粒子を識別
し,追跡することが可能で,時間平均二乗変位を粒子ごとに個々に計算する。この平均二乗変位を,試料
の既知の温度及び粘度と併用し,粒子の流体力学径を計算する。最後に,各々の粒子径データによって,
ヒストグラム又は連続分布関数のいずれかの形式で粒子径分布を求める。
  また,画面上の粒子軌跡の目視検査によって,粒子軌跡から得られるデータ品質の適切さの判断が可能
である。単一の粒子の一定のドリフト,機械的ノイズパターン(全ての軌跡が同様に一定方向に動く,な
ど)又は解析粒子選択が短時間でランダムに移動する挙動は,粒子の追跡機能,更には粒子径測定の機能
を低下させる可能性がある。したがって,軌跡の目視検査は,使用者が試験中の試料の信頼レベルを確立
するために良い参考になる。

7.5 結果の評価

7.5.1  一般事項
  データ測定のアルゴリズムは,製造業者によって異なる場合がある。7.5では,解析及び結果の判定にお
ける一般的な処理を扱う。
7.5.2  粒子径の評価
  粒子径を,5.1の式(1)式(3)によって評価する。
  なお,粒子径は,流体力学径(3.4参照)である。
7.5.3  粒子径分布の解析
  それぞれの軌跡から粒子径を解析し,粒子径分布を求める。統計的な不確かさを要求さえる範囲内とす
るためには,5.4に示したように,適切な数の粒子の軌跡を使用して,粒子径分布(ヒストグラム)におけ
る各粒子径区間に含まれる粒子数が有意な値となることが望ましい。したがって,データの質を管理する
ためには,各粒子径区間に対して,十分な数のデータを得なければならない。非常にノイズの多いヒスト
グラムとして粒子径分布が表される場合には,通常,十分な数の軌跡が測定されなかったことを意味する。
同じ試料について測定を3回以上繰り返すことによって,各粒子径区間内の測定値の繰返し精度を標準偏
差によって評価する。

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Z 8829 : 2021
  粒子径分布を図示する場合には,JIS Z 8819-1に従う。メジアン径X50,0,積算粒子径分布の10 %パーセ
ンタイル値X10,0,90 %パーセンタイル値X90,0を求める場合には,JIS Z 8819-1に従い,個数基準の値を得
る。
  平均径XPTAを求める場合には,JIS Z 8819-2に従い,個数基準の算術平均値を得る。
7.5.4  データ解析及び報告
  データの報告形式は,製造業者によって異なる場合があるが,測定結果の報告に関する完全なデータ報
告に必要な主要なパラメータを,箇条10に示す。

8 測定系の適格性の確認及び管理

8.1 一般事項

  PTA法測定装置は,箇条8に定める基本要求事項を遵守しなければならない。これらの要求事項は,装
置の設置,保守,運用及び適格性の確認に適応する。一部の装置製造業者は,独自の装置固有の保守にお
ける要求事項を示しているため,次の要求事項は最小限の要求事項とみなすことが望ましい。
  機器の性能の定期的な確認は,精度管理の目的のために必要であり,通常,認証標準物質(CRM)(JIS
Q 0030:2019,2.1.2)を用いた測定によって実施することが望ましい。

8.2 装置の設置における要求事項

  PTA法測定装置の設置要求事項は一般に装置製造業者によって指定される。装置製造業者の取り扱い指
針は,装置が使用される前の技術的ステップ及びチェックのより詳細なリストを含む場合がある。PTA法
測定装置の動作に対する最小要求事項を,次に示す。
− 直射日光が当たらない場所で,強い熱源(ラジエーターなど)から離れた場所に設置しなければなら
    ない。換気が良好で,過剰な湿気及びほこりがないことが望ましい。装置の保管は,装置製造業者の
    マニュアルによらなければならない。
− 装置は,防振テーブル上に設置してもよい。これは,PTA法測定装置の軌跡ソフトウェアによって小
    さな振動騒音を補償することが可能となるもので,厳密な要求事項ではない。しかし,そのような振
    動補正が利用できない場合,大きな粒子の動きに影響するとともに,小さな粒子の検出に影響する可
    能性がある。この場合,防振を実施しなければならない。

8.3 装置の保守

  装置製造業者の取り扱い指針において要求される全ての保守手順に従わなければならない。全てのPTA
法測定装置に共通する幾つかの一般的なメンテナンスのステップを,以下に示す。
− PTA法測定装置は,装置を使用していないときはいつでも,常に清潔で乾燥状態であることが望まし
    い。使用後,装置は配管及び光学表面から微量の試料を分散媒で洗浄して全て除去しなければならな
    い。濃度の高い分散媒(例えば,生理食塩水)を使用する場合は,使用後は装置を清浄な水で洗い流
    す。制御ソフトウェアはシャットダウンすることが望ましい。
− 光学系(レーザ,レンズなど)の部品は,常に溶剤及び他の汚染物質から清浄に保っておかなければ
    ならない。

JIS Z 8829:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 19430:2016(MOD)

JIS Z 8829:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8829:2021の関連規格と引用規格一覧