JIS A 3305:2020 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則 | ページ 19

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A 3305 : 2020 (ISO 2394 : 2015)
注記 あるハザードが別のハザードを引き起こし,より一層深刻な影響を構造システムに与えること
も考えられる。そのような例を,次に示す。
− 地震の後のガス爆発及び/又は火事
− 地震の後の津波
− ガス爆発又は爆弾の爆発の後の火事
− 竜巻又は他の強風の後の火事
− 偶発作用による損傷の後の要素の劣化
F.4.4 直接的な結果及び間接的な結果
結果の重大さは,例えば,各要素の破壊と関連する金銭的損失の合計及び各要素の破壊の複合的な効果
によって生じる,全体としてのシステムの物理的な変化によって表現することが可能である。
システムのリスク評価においては,その後に起こる結果が大きな影響を及ぼしており,これらをモデル
化することを重視することが望ましい。システムの中のどのような要素であっても,それ自身がシステム
としてモデル化できることに留意することが望ましい。例えば,道路ネットワークシステムを考えると,
橋りょう(梁)を要素としている。今度は橋りょう(梁)について考えると,橋りょう(梁)自体が構造
部材から構成するシステムとなっている。リスク評価の詳細度に応じて,システムの定義,暴露量及び構
成要素と結果は異なる。
状況に応じて,表F.4に示した結果が考慮され得る。
表F.4−望ましくない事象の結果の種類
結果の種類 結果
健康 死亡
けが
重要施設(例 病院)の被害による感染症のまん(蔓)延
健康に対する影響の長期化
心理的影響
経済・資産 建物・構造の損傷
建物の周囲の資産の損傷
建物内の物品の損傷
事業継続 収入の減少
顧客の喪失
重要なサービス及び/又は活動を提供できないこと
う(迂)回及び遅延によるコスト
地域経済に与えるコスト
環境 回復可能な環境への被害
回復不可能な環境への被害
社会及び政治 評判の悪化
住民の不安の増加
政治的支援の喪失,新たな厳しい対策法令の施行
都市環境の荒廃・避難の長期化
建物の倒壊につながるシナリオに関連した結果の進展の例として,図F.2で示したような建物の上層階
で爆発が起きることを考えた場合,ここで直接の結果は,(建物の)挙動の変化及び/又は爆発に(直接)
さらされる部材による損失と定義することが可能である(図F.2のステップ2参照)。この応答の度合いに
よっては,建物の他の部分の挙動がその後に続き,その結果又は間接的な結果をもたらし得る(図F.2の

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ステップ3参照)。
ステップ1設計 ステップ2 ステップ3
種々のハザードによる構造物
関連する偶発的ハザードの 損傷を受けた構造物の性能
同定及びモデル化 の損傷状態の評価 の評価
所定のハザードに対する種々
様々な大きさ及び様々な種 損傷を受けた構造物の性能が不十分となる確
類のハザードについて の損傷状態の確率と対応する率を対応する結果とともに評価
発生確率の評価 結果の評価
図F.2−結果の分析のステップ
考慮するシステムの境界の定義によって,結果及びリスクの総和が変わることに注意が必要である。シ
ステムの境界は,構造物自身と関連する結果だけを考慮するように定義することが可能である。この場合,
直接の結果は構造物の構成要素及び内容物の損傷に関連したものを併せた結果である。間接的な結果は,
構成要素の連鎖的な破壊及び最終的に構造の崩壊によって構造物全体を失うことと関連している。しかし,
多くの場合,特に結果の重大性等級が3以上の場合,対象構造物以外に影響する結果についても考慮する
ことが重要である。このことは,営業損失及び評判の悪化だけでなく,環境の質への被害という観点で結
果を考えるときに特に重要になる。
F.4.5 リスク及び構造物のロバスト性の更なる特性
破壊のリスクは式(F.1)で与えられるが,無次元量のロバスト性の指標があると,ロバスト性を向上する
ために異なる意思決定の選択肢を比較するのに役立つ。
リスクに基づくロバスト性指標(Irob)は,次のように定義することが可能である。
RDir
Irob (F.2)
RDir RInd
ここに, RDir : 第1項及び第2項に関わる直接的な結果のリスク
RInd : 第1項及び第2項に関わる間接な結果のリスク
この指標は01までの値をとり,値が大きいほどロバスト性が大きいことを意味する。
最適な意思決定は,リスクの総和を最小にするものであり,それは式(F.1)の第1項又は第2項の値を減
少させることによって得られるものである。全体的なリスク分析では,直接的な結果及び間接的な結果の

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両方に影響するような意思決定を自由に行うことが可能である。このことを考慮すると,このロバスト性
指標は,全体的なリスク分析と必ずしも結果が整合するとは限らない。しかし,実務的には,規準によっ
て直接的な結果の大部分を解決するため,結果的にロバスト性の向上は,主に間接的な結果について対処
している。したがって,ロバスト性指標は,リスク分析の原則に基づいたロバスト性を表す有効な指標と
みなすことが可能である。一般に,直接的なリスクは,規準に基づく限界状態に関係するため,通常,間
接的なリスクよりも正確に推定できる。
この指標は,構造性能の特性だけではなく,損傷後のシステムの性能と関連する全ての結果を説明する。
さらに,ロバスト性に関わる構造性能を向上する又はぜい(脆)弱性を減らす(要素の信頼性を向上する)
ために採用し得る全ての方法(意思決定の選択肢)を明確に説明可能である。注意しなければならないの
は,ロバスト性の指標は,構造信頼性と同様に条件によって変わることである。ロバスト性指標は,直接
的な結果と間接的な結果の割合だけでなく,個々の構成要素の信頼性レベル及びシステムの破壊モード(直
接的な結果のレベル)によっても変わるものと考えた方がよい。構造要素及び破壊モードの信頼性は,確
率的モデル,適切に設計する技術及び設計の手腕に依存する。
ハザード事象が十分に把握されず確率的に定量化できない場合には,ハザード事象が発生したという条
件付きのリスク及びそれに対応する条件付きのロバスト性指標が意思決定に役立つ。そうした場合,ハザ
ードが発生し,損傷状態ベクトルD=(D1, D2, ···, Dm) Tによって定義したあるレベルの損傷が発生すると想
定して構造のロバスト性を決定する。nは,構造システムの要素に対する損傷状態の定義の数である。対
応する条件付きリスクは,次のように評価される。
R |D Cdir , jP(Dj ) (F.3)
Cind ,kP(Sk | Dj ) P(Dj )
j k j
式(F.3)においては,考慮している損傷状態の発生確率を1に設定することによって,損傷の状態を強制
的にシステムに与えている。
F.4.6 ロバスト性に関わる代替策
リスクに基づくロバスト性指標の他に,信頼性に基づく冗長性指標(RI)を,次のように定義すること
が可能である[Frangopol & Curley (1987)]。
P(f intact )
P(f damaged )
RI (F.4)
P(fintact )
ここに, Pf(damaged) : 一部損傷した構造システムの破壊確率
Pf(intact) : 損傷していない構造システムの破壊確率
この冗長性指標によって,構造システムの冗長性を測ることが可能である。この指標は,0から∞まで
の値をとり,値が小さい方がロバスト性が大きい。
最後に示すのは,海洋産業分野で用いられる構造物の冗長性の簡単で実用的な尺度で,いわゆる残留影
響率(Residual Influence Factor, RIF)値(ISO 19902 [22]参照)に基づいている。
保有耐力比(Reserve Strength Ratio, RSR)は,次のように定義する。
Rc
RSR (F.5)
Sc
ここに, Rc : 海洋プラットフォーム(典型的には,鋼構造ジャケットプラ
ットフォーム)のベースシア耐力特性値
Sc : 終局状態に対する設計荷重
構造部材iの完全な損傷(又は機能の喪失)の構造耐力への影響を測るため,次の式のいわゆるRIF値
[しばしば損傷時耐力比(Damaged Strength Ratio)]を用いる。

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RSR fail,i
RIFi (F.6)
RSR intact
ここに, RSRintact : 損傷を受けていない構造物のRSR値
RSRfail,i : 部材iが破壊したとき又は除去されたときの構造物のRSR

RIFは0から1までの間の値をとり,大きな値ほど冗長性が高いことを表している。

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附属書G
(参考)
人命に対する安全に関する最適化及び基準
G.1 一般事項
経済的に最適化された実現可能な決定が,健康及び人命の安全に関する社会的選好とも合致することを
保証するため,4.4.2.1では,どのような前提下で,そのような決定が受容可能となると考えられるかを規
定している。この目的に関する原則が追加人命救助費用(MLSC)であり,そこでは,更に1人の人命を
救い得る手段にかかる費用が,ある個人を1人救うために社会が自発的に支払う費用と釣り合うときに,
その手段は人命の安全向上に効果のあると受容できると考える。追加人命救助費用(MLSC,marginal
lifesaving cost)の原則は,生活の質指標(LQI)を用いて適切に実装することが可能である。
この附属書では,4.2.2及び4.4.2.1の実務での使用に関して重要な側面を選択して,概要を次に記載する。
− 原則は,現状の最良な実践とどのように関係するか。
− 最適化の根拠となる便益の期待値をどのように計算するか。
− LQIに基づき人命救助費用の限界値をどのように計算するか。
− 原則を実務にどのように適用するか。
G.2 追加人命救助費用の原則と現状の最良な実践との関係
人命に関するリスクの受容に関わる規制の基準は,通常,合理的に実現可能な限り低くするという
(ALARP,As Low As Reasonably Possible/Practicable)形式で規定する。ALARPは図G.1にその形式を示す
ように,リスクはその大きさによって無視可能,受忍可能又は受容不可のいずれかに評価できるという考
え方である。
特別な場合を除きその活動は受容され
リスクが受忍できない
Riskisintolerable activitycannotbeaccepted
The ない
exceptin extraordinarycases
更なるリスク低減の実現可能性がないか
The activityistolerable only if
ALARPリスクが受忍できる そのコストが得られる改善効果と比べ活
Riskistolerable isALARP reduction of risk is impracticable
further
(ALARPである) cost is grossly disproportionate
or its動が極めて不釣合いなときに限り,その活
improvement gained
to the
動が受忍される
その活動は許容され,ALARPであること
リスクが広く許容できる The activityisacceptableanditis
Riskisbroadlyacceptable not を実証することは要求されない
requiredtodemonstrateALARP
図G.1−人命に関するリスク規制における典型的なALARP原則の図
表G.1には,欧州諸国においてALARPの枠組みの中で適用されたリスク基準を事例として示す。国に
よって,リスク基準の選定に多少のばらつきがあることが分かる。

――――― [JIS A 3305 pdf 95] ―――――

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  • ISO 2394:2015(IDT)

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