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A 3305 : 2020 (ISO 2394 : 2015)
− 構成要素の被害及び破壊事象,すなわち,直接的な結果
− 機能喪失及び/又は連鎖的破壊(進行性破壊),すなわち,間接的な結果
注記1 暴露事象は,構造物に対して損傷をもたらし得るか又は構造物の性能指標に影響を与え得る
全ての事象を表す。ここでの例には,運用にかかる荷重,環境による荷重,腐食性化学物質,
人的過誤,低品質な設計,材料及び建設を含む。荷重及び他の環境・化学的作用の同時作用
のような暴露事象のシナリオを表現することも重要である。
注記2 構成要素の被害及び破壊事象とは,個々の断面及び接合部のような構造物の一部の破壊又は
損傷と関連するものである。個々の要素の性能のモデル化,すなわち,ある暴露シナリオに
対してどの程度被害を受け,損傷するかについては,限界状態関数の定式化及び解析によっ
て裏付けられる(箇条5参照)。
注記3 構成要素の被害及び破壊事象に引き続いて発生し間接的な結果につながる,構造物の機能喪
失及び/又は連鎖的破壊は,ロバスト性と関係がある。関連するリスクの定量化は,附属書
Fで説明している[式(F.4)参照]。
4.3.3 知識の不確定性及びその取扱い
構造物に関する決定では,自然本来のばらつき(偶然的不確定性)及び知識の不足(認識論的不確定性)
のような,性能に関する全ての不確定性を考慮しなければならない。
不確定性は,確率変数,確率過程及び/又は確率場のような確率論的モデルを通して,決定の過程にお
いて表現されなければならない。確率論的モデルでは,考慮する不確定性と事象との間にある時間及び空
間依存性を表現しなければならない。その上で,気候変動及び人口増加の影響のような,考えられる非エ
ルゴード的な現象を,モデル化の中で扱わなければならない。
注記1 ベイズ確率理論は,全面的なリスク及び信頼性に基づく設計及びアセスメントを行うための
基礎を形成する(4.4.2及び箇条5参照)。さらに,ベイズ確率モデルは,キャリブレーショ
ンを通して,準確率論的設計の規準(4.4.3参照)の基礎を形成する(附属書E参照)。
不確定性の定量化及びその確率論的表現は,主観的情報及び利用可能な事実の組込みを容易にするもの
でなければならない。
注記2 新しい構造物が設計されるとき,幾つかの方面についての知識は,まだ極めて一般的な水準
である。関連する不確定性はそのために比較的大きく,様々な品質管理手法,他の仕様の下
で時間をかけて蓄積されたデータ及び経験を考慮して,モデル化している(附属書A及び附
属書C参照)。既存構造物において,試験,監視,検査及び維持管理計画に関連して,確率
論的モデルの(ベイズ)更新の確率から恩恵を受けることが重要である(附属書B参照)。
このように,観測という観点からより多くの事実が評価に用いられるにつれて,リスク及び
信頼性が徐々に更新される。
荷重・耐力係数設計法又は部分安全係数設計法に基づく構造物の設計(4.4.3参照)においては,規定さ
れる設計式,荷重状態及び荷重組合せ係数とともに,設計値及び特性値によって,不確定性を表現しなけ
ればならない。特性値は,必要に応じて,例えば,荷重及び材料特性に関連する利用可能な情報から構成
しなければならない。構造物の設計及びアセスメントの準確率論的方法の詳細は,箇条9で規定する。
4.4 方法
4.4.1 一般事項
設計及びアセスメントにおける決定は,想定されるリスクに関係する情報を基本にしなければならない。
破壊の結果及び損傷が十分に理解され,通常の範囲内である場合には,全面的なリスクアセスメントでは
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なく信頼性に基づく評価が適用可能となる。結果に加えて破壊モード及び不確定性の表現が分類され標準
化することができる場合には,より簡便な準確率論的方法を用いることが望ましい。
リスク情報を活用した方法及び信頼性に基づく方法は,準確率論的設計規準によってカバーされない特
別な構造物並びにプロジェクトのための設計及びアセスメントの決定を支援するためだけでなく,準確率
論的手法のキャリブレーションにも適用しなければならない。
4.4.2 リスク情報を活用した方法及び信頼性に基づく方法
4.4.2.1 リスク情報を活用した,設計及びアセスメントにかかる決定
リスク情報を活用した設計及び/又はアセスメントにおいては,人命の喪失及び負傷,環境の質に対す
る被害並びに金銭的損失を考慮した全リスクを正当に考慮し,決定を最適化しなければならない。全リス
クの評価で考慮する対象期間は,構造物が機能を提供する期間に基づいて決定しなければならない。
全リスクのアセスメントは,シナリオの表現を基本とし(附属書F参照),直接的及び間接的な結果,
暴露,構成要素の損傷及び破壊事象の確率モデルによらなければならない。
受容性の観点から人命の安全及び環境の質に関わる構造物の性能を評価することが望ましい(4.2,箇条
7及び附属書G参照)。これらの制約内において,便益の期待値の最大化に基づいて,決定を最適化しな
ければならない。このプロセスにおいて,この箇条に含まれる原則と調和する限り,他の指標も考慮され
得る。受容規準は,4.2.2で規定したように最適化の制約条件として考慮しなければならず,設計及びアセ
スメントにおける決定の検証に含むことが望ましい。最適化原則は,図1による。
便益
最適な決定
決定の選択肢
受容可能な決定
実行可能な決定
図1−便益最大化による最適化原則の図
注記1 考え得る決定の選択肢は図1の横軸に沿い,右へ行くほど信頼性は高い。縦軸で示される便
益は,考慮する期間における様々な決定に関係する期待純便益を表す。図1で決定は,連続
的に示されているが,離散的な決定又はこれらの組合せについても,同様にまとめられ,表
現され得る。図1から,一部の決定だけが正の純便益を生じており実行可能であることが分
かる。実行可能な決定のうち一つは(便益最大化の観点で)最適であるが,この決定は受容
可能な場合も受容不可能な場合もあり得る。
リスクのアセスメントにおいて,将来に予想される全ての結果を説明しなければならない。これには,
構造物の全ライフサイクルに失われる可能性がある人命に関する補償費用など不確定性と関係のある結果。
例えば,計画された検査,保全などの決定と確定的に関係する結果との両方を含む(附属書B及び附属書
Gを参照。)。
将来コストの純現在価値の評価に用いる利率(割引率)は注意深く選ばれなければならない。未来社会
の変化を考慮するために標準的な年割引率は,長期にわたり平均した年経済成長率であり,国によって異
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なる。人命救助にかかる活動に関連する支出の純現在価値の評価に際しても同様の考え方を適用する。
破壊及び損傷によって極めて深刻な結果が起こり得る構造物においては,リスクに基づくロバスト性評
価を,設計及び/又はアセスメントの検証の一部として実施しなければならない。
注記2 附属書Fは,リスクに基づくロバスト性評価の手法を説明している。実用のためには,破壊
の結果に従った構造物の分類の導入及び構造物の分類に従ってリスクに基づくロバスト性評
価の実施が必要かを決定することが有用となり得る。附属書Fにはそのような分類のための
提案も含まれる。
4.4.2.2 信頼性に基づく設計及びアセスメント
リスク情報を活用した構造物の設計及びアセスメントの代替として,信頼性に基づく方法を選んでもよ
い。この方法では,構造物のある信頼性に対する要求の下で,評価を行い,コストの最小化及び/又は資
源利用の最小化を行わなければならない。信頼性に対する要求は,4.4.2.1に規定したように全面的にリス
ク情報を活用したアセスメントに基づいて評価しなければならず,そのため,破壊の結果及び信頼性向上
のコストの依存関係の中で信頼性水準のレベル分けが容易となる。
注記 信頼性の要求は,一般に人命救助の活動に投資する社会的な能力に依存するので,そのため,
国ごとに固有のものとなる。附属書Gは,幾つかの国に対して,破壊の結果及び信頼性向上の
コストを関数として,信頼性に対する要求を設定し得るかについて記載している。
信頼性に基づく設計及び信頼性に基づく意思決定のための一般的な原則は,箇条8に規定する。
4.4.3 準確率論的方法
破壊及び損傷の結果が十分に理解され,破壊モードが標準的な方法で分類,モデル化され得る構造物で
は,設計及びアセスメントの基礎として準確率論的規準が適切である。規準は,解析,設計,材料,製造,
建設,運用・維持管理及び文書化の品質を確保するのに役立たなければならず,そして,明示的又は暗黙
のうちに構造物の性能に影響を与える不確定性を考慮しなければならない。全ての既知の不確定性を定量
化するように規定を構築することが望ましい。
準確率論的な設計及びアセスメントの規準は,設計及びアセスメントの決定の検証に使用する設計式及
び/又は解析手順を定める形式化された安全性検証法から構成しなければならない。形式化された安全性
検証法は,考慮すべき荷重組合せ及び設計に関する不確定性に関係するような作用,作用効果の設計値,
材料特性及びその他のパラメータを計算するための手順を含まなければならない。
注記1 関連する不確定性に十分配慮し,限界状態,耐力,荷重及び作用をモデル化するための原則
は,箇条5及び箇条6に規定している。
設計及びアセスメントの決定の検証に適用される設計値は,箇条9に規定している信頼性解析の原則を
用いた構造信頼性と,明示的に関係していなければならない。設計及びアセスメントの規準を開発する場
合には,設計値は,規準に従って設計された構造物が達成する信頼性の水準が,その種類及び用途に応じ
た所定の公称信頼性の近傍にあるように,キャリブレーションによって求めなければならない(4.2,8.4
及び附属書G参照)。
注記2 ここで,実構造物の信頼性は,モデル化され定量化された信頼性と異なることを強調するた
めに,公称信頼性と呼んでいる。このような差異は,主にモデル化において人的及び組織的
過誤を除外していることによる。
荷重係数及び耐力係数又は部分安全係数に基づく,構造物の設計及びアセスメントでは,システムの破
壊の結果によって,リスクに基づくロバスト性評価を通して又はロバスト性に対する備えを通して,シス
テムの性能を確保しなければならない。ロバスト性に対する備えは,重要部材の設計,構造的緊結,構造
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的分割を含み,そして,構造システム及びシステムの破壊の結果に依存する(附属書F参照)。
4.5 文書化
構造物の設計に関係する決定事項及び受容規準に関する検証について,全ての関係者にとって追跡可能
で透明性のある形に文書化しなければならない。これは,個別の構造物の設計及びアセスメントに加えて,
規準の開発及びキャリブレーションにも関わる。
文書化は,地点固有のデータ,試験結果,性能指標のモデル,検査結果,損傷,維持管理,修復に関す
る情報,受容規準及びその検証,並びに品質管理手順及び結果を含む構造物の設計及びアセスメントに利
用した全ての関連情報を含まなければならない。
加えて,全ての関連する仮定を特定し,構造物のリスク及び信頼性に関する重要度を議論し,文書化し
なければならない。これは,構造物の所有者によって規定された要求性能だけでなく,構造物の用途及び
予想される維持管理に関わる仮定も含む。
注記 構造物に関する決定の文書化についての更なる詳細は,附属書Aに記載されている。そこでは,
附属書Aでは,しゅん(竣)工時の確認検査済証の発行が推奨される場合があることも記載し
ている。
5 性能のモデル化
5.1 一般事項
5.1.1 構造性能及び限界状態の概念
ある構造物の構造性能を評価するためには,発生し得る構造物の応答を評価し,望ましい状態又は望ま
しくない状態のいずれかに分類しなければならない。これらの二つの状態の境界は限界状態と呼ばれ,望
ましくない領域に入ることを破壊と定義する。限界状態の概念については,5.3にて詳しく規定する。
注記1 一般に,この限界状態の概念は,構造物の性能を評価する際に非常に役に立つ。しかし,機
能不全による損失額の増加を伴いながら,望ましい状態から望ましくない状態へ緩やかに移
行するような場合もある。
注記2 望ましい性能は,出資者,オーナー,住民,運営主体,利用者,近隣住民(建設が住民との
関係に影響を与える場合)及び施工者といった利害関係者によって異なり得る。他の利害関
係者として,政府及び社会が挙げられる。一般に政府及び社会は,安全性及び持続可能性と
いった問題に対して,主な関心がある。
5.1.2 性能及び性能指標
構造性能は,構造物全体又はその部分と関係する。その性能を評価するためには,一連の定量的な性能
指標を選ばなければならず,その指標は要求性能に関して用いる物理状態を表すものである。性能指標は,
次の事項について,様々な抽象化の度合いによって定義する。
− 構造特性(例 剛性,柔性,耐荷能力など)
− 応答パラメータ(例 内力,応力,たわみ,加速度,ひび割れ寸法など)
− 稼働率
− 機能性(例 人の安全性,エネルギー消費量,ロバスト性,使い勝手,可用性,破壊確率など)。様々
な抽象化の度合いの間の関係を構築するように,モデルを作成しなければならない(箇条6参照)。
5.1.3 基本的な要求性能及び設計の局面
次のように分類する全ての関連する設計及びアセスメントの局面において,箇条4に示す要求性能を満
たさなければならない。
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− 永続的局面 : 構造物が通常の使用下にある状態
− 過渡的局面 : 構造物の利用又はさらされる状況が一時的である状態
− 偶発的局面 : 構造物の状態そのもの又はさらされる状況が例外的な状態
様々な設計の局面における要求性能を設定する上では,空間的側面,時間変動及び劣化を,必要に応じ
て考慮しなければならない。
5.1.4 検証レベル
構造物が全ての設計及びアセスメントの局面における目的に適合しているか検証するために,次のレベ
ルのいずれかを用いなければならない。
a) リスク情報を活用する検証レベル 箇条4及び/又は我が国の法・基準にのっとり人の安全面が確保
されるという条件下で,全てのコスト(建設費,維持費など)と(破壊又は機能不全に関する)経済
的リスクとの総和が最小となることを示す。
b) 信頼性に基づく検証レベル 構造物が,最大許容破壊確率又は最小の信頼性レベルとして,定式化す
る一連の信頼性に対する要求を満たす。
c) 準確率論的な検証レベル 構造物が,基本変数の設計値を用いた一連の不等式を満たす。
リスク情報を活用する検証レベルが,最も上位のレベルと考えられる。下位の検証レベルは,箇条9に
示されるコードキャリブレーションの原則を用いることで,より上位の検証レベルと適合するように調整
しなければならない。
注記 通常,このキャリブレーションは,規準作成委員会が実施し,設計者に3番目のレベルc)の検
証手法を用いることを許容することとなる。信頼性に基づく又はリスク情報を活用した検証は,
特別な構造物においてだけ行われる。どのレベルにおいても限界状態の概念及び性能モデルが
用いられなければならない(5.2及び5.3参照)。
5.2 性能モデル
5.2.1 一般事項
構造物がさらされる状況と構造特性との関係を構築し,もう一方で,性能指標を構築するため,一連の
モデルを用いなければならない。
構造物自体,環境(地盤,水及び空気),力学的,物理的,化学的,生物的又は人為的な特性間の相互作
用を表現するように,モデルを構築しなければならない。多くの場合,複数の構造物,環境要素,非構造
要素,設備及び機械,制御システムなどからなるシステムのモデルを考慮することと関連する。
当面の利用に十分であるように,モデルの精度を選択しなければならない。それに見合う程度の不確定
性を同定し,計量可能な量として定義しなければならない。
注記 一般に,リスクスクリーニングの手順から始め,引き続き一連のハザードシナリオを定義して
いる。ハザードシナリオとは,システムが偶然経験し,システム自体又は人々,環境を危険に
さらすような,時間変動する一連の局面である。
5.2.2 時間依存の側面
性能モデルでは,荷重及び構造特性のエルゴード的及び非エルゴード的(ランダム及びシステマティッ
ク)な時間変動を考慮することが望ましい。
その場合は,次を考えなければならない。
− 同時作用による荷重効果を分析する際の時間変動
− 大きな慣性力が働く際の動的影響
− 劣化メカニズム例えば,力学的(疲労及び負荷継続効果),物理的及び化学的性質(腐食及び塩化物浸
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