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3.4
液状化(liquefaction)
水で飽和された緩い粘着力のない地盤における繰返し荷重によるせん断強度及び剛性の喪失又は低下。
3.5
中地震動(moderate earthquake ground motion)
構造物の当該地で供用期間中に生じると予想されるSLS(使用限界状態)に対して用いられる地震動。
建築基準法に基づく規定(以下,建築基準法令という。)のC0=0.2の地震動に相当。
注記 附属書Aを参照。
3.6
規準化設計用応答スペクトル(normalized design response spectrum)
構造物の基本固有周期の関数として,最大地動加速度に対するベースシヤ係数を決定するためのスペク
トル。
3.7
擬似地震動の影響(paraseismic influences)
自然の地震動と類似の特徴をもつ地動で,その源が工場,爆発,交通,その他の人間の活動に起因する
もの(による影響)。
3.8
復元力(restoring force)
変形した構造物及び構造要素に生じる,構造物又は構造要素を元の位置に移動させようとする力。
3.9
レベルiの地震力分布係数,kF, i(seismic force distribution factor of the ith level)
地震ベースシヤをレベルi(レベルは階又は層に相当)に分配させる係数で,高さ方向の地震力分布の
特性を表す係数。ここで, k,Fi1である。
注記 附属書Cを参照。
3.10
地震危険度地域係数,kZ(seismic hazard zoning factor)
地域の相対的な地震危険度を表す係数(建築基準法令の地震地域係数Zに相当)。
3.11
地震層せん断力係数(seismic shear factor)
あるレベルの地震層せん断力を与える係数で,そのレベルの地震層せん断力を構造物のそのレベル以上
の重量で除したもの(建築基準法令のCiに相当)。
3.12
レベルiの地震層せん断力分布係数,kV, i(seismic shear distribution factor of the ith level)
基部の地震層せん断力係数に対するレベルiの地震層せん断力係数の比で,高さ方向の地震層せん断力
分布の特性。基部においてkV, i=1で,通常は,頂部で最大となる(建築基準法令のAiに相当)。
注記 附属書Cを参照。
3.13
大地震動(severe earthquake ground motion)
当該地で生じる可能性があるULS(終局限界状態)に対して用いられる地震動(建築基準法令のC0=1.0
の地震動に相当)。
――――― [JIS A 3306 pdf 6] ―――――
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注記 附属書Aを参照。
3.14
変動作用(variable action)
設計供用期間中に作用すると考えられる,その大きさの時間的なばらつきが無視もできず,単調でもな
い作用。
3.15
偶発作用(accidental action)
設計供用期間中に発生する見込みが有意に大きな値でない作用。
3.16
地盤と構造物との相互作用(soil-structure interaction)
構造物と周囲の地盤とが互いにそれらの応答全体に影響を及ぼす効果。
3.17
二乗和平方根法(square root of sum of squares method)
モード応答値の二乗和の平方根によって構造物の最大応答を評価する方法。
3.18
構造設計係数,kD(structural design factor)
構造物のじん(靱)性,許容変形,復元力特性及び余剰強度(又は余剰耐力)を考慮して設計用の地震
力及び地震層せん断力を低減する係数。
4 記号及び略語
CQC 完全2次結合法
FE,s,i 使用限界状態における構造物のレベルiの設計用水平地震力
FE,u,i 終局限界状態における構造物のレベルiの設計用水平地震力
FG,i 構造物のレベルiの重力による荷重(レベルiの重量)
kE,s 使用限界状態における地震動強さの代表値
kE,u 終局限界状態における地震動強さの代表値
kR 設計用規準化応答スペクトルの値
kS 地盤係数
n 基部より上のレベル数(地上階数・層数に相当)
SLS 使用限界状態
SRSS 二乗和平方根
SSI 地盤と構造物との相互作用
ULS 終局限界状態
VE,s,i 使用限界状態における構造物のレベルiの設計用地震層せん断力
VE,u,i 終局限界状態における構造物のレベルiの設計用地震層せん断力
γE,s 使用限界状態における構造物の信頼性に関する荷重係数
γE,u 終局限界状態における構造物の信頼性に関する荷重係数
5 耐震設計の基本
構造物の耐震設計の基本思想は,地震時において次の目標を達成することにある。
――――― [JIS A 3306 pdf 7] ―――――
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− 人間の死傷を防ぐ。
− 生命に関わる重要な機能の継続性を確保する。
− 財産に対する損害を低減する。
以上のほかに,環境に対する社会的な目標も考慮することが望ましい。
ほとんどの種類の構造物について全ての地震に対して完全に無傷に保つことは,経済的に実現可能では
ないことが認識されている。この規格では,耐震性を確保するため,次の基本原則に基づいて規定してい
る。
a) 当該地で発生する可能性がある大地震動によって,構造物は崩壊又はこれに類似した形式で破壊しな
いことが望ましい[終局限界状態(ULS)]。破壊による影響度の高い構造物は,この限界状態に対す
るより高い信頼性を備えることが望ましい。
b) 構造物の供用期間中に当該地で発生が予想される中地震動に対し,構造物は許容限界以内の被害にと
どまることが望ましい[使用限界状態(SLS)]。
各限界状態(SLS及びULS)を超えた以降の構造物の挙動を考慮し,構造健全性も検証することが望ま
しい。中地震動又は大地震動の後で,サービス(例えば,配管,配線系を含む機械設備・電気設備)がそ
の機能を保持することが必須である場合は,地震作用の評価はISO 13033の要求に従うことが望ましい。
構造物自体も同様の地震動レベルに対して必須の機能が確保されることを検証することが望ましい。
注記1 この規格が記載している構造物の耐震設計及び施工に加えて,地震が引き金となる(例えば,
火災,工業施設又は貯蔵タンクからの危険物の流失,大規模な地滑り及び津波などの)二次
災害に対して,適切な対策を考慮することが重要である。
注記2 地震後に,余震が起こる期間について,地震被害を受けた構造物が安全に使用できることを
評価する必要がある可能性がある。しかしながら,この規格では余震によって予想される作
用に言及しない。この場合,地震作用を評価するには被害を受けた構造物のモデルが必要と
なる。
6 耐震設計の原則
6.1 建設地の状態
地震作用下における建設地の状態は,マイクロゾーネーションの判断クライテリア(活断層への近接度,
地盤構成,大ひずみでの地盤挙動,液状化の可能性,地形,地盤の不整形性,これらの相互作用などのそ
の他の要因)を考慮して評価することが望ましい。
液状化が起こりやすい地盤の場合は,そのような現象への対応又は制御するため,適切な基礎及び/又
は地盤改良を導入することが望ましい(ISO 23469参照)。
津波の危険度の高い地域では,ある種の重要な構造物(鉛直方向避難施設,病院,緊急通信施設など)
は津波作用に抵抗することが要求される(附属書O参照)。
6.2 構造物の形状
6.2.1 一般
より耐震的にするためには,構造物は平面的にも立面的にも整形な形状をもつことが望ましい。
6.2.2 平面的不整形
水平方向の地震作用に抵抗するための構造要素は,ねじ(捩)り効果が可能な限り小さくなるように配
置することが望ましい。力の偏心分布を生じるような平面の不整形な形状は望ましくない。なぜならば,
それらは正確に評価することが困難で,構造物の動的応答を増幅するであろうねじ(捩)り効果を生じる
――――― [JIS A 3306 pdf 8] ―――――
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からである(附属書F参照)。
6.2.3 鉛直方向の不整形
構造物の質量,剛性及び耐力の高さ方向の変化は,被害の集中を避けるために最小とすることが望まし
い(附属書C参照)。
複雑な形状をした構造物を設計するときは,構造物に起こり得る挙動を検討するために適切な動的解析
を行うことが望ましい。
6.3 非構造要素の影響
構造要素だけでなく非構造要素を含む建築物は,解析可能な地震力抵抗システムとして明確に定義する
ことが望ましい。構造物の地震応答を計算するに当たっては,構造システムの要素だけではなく,非構造
の壁,間仕切り,階段,窓などの影響も,それらが構造物の応答に重要な場合は,計算に反映することが
望ましい。
注記 地震時の解析で,非構造要素をしばしば無視する。多くの場合,非構造要素は構造物に付加的
な強度と剛性とを付与することができ,結果的に地震時に望ましいとする挙動となり得るので,
それらの存在を無視することを正当化することになる。しかし,時には非構造要素は不都合な
挙動を引き起こすこともある。例えば,腰壁及び垂壁が鉄筋コンクリート造柱の内のり(法)
高さを低減し,その柱にぜい(脆)性的なせん断破壊を引き起こしたり(非構造要素と考えら
れている。),間仕切り壁の非対称な配置が構造物に大きなねじ(捩)りモーメントを引き起こ
す。したがって,全ての要素が地震時に挙動する様子を反映することが重要である。非構造要
素の剛性及び強度を無視しても不都合な挙動を引き起こさなければ,地震時の解析で考慮する
必要はないとされている。ISO 13033は,建築物の地震時解析モデルに含めるべき非構造部材
に関する付加的なクライテリアを示している。
6.4 強度及びじん(靱)性
構造システム及びその構造要素(部材及び接合部)は,適用する地震作用に対して,適切な強度とじん
(靱)性との両方をもつことが望ましい。弾性限界を超えた以降の適切な性能は,構造システムの適切な
選択及び/又は高いじん(靱)性を確保することが望ましい。構造物は,適用される地震作用に対する適
切な強度及び適切なエネルギー吸収が確保できるように十分なじん(靱)性をもつことが望ましい(附属
書D参照)。構造要素のじん(靱)性の低い挙動,例えば,座屈,付着破壊,せん断破壊,ぜい(脆)性
破壊などを阻止するため,特別な注意を払うことが望ましい。また,繰返し荷重による復元力の劣化を考
慮することが望ましい。
構造物の局部耐力は,解析で仮定した耐力より高いことがある。そのような余剰耐力は,構造要素の破
壊モード,構造物の破壊メカニズム及び基礎の挙動を含む大地震動による構造物の挙動を評価する場合に
考慮することが望ましい。
6.5 構造物の変形
地震作用の下での構造物の変形を,中地震動に対しては構造物の機能に不都合が生じることがないよう
に,また,大地震動に対しては崩壊又はこれに類似した形の構造破壊を避けるために,制限することが望
ましい。
高層建築物又は免震建築物のような長周期構造物に対しては,長周期・長時間の大地震動に対して繰り
返し生じる変位応答による効果を評価し,変形性能の範囲内に限定することが望ましい。
注記 一般に,変形には次の2種類がある(附属書L参照)。
− 非構造要素への被害を制限するための層間変形
――――― [JIS A 3306 pdf 9] ―――――
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− 隣接構造物との被害を生じるような衝突を避けるための全水平変位
6.6 応答制御システム
中地震動又は大地震動に対して構造物の継続的使用を確保するため,また,大地震動中の崩壊を防止す
るために,例えば,免震又はエネルギー逸散装置のような構造物の応答制御システムを採用してもよい(附
属書M参照)。
6.7 基礎
基礎の形式は,構造物の形式及び例えば地盤構成,地盤の不整形性,地下水位のような現地の地盤状態
に適合するように注意深く選定することが望ましい。基礎を介して伝達される力及び変形の両者は,地盤
と基礎との間の入力と慣性との相互作用と同様に,地震が引き起こす地盤のひずみを考慮して適切に評価
することが望ましい。
7 地震作用の評価の原則
7.1 変動作用及び偶発作用
地震作用は,変動作用又は偶発作用として扱われることが望ましい。
構造物は,終局限界状態及び使用限界状態に対応した地震作用の設計値に対して検証することが望まし
い。
地震活動度が低い地域における構造物に対して,構造健全性を確保するために偶発地震作用を検証に取
り入れてもよい。
使用限界状態に対する検証は,終局限界状態に対する検証によって満足される場合には,省略してもよ
い。使用限界状態の地震作用が小さい地震活動度の低い地域及び終局限界状態の地震作用に対してほぼ弾
性範囲内で設計される剛な構造物(例えば,壁式構造の建築物)に対しても,使用限界状態の検証を省略
してもよい。
7.2 動的解析及び等価静的解析
7.2.1 一般
構造物の地震時の解析は,動的解析又は等価静的解析によって行われなければならない。いずれの場合
でも,構造物の動的特性を考慮することが望ましい。
大地震動に対して非線形挙動が予測される場合には,非線形解析を行うときに,崩壊メカニズムの形成
を含む構造物の非線形挙動を求めることが望ましい。
注記 崩壊メカニズムを求めるための一方法として,非線形静的解析がある(附属書H及び附属書I
参照)。
7.2.2 等価静的解析
通常の整形な構造物は,従来の線形弾性解析を用いる等価静的解析法によって設計してもよい。
7.2.3 動的解析
地震時の応答を等価静的解析によって正確には予測できないような構造物については,動的解析を行う
ことが望ましい。例として,幾何学的不整形,質量分布若しくは剛性分布に関して不整形な構造物又は地
震危険度の高い敷地の超高層建築物がある(附属書K参照)。革新的な構造システム[例えば,6.6(応答
制御システム)参照]をもつ構造物,新材料で造られる構造物,特殊な地盤状態に建設される構造物及び
特に重要な構造物に対しても,動的解析が望ましい。動的解析は,次のいずれかに分類する(附属書H参
照)。
a) 応答スペクトル解析
――――― [JIS A 3306 pdf 10] ―――――
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JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3010:2017(MOD)
JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則