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b) 線形応答時刻歴解析(“応答時刻歴解析”は,従来の“時刻歴応答解析”と同じ)
c) 非線形応答時刻歴解析
7.2.4 非線形静的解析
一連の非線形挙動を予測することが困難な構造物には,その一連の挙動を求めるため非線形静的解析を
活用することが望ましい(附属書I参照)。
7.3 地震作用決定のクライテリア
設計用地震作用は,次に示す点を考慮して決定することが望ましい。
7.3.1 地域の地震活動度
構造物が建設される地域の地震活動度は,通常,歴史地震若しくは地域の地震学的データ(活断層を含
む。)又は歴史地震と地震学的データとの組合せに基づいた地震地域パラメータ(地震動のピーク値又は設
計用地震応答スペクトル値)を地図で表したものによって示す。それに加えて,その地域の地震活動度に
基づき,与えられた将来の期間における当該地域の最大地震動強さの期待値を決定することが望ましい。
注記 地震動強さを特徴付けるのに用いられる多くの種類のパラメータがある。それらは,震度階,
地盤の最大加速度及び速度,地盤の“有効”ピーク加速度及び速度,平滑化した応答スペクト
ルに関連する応答スペクトル値,入力エネルギーなどである。これらのパラメータは,しばし
ば固有振動周期のある範囲に対して一様な危険度を与える確率論的地震危険度解析によって決
定している。時には,確率レベル及び危険度レベルの変動を包含し,崩壊に対する信頼性に合
致するような構造ぜい(脆)弱性の変動を統合するように危険度解析を拡張する場合がある。
7.3.2 建設地の状態
構造物を支持する地盤の動的特性を調査し,当該地における地震動への影響を考慮することが望ましい。
地理的・地質的な状態及び深部下部構造(構造盆地)の影響も考慮することが望ましい。
地震時のある特定の地点における地動は,一般に,硬い地盤では短く,軟らかい地盤では長い卓越振動
周期をもつ。(とりわけ)軟弱な地盤があるところ及び沖積盆地の端部に近いところで起こるかもしれない
局所的な地震動増幅の可能性に注意を払うことが望ましい。特に,飽和した緩い粘着力のない地盤におい
ては,液状化の可能性も考慮することが望ましい。
注記 強さ,振動数成分及び継続時間を含む地震動特性は,地震の破壊力に関する重要な特性である。
さらに,軟弱地盤に建設する構造物は,深い基礎の上に建設しない限り,しばしば地震時の不
同沈下又は大沈下による被害を受ける。
7.3.3 構造物の動的特性
振動の周期,モード,減衰などの動的特性は,地盤及び構造物のシステム全体について考慮することが
望ましい。動的特性は構造物の形状,質量分布,剛性分布,地盤特性及び構造形式に依存する。構造要素
の非線形挙動も考慮することが望ましい(8.1.1参照)。じん(靱)性が小さい構造物又は単一の構造要素
の破壊が完全な構造的崩壊につながるような構造物に対しては,より大きな設計用地震力を考慮すること
が望ましい。
7.3.4 構造物の破壊の影響
破壊危険度を低減するために要する費用及び努力に加えて生じ得る破壊の影響の重大性を考慮すること
が望ましい。それらを考慮し,危険度を小さくすることによって,多くの人々が集合する建築物,病院,
発電所,消防署,放送局,水道供給施設などのように地震時及び地震後において公共の福祉のために必要
となる構造物について,高い信頼レベルの設計を行うことが望ましい(附属書Aを参照。高層建築物につ
いては,附属書Kも参照。)。国家全体の,また政治経済学的観点から,災害の可能性が高く,社会資本の
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集中する都市地域においては高い信頼性が必要となる。
注記 構造物の信頼性に関する荷重係数γE,u及びγE,s(8.1参照)は,影響度区分が高い場合には一般
に大きな値となる(附属書A参照)。応答時刻歴解析においては,要望される信頼性の向上と
一致するように,入力地震動を増幅するか,又はより厳しい許容クライテリアを用いる。
7.3.5 地震動の空間的変動
地盤の異なる地点での相対的な動きは,通常,無視してもよい。しかし,大スパン又は大きく広がった
構造物では,この作用及び位相遅れを伴って到達する進行波の影響を考慮しなければならない。地盤条件
と地表面下の地質構造に起因する地震波の空間的変動も考慮しなければならない。
8 等価静的解析による地震作用の評価
8.1 等価静的荷重
等価静的荷重を用いる方法に基づく構造物の地震時の解析では,終局限界状態及び使用限界状態におけ
る変動地震作用を次のように評価してもよい。
8.1.1 終局限界状態
構造物のレベルiの終局限界状態における設計用水平地震力FE,u,iを次の式(1)のように求めてもよい。
n
FE, u,i
γE, ukZkE, ukSkDkR kF,i
FG, j (1)
j 1
又は上記の地震力の代わりに,次の終局限界状態における設計用地震層せん断力VE,u,iを用いてもよい。
n
VE, u,i
γE, ukZkE, ukSkDkR kV,i
FG, j (2)
j i
ここに, γE,u : 終局限界状態における構造物の信頼性に関する荷重係数(附
属書A参照)
kZ : 国内の基準などで規定される地震危険度地域係数(附属書A
参照)
kE,u : 地震活動度を考慮し,国内の基準などで規定される終局限界
状態における地震動強さの代表値(附属書A参照)
kS : 地盤状態の影響を考慮する地震動強さと基準地盤状態の地
震動強さとの比(附属書A参照)
kD : じん(靱)性,許容変形,復元力特性及び余剰強度によって
各種構造システムに対して規定される構造設計係数(附属書
D参照)
kR : 構造物の基本固有周期の関数である規準化設計用応答スペ
クトル値[地盤状態の影響(附属書B参照)及び構造物の減
衰特性(附属書G参照)を反映している。]
kF,i : 地震ベースシヤを各レベルに分配するレベルiの地震力分布
係数[地震力の高さ方向の分布を特徴付け, k,Fは=1の
i
条件を満たす(附属書C参照)。]
kV,i : 地震ベースシヤ係数に対するレベルiの地震層せん断力係数
の比であるレベルiの地震層せん断力分布係数[地震層せん
断力の高さ方向の分布を特徴付け,基部ではkV,i=1で通常は
頂部で最大となる(附属書C参照)。]
FG,j : 構造物のレベルjの重力による荷重(通常は,固定荷重と積
載荷重の和。多雪地では積雪荷重も追加する。)
n : 基部から上のレベル数
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8.1.2 使用限界状態
構造物のレベルiの使用限界状態における設計用水平地震力FE,s,iを次のように決めてもよい。
n
FE,s,iγE,skZkE,skSkR kF,i
FG, j (3)
j 1
又は上記の地震力の代わりに,次の使用限界状態における設計用水平地震層せん断力VE,s,iを用いてもよ
い。
n
VE,s,iγE,skZkE,skSkR kV,i
FG, j (4)
ji
ここに, γE,s : 使用限界状態における構造物の信頼性に関する荷重係数(附
属書A参照)
kE,s : 地震活動度を考慮し,国内の基準などで規定される使用限界
状態における地震動強さの代表値(附属書A参照)
kE,u及びkE,sは,JIS A 3305に規定されているように,検証手順の中で構造物の信頼性と破壊形式の重要
性とを含む破壊の影響が,荷重係数γE,u及びγE,sを決めるときに考慮される場合には,一つの代表値kEに
置き換えてもよい(表A.3参照)。
重力による荷重の値は,全固定荷重に想定される変動積載荷重を加えたものとすることが望ましい(附
属書C参照)。多雪地域では,想定される雪荷重も考慮する。
注記 地震作用を変動作用又は偶発作用のいずれと定義するかによって,地震作用とその他の作用と
の組合せに対する値は異なる。作用の組合せに関しては,JIS A 3305を参照。
8.2 地震力抵抗システム内の地震作用効果
構造物のねじ(捩)れの要因となる,地震動の水平2成分及び鉛直成分並びにそれらの空間的変動とを
考慮することが望ましい(附属書E及び附属書F参照)。
地震作用のねじ(捩)れの影響は,一般的に次の諸量に適切な配慮を行い,考慮することが望ましい。
すなわち,重心と剛心との間の偏心,主に並進とねじ(捩)れ振動との連成による動的増幅,他の層の偏
心の影響,計算上の偏心の精度の低さ及び地震動の回転成分である。
構造物のモデル化には,(特に,終局限界状態においてはひび割れを適切に含む。)構造要素の実際の剛
性を含むことが望ましい。水平地震力に抵抗する架構を結ぶ水平ダイヤフラムシステムの剛性が非常に低
く,地震力に抵抗する架構間の水平力の伝達が無視できる場合には,全構造物の3次元モデルを作成し解
析する代わりに,(柔らかなダイヤフラムと仮定し)支配面積内の有効質量を用いて各架構(平面フレーム)
を独立に解析してもよい。
注記1 いかなる方向の地震作用も,同時には最大とならない。
注記2 地震動の鉛直成分は,水平成分より高い振動数をもっている特徴がある。鉛直方向のピーク
加速度は通常水平方向の加速度より小さい。しかしながら,断層の近傍では,鉛直方向のピ
ークが水平方向より大きいことがある。
構造物の多くの形状において,ねじ(捩)れ振動による構造物の応答の大きさは,並進振動によるもの
と同程度かそれよりも大きいことがあるために,著しく不整形な構造物に対しては,2次元又は3次元の
非線形動的解析が望ましい。
注記3 建築物の偶角部の柱は,地動の2方向の水平成分によるねじ(捩)れ応答と並進応答との組
合せ効果によって,大きな地震作用を受ける。
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8.3 構造物の部分への地震作用
構造物の部分に対する地震作用を等価静的解析によって評価する場合,その部分を含めた構造物の高次
モードの影響を解析に反映し,適切な地震力係数又は地震層せん断力係数を用いるのがよい(附属書C参
照)。8.1で与えられる値より大きな地震作用が,片持式のパラペット,屋根から突出する構造物,装飾物
及び附属物のような構造物の部分に生じることがある。さらに,出口に隣接又は道路に面したカーテンウ
ォール,はめ込みパネル,間仕切りなどは安全に用いるため,ISO 13033の要求に従って地震作用の適切
な値を用いて設計することが望ましい。
9 動的解析による地震作用の評価
9.1 一般事項
動的解析を行う場合には,次の項目を反映することが重要となる(附属書H参照)。
a) 実際の構造物の動的特性を表現できる適切なモデルを設定すること。
b) 適切な地震動又は設計用応答スペクトルは,地震活動度及び敷地の条件を考慮して設定すること。
9.2 動的解析法
通常の動的解析法は,次のいずれかに分類する。
a) 線形又は等価線形システムに対する応答スペクトル解析
b) 線形又は非線形システムに対する応答時刻歴解析
9.3 応答スペクトル解析
応答スペクトル解析を行う入力として,設計用応答スペクトルを設定することが望ましい。このスペク
トルは,次のいずれかとしてもよい。
a) 規定によって定められている建設地の応答スペクトル
b) 適切な減衰定数(附属書G参照)を考慮して開発された建設地特定の設計用応答スペクトル
なお,設計用応答スペクトルは,平滑な形状のものとすることが望ましい。
応答スペクトル解析において,通常は卓越する振動モードを考慮し,統計的な重ね合せ法によって最大
の動的応答が得られる(附属書H参照)。そのときに十分な数のモードの影響を反映することが望ましい。
注記1 通常,応答スペクトル解析では,弾性限界以降の大きな変形及び地震作用の継続時間の影響
を考慮することはできないとされている。
注記2 一般に,等価線形システムへの高次モードの影響をCQC法又はSRSS法によって評価しても
よいとされている(附属書H参照)。
9.4 応答時刻歴解析及び地震動
応答時刻歴解析を行うための入力として複数の地震動が必要である。これらの地震動は,建設地の設計
用応答スペクトルに合致するように選択及び調整した記録地震動及び/又は模擬地震動である。両者の場
合とも,地震動の確率統計的特性を考慮することが望ましい。
地震活動度,当該地の地盤状態,歴史地震の再現期間,活断層との距離,地震の震源特性,予測の誤差,
構造物の設計供用期間及び構造物の破壊による影響度を考慮し,それぞれの限界状態に対して適切な地震
動を定めることが望ましい。
この目的のため,自由地表面,基盤面又は等価基盤深さでの地震動として模擬又は記録地震動を用いて,
構造物の特性から独立した基準地震動を評価することが望ましい。次に,構造物の動的挙動及び地盤と構
造物との相互作用のような種々のファクターの影響を考慮し,基準地震動から地震作用を評価することが
望ましい。
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9.4.1 記録地震動
記録された地震動を動的解析に用いる場合,次の記録を参照してもよい。
a) 当該地又はその近郊で記録された強震動。
b) 同様な地質,地形及び地震学的特性をもつ他の場所で記録された強震動。
記録地震動は,対応する限界状態,当該地の地震活動度及び構造物の線形・非線形の動的特性に応じて
その強さを調整することが望ましい。
9.4.2 模擬地震動
将来,ある地点に生じるであろう地震動を正確に予測することは不可能なので,設計用地震入力として,
模擬地震動を用いてもよい。模擬地震動のパラメータは,設計用入力の数と同様に,建設地に対する入手
可能な地質学的及び地震学的データを統計的に反映することが望ましい。模擬地震動を次の手法によって
得てもよい。
a) スペクトル適合法
b) 地震シナリオに基づく断層破壊模擬法
c) 統計法(例 ホワイトノイズ)
模擬地震動は,対応する限界状態,当該地の地震活動度及び構造物の線形・非線形の動的特性に応じて
設定することが望ましい。
注記1 模擬地震動のパラメータは,卓越周期,スペクトル形状,継続時間(模擬地震動の時間的な
包絡形状),強さ,構造物への入力エネルギー量などである。
注記2 地震シナリオは,地殻プレート,地震断層のパラメータ,滑り分布などに基づく。
注記3 模擬地震動の成分は,コヒーレンスの影響を含む。
注記4 設計用地震入力としての地震動の分類に関して,弾性応答スペクトルに合致するように生成
する模擬地震動は人工地震動と呼ぶ。
9.5 構造物のモデル
構造物の解析モデルは,固有周期及び振動モード,減衰特性,材料のじん(靱)性と構造物とのじん(靱)
性を考慮した復元力特性など,実際の構造物の動的特性を表すものとすることが望ましい。これらの動的
特性は,解析的手法及び/又は実験結果によって評価することが望ましい。次の事項を考慮することが望
ましい。
a) 質量には永続的な構造物の質量及び積載荷重の適切な部分を含むこと。
b) 構造物の基礎と支持地盤との連成効果。
c) 基本振動モード及び高次振動モードの減衰(附属書G参照)。
d) じん(靱)性特性並びにコンクリート及び組積造のひび割れによる影響を含めた線形・非線形範囲の
構造要素の復元力特性。
e) 構造物の挙動に及ぼす非構造要素の影響。
f) 線形・非線形範囲のねじ(捩)れの影響。
g) 柱及び他の鉛直要素の軸変形,又は構造物の全体的な曲げ変形の影響。
h) 高さ方向の水平剛性の不整形な分布による影響(例 特定の層における剛性の急激な変化)。
i) ひび割れを適切に考慮した床ダイヤフラムの剛性の影響。
地盤と構造物との相互作用を考慮する場合は,構造物,基礎及び地盤を含むモデルを設定することが望
ましい。
――――― [JIS A 3306 pdf 15] ―――――
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- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則