この規格ページの目次
13
A 3306 : 2020
9.6 解析結果の評価
動的解析を行うとき,地震作用及び/又は作用による効果は動的解析の結果だけに基づき評価してもよ
い。しかし,等価静的解析による地震作用の評価も有用な情報を与える。
したがって,動的解析によって得るベースシヤを等価静的解析によって得るベースシヤと比較すること
を奨励し,動的解析によってより低いベースシヤを得る場合であっても,設計用ベースシヤは等価静的解
析によって求めたベースシヤに対するある割合のような下限値を設けることが望ましい(附属書H参照)。
10 非線形静的解析
非線形静的解析では,構造物にその構造物が崩壊するまで増加する水平力が加えられる。この水平力は,
地震動によって引き起こされる地震力を表し,この力の分布形は設計用地震力又は構造物の基本モードに
よって引き起こされる力に比例するとしてもよい。地震力は静的荷重として漸増させながら,モデルの部
材又は接合部に非線形状態が生じるまで加える。部材又は接合部の特性は生じた非線形性を考慮して調整
され,さらに,漸増荷重を加える。この過程は構造モデルが解析的に不安定(すなわち,崩壊)となるま
で,又は目標とする構造物全体の変位に達するまで続く。
注記1 この解析はプッシュオーバ解析として知られており,構造物の非線形耐力,変形,塑性ヒン
ジの形成順序,崩壊メカニズムなどに関する情報を与える。
得られたせん断力対変形曲線は,その構造物の等価な1自由度系に対する一つの曲線に変換することが
可能である。この等価1自由度系の変形に対するせん断力を描いた曲線は耐力スペクトルと呼ばれ,構造
物の耐震性能を検証するために要求スペクトル(Sa−Sdスペクトル)と比較することが可能である(附属
書I参照)。
注記2 縦軸に加速度応答スペクトルSa,横軸に変位応答スペクトルSdをとった曲線を要求スペクト
ルと呼ぶ。
11 擬似地震動の影響の評価
この規格は,例えば,地下爆発,交通振動,くい打ち,その他の人間活動など,自然の地震動に類似し
た特性をもつ擬似地震動の影響に対する,予備的な手引書として用いてもよい。幾つかの助言的な所見を,
附属書Pに示す。
――――― [JIS A 3306 pdf 16] ―――――
14
A 3306 : 2020
附属書A
(参考)
構造物の信頼性に関する荷重係数,地震危険度地域係数及び
地震動強さの代表値
A.1 構造物の信頼性に関する荷重係数(γE,u及びγE,s)
A.1.1 一般事項
γE,u及びγE,sは,それぞれULS及びSLSに対する荷重係数(時には,重要度係数と呼ぶこともある。)で
ある。
それらはJIS A 3305に規定する部分係数形式における,作用に対する部分係数であり,信頼性理論によ
って定めることが可能である。これらの係数を,地震動強さの代表値の取り方に依存し,次のことを考慮
し対応する限界状態に対して定めている。
a) 要求される信頼性水準。
b) 地震作用の変動性。
c) 地震作用及び構造物のモデル化に伴う不確実性。
A.1.2 要求する信頼性水準
要求する信頼性水準は,起こり得る破壊の影響度に大きく依存する。影響度区分は,例えば,人命の喪
失,身体の損傷,潜在的な経済損失,社会的不便,環境への影響など,地震時及び/又は地震後に起こり
得る破壊の影響の範囲及び大きさから決めることが望ましい。影響の範囲と大きさとはプロジェクトの位
置付けに依存し,また,視点によっても異なる。したがって,これらは施主,供給者,使用者などの全て
の重要なステークホルダー(関係者)にとっての影響度を考慮して注意深く決めることが望ましい。
ULSに対しては,設計要件が大地震動時及びその後の人命リスクに対応するので,γE,uを,次の構造物
の分類に応じて決めることが望ましい。
a) 高影響度区分
1) その放出が公衆に対して深刻な結果をもたらすような危険物質を大量に貯蔵する構造物(例 化学
物質の貯蔵タンク)。
2) 公衆の人命の安全性に密接に関わる構造物(例 病院,消防署,警察署,情報センター,緊急コン
トロールセンター,給水システムの主要施設,電力供給施設,ガス配送ライン,主要な道路及び鉄
道)。
3) 多数の人々が集まる構造物(例 学校,集会所,文化施設及び劇場)。
b) 中影響度区分 普通の構造物(例 居住用家屋,集合住宅及び事務所ビル)。
c) 低影響度区分 人間の生命及び負傷に対するリスクの低い構造物(例 家畜又は植物のための小屋)。
SLSに対しては,設計要求は中地震動時及び/又はその後の構造物に関する通常用途の喪失に対応す
るので,γE,sは意図される用途の喪失及び修理によって生じる費用及び中断に応じて決めることが望ま
しい。
A.1.3 地動作用の変動性と地震作用との構造物のモデル化に関する不確定性
地震作用の変動性のため,γE,u及びγE,sは地震作用の確率統計的な特性を考慮して定めることが望ましい。
変動性は,例えば,その敷地での地震活動度,地震波の伝ぱ(播)経路,地盤,構造物の応答による地震
動の局所的増幅など,種々の要因によって生じる。また,地震作用のモデル化と構造物との計算モデルに
――――― [JIS A 3306 pdf 17] ―――――
15
A 3306 : 2020
伴う不確定性を考慮することが望ましい。
A.2 地震危険度地域係数(kZ)
地震危険度地域係数(kZ)は,その地域の相対的な地震危険度を反映している。この係数を,建設地及
び周辺の歴史地震データ,活断層データ,その他の地震地質的データを考慮して評価している。この係数
は通常,地震危険度の最も高い地域において1とし,それぞれの地域の地震危険度に応じて低減する。1
より大きい地域係数もその地域の地震危険度が極端に高い場合には,用いることが可能である。地域係数
を規定する代わりに,地震動強さの代表値のコンターマップ(等値線図)が用意されてもよいとされてい
る。係数kZを,一般的に岩盤の地盤条件に対して決めることが多い。
実用に当たっては,入手可能な地震危険度マップに基づいて離散的数値の組を定めてもよいとされてい
る。一般的に,これらのマップは特定の敷地の地盤状態の影響及び近傍に位置している断層の影響に起因
する修正を反映しているものではない。したがって,特定の敷地に対しては,地盤状態,地図上のkZの値,
主要な震源の地震マグニチュード及び近傍の活断層までの距離の関数である別の係数kRを,kZに乗ずるこ
とが望ましい(附属書Bを参照)。
注記 設計法を作成するという観点からは,kZ及びkRを用いてどのように地震作用に関する重要な影
響を考慮するかに関して選択の自由がある。例えば,関連する全ての影響を表すようにして,
一つの係数(上記のように定式化されたkZ及びkRの二つの係数ではなく)を採用することが望
ましいとされている。
A.3 地震動強さの代表値(kE,u及びkE,s)
代表値kE,u及びkE,sは,通常,水平最大地動加速度の重力加速度に対する比として記載している。最大地
動速度又はスペクトル値が与えられるようなときは,それらの値は加速度に変換することが望ましい。
kZ,kE,u及びkE,sの値を別々に与える代わりに,重力加速度に対する比の形で期待水平加速度値としてそ
れぞれの地域のkZkE,u又はkZkE,sを示した地震危険度マップを用いてもよいとされている。
A.4 係数γE,u,γE,s,kZ,kE,u,kE,s及びkSを設定するための参考情報
地震危険度解析の結果は,係数γE,u,γE,s,kZ,kE,u及びkE,sを設定するため,及び設計用地震動を設定す
るための参考情報として用いている(A.1,A.2及びA.3を参照)。地震危険度解析は,次に関する地震学
における最新の知見を考慮して行うことが望ましい。
a) 地域的な地震活動度(例 活断層,震源を特定しにくい地震など)。
b) 震源から敷地までの伝ぱ(播)経路特性。
c) 深部地下構造による増幅。
d) 浅部地盤による増幅。
e) 予測した地震活動度及び地震動に関する認識論的不確実性(モデル不確実性)。
注記 通常,深部地下構造及び浅部地盤による地震動の増幅の影響は,係数kRに反映されている(附
属書B参照)。
係数kSは,通常,基準となる敷地条件での最大地震加速度に対する,地盤条件の影響を考慮した(通常
は構造物の基礎における)最大加速度の比として記載する。この係数は,kZkE,u又はkZkE,s及び当該地盤条
件(例えば,地表30 mまでのせん断波速度の平均値)の関数としてモデル化することが可能である。表
A.1に地震動の増幅の非線形性を考慮したkSの値の例を示す。通常,係数kSは,定数であり,地震活動度
――――― [JIS A 3306 pdf 18] ―――――
16
A 3306 : 2020
の高い地域では,その値は定数で1に等しいと仮定している。
表A.1−kSの値の例
地盤条件 kZkE,u又はkZkE,s
<0.1 0.2 0.3 0.4 >0.5
岩盤 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0
硬質地盤 1.6 1.4 1.2 1.1 1.0
軟弱地盤 2.5 1.7 1.2 0.9 0.9
A.5 代表値に関連した荷重係数の例
荷重係数γE,u及びγE,s並びに地震動強さkE,u及びkE,sは,基準期間及びその基準期間における超過確率と
の関数として決めている。ある基準期間に対する超過確率に対して,地震動強さを大きな値とすると荷重
係数は小さくなる。また,逆も成り立つ。表A.2及び表A.3に,γE,u及びγE,sの例として比較的地震危険度
が高い地域の値を,地震動強さの代表値kE,uとkE,sとを合わせて示した(A.3参照)。代表値に対応する再
現期間も併せて示した。
なお,再現期間とは,ある大きさ以上の事象が起こると予測される発生間隔の期待値である。
ULSに対しては,再現期間としておおよそ500年を選択することがよく行われている。ただし,幾つか
の国では,より長い期間を用いている。被害をもたらす地震が頻繁に起こる地域では,SLSに対して選択
される再現期間は一般的に施設の供用期間より長くはない。ただし,幾つかの国では,この再現期間は施
設の影響度区分に応じて異なるものとしている。SLSは,ULSに対する適切なクライテリアの選択の中で,
暗に扱ってもよい。被害をもたらす地震が頻繁に起こらない地域では,SLSは無視してもよいとされてい
る。確率論的地震危険度解析によって計算した地震動の値に対して何らかの判断によって限度を設定する
ことも実用上よく行っている。ULSの地震動パラメータが最大地震加速度で0.4 gを超える多くの国々で
は,これらの限度を用いている。別の方法として,SLS及びULSに対して,同じ再現期間を採用しながら,
異なる荷重係数を用いるという方法もある。
表A.2に,構造物の中影響度区分に対する荷重係数に1を用いた場合の例を示す。ここでは,対応する
限界状態の再現期間をkE,u又はkE,sの中で考慮している。表A.3では,それぞれの限界状態に対して共通の
代表値kEを用い,影響度の程度をγE,u又はγE,sによって考慮する場合を示した。表A.2では,終局限界状
態に対して,再現期間500年を用いている。終局限界状態が倒壊に対する地震動に対応する場合には,よ
り長い再現期間(例 2 500年)を500年の代わりに用いてもよいとされている。設計のときに長い再現
期間を採用することによって,特に地震活動が低い又は中程度の地域においては,活断層が引き起こすよ
うなまれな地震事象を,要求耐震性の設定のときに含む可能性が高くなる。適切な再現期間は,それまで
に設計してきた建物が保有する安全余裕度を検証しながら評価している。
――――― [JIS A 3306 pdf 19] ―――――
17
A 3306 : 2020
表A.2−例1 荷重係数γE,u及びγE,s並びに代表値kE,u及びkE,s
(kE,u ≠ kE,sで地震活動が高い地域における普通の地盤条件の場合)
限界状態 影響度区分 荷重係数γE,u kZ kE,u又はkE,skE,u又はkE,sに相当
又はγE,s する再現期間
終局 a) 高 1.52.0 1.0 0.4 500年
b) 中 1.0
c) 低 0.40.8
使用 a) 高 1.53.0 1.0 0.08 20年
b) 中 1.0
c) 低 0.40.8
表A.3−例2 荷重係数γE,u及びγE,s並びに代表値kE
(地震活動が高い地域における普通の地盤条件の場合)
限界状態 影響度区分 荷重係数γE,u kZ kE=kE,u=kE,s kEに相当する
又はγE,s 再現期間
終局 a) 高 3.04.0 1.0 0.2 100年
b) 中 2.0
c) 低 0.81.6
使用 a) 高 0.61.2
b) 中 0.4
c) 低 0.160.32
――――― [JIS A 3306 pdf 20] ―――――
次のページ PDF 21
JIS A 3306:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3010:2017(MOD)
JIS A 3306:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS A 3306:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA3305:2020
- 建築・土木構造物の信頼性に関する設計の一般原則