JIS B 0090-8:2013 光学素子及び光学システム用の製図手法―第8部:表面性状(粗さ及びうねり) | ページ 2

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3.14
通過帯域(transmission band)
2種類の異なったカットオフ値の位相補償フィルタ(高域フィルタ及び低域フィルタ)を輪郭曲線に適
用したときに,振幅が50 %以上伝達される正弦波信号の波長帯域(JIS B 0632参照)。JIS B 0031の附属
書F(評価長さln)及び附属書G(通過帯域及び基準長さ)参照。
注記1 粗さ曲線の通過帯域はλsからλc,うねり曲線の通過帯域はλcからλfである。
注記2 ISO 10110-8では光の波長帯域との誤解を防ぐため,spatial bandwidthと定義している。
3.15
基準長さ(sampling length)
輪郭曲線の特性を求めるために用いる輪郭曲線の長さ(JIS B 0601参照)。粗さ曲線用及びうねり曲線用
の基準長さは,それぞれ,輪郭曲線フィルタのカットオフ値λc及びλfに等しい。
3.16
評価長さ(evaluation length)
輪郭曲線の長さ。一つ以上の基準長さを含む(JIS B 0601参照)。
注記 特に指定がない場合の評価長さは,基準長さの5倍とする。
3.17
トレンド除去(detrending)
測定断面曲線から表面性状特性を得るための一連の処理。
3.18
測定表面,Zm(measured surface)
トレンド除去する前の表面の測定値を表す関数。
注記 輪郭曲線として扱う場合,測定断面曲線に相当する。
3.19
表面形状,Zf(surface form)
測定表面を最小二乗近似して得られる呼び形状及び表面形状偏差を表す関数。
注記1 輪郭曲線として扱う場合,表面形状及び表面形状偏差を表す輪郭曲線に相当する。
注記2 表面形状は,ゼルニケ多項式又は別の形式による二次元多項式によって記述可能である。例
えば,直交座標系を用いて式(1)で表すことができる。
p q
Zf (x, y)= (1)
CijPij(x, y)
i=1 j=1
ここに, Pij : 表面の基本的な輪郭を表す次数p, qの多項式関数
Cij : 標準ゼルニケ係数
3.20
残差表面,Z(residual surface)
測定表面Zmから表面形状Zfを減じた関数。
注記1 輪郭曲線として扱う場合,粗さ曲線及びうねり曲線に相当する。
注記2 JIS B 0651には測定の誤差を意味する用語“残差曲線 (residual profile)”が定義されている。
注記3 2次元の例では,数式Z(x, y)=Zm(x, y)−Zf (x, y),又は極座標表記Z(r, θ)=Zm(r, θ)−Zf(r, θ)で
表される。

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3.21
サンプリング表面,Z(xm, yn)(sampled surface data)
m×nの格子点で離散的にサンプリングされた残差表面データ。
注記 輪郭曲線として扱う場合,離散的にサンプリングされた粗さ曲線及びうねり曲線に相当する。
なお,JIS B 0651では,測定断面曲線は,AD変換によってデジタル化されていることが前提
になっている。
3.22
二乗平均平方根粗さ,Rq(root mean square roughness)
基準長さにおける粗さ曲線の高さの二乗平均平方根(JIS B 0601参照)。
3.23
二乗平均平方根うねり,Wq(root mean square waviness)
基準長さにおけるうねり曲線の高さの二乗平均平方根(JIS B 0601参照)。
3.24
パワースペクトル密度,PSD(Power Spectral Density)
一次元方向に沿って,適切な重み関数を用いた残差表面高さ関数をフーリエ変換した成分の二乗。
3.25
二乗平均平方根傾斜,RΔq,WΔq(root mean square slope)
基準長さにおける局部傾斜dZ/dXの二乗平均平方根(JIS B 0601参照)。
注記 局部傾斜は,JIS B 0601の図2(実表面の断面曲線)のように座標系を定めたときに,xの位置
における輪郭曲線の傾斜である(JIS B 0601参照)。局部傾斜を求める式は,数値微分の7点公
式に従い,次による。この式は,JIS B 0651に規定しているデータのサンプリング間隔に対し
て適用する。
dzi 1
= (zi+3−9zi+2+45zi+1−45zi−1+9zi−2−zi−3 )
dxi 60 X
ここに, xi及びzi : i番目の点の位置及び高さ
ΔX : 隣接するデータ点の間隔

4 表面性状の表示方法

4.1 一般

  表面性状は,光学表面の輪郭の全体にわたる統計的特性であり,表面の任意の面積での特性が,同一の
表面上の他の全領域での特性と同様であると仮定する。この仮定のもとに,表面のある部分での測定が,
表面全体を代表するものとみなす。
特記しない限り,表面性状の表示はコーティングする前の面に適用する。これは,JIS B 0090-1の箇条3
(基本規定)の第1段落の規定に対しての例外的な取り扱いである。
周期的な表面性状は,結晶構造をもつ材料,ダイヤモンド旋削などの生産工程によって引き起こされる
が,このような表面の表面性状に統計的な表面特性を適用する場合には,注意が必要である。
測定される表面性状の偏差は,通過波長の関数であるため,この規格では通過帯域の表示も要求してい
る。不適切な通過帯域を適用すると所望の特性を評価できなくなるため,表面性状を評価するときに適用
する通過帯域の上下限は,慎重に検討するのがよい。
表面粗さの主な影響は光散乱であるが,表面性状以外にも散乱の原因があるので,この規格では散乱測

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定には言及しない(表面性状と光散乱との関係は,参考文献で論じられている。)。
この規格は,研磨又は成型によって作られる光学的平滑面と同様に,つや消し,すなわち,粗面にも適
用する。この規格では,不十分な研磨によって残る穴(ぶつ)のような微小欠陥(光学的平滑面上に見掛
け上一様に分布する。)も表面性状に含める。表面性状には,二乗平均平方根粗さ,二乗平均平方根傾斜,
パワースペクトル密度,他の統計的手法によって規定する中間的な空間周波数うねりのような長波長成分
の統計的特性も含む。
適用される表面及び表面の高さ変化の大きさに応じ,4.2及び4.3に示す一つ,又は複数の方法による表
面性状の定量的記述を適用してもよい。

4.2 つや消し面

  つや消し面は,二乗平均平方根粗さで表す。この量は,検討する通過波長の範囲に依存する。このため,
通過帯域の下限及び上限を規定する必要がある。
通過帯域が規定されていないときには,通過帯域はλs=0.002 5 mmλc=0.08 mmとする。
場合によっては,機能的要求から二乗平均平方根粗さ以外の粗さパラメータを用いてもよい。その場合
には,JIS B 0031に規定する粗さパラメータで表示する。

4.3 光学的平滑面

4.3.1  表示方法
光学的平滑面を表示するためには,次の五つの統計的方法がある。
a) 二乗平均平方根粗さによる方法
b) 二乗平均平方根うねりによる方法
c) 微小欠陥の密度表示による方法
d) パワースペクトル密度関数を用いる方法
e) 二乗平均平方根傾斜で規定する方法
これらの方法は,組み合わせて使用することができる。また,方法ごとに異なる通過帯域を用いても,
同じ方法で複数の通過帯域を用いてもよい。
4.3.2 二乗平均平方根粗さ及び二乗平均平方根うねり
光学的平滑面は,一般に二乗平均平方根粗さによって規定する。長い通過帯域については,二乗平均平
方根うねりによって規定する。
面の高さ変化が特定の統計的分布特性に従う場合,その二乗平均平方根粗さは光散乱の度合いと関係す
る(附属書B参照)。二乗平均平方根値による規定は,通過帯域を規定しなければ不完全であることに注
意する必要がある。
通過帯域が規定されていない場合には,通過帯域は,二乗平均平方根粗さに対してλs=0.002 5 mmλc
=0.08 mm,二乗平均平方根うねりに対してλc=0.08 mmλf=2.5 mmとする。
4.3.3 微小欠陥の定量化
微小欠陥は,光学的平滑面に存在する非常に局在化した穴(ぶつ)である。微小欠陥は,測定表面を触
針式表面粗さ測定機の触針で軽く走査し,長さ10 mmを走査する間に,本来滑らかな面から,マイクロメ
ートルオーダの測定幅で,触針が3.4で定義された量以上変化する度数Nを採ることによって定量化され
る。また,光学式表面形状測定機,顕微鏡又は顕微鏡式画像コンパレータを用いてもよい。微小欠陥の度
数Nは,測定機の分解能3 μmで10 mm以上の長さ,又は同じ分解能で300 μm×300 μmの領域を走査し
て求める。
注記 測定機の分解能は,断面曲線において,有意に識別できる最小縦方向位置の差を表す測定機能

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力の定量的表示である(JIS B 0651参照)。
4.3.4 パワースペクトル密度関数
パワースペクトル密度関数は,表面性状の周波数スペクトルと直接関連付けられる。パワースペクトル
密度関数は,表面性状の完全な記述を可能にし,また,高度技術の応用のときに用いる超平滑面を規定す
る,又は面のうねりに相当する空間周波数成分を制御するために,特に有用である。
輪郭特性の場合,すなわち,表面性状が表面上の1本の線に沿った測定で決められるような場合,(nm2
×mm)の単位で表されるパワースペクトル密度関数は,式(2)で示す。
1 1 A

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                         D      C               f
ここに, f : 粗さ又はうねりに相当する空間周波数成分(mm−1)
B : 空間周波数にかかるべき指数
C,D : 通過帯域の下限及び上限(mm)
A : 定数(nm2×mm1−B)
注記 式(2)は数値方程式である(JIS Z 8202-0参照)。
Bの値は,0より大きい(多くの実在表面では,1 したがって,表面性状の要求事項は,式(2)を満足する四つの値A,B,C及びDを規定することによっ
て与える。
このパワースペクトル密度関数は,1次元の輪郭曲線方式で測定した一つの測定断面曲線,1次元の輪郭
曲線方式で測定した複数の測定断面曲線の平均値,様々な方向(面領域)を測定した複数の測定断面曲線
の平均値などのいずれの測定断面曲線からも計算することができる。パワースペクトル密度関数の方向性
が重要である場合には,筋目の記号を付加する。
通過帯域が規定されていない場合には,パワースペクトル密度関数は通過帯域λc=0.08 mmλf=2.5 mm
で評価する。
製品の用途及び使用波長,並びに測定機の能力から,図面中に通過帯域の上限及び下限を記載すること
が望ましい。
4.3.5 二乗平均平方根傾斜
光学的平滑面は,二乗平均平方根傾斜の表示で規定してもよい。
面の傾斜変化が特定の統計的分布特性に従う場合,その二乗平均平方根傾斜は像の品質と関係する(参
考文献[6]参照)。二乗平均平方根傾斜による規定は,通過帯域を規定しなければ不完全であることに注意
する必要がある。
通過帯域が規定されていない場合には,面傾斜の通過帯域はλc=0.08 mmλf=2.5 mmとする。

5 製図における表記

5.1 一般

  製図で表面性状を表示する記号は,JIS B 0031に規定する記号とし,必要なら5.25.4に規定する修正
を加える。

5.2 つや消し面の表記

  つや消し面は,図2に示すように,水平線の上にG[Ground(粗い)に対応]の文字を付けて示す。
注記1 JIS B 0031の5.2(表面性状の要求事項の指示位置)に規定する水平線の上(位置c)は,本
来,加工方法を示す場所であるが,この規格では“G”の文字は,研削以外(例えば,エッ

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チング)で作られたものを含む全てのつや消し面を表示するのに使われる。
注記2 JIS B 0031の4.4(表面性状の図示記号)に規定する表面性状の図示記号には,除去加工の有
無を問わない場合,除去加工をする場合,及び除去加工をしない場合の3種類がある。この
規格では,研削,研磨などの除去加工をすることを前提にしている。
最大許容二乗平均平方根粗さの許容値は,水平線の下に,マイクロメートル単位で表示する。一つのRq
の値が与えられている場合,それは表面粗さの上限を表している。さらに,粗さが一定の値以下であるこ
とが許されない場合,表面粗さの上限及び下限をJIS B 0031の6.6(許容限界値の指示−片側又は両側許
容限界値)に従って,両側公差として記載する。表面粗さの上限には“U”を付けて表し,下限には“L”
を付けて表す。図2参照。
通過帯域は,図5のように水平線の下に示す。上限値は,ハイフンによって下限値と分離される。そし
て,通過帯域は斜線によって,Rq表示と分離される。通過帯域は,ミリメートル単位で表示する。
通過帯域の上限だけを規定する場合は,図2に示すように,ハイフンの後に記載する。
例1 0.002 5−0.8/Rq 2(通過帯域とともに指示された面粗さ) : 附属書C参照。
例2 −0.8/Rq 2(通過帯域の上限とともに指示された面粗さ) : 附属書C参照。
図2−0.05 μm≦Rq≦2 μmのつや消し面及び通過帯域の上限5 mmの表示

5.3 光学的平滑面の表記

5.3.1  定量的な規定のない光学的平滑面
光学的平滑面は,図3に示すように水平線の上にP[Polished(研磨)に対応]の文字を付けて示す。文
字Pの単独の使用は,表面が光学的平滑面であること以外に,微小欠陥の定量化が必要ないことを意味す
る。
注記1 図3 a)は,光学的平滑面が研磨などの除去加工で作られた場合の図示方法である。図3 b)は,
光学的平滑面が成形などで作られ,除去加工をしない場合の図示方法である。
注記2 JIS B 0031の5.2に規定する水平線の上(位置c)は,本来,加工方法を示す場所であるが,
この規格では“P”の文字は,研磨で作られたものだけでなく,例えば,モールド又はフロ
ートガラスを含む全ての光学的平滑面を表示するのに使われる。
a) b)
図3−定量的指定が必要ない光学的平滑面の表示

――――― [JIS B 0090-8 pdf 10] ―――――

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JIS B 0090-8:2013の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 10110-8:2010(MOD)

JIS B 0090-8:2013の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 0090-8:2013の関連規格と引用規格一覧